普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
65 / 157
3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?

46.男性群は料理中

しおりを挟む
【セイカ、おはよう。おうちに帰ってきたんだね】
「チョピ、起きてたんだね。うん、帰ってきたよ。私達はこれからレジストと言う国に行くことになったんだ」

 思っていた以上にヨハンさんからお母さんの話を聞けてルンルン気分で自室へと戻ると、待っていましたと言わんばかりのチョピが元気いっぱいに飛び込んでくる。私はそんなチョピをギュッと抱きしめ、これからどうするのかを簡単に話す。

【うん、わかった。所で美味しそうな匂いがしているけど、ご飯?】
「うん、そうだよ。お昼はラザニアだって」
【ラザニア? 何それ? 美味しいの?】

 チョピにしてみればこれからなんてあまり興味がなく、お腹が空いているらしく未知なるラザニアに心を奪われる。

「チーズたっぷりですごく美味しいんだ」
【チーズ、ボク大好き。早く行こう】

 説明になっていない説明でもチョピには満足のようで、目を完全に輝かせリビングへ行くことを急かされる。 

 言葉通りチョピはチーズが大好きになり、特にとろけるチーズに目がない。
 パパのことだからお礼も兼ねてチョピの分はチーズましましにしているんだろうな?
 なんか想像したらお腹空いて来ちゃった。

「そうだね。早く行って昼食にしよう」
【やった】

 本当は昼食前にやりたいことがあったけれど、腹が減っては戦が出来ないというようにやりたいことは後回しにしてリビングに急ぐ。




「え、太が料理している?」
「そうなのよ。いきなり今時の男は家事が出来ないとモテないとか言い出してね。なんでもこなせる龍ノ介さんとおじさんが格好良く見えたんじゃないの?」

 何か私も手伝おうとキッチンに視線を向けると、カウンターで太が賢明にジャガイモを潰していた。 こんな光景調理実習以外に見たことがないから驚きを隠せないでいると、読書中の陽が呆れながらこうなった経緯を教えられる。

 太らしいけれど、なんで今さら?
  ただ弟子入りしているから、そう言うとこも真似たいと思っただけ?

「だったらここは男性陣に任せておいた方がいいね」
【ならボクも手伝う。セイカ、セイカのパパにボクも手伝うって言ってくれる?】
「チョピが手伝い? パパ、チョピが手伝いたいって」

 流石にキッチンに四人もいたら邪魔でしかないと思い、そう言うことにして席に着こうとしたらなぜかチョピがやる気になっている。男性群という言葉に感銘を受けたようだ。

チョピが出来る手伝いがあるのかは分からないけれど、せっかくのやる気を無駄にはしたくない。
 パパなら何かいい手伝いを見つけてくれるはず。

「パパ、チョピが手伝いしたいって」
「分かった。チョピ、こっちにおいで」
「チュピ!!」

 やっぱりパパには何か秘策があるようで嫌がらずチョピを呼び、チョピは嬉しそうに耳をピクピクさせキッチンへ行く。なんだか幼い私を見ているようだった。

 私も幼い時手伝いがしたくって、手伝ってくれと言われたら嬉しくてぴょんぴょんしていったよね?
 初めの方は手伝いと言うより邪魔でしかなかったけれど、パパと龍くんがちゃんと教え続けてくれたから出来るようになった。

「星ちゃんがうらやましいな? おじさんは子供心を理解してくれるし、家事全般が得意で料理の腕はピカイチ。おまけに強くてカッコいい。理想の父親像だよ」
「自慢の父親だもん。でも陽のおじさんだってダンティーで優しいと思うけどな?」

 そんなやり取りを見ていたからなのか陽はパパをベタ褒めし羨ましがられるけれど、おじさんには良いイメージしかないからそう言葉を返す。

 太陽の父親は考古学者。おっとりしていて物知り。いつもニコニコしていて温かい人だと思う。
 ここだけの話父親と言うよりおじいちゃんに思えるのは、おじさんがおじいちゃんの大学の後輩だから。

「うん。うちのお父さんもすごく優しいよ。外見だって悪くない。だけどマイペース過ぎるし、鈍感で言わなきゃ分からない。 料理なんて無縁。ごはんですりゃ炊いたことがない昔の人なんだから」

 羨ましいと言うより、高望みのボヤキだった。
 ただ少し切なそうな表情になりため息をつく。

 陽も父親が大好きだから淋しいんだろうな?
 さっき私パパと会えなくなったら絶対に嫌だって言ったけれど、陽は大好きな家族と会えない状況が続いている。
 なのに泣きごとを言わずに、ここに残る選択をしてくれた。

「陽、ごめんね」
「え、何が?」
「家族と離れ離れにしちゃって」
「大丈夫。そりゃぁちょっとは淋しいけど、絶対に戻るつもりだから悲しくないよ。それにこっちには太と星ちゃんもいる。……龍ノ介さんだっているんだよ」

 まったく気にしないと言う感じでますます陽に惚れそうになるも、最後の台詞で出来れば忘れたい重要な話を思い出す。
 頬を赤く染め可愛らしい姿で、本当なら全力で応援したい。
 でも遊ばれて捨てられて傷つく親友の姿は見たくない。
 でもそれで陽に嫌われたら……嫌われても陽のためだから仕方がないよね。

「……陽。龍くんは辞めた方が良いよ」
「……そうだね。一度は諦めたくないと思ったけれど、やっぱり私のようなお子様には高嶺の花なんだよね?」
「え、龍くんは恋愛面ではゲスだよ。高嶺の花なんかじゃない」

 清水の舞台から飛び降りる気持ちで話を切り出せば、何かあったのかふさぎこみ私の意見を聞いてくれる。
 でも龍くんをまだ色眼鏡で見えていて、そこは反射的に激しい突っ込みを入れた。

 高嶺の花は陽だ。
 龍くんになんて勿体ない。

「星ちゃん、容赦ないね。龍ノ介さんって星ちゃんの初恋の人じゃないの?」
「え、あ、確かにそうかも? 最悪だ!!」

 今さらそれに気づきショックを受ける。

 そうだった。
 私の初恋は龍くんだった。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...