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2章 私が生まれた世界“トゥーラン”
34.私が産まれた日の話
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「あれ、ここはどこ?」
無我夢中で走り続けフッと立ち止まり辺りを見回せば、繁華街を抜けてしまったらしく森林の風景に変わっている。建物と言えば、すっかり荒れ果てた古びた一軒の家だけ。
「ここは……星歌、お前が産まれた場所だ」
「え、私が産まれた場所……」
どこか懐かしむようにパパが答えたことによって、初めて知る真実に感動してしまい涙が出そうになる。それと同時に淋しさも感じるのは、廃墟となっているから?
トゥーランでは私が産まれたのは三十年前。
そう考えると廃墟になっているのは普通なのかな? 建物って人が住んでいないとすぐ痛むって言うぐらいだし。
「ねぇパパ。私が産まれた時の話をしてくれる?」
「あ、オレも聞きたい」
「いいよ。──ここは父さんが魔王を倒し村の領主となるまでの三ヶ月ばかり住んでいた住居だ。スピカは素性がバレるのを恐れていて、父さんも目立つことが苦手だったから、繁華街から少し離れたこの場所にしたんだ」
私と太の好奇心に答えるかのように、パパはゆっくり語り始める。
十六年前
その日は晴天で暑い日だった。
ヨハンから
スピカが破水したからすぐ帰って来い。
と言う連絡を受けた俺は仕事を速攻切り上げ、全速力で我が家へとめざした。
絶望のどん底から俺を救ってくれたスピカが妊娠したと聞かされたあの日、我が子が産まれる前に魔王を倒すと強く決意した。
世界の人達のためにではなく。我が子が心から笑い続けられる平和な世の中にするためなら、俺は何があったとしても挫けないし二度と立ち止まらない。この身がどうなろうと構わな……我が子を一目見るまでは絶対死ねないと思うようになった。だから俺は今こうして生きているのかも知れない。
そしてそんな我が子にようやく会えることが嬉しくて、人混みの中でも叫んでしまいそうだった。
「今帰──」
「んぎゃんぎゃー」
我が家の扉を開けると、今まで聞いたことがない元気な産声があがる。
おそらく一生涯忘れることはない世界で一番美しい声。
我が子“星歌”が産まれたんだ。
「スピカ、星歌」
嬉しさのあまり妻と子の名前を大声を呼び、いそいで産声がする寝室に行くと、
「セイヤ、うるさい。少しは静かにしなさい」
怒ったヨハンが出てきて、そう言いながら脇腹を殴る。
痛かった。
「な何すんだよ?」
「そんな大声を出したら、スピカとセイカちゃんに迷惑でしょ?」
ヨハンの言葉のおかげで我に返った俺は何も言い返せなくなる。
ベッドには汗だくになり、赤目にキバそして尖った耳の本来の姿に戻っているスピカ。そんな姿を見てしまうと、自分があまりにも情けない。
いくら浮かれていたとは言え、騒ぎすぎた……。
「……すまない。嬉しかったんだ……」
「ヨハン、そのぐらいにしてあげなさい。セイヤ、おめでとう。すごい可愛いだろう?」
苦笑しながらルーナス先生はヨハンにそう言うが、俺には笑顔を浮かべ激励された後大切に抱いている赤ん坊を見せられる。
玉のように愛らしい。
それはこの子のためにある言葉なのだろう。
どんな輝く美しい宝石よりも、輝いている産まれたばかりの星歌。
俺の娘は天使かも知れない。
そっとルーナス先生から星歌を受け取り抱き上げると、何もかもが小さく力の加減少しでも間違えてたら、壊れそうなガラスの彫刻。
それなのに見た目以上にずっしり重く感じられるのは、父親の責任と言う物が含まれているのだろうか? だとしたら責任重大だな。
星歌には悲しい思いも苦しい思いも寂しい思いもさせたくない。
一生笑顔でいて欲しい。
そのためなら何があったとしても、星歌は俺が護ってみせる。
「スピカ、お疲れ様。星歌を産んでくれてありがとう」
「どういたしまして。私もセイカに逢えて本当に嬉しいよ。これからは三人仲良く暮らしていこう」
「当たり前だ。俺が何があっても二人を護るよ」
スピカの側に行き感謝の気持ちを伝えれば、スピカは幸せそうに当たり前のことを言うから胸を張って断言する。
絶望を知り更なる大切な仲間達の犠牲の上でようやく魔王を倒した後の世界は、夢と希望が満ちあふれる輝かしい未来。もちろん俺が護れなかった人達をけして忘れることなく、これからも懺悔はし続けるつもりだ。
それでも俺は幸せでこの先スピカと供に星歌の成長を温かく見守り、笑いが絶えない誰もが羨む家庭を家族になる。
スピカと星歌を世界で一番幸せに……俺が今世界で一幸せだから、それより幸せにするのは難しいかも知れないな。
俺の未来は、とにかく輝いている。
「おっさんにとって星歌は産まれる前から、特別で大切な存在だったんだな」
私の産まれた日の話が終わると、しみじみと太は呟き暖かな眼差しを向けられる。
なんだかそれがくすぐったくって、一緒に聞けて良かったと思う。
私が産まれてきたことに両親は喜んでくれ、そして愛されていた。
不安なんて一切ない本当に幸せだった日々だったんだね。
「パパ、私は今でもとっても幸せだよ」
少し悲しげな表情を見せるパパに、それだけ言って私は微笑む。
パパにとっては私がいて幸せでも苦しい日々なんだろうけれど、私にとっては幸せな毎日であることは間違えない。
パパが命をかけてでやって来たことは、無駄なんかじゃないって知って欲しかった。
するとパパは嬉しそうな表情へと変わり、何も言わず私の頭をなぜてくれる。
やっぱり私は幸せ者だ。
無我夢中で走り続けフッと立ち止まり辺りを見回せば、繁華街を抜けてしまったらしく森林の風景に変わっている。建物と言えば、すっかり荒れ果てた古びた一軒の家だけ。
「ここは……星歌、お前が産まれた場所だ」
「え、私が産まれた場所……」
どこか懐かしむようにパパが答えたことによって、初めて知る真実に感動してしまい涙が出そうになる。それと同時に淋しさも感じるのは、廃墟となっているから?
トゥーランでは私が産まれたのは三十年前。
そう考えると廃墟になっているのは普通なのかな? 建物って人が住んでいないとすぐ痛むって言うぐらいだし。
「ねぇパパ。私が産まれた時の話をしてくれる?」
「あ、オレも聞きたい」
「いいよ。──ここは父さんが魔王を倒し村の領主となるまでの三ヶ月ばかり住んでいた住居だ。スピカは素性がバレるのを恐れていて、父さんも目立つことが苦手だったから、繁華街から少し離れたこの場所にしたんだ」
私と太の好奇心に答えるかのように、パパはゆっくり語り始める。
十六年前
その日は晴天で暑い日だった。
ヨハンから
スピカが破水したからすぐ帰って来い。
と言う連絡を受けた俺は仕事を速攻切り上げ、全速力で我が家へとめざした。
絶望のどん底から俺を救ってくれたスピカが妊娠したと聞かされたあの日、我が子が産まれる前に魔王を倒すと強く決意した。
世界の人達のためにではなく。我が子が心から笑い続けられる平和な世の中にするためなら、俺は何があったとしても挫けないし二度と立ち止まらない。この身がどうなろうと構わな……我が子を一目見るまでは絶対死ねないと思うようになった。だから俺は今こうして生きているのかも知れない。
そしてそんな我が子にようやく会えることが嬉しくて、人混みの中でも叫んでしまいそうだった。
「今帰──」
「んぎゃんぎゃー」
我が家の扉を開けると、今まで聞いたことがない元気な産声があがる。
おそらく一生涯忘れることはない世界で一番美しい声。
我が子“星歌”が産まれたんだ。
「スピカ、星歌」
嬉しさのあまり妻と子の名前を大声を呼び、いそいで産声がする寝室に行くと、
「セイヤ、うるさい。少しは静かにしなさい」
怒ったヨハンが出てきて、そう言いながら脇腹を殴る。
痛かった。
「な何すんだよ?」
「そんな大声を出したら、スピカとセイカちゃんに迷惑でしょ?」
ヨハンの言葉のおかげで我に返った俺は何も言い返せなくなる。
ベッドには汗だくになり、赤目にキバそして尖った耳の本来の姿に戻っているスピカ。そんな姿を見てしまうと、自分があまりにも情けない。
いくら浮かれていたとは言え、騒ぎすぎた……。
「……すまない。嬉しかったんだ……」
「ヨハン、そのぐらいにしてあげなさい。セイヤ、おめでとう。すごい可愛いだろう?」
苦笑しながらルーナス先生はヨハンにそう言うが、俺には笑顔を浮かべ激励された後大切に抱いている赤ん坊を見せられる。
玉のように愛らしい。
それはこの子のためにある言葉なのだろう。
どんな輝く美しい宝石よりも、輝いている産まれたばかりの星歌。
俺の娘は天使かも知れない。
そっとルーナス先生から星歌を受け取り抱き上げると、何もかもが小さく力の加減少しでも間違えてたら、壊れそうなガラスの彫刻。
それなのに見た目以上にずっしり重く感じられるのは、父親の責任と言う物が含まれているのだろうか? だとしたら責任重大だな。
星歌には悲しい思いも苦しい思いも寂しい思いもさせたくない。
一生笑顔でいて欲しい。
そのためなら何があったとしても、星歌は俺が護ってみせる。
「スピカ、お疲れ様。星歌を産んでくれてありがとう」
「どういたしまして。私もセイカに逢えて本当に嬉しいよ。これからは三人仲良く暮らしていこう」
「当たり前だ。俺が何があっても二人を護るよ」
スピカの側に行き感謝の気持ちを伝えれば、スピカは幸せそうに当たり前のことを言うから胸を張って断言する。
絶望を知り更なる大切な仲間達の犠牲の上でようやく魔王を倒した後の世界は、夢と希望が満ちあふれる輝かしい未来。もちろん俺が護れなかった人達をけして忘れることなく、これからも懺悔はし続けるつもりだ。
それでも俺は幸せでこの先スピカと供に星歌の成長を温かく見守り、笑いが絶えない誰もが羨む家庭を家族になる。
スピカと星歌を世界で一番幸せに……俺が今世界で一幸せだから、それより幸せにするのは難しいかも知れないな。
俺の未来は、とにかく輝いている。
「おっさんにとって星歌は産まれる前から、特別で大切な存在だったんだな」
私の産まれた日の話が終わると、しみじみと太は呟き暖かな眼差しを向けられる。
なんだかそれがくすぐったくって、一緒に聞けて良かったと思う。
私が産まれてきたことに両親は喜んでくれ、そして愛されていた。
不安なんて一切ない本当に幸せだった日々だったんだね。
「パパ、私は今でもとっても幸せだよ」
少し悲しげな表情を見せるパパに、それだけ言って私は微笑む。
パパにとっては私がいて幸せでも苦しい日々なんだろうけれど、私にとっては幸せな毎日であることは間違えない。
パパが命をかけてでやって来たことは、無駄なんかじゃないって知って欲しかった。
するとパパは嬉しそうな表情へと変わり、何も言わず私の頭をなぜてくれる。
やっぱり私は幸せ者だ。
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