60 / 157
3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?
41.私のヒーロー
しおりを挟む
「星歌、大丈夫か?」
「パパ!!」
パパの足音が聞こえたと思ったら姿を現したから、私は嬉しくなって大声で叫んでしまう。
真っ青で必死なパパの表情は、私の無事を見て安堵し……。
バキバキバキ
私にはびくともしなかった鉄格子が粘土のようぐにゃぐにゃと曲がり、あっと言う間に人が入れる広さになりパパが入ってくる。
感動の再会のはずが、超人芸に開いた口がふさがらない。
「星歌、良かった。本当に良かった」
そんな呆然と立ち尽くす私に構わず、パパは力強くギュッと抱きしめ大粒の涙を流す。
ありえないほど心臓の鼓動が高鳴り続けているのを聞いて、我に返り凄く心配を掛けたんだなと改めて痛感する。
パパにとっては私は命より大切な宝物。
そんな私が突然いなくなったんだから、死ぬほど心配したよね?
私もパパの温もりと石けん……酒臭い?
とにかくこれで本当に大丈夫だと思ったら、涙があふれこぼれ落ちる。
本当に良かった……。
「怪我はないか?」
「うん。チョピのおかげで私は大丈夫だよ」
「それなら良かった。チョピ、本当にありがとう」
【約束はちゃんと守ったから、後はセイカのパパがセイカを護ってね。ボクは疲れたから寝る】
「うん、ありがとうチョピ。おやすみなさい」
パパが来るまで励まし続けてくれていたチョピはパパが来たことで安心したらしく、眠たそうに言いながら私の懐に入りすぐに眠りに付く。
チョピの言葉はパパには伝わらないけれど、その約束は交わさなくてもパパは私を護ってくれる。
護られているばかりじゃ情けないとは思いつつ、あいにく弱い私にはそうするしか他にはない。
これからは今まで以上に魔術の勉強に力を入れて、誘拐されても自力で逃げられる術を身につける。そして酷いことを言われても言い返せる強さも欲しい。
「セイカ、元気そうだな」
【本当に無事で何よりだ】
「ルーナスさんにガーロット。はい、ご心配をおかけしました」
いつの間にかルーナスさんとガーロットの姿もあり微笑みながら声をかけてくれるから、私はパパから離れ二人に笑顔を見せ元気良く返事を返す。
龍くんは? と思ったけれど、誘拐されたのは私だけではなく太陽もだから、二手に別れて捜す。そうなるとパパは絶対に私だから、龍くんは当然太陽になる。
「パパ、太陽も大丈夫だよね?」
「ああ、龍ノ介に心当たりがあるらしい」
「そうなの? それなら良かった」
朗報な答えに心配はなくなって、れからは自分のことだけを考えることにした。よけいなことをしてパパに負担を掛けさせるわけにはいかない。
私を命にかけて護ると平気で言える人だから。
「そう言うことだから、ちょと待っていなさい。すぐに、終わらせる」
「え?」
ルーナスさんは意味深な台詞を言って、壁になにやら魔方陣を描き始める。首を傾げその姿を見る私だったけれど、
「分かりました。星歌、約束する。お前のことは地球に戻るまで父さんが絶対に護り抜くからな」
「え、あうん」
パパからはいきなり一方的に交わされた約束に、意味が分からないものの考える前に反射的に頷いてしまった。
地球に戻るまで父さんが絶対に護り抜く。
それってどう言う……生きて護り抜くって意味?
命を掛けて護るってことじゃなくって、最後まで私を生きて護ってくれるってこと? それは今まで私が願っていたことでそう言ってくれるのは嬉しいんだけれど、ついこの前まで命をかけて護るって言っていたのにいきなりどうしたんだろう? ちょっと信じられない。
「……本当に最後まで私を護ってくれるの?」
「そうだよ。今までは父さんにもしものことがあったら龍ノ介に任せるつもりでいたが、龍ノ介に言われたよ。今は太くんと陽ちゃんもいるから厳しいって」
「確かにそれはそうだね」
訳を話されやっぱりバックに龍くんがいたからなんだと思いながらも、現状龍くんの言い分がごもっともなんだと思った。
いくら龍くんがチートでも私達三人を一人で護るのは無茶がある。それでも無理とは言わず厳しいって言えちゃうのはいかにも龍くんらしいけれどね。
だけど太はこの数日でぐんぐん力を付けていて、今では中級モンスターも軽々倒してしまう程。
まぁ調子に乗ると隙が出来て危なっかしいのは相変わらずで、そこを容赦なく龍くんにしごかれてはいる。それさえなくなれば完璧なんだろうけれど、それが太なのだからこればっかりは難しいんだろうな。
「今よりもっと強くなるからな」
「パパはもう充分強いと思うんだけど、あんまり無茶しないでね」
「してないよ。前にも言ったと思うが、父さんは星歌のためならいくらでも強くなれるんだよ」
今でもすでにチートなのに、それでも強さを求めるのは最早病気なのかも知れない。
最近強くそう思うようになったけれど、更に強く誓いを立てられてしまう。戸惑いながらやんわり止めても、真顔でいつもの決めぜりふを言われて会話は終了。
……もし忍が実は生きていることを知ったら、ますます無茶して強くなろうとするよね? 最後まで私を護ってくれるって言った言葉を忘れて、命を粗末にする護り方をしそうで怖いな。
相打ち覚悟だとか良いそう。
出来ることなら忍が生きていることを隠しておきたいけれど、そうして発覚したらとり返しの付かないことになりそうだから却下。
忍はパパに逆恨みをしていて執念は尋常ではない。
いくらパパが強くなったとしても、闇討ちされたらひとたまりもない。
あんな悲劇を見るのはもう嫌。
「セイヤ、出来たよ」
「はい。星歌、手を繋いでいこう」
「うん、ってこれは?」
ルーナスさんの声がしてパパに言われ手を繋ぎ視線を向けると、魔方陣は完成されていて壁が歪んでいるように見える。
嫌な感じはしないんだけれど、違和感はある。
「これはエルフ秘伝の空間移動魔術。二カ所で同じ魔方陣を描くことで瞬時に移動が出来る優れものだよ。リュウノスケと事前に打ち合わせをして、セレスの部屋に通じている」
「それはすごくて便利な魔術ですね」
「だろう?」
さすが龍くんの師匠だ。
そんな便利な魔術があるのなら、私も覚えたい。これさえ使えれば誘拐されても簡単に逃げられると思いながら、全員で魔方陣の壁を通り抜ける。
薄暗くてかび臭かった牢屋から、きれいで明るいしかも良い匂い場所へと変わった。
「パパ!!」
パパの足音が聞こえたと思ったら姿を現したから、私は嬉しくなって大声で叫んでしまう。
真っ青で必死なパパの表情は、私の無事を見て安堵し……。
バキバキバキ
私にはびくともしなかった鉄格子が粘土のようぐにゃぐにゃと曲がり、あっと言う間に人が入れる広さになりパパが入ってくる。
感動の再会のはずが、超人芸に開いた口がふさがらない。
「星歌、良かった。本当に良かった」
そんな呆然と立ち尽くす私に構わず、パパは力強くギュッと抱きしめ大粒の涙を流す。
ありえないほど心臓の鼓動が高鳴り続けているのを聞いて、我に返り凄く心配を掛けたんだなと改めて痛感する。
パパにとっては私は命より大切な宝物。
そんな私が突然いなくなったんだから、死ぬほど心配したよね?
私もパパの温もりと石けん……酒臭い?
とにかくこれで本当に大丈夫だと思ったら、涙があふれこぼれ落ちる。
本当に良かった……。
「怪我はないか?」
「うん。チョピのおかげで私は大丈夫だよ」
「それなら良かった。チョピ、本当にありがとう」
【約束はちゃんと守ったから、後はセイカのパパがセイカを護ってね。ボクは疲れたから寝る】
「うん、ありがとうチョピ。おやすみなさい」
パパが来るまで励まし続けてくれていたチョピはパパが来たことで安心したらしく、眠たそうに言いながら私の懐に入りすぐに眠りに付く。
チョピの言葉はパパには伝わらないけれど、その約束は交わさなくてもパパは私を護ってくれる。
護られているばかりじゃ情けないとは思いつつ、あいにく弱い私にはそうするしか他にはない。
これからは今まで以上に魔術の勉強に力を入れて、誘拐されても自力で逃げられる術を身につける。そして酷いことを言われても言い返せる強さも欲しい。
「セイカ、元気そうだな」
【本当に無事で何よりだ】
「ルーナスさんにガーロット。はい、ご心配をおかけしました」
いつの間にかルーナスさんとガーロットの姿もあり微笑みながら声をかけてくれるから、私はパパから離れ二人に笑顔を見せ元気良く返事を返す。
龍くんは? と思ったけれど、誘拐されたのは私だけではなく太陽もだから、二手に別れて捜す。そうなるとパパは絶対に私だから、龍くんは当然太陽になる。
「パパ、太陽も大丈夫だよね?」
「ああ、龍ノ介に心当たりがあるらしい」
「そうなの? それなら良かった」
朗報な答えに心配はなくなって、れからは自分のことだけを考えることにした。よけいなことをしてパパに負担を掛けさせるわけにはいかない。
私を命にかけて護ると平気で言える人だから。
「そう言うことだから、ちょと待っていなさい。すぐに、終わらせる」
「え?」
ルーナスさんは意味深な台詞を言って、壁になにやら魔方陣を描き始める。首を傾げその姿を見る私だったけれど、
「分かりました。星歌、約束する。お前のことは地球に戻るまで父さんが絶対に護り抜くからな」
「え、あうん」
パパからはいきなり一方的に交わされた約束に、意味が分からないものの考える前に反射的に頷いてしまった。
地球に戻るまで父さんが絶対に護り抜く。
それってどう言う……生きて護り抜くって意味?
命を掛けて護るってことじゃなくって、最後まで私を生きて護ってくれるってこと? それは今まで私が願っていたことでそう言ってくれるのは嬉しいんだけれど、ついこの前まで命をかけて護るって言っていたのにいきなりどうしたんだろう? ちょっと信じられない。
「……本当に最後まで私を護ってくれるの?」
「そうだよ。今までは父さんにもしものことがあったら龍ノ介に任せるつもりでいたが、龍ノ介に言われたよ。今は太くんと陽ちゃんもいるから厳しいって」
「確かにそれはそうだね」
訳を話されやっぱりバックに龍くんがいたからなんだと思いながらも、現状龍くんの言い分がごもっともなんだと思った。
いくら龍くんがチートでも私達三人を一人で護るのは無茶がある。それでも無理とは言わず厳しいって言えちゃうのはいかにも龍くんらしいけれどね。
だけど太はこの数日でぐんぐん力を付けていて、今では中級モンスターも軽々倒してしまう程。
まぁ調子に乗ると隙が出来て危なっかしいのは相変わらずで、そこを容赦なく龍くんにしごかれてはいる。それさえなくなれば完璧なんだろうけれど、それが太なのだからこればっかりは難しいんだろうな。
「今よりもっと強くなるからな」
「パパはもう充分強いと思うんだけど、あんまり無茶しないでね」
「してないよ。前にも言ったと思うが、父さんは星歌のためならいくらでも強くなれるんだよ」
今でもすでにチートなのに、それでも強さを求めるのは最早病気なのかも知れない。
最近強くそう思うようになったけれど、更に強く誓いを立てられてしまう。戸惑いながらやんわり止めても、真顔でいつもの決めぜりふを言われて会話は終了。
……もし忍が実は生きていることを知ったら、ますます無茶して強くなろうとするよね? 最後まで私を護ってくれるって言った言葉を忘れて、命を粗末にする護り方をしそうで怖いな。
相打ち覚悟だとか良いそう。
出来ることなら忍が生きていることを隠しておきたいけれど、そうして発覚したらとり返しの付かないことになりそうだから却下。
忍はパパに逆恨みをしていて執念は尋常ではない。
いくらパパが強くなったとしても、闇討ちされたらひとたまりもない。
あんな悲劇を見るのはもう嫌。
「セイヤ、出来たよ」
「はい。星歌、手を繋いでいこう」
「うん、ってこれは?」
ルーナスさんの声がしてパパに言われ手を繋ぎ視線を向けると、魔方陣は完成されていて壁が歪んでいるように見える。
嫌な感じはしないんだけれど、違和感はある。
「これはエルフ秘伝の空間移動魔術。二カ所で同じ魔方陣を描くことで瞬時に移動が出来る優れものだよ。リュウノスケと事前に打ち合わせをして、セレスの部屋に通じている」
「それはすごくて便利な魔術ですね」
「だろう?」
さすが龍くんの師匠だ。
そんな便利な魔術があるのなら、私も覚えたい。これさえ使えれば誘拐されても簡単に逃げられると思いながら、全員で魔方陣の壁を通り抜ける。
薄暗くてかび臭かった牢屋から、きれいで明るいしかも良い匂い場所へと変わった。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説


〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる