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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?
47.賑やかな昼食
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『いただきます』
六人全員席につき声を合わせていただきますをする。こっちに来てからは当たり前となっているにぎやかな食卓の風景。
昼食のメニューは、ラザニアとスープと盛り付けが豪快なポテトサラダ。
「それにしてもまさかリュウノスケとセイヤがこんな凝った料理を作るとわね。しかもおいしい」
「凝った料理を作るのは星夜だけ。オレはスープ担当。時短で簡単なもんしか作れないからな」
ラザニアを一口食べて驚きながらも絶賛するヨハンさんに、龍くんは首を横に振り自分じゃないと言う。
確かに龍くんの料理は基本的なものが多く、どれも無難な美味しさかな?
でも料理が得意と言って間違いがない。
【セイカのパパの料理は世界一だよ。すごくおいしい!!】
「そうだよね? パパの料理は世界一」
予想を上回るチーズてんこ盛りのラザニアを食べるチョピはいい笑顔で言うから、私も便乗して自信を持って断言する。
パパの料理は、どれも滅茶苦茶美味しい。和洋中なんでも作れて、残り物だけでも絶品料理に変えてしまう。
テレワークが多いから夕食は基本パパが作ってくれる。だからなのか私の料理の腕は、いつまでたっても人並み程度。私が当番の時は申し訳ないと思うぐらいなのに、パパは本気で娘の手料理の方が美味しいと思っているらしい。自分で作るよりも1.5倍ぐらいは食べている?
「……そろそろ本題に入ろう」
怒ったようなそっけない言葉だけど、パパを見ると顔が真っ赤になっている。
どうやら恥ずかしくなったらしく、話をそらしたようだ。
「そうだな。さっきも言ったと思うがオレ達は明日の朝からレジストに向かう。車で行ける所まで行くつもりだか、途中山を越えなきゃ行けない場所があるからそこは徒歩になる。まぁ最悪星歌は星夜。陽はオレが背負うから心配するな」
『結構です。歩けます』
何か言いたそうにも真面目な話をする龍くんだけれど、ちょっとそれはと思うもので丁重にお断りを入れると陽と見事にハモってしまう。
陽の顔を見るとちょっと悲しそうで私まで悲しくなる。
龍くんは陽のことをどう思ってるんだろうか?
よく考えてみればあの龍くんが、陽の気持に気づいてないなんてないよね? パパならまだしも。
と言うことはつまり気づいているけれど、私の親友で教え子だから冷たくは出来ない?
だけどそれにしたって龍くんは、陽に対して優しすぎだと思う。
…………。
まさか光源氏の女バージョンとか?
自分好み女性に育て熟したら、バクッと食べるの?
…………。
考えれば考える程龍くんが最低になって大好きなのに嫌いになりそうで怖い。
一度二人でちゃんと話した方が、もしそうだと言われたらどう──。
「何このポテトサラダ?」
深刻になって考えながらポテトサラダを何も考えず食べると、ポテトの中から塩と胡椒の固まりと大量の七味が協調することなく個々に主張する。
とにかくまずい。
【ボクとツヨシが作ったんだよ!! ……まずい】
目を輝かせ元気よく言うチョピだけれど、口に入れた途端正直な感想を呟きスプーンを落としどんよりと落ち込む。
あまりの落ち込みように太に伝わったのか、慌てて口に入れこちらは硬直してしまう。
「うん、これならまだどうにかなるよ。夕食で使うから、また手伝ってな」
「……邪魔じゃないのか?」
「誰だって最初は失敗するもんだからね。今度はちゃんと教えるから。チョピもな」
そんな私達の会話を聞いていたパパもポテトサラダを一口食べた後、優しいフォローを入れると塞ぎ込んでいた二人の目の色が変わる。
優しいパパなのにそう言う所は結構意地悪で、手伝いの最初は好きなようにやらせてくれる。
私の時もそうだったから当然失敗して二人よりもっと落ち込んで、次はパパにみっちり教えてもらったからうまく行ったんだよね。それ以来手伝いが大好きになってパパの言うことをちゃんと良く聞くようになった。
パパ曰くそうした方が真剣になって聞いてくれるらしい。
「よし今度こそちゃんとうまいの作ってやる」
【うん。今度はセイカに美味しいって言ってもらえるように頑張る!!】
「そうだね。パパの言うことをちゃんと聞けば大丈夫。二人とも頑張って」
さっきよりやる気になり意気込む二人に、私はそう後押ししながら声援を送る。
こんなにやる気に満ちあふれているなら、何も心配はなさそう。
楽しみに待っていよう。
「それじゃぁ夕食もセイヤが作ってくれるんだ。それにしてもセイヤ、変わったわね?」
「そうか? 料理をするのは丁度良い息抜きになるんだよ」
「そう。昔は暇さえあればトレーニングか稽古。むしろ寝る間も惜しんでいたのにね?」「そうだったな。でも今ではちゃんと体調管理ぐらい出来ている」
昔のパパを話し出すヨハンさんに、パパは懐かしみながら軽くあしらう。
だけど私は知っている。
パパ曰く基本睡眠時間は三時間あれば充分らしく、何かあるとすぐに睡眠時間を削る。そもそも自分に興味がない人だから、パパの辞書に体調管理と言う言葉はないと思う。
きっとこっちに来てからは睡眠時間を削って、トレーニングに打ち込んでいるはず。もしかしたら今日から数日に一度しか睡眠を取らないかも知れない。
「パパの体調管理は、私がちゃんとしているので大丈夫です」
「それなら安心ね。セイヤの言葉は信じられないって、スピカがよく言ってたわ」
「…………」
だから私はそう自信を持って宣言すると、お母さんに良く聞かされていたらしく信用されていなかった。図星をつかれたパパは気まずそうに口を閉ざし、私達は声を出して笑い合う。
六人全員席につき声を合わせていただきますをする。こっちに来てからは当たり前となっているにぎやかな食卓の風景。
昼食のメニューは、ラザニアとスープと盛り付けが豪快なポテトサラダ。
「それにしてもまさかリュウノスケとセイヤがこんな凝った料理を作るとわね。しかもおいしい」
「凝った料理を作るのは星夜だけ。オレはスープ担当。時短で簡単なもんしか作れないからな」
ラザニアを一口食べて驚きながらも絶賛するヨハンさんに、龍くんは首を横に振り自分じゃないと言う。
確かに龍くんの料理は基本的なものが多く、どれも無難な美味しさかな?
でも料理が得意と言って間違いがない。
【セイカのパパの料理は世界一だよ。すごくおいしい!!】
「そうだよね? パパの料理は世界一」
予想を上回るチーズてんこ盛りのラザニアを食べるチョピはいい笑顔で言うから、私も便乗して自信を持って断言する。
パパの料理は、どれも滅茶苦茶美味しい。和洋中なんでも作れて、残り物だけでも絶品料理に変えてしまう。
テレワークが多いから夕食は基本パパが作ってくれる。だからなのか私の料理の腕は、いつまでたっても人並み程度。私が当番の時は申し訳ないと思うぐらいなのに、パパは本気で娘の手料理の方が美味しいと思っているらしい。自分で作るよりも1.5倍ぐらいは食べている?
「……そろそろ本題に入ろう」
怒ったようなそっけない言葉だけど、パパを見ると顔が真っ赤になっている。
どうやら恥ずかしくなったらしく、話をそらしたようだ。
「そうだな。さっきも言ったと思うがオレ達は明日の朝からレジストに向かう。車で行ける所まで行くつもりだか、途中山を越えなきゃ行けない場所があるからそこは徒歩になる。まぁ最悪星歌は星夜。陽はオレが背負うから心配するな」
『結構です。歩けます』
何か言いたそうにも真面目な話をする龍くんだけれど、ちょっとそれはと思うもので丁重にお断りを入れると陽と見事にハモってしまう。
陽の顔を見るとちょっと悲しそうで私まで悲しくなる。
龍くんは陽のことをどう思ってるんだろうか?
よく考えてみればあの龍くんが、陽の気持に気づいてないなんてないよね? パパならまだしも。
と言うことはつまり気づいているけれど、私の親友で教え子だから冷たくは出来ない?
だけどそれにしたって龍くんは、陽に対して優しすぎだと思う。
…………。
まさか光源氏の女バージョンとか?
自分好み女性に育て熟したら、バクッと食べるの?
…………。
考えれば考える程龍くんが最低になって大好きなのに嫌いになりそうで怖い。
一度二人でちゃんと話した方が、もしそうだと言われたらどう──。
「何このポテトサラダ?」
深刻になって考えながらポテトサラダを何も考えず食べると、ポテトの中から塩と胡椒の固まりと大量の七味が協調することなく個々に主張する。
とにかくまずい。
【ボクとツヨシが作ったんだよ!! ……まずい】
目を輝かせ元気よく言うチョピだけれど、口に入れた途端正直な感想を呟きスプーンを落としどんよりと落ち込む。
あまりの落ち込みように太に伝わったのか、慌てて口に入れこちらは硬直してしまう。
「うん、これならまだどうにかなるよ。夕食で使うから、また手伝ってな」
「……邪魔じゃないのか?」
「誰だって最初は失敗するもんだからね。今度はちゃんと教えるから。チョピもな」
そんな私達の会話を聞いていたパパもポテトサラダを一口食べた後、優しいフォローを入れると塞ぎ込んでいた二人の目の色が変わる。
優しいパパなのにそう言う所は結構意地悪で、手伝いの最初は好きなようにやらせてくれる。
私の時もそうだったから当然失敗して二人よりもっと落ち込んで、次はパパにみっちり教えてもらったからうまく行ったんだよね。それ以来手伝いが大好きになってパパの言うことをちゃんと良く聞くようになった。
パパ曰くそうした方が真剣になって聞いてくれるらしい。
「よし今度こそちゃんとうまいの作ってやる」
【うん。今度はセイカに美味しいって言ってもらえるように頑張る!!】
「そうだね。パパの言うことをちゃんと聞けば大丈夫。二人とも頑張って」
さっきよりやる気になり意気込む二人に、私はそう後押ししながら声援を送る。
こんなにやる気に満ちあふれているなら、何も心配はなさそう。
楽しみに待っていよう。
「それじゃぁ夕食もセイヤが作ってくれるんだ。それにしてもセイヤ、変わったわね?」
「そうか? 料理をするのは丁度良い息抜きになるんだよ」
「そう。昔は暇さえあればトレーニングか稽古。むしろ寝る間も惜しんでいたのにね?」「そうだったな。でも今ではちゃんと体調管理ぐらい出来ている」
昔のパパを話し出すヨハンさんに、パパは懐かしみながら軽くあしらう。
だけど私は知っている。
パパ曰く基本睡眠時間は三時間あれば充分らしく、何かあるとすぐに睡眠時間を削る。そもそも自分に興味がない人だから、パパの辞書に体調管理と言う言葉はないと思う。
きっとこっちに来てからは睡眠時間を削って、トレーニングに打ち込んでいるはず。もしかしたら今日から数日に一度しか睡眠を取らないかも知れない。
「パパの体調管理は、私がちゃんとしているので大丈夫です」
「それなら安心ね。セイヤの言葉は信じられないって、スピカがよく言ってたわ」
「…………」
だから私はそう自信を持って宣言すると、お母さんに良く聞かされていたらしく信用されていなかった。図星をつかれたパパは気まずそうに口を閉ざし、私達は声を出して笑い合う。
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