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2章 私が生まれた世界“トゥーラン”
25.特別な加護
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「おかえり、星歌」
「ただいま。パパ」
みそぎが終わり身なりを整えてからパパとガーロットが待つ場所に帰ると、いつもと同じようにパパは笑顔で出迎えてくれる。その姿を見たらホッとして嬉しくなり私も笑顔になり言葉を返す。
どんなに私がパパを傷つけてもパパはけして私の手を放さなかったから、私は道を踏み外すことなく悪いことだって気づけて反省が出来た。
今の私があるのはパパとそれから親友の陽のおかげ。改めて感謝しないといけないね。
ただ陽には感謝を今でも口に出して言えるけれど、パパには改めて言うのは照れくさいんだよね。だから親孝行をいっぱいしよう。
【では聖女セイカ、約束通り我の加護を与える】
「はい」
そこへガーロットもやってきてさっそく約束の加護の話になり、気を引き締め心して聞くことにするのだけど、
【我は二人のことが気に入った。だからセイカに我の加護ではなく、我その者を与えることにする】
「はい?」
ガーロットは真顔で真意を告げる。
しかし私にはその意味が理解出来ず、間抜けな声を出し首を傾げて問い返す。脳内は巨大なクエスチョンマークが浮かび、よく考えても理解不能。
ガーロットは聖女の泉の番人なのだから、この洞窟から出られないんだよね?
しかも聖獣でしょ? 聖獣が人と一緒に……そもそもサイズ感が大きいから目立ちまくります。
【ガーロット、いくらなんでもその姿のままだったら、セイカ達に迷惑だよ】
【そうか。だったらこれなら良かろう】
私が思っていることをチョピが代弁してくれるとガーロットは素直に受け止めてくれ、あっと言う間に白と水色のゼブラ柄の仔猫の姿へと変化した。
……チョピ同様随分ファンシーな姿。
確かにこの姿とサイズで神気は最小限に抑えられたため、一緒に行動してもおかしくないけどそれで本当に良いんだろうか?
「星歌、一体どうなってんだ?」
「それがガーロットが私達と同行したいって言ってこの姿に変えたの」
「そうなのか? でもガーロットはここの番人なんだろう?」
言葉の分からないパパには当然事情が分かず不思議に思われ聞かれたから、取り敢えず要点だけ教えると変化自体にはそこまで驚かず私と同じ疑問を持つ。
【それなら大丈夫。役目を終えた聖女の泉は、再び力を蓄えるため千年の眠りに付く。我も本来眠りに付くのだが、それを数十年遅らせてたとしてもさほど問題はなかろう】
たいしたことがなさそうに軽々しく答えるガーロットに、違和感を持ちながらもパパにも分かるよう同時通訳。案の定呆気に取られるパパ。
もしかしなくてもガーロットはあの風貌と口調なのに、実はありえないぐらいのポジティブ思考……お馬鹿さんだったりする?
しかも数十年遅らしても問題ないって言うからには、聖女の役目が終わっても一緒にいるってことだよね?
日本にまでついてくる気なんだろうか?
「星歌、すごいのに気に入られたな」
「まぁね。でもガーロットは私よりパパの方が気に入っているよ」
「え、俺?」
【さよう】
ようやく言葉を絞り出しなんとか言葉にするパパには悪いと思いつつ気に入られているのは私よりパパだと言う真実を伝えると、まったくの予想外だったようでキョトンとなるもガーロットは深く頷きパパの足元にすり寄り甘えるように鳴く。
闇墜ちしたガーロットを瞬殺(気絶させただけだけど)し、軽々と担いで移動した。
気に入られる要素は充分にある。異性だったら惚れているのかも?
……ん?
そもそもガーロットはなぜ闇墜ちした? 聖獣なんだから、よっぽどのことがなかったら闇墜ちしないような?
「ガーロット、今さらなんだけどどうして闇墜ちしたの?」
【それはボクも知りたい。ここは聖域で結界が張ってあるんだから、悪しき者は入れないはずなのに、どうして?】
【ここは確かに聖域の一つだが、それはチョピの卵が人間あるいは魔族に発見された瞬間から結界は発動される。それ以前は誰でも入れて、我は眠りに付いている。おそらくその時闇に囚われ、穢れたのだろう】
「つまり犯人は分からないと?」
【面目ない。だがその主に近づけば、分かるかも……知れぬ】
吉日でもしかして洗脳の主犯格と関わりがある人物もしくは同一犯だと思い真相を探るけれど、返ってきたのは有力情報が一切ないもので答えるガーロットはシュンと凹む。最後の台詞も心許なく、ため息を吐きながらまたパパにも話す。
睡眠中だったら赤子と同じ。しかも結界前のことだから結界を張っても無意味なんだね。
そう言えば龍くんが前に結界は破れないけれど、中からなら簡単に破れると言ってたよね? それと同じで案外結界と言うのは穴だらけなんじゃ?
「聖域は他にもあるのか?」
【あるよ。ボクが封印されてた聖霊の山脈。セイカのパパとリュウノスケを英雄候補として選んだ召還の大木。魔族の地の果てに咲く審判の花。エルフの里にある刻の湖畔。そしてここ人の王都にある聖女の泉】
「聖霊の山脈・召還の大木・審判の花・刻の湖畔・聖女の泉。まさか聖女はそのすべてを回らないと行けないの?」
【そう言う決まりはないけれど、セイカは回りたいの?】
各聖域を巡り聖女の力をラノベだと良くあるパターンだから聞いたのに、答えは私の判断に託されるだけ。
それは私を試しているのか、あるいは本当に行かなくても良い?
チョピのことだからそんな意地悪な選択をしないとは思うも、行かなくても良いけど行った方がお得って言う可能性がある。だとすると回った方のが良いのかな?
「みんなと相談してもいい?」
【もちろんだよ】
結局一人では決められなかった。
「ただいま。パパ」
みそぎが終わり身なりを整えてからパパとガーロットが待つ場所に帰ると、いつもと同じようにパパは笑顔で出迎えてくれる。その姿を見たらホッとして嬉しくなり私も笑顔になり言葉を返す。
どんなに私がパパを傷つけてもパパはけして私の手を放さなかったから、私は道を踏み外すことなく悪いことだって気づけて反省が出来た。
今の私があるのはパパとそれから親友の陽のおかげ。改めて感謝しないといけないね。
ただ陽には感謝を今でも口に出して言えるけれど、パパには改めて言うのは照れくさいんだよね。だから親孝行をいっぱいしよう。
【では聖女セイカ、約束通り我の加護を与える】
「はい」
そこへガーロットもやってきてさっそく約束の加護の話になり、気を引き締め心して聞くことにするのだけど、
【我は二人のことが気に入った。だからセイカに我の加護ではなく、我その者を与えることにする】
「はい?」
ガーロットは真顔で真意を告げる。
しかし私にはその意味が理解出来ず、間抜けな声を出し首を傾げて問い返す。脳内は巨大なクエスチョンマークが浮かび、よく考えても理解不能。
ガーロットは聖女の泉の番人なのだから、この洞窟から出られないんだよね?
しかも聖獣でしょ? 聖獣が人と一緒に……そもそもサイズ感が大きいから目立ちまくります。
【ガーロット、いくらなんでもその姿のままだったら、セイカ達に迷惑だよ】
【そうか。だったらこれなら良かろう】
私が思っていることをチョピが代弁してくれるとガーロットは素直に受け止めてくれ、あっと言う間に白と水色のゼブラ柄の仔猫の姿へと変化した。
……チョピ同様随分ファンシーな姿。
確かにこの姿とサイズで神気は最小限に抑えられたため、一緒に行動してもおかしくないけどそれで本当に良いんだろうか?
「星歌、一体どうなってんだ?」
「それがガーロットが私達と同行したいって言ってこの姿に変えたの」
「そうなのか? でもガーロットはここの番人なんだろう?」
言葉の分からないパパには当然事情が分かず不思議に思われ聞かれたから、取り敢えず要点だけ教えると変化自体にはそこまで驚かず私と同じ疑問を持つ。
【それなら大丈夫。役目を終えた聖女の泉は、再び力を蓄えるため千年の眠りに付く。我も本来眠りに付くのだが、それを数十年遅らせてたとしてもさほど問題はなかろう】
たいしたことがなさそうに軽々しく答えるガーロットに、違和感を持ちながらもパパにも分かるよう同時通訳。案の定呆気に取られるパパ。
もしかしなくてもガーロットはあの風貌と口調なのに、実はありえないぐらいのポジティブ思考……お馬鹿さんだったりする?
しかも数十年遅らしても問題ないって言うからには、聖女の役目が終わっても一緒にいるってことだよね?
日本にまでついてくる気なんだろうか?
「星歌、すごいのに気に入られたな」
「まぁね。でもガーロットは私よりパパの方が気に入っているよ」
「え、俺?」
【さよう】
ようやく言葉を絞り出しなんとか言葉にするパパには悪いと思いつつ気に入られているのは私よりパパだと言う真実を伝えると、まったくの予想外だったようでキョトンとなるもガーロットは深く頷きパパの足元にすり寄り甘えるように鳴く。
闇墜ちしたガーロットを瞬殺(気絶させただけだけど)し、軽々と担いで移動した。
気に入られる要素は充分にある。異性だったら惚れているのかも?
……ん?
そもそもガーロットはなぜ闇墜ちした? 聖獣なんだから、よっぽどのことがなかったら闇墜ちしないような?
「ガーロット、今さらなんだけどどうして闇墜ちしたの?」
【それはボクも知りたい。ここは聖域で結界が張ってあるんだから、悪しき者は入れないはずなのに、どうして?】
【ここは確かに聖域の一つだが、それはチョピの卵が人間あるいは魔族に発見された瞬間から結界は発動される。それ以前は誰でも入れて、我は眠りに付いている。おそらくその時闇に囚われ、穢れたのだろう】
「つまり犯人は分からないと?」
【面目ない。だがその主に近づけば、分かるかも……知れぬ】
吉日でもしかして洗脳の主犯格と関わりがある人物もしくは同一犯だと思い真相を探るけれど、返ってきたのは有力情報が一切ないもので答えるガーロットはシュンと凹む。最後の台詞も心許なく、ため息を吐きながらまたパパにも話す。
睡眠中だったら赤子と同じ。しかも結界前のことだから結界を張っても無意味なんだね。
そう言えば龍くんが前に結界は破れないけれど、中からなら簡単に破れると言ってたよね? それと同じで案外結界と言うのは穴だらけなんじゃ?
「聖域は他にもあるのか?」
【あるよ。ボクが封印されてた聖霊の山脈。セイカのパパとリュウノスケを英雄候補として選んだ召還の大木。魔族の地の果てに咲く審判の花。エルフの里にある刻の湖畔。そしてここ人の王都にある聖女の泉】
「聖霊の山脈・召還の大木・審判の花・刻の湖畔・聖女の泉。まさか聖女はそのすべてを回らないと行けないの?」
【そう言う決まりはないけれど、セイカは回りたいの?】
各聖域を巡り聖女の力をラノベだと良くあるパターンだから聞いたのに、答えは私の判断に託されるだけ。
それは私を試しているのか、あるいは本当に行かなくても良い?
チョピのことだからそんな意地悪な選択をしないとは思うも、行かなくても良いけど行った方がお得って言う可能性がある。だとすると回った方のが良いのかな?
「みんなと相談してもいい?」
【もちろんだよ】
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