普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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2章 私が生まれた世界“トゥーラン”

23.聖獣ガーロット

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「本当にこの魔獣は聖獣ガーロットなのか? とてもそんな感じがしないんだが」
「うん、私もそう思う。だけどチョピが……」
【間違いないよ。でも闇に今なお穢れている……】

 気を失ったままのガーロットの元に近づき様子を伺うも、未だにどす黒いオーラをまとったままで、どうしたら良いのか分からず警戒しながら話し合う。

 私とパパは聖獣であることを疑っても、チョピはそこまで言うからには間違いない。
 聖獣にトドメなんか刺したら、呪われそうだしそもそもかわいそう。
 なんとかして正気に戻してあげたい。

 ………………。
 ………………。

「……浄化の魔術なら穢れを祓える?」
「それなら聖女の泉に入れれば、祓えるだろう?」

 私の意見をスルーして、パパは別の意見を言う。
 聖女になって良いと言った癖して、力を使うことに反対される。
  過保護過ぎなのも、ここまで来たら達が悪い。

【駄目だよ。聖女の泉に入ったら泉が穢れちゃう。そんな泉でみそぎをしたら、セイカも穢れちゃうよ】
「パパ、そんなことしたら泉が穢れて私も穢れるんだって。パパ、私なら大丈夫だからね」
「そうだな。星歌は聖女だもんな。……変なことを言ってすまない」

 しかしパパの意見は速攻却下され説得力ある理由をチョピに言われたため一応納得をしてくれるも、複雑な笑みで私を見つめている辺り納得したくない気持ちが心の奥底にあるのだろうか?

 こんな無駄だと思うやり取りがあと何回続けば、私はパパに信用? してもらえるんだろうか?
 心配なのは分かるけれど、それで過保護になるのはいかがな物か。

 そんな不安を抱きながらも意識を集中させ、光り輝く言葉に出来ない文字を強く念じる。
 あの時と同じううんもっと温かい優しい物が、手のひらから生まれ解き放される。
  その光はガーロットを包み込むと、どす黒いイヤなオーラを吸収しパンとシャボン玉のようにはじけた。

 穢れを祓ったガーロットは真っ白と青いブフサフサな毛並みのゼブラ柄、イヤな感じは消えて神気をまとっているまさしく聖獣の貫禄。
 
【さすが星歌。あっと言う間に穢れを祓えたね?】
「うん。パパ、これでもう大丈夫だよ」
「そのようだな。星歌は本当にすごい自慢の娘だ。それじゃぁ後は父さんが頑張るからな」
『!!』

 二人からう~んと褒められご機嫌になる私だったけれど、パパは意味深に訳の分からないことを呟くと同時にガーロットを軽々でもないものの無理なく担いでしまう。
 ありえない光景に圧倒された私とチョピは、目と口をあんぐりと開けその場に立ち尽くす。
 パパには一般人並みの魔力がないと聞いているから、これはパパの実力なんだろうけれど夢だと疑いたくなる。

 いくら英雄でも、これは度を超していると思います。

「二人ともどうした? さっさと聖女の泉に行くぞ?」
「パパ、無理してない? まさか戦闘モードになってないよね?」

 私と手を再び繋ぎ歩き出すなんでもなさそうなパパを見ていたら、今は禁忌とした戦闘モードを使用した疑いが出てきて不安になり問い出さす。

 戦闘モードだったら聖獣を蹴り飛ばし、担ぎ上げてもおかしくはない。
 だけどそれを使ったら幻夢を見せられる。
 そしたらパパは……。

「馬鹿だな。これぐらいでそんな扇を使うわけないだろう?」

 優しい笑みで不安でしかない私を見つめ、軽く否定されてしまう。

 嘘は……ついていなさそう。
 私はパパの嘘だったらなんとなく分かると思うから、これは信じてもいい……のかな?





【イタタ……。我は一体?】
「え?」
「星歌、どうしたの?」

 どこからともなく渋い男性の声が聞こえたから、辺りをキョロキョロと見回してもパパ以外男性は誰もいない。(チョピには性別がなさそう)

 空耳?
 それともまさかおばけ?
 だとしたら怖いんだけど……。

【ガーロットの声だよ】
「え、ガーロット? 気づいたの?」

 チョピに教えられガーロットに視線を向けると、確かに目を開いて私を不思議そうに見つめている。

【お主は我の声が分かるのか?】
「あ、はい。私は村瀬星歌と言います。そして貴方を担いでいるのは父の星夜です」
「ガーロットが目覚めたんだな? なら降ろすな」

 一応正気に戻ってからの初対面なので失礼のないように自分の名とパパの名も紹介する。それでパパにもガーロットが目を覚ましたことに気づきそっと地面に降ろす。
 どうやらガーロットの声もチョピと同じで私にしか聞こえないらしい。

【セイカは聖女でガーロットの穢れを祓ってくれたんだよ。セイカのパパはガーロットより強いんだ。一撃で倒しちゃったんだもん】  
【……確かにそのような記憶が薄らとある。どうやら我としたことが闇に飲み込まれたようだな。セイカ、セイヤありがとう】
「どういたしまして。パパ、ガーロットがありがとうだって」

 パパを絶賛してくれるのは嬉しいけれどガーロットを貶すような言い方はどうかなと思いきや、話の分かる相手だったようで自分の愚かさを悔い頭を深く下げ感謝される。
 社交辞令とかじゃなくって心の底からちゃんと感謝してくれているのが伝わり、役に立ったことが嬉しくて再び笑顔が浮かびパパにも伝えた。

「元に戻って良かったです。気分はいかがですか?」
【少し後頭部に痛みを感じるが、問題はない】 
「問題ないみたいよ」
「それなら良かった」

 すべてを語らず重要なことだけ教えたのは、すべてを言ったらパパは根に持つと思ったから。嘘じゃないけれど嘘も方便みたいな物。
 するとその答えにパパはホッとし胸をなで下ろす。

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