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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?
42.陽のお手柄
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「星ちゃん!!」
「星歌!!」
「太陽、無事で良かった」
浮かない表情をした太陽が私を見るなりパッと花が咲き、私の名を呼び駆け寄ってくる。元気そうで私も声をあげ二人に駆け寄り、陽と抱き合って喜び合う。
なんともなくって本当に良かった。
「んなの当たり前だろう? なんかオレ達がトゥーランの魔族を排除するため選ばれた聖人とか言われた」
「そうそれで、聖人の能力を更に高める実を食べるようにと言われたけれど、直感的に怪しいと思ったから食べたふりをして隠したんだ」
二人してケロッと明るく何があったのか教えてくれるも、それは結構重大だったことが分かる。
陽の勘が働いて食べなかったから何ごともなくすんだけれど、もし食べていたらどうなっていたんだろう?
……陽の嫌な予感を話の流れから考えると、その実は魔族が人間の敵だと洗脳するための物?
だったらそれを食べたら、太陽は私の敵となって殺そうとした。
……そんなの考えるだけでも怖い。
「さすがヒナタだな。その実を私に見せてくれないか?」
「その実ならオレが預かっています。お察しの通り魔族が人間の敵だと言う常識を植え付ける実なのでしょう」
「だろうな。つまり洗脳の正体はこいつか。人間とやらは本当に何を考えているんだが」
龍くんは懐から赤い実を取り出しそう言いながらルーナスさんに渡せば、察しが付いていたのかため息交じりで答えた後人間に呆れる。ガーロットはなんだか悲しげにシュンとなった。
人間と魔族の共存なんて夢のまた夢なんだろうか?
そこまで人間を洗脳して魔族を皆殺しさせたいってことは、私には到底考えられないほどの憎しみがある。
それに魔族の方だって忍がいると分かった以上、魔王を復活させたらトゥーランを征服しようとする。魔王に逆らう者はきっとどんな種族だろうと皆殺し。
忍は迷うことなく倒すべき危険な相手なんだけれど、人間の主犯は考えが分からないから対策を取れない。
「ルーナスさん、それで誰が主犯だか分かりませんか?」
とにかく主犯の考えが知りたくて、頼みの綱のルーカスさんに助言を求める。
「それは詳しく調べないとなんとも言えんな。セイカは主犯を見つけたらどうしたい?」
「取り敢えず主犯の考えが知りたいです。そしてお母さんの汚名を晴らしてもらいたい」
「魔族との共存はいいのかい?」
「それは考えによってだと思います。心の底から魔族を憎んでいるなら、そう言う人達を集めて魔族立ち入り禁止の街を新たに作ることを薦めます」
私の考えにルーナスさんは戸惑い更なる問いを問われるから、それにもちゃんと答えると今度は呆気に取られた表情に変わり私を見つめる。
私の考えはおかしいんだろうか?
根気よく話し合って、魔族と和解してもらう。
そう答えた方が良かった?
お母さんならそう言ってた?
「セイヤ、セイカは本当にお前の娘なのか?」
「なっ、失礼なことを言わないで下さい。星歌は俺の娘です」
「それにしては考え方がリュウノスケに似てるんじゃないか?」
「!!」
呆気に取られたまま呟いた問いパパはムッと言い返すけれど、理由を言われると図星だったらしく絶句する。
私も同じで言われてみてば、確かにこの考えは龍くんよりなんだろう。
昔友達と大げんかした時龍くんから
“仲直りはしないといけないが、もしどうしても嫌なら無理して友達を続ける必要はない。でもその嫌いは星歌の嫌いであって、他人を巻き込むな。悪口を言いふらすなんて最低のすることだ”
って言ってたよね?
あの時は何を言っているか良く分からなくって結局その友達とはすぐに仲直り出来たから、その意味を深く考えようとしなかった。
そうか龍くんの教えが無意識のうちに、私の考えになったんだね。
「オレも星歌の育ての親ではありますからね。でも星歌は総合的に星夜と考えは似てますよ。どんな相手でも偏見なく接することが出来ますし、仲間のためなら立ち向かえる強さも持っている優しい子です。……まぁたまにとんでもないことをやらかすのはスピカの血をちゃんと受け継いでますが」
「うっ……、飴と鞭だ」
落ち込むパパを見かねて龍くんはナイスフォローをしてくれたと思っていたのに、最後の台詞が私にとっては微妙で嬉しさが還元する。でもパパの落ち込みは軽減されたようでそこは良かった。
お母さんの血を受け継いでいると言われるのは嬉しいけれど、そう言う受け継ぎ方はちょっと嫌かも?
って言うかお母さんって龍くんに似た性格……パパって意外と自分と正反対の性格の人に心を惹かれている?
だから私が龍くんと似た考えになっても、特に何も言わなかった?
「確かにそういう見方も出来るな。でもまぁ、セイカの考えはある意味一番穏便な解決策かもしれないね? 話し合っても無理なら敵対するより干渉しなければ良いだけのこと。セイカはその信念を持って、まずは魔族を説得しなさい。私はこの実を調べて、洗脳を解く薬を作っておく」
納得をしてくれたのか優しく微笑み私の頭をなぜながら、助言だけでなくお膳立てをしてくれる。
ここまでしてくれるんだから本当なら自信を持って“はい”と言いたいんだけれど、魔族を説得するのだって難しい。
話の流れ的に忍が生きていることを、今言った方が良いよね?
「それなんですが、どうやら忍が生きているらしいです」
『はい?』
覚悟を決めても言いにくい内容なので、頬をかき視線を泳がせながら勢いよく暴露すれば、皆さん驚き一斉に私をガン見して声をハモらせる。
「星歌!!」
「太陽、無事で良かった」
浮かない表情をした太陽が私を見るなりパッと花が咲き、私の名を呼び駆け寄ってくる。元気そうで私も声をあげ二人に駆け寄り、陽と抱き合って喜び合う。
なんともなくって本当に良かった。
「んなの当たり前だろう? なんかオレ達がトゥーランの魔族を排除するため選ばれた聖人とか言われた」
「そうそれで、聖人の能力を更に高める実を食べるようにと言われたけれど、直感的に怪しいと思ったから食べたふりをして隠したんだ」
二人してケロッと明るく何があったのか教えてくれるも、それは結構重大だったことが分かる。
陽の勘が働いて食べなかったから何ごともなくすんだけれど、もし食べていたらどうなっていたんだろう?
……陽の嫌な予感を話の流れから考えると、その実は魔族が人間の敵だと洗脳するための物?
だったらそれを食べたら、太陽は私の敵となって殺そうとした。
……そんなの考えるだけでも怖い。
「さすがヒナタだな。その実を私に見せてくれないか?」
「その実ならオレが預かっています。お察しの通り魔族が人間の敵だと言う常識を植え付ける実なのでしょう」
「だろうな。つまり洗脳の正体はこいつか。人間とやらは本当に何を考えているんだが」
龍くんは懐から赤い実を取り出しそう言いながらルーナスさんに渡せば、察しが付いていたのかため息交じりで答えた後人間に呆れる。ガーロットはなんだか悲しげにシュンとなった。
人間と魔族の共存なんて夢のまた夢なんだろうか?
そこまで人間を洗脳して魔族を皆殺しさせたいってことは、私には到底考えられないほどの憎しみがある。
それに魔族の方だって忍がいると分かった以上、魔王を復活させたらトゥーランを征服しようとする。魔王に逆らう者はきっとどんな種族だろうと皆殺し。
忍は迷うことなく倒すべき危険な相手なんだけれど、人間の主犯は考えが分からないから対策を取れない。
「ルーナスさん、それで誰が主犯だか分かりませんか?」
とにかく主犯の考えが知りたくて、頼みの綱のルーカスさんに助言を求める。
「それは詳しく調べないとなんとも言えんな。セイカは主犯を見つけたらどうしたい?」
「取り敢えず主犯の考えが知りたいです。そしてお母さんの汚名を晴らしてもらいたい」
「魔族との共存はいいのかい?」
「それは考えによってだと思います。心の底から魔族を憎んでいるなら、そう言う人達を集めて魔族立ち入り禁止の街を新たに作ることを薦めます」
私の考えにルーナスさんは戸惑い更なる問いを問われるから、それにもちゃんと答えると今度は呆気に取られた表情に変わり私を見つめる。
私の考えはおかしいんだろうか?
根気よく話し合って、魔族と和解してもらう。
そう答えた方が良かった?
お母さんならそう言ってた?
「セイヤ、セイカは本当にお前の娘なのか?」
「なっ、失礼なことを言わないで下さい。星歌は俺の娘です」
「それにしては考え方がリュウノスケに似てるんじゃないか?」
「!!」
呆気に取られたまま呟いた問いパパはムッと言い返すけれど、理由を言われると図星だったらしく絶句する。
私も同じで言われてみてば、確かにこの考えは龍くんよりなんだろう。
昔友達と大げんかした時龍くんから
“仲直りはしないといけないが、もしどうしても嫌なら無理して友達を続ける必要はない。でもその嫌いは星歌の嫌いであって、他人を巻き込むな。悪口を言いふらすなんて最低のすることだ”
って言ってたよね?
あの時は何を言っているか良く分からなくって結局その友達とはすぐに仲直り出来たから、その意味を深く考えようとしなかった。
そうか龍くんの教えが無意識のうちに、私の考えになったんだね。
「オレも星歌の育ての親ではありますからね。でも星歌は総合的に星夜と考えは似てますよ。どんな相手でも偏見なく接することが出来ますし、仲間のためなら立ち向かえる強さも持っている優しい子です。……まぁたまにとんでもないことをやらかすのはスピカの血をちゃんと受け継いでますが」
「うっ……、飴と鞭だ」
落ち込むパパを見かねて龍くんはナイスフォローをしてくれたと思っていたのに、最後の台詞が私にとっては微妙で嬉しさが還元する。でもパパの落ち込みは軽減されたようでそこは良かった。
お母さんの血を受け継いでいると言われるのは嬉しいけれど、そう言う受け継ぎ方はちょっと嫌かも?
って言うかお母さんって龍くんに似た性格……パパって意外と自分と正反対の性格の人に心を惹かれている?
だから私が龍くんと似た考えになっても、特に何も言わなかった?
「確かにそういう見方も出来るな。でもまぁ、セイカの考えはある意味一番穏便な解決策かもしれないね? 話し合っても無理なら敵対するより干渉しなければ良いだけのこと。セイカはその信念を持って、まずは魔族を説得しなさい。私はこの実を調べて、洗脳を解く薬を作っておく」
納得をしてくれたのか優しく微笑み私の頭をなぜながら、助言だけでなくお膳立てをしてくれる。
ここまでしてくれるんだから本当なら自信を持って“はい”と言いたいんだけれど、魔族を説得するのだって難しい。
話の流れ的に忍が生きていることを、今言った方が良いよね?
「それなんですが、どうやら忍が生きているらしいです」
『はい?』
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