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2章 私が生まれた世界“トゥーラン”
21.陽の気持ち
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「陽、大丈夫?」
「星ちゃん、うん、もう大丈夫だよ。ステーフさん、ありがとうございます。とても楽しかったです」
「私もすごく楽しかったわ。また話しましょうね」
「はい、是非」
「え……?」
いろいろ落ち込んでいるだろうからどうやって陽を元気づけようと考えていたのに、いざ客間に行けばなんと言うことでしょう?
陽とステーフさんは和気あいあいしていて、すっかり元気になっていた。あまりの現実に呆気に取られ、なんて言えば良いのか分からない。
ステーフさんは一体何を陽に打ち明けた?
リュウさんのことは隠したとか?
「セイカ様。話は終わられたのですね?」
「え、あはい。聖女の泉と言う所に連れてってもらう前に、陽の様子を見に来たんですが、一体二人で何を話してたのですか?」
「リュウノスケ様についてです。私の知らないリュウノスケ様を知れて幸せな気持ちになりました」
「そう。いろいろ聞けてね。初めは龍ノ介さんに息子がいてショックだったけれど、やっぱり龍ノ介さんは素敵だなと思ったんだ」
陽もステーフさんもすっかり恋する乙女になっていて、私にはちょっと理解不能な答えが返ってくる。
前にも痛感したけれど、やっぱり恋は盲目。
二人がそれで満足しているのならば私は何も言えないけれど、龍くんのさっきの態度を見てたら少……いやかなり不安がある。
親友としてどうすれば良いのだろうか?
「それでは私はこれで失礼します」
と言ってステーフさんは軽く頭を下げ、ご機嫌のまま部屋から出て行く。
「星ちゃんはやっぱり反対?」
「え?」
「私が龍ノ介さんのこと好きで居続けるの?」
「……私にはよく分からないけれど、不安はある。龍くんにとって恋愛はなんなんだろう? 複数の女性を同時に愛せるって出来るのかな? でもそれで陽が良いのであれば、陽に気持ちを尊重する」
ステーフさんがいなくなった途端あんなに和やかだった陽の表情が沈みいきなり聞いてくるから、私は悩みながらも今思っている本音を答え陽の両手を握る。
「英雄時代の龍ノ介さんは、五人いた恋人達を平等に愛していたみたい。それを聞いたら龍ノ介さんらしいなって思えちゃって、そしたらまだ好きを諦めたくない」
揺るぎない眼差しで迷いなく告白される。
陽は私より頭が良くって人を見る目があるからそこまで言うのならば、私はやっぱり陽の恋を応援したいな。
あ、私が龍くんを教育すれば良いのか。
女たらしさえ直せば、龍くんは完全無欠だからなんの問題もない。
「ただ今回の件できっと龍ノ介さんに私の気持ちを悟られちゃったよね? 面と向かって振られたらどうしよう……」
「あ、それなら良い案があるよ。龍くん見たいなゲス男なんか興味がない。あれはゲスさを見て気分が悪くなった。って強気になって言い張れば良いんだよ」
「星ちゃん!! そんな酷いことを私が言えるはずがないでしょ!!」
真剣に悩む親友の力になろうとこれだった龍くんを黙らせるとっておきの方法を教えたのに、陽にはお気に召さなかったのか顔を真っ赤にさせて声を裏返らし速攻却下された。
龍くんには効果抜群のグットアイデアだったと思うんだけれど、確かに陽にはハードルが高いのかも知れない。
「だったら私が代わりに言ってあげようか? 純粋の陽が龍くんに幻滅したって」
「……星ちゃん、ありがとう。その気持ちだけで充分だからね」
「あそのなんかごめん」
苦笑いの二度目のお断りに、迷惑なんだと分かり申し訳なく謝罪。余計なお世話なんだと知る。
恋愛はデリケートだから第三者が余計なことをしない方が良いんだね?
相談された時だけ力になってあげれば良いんだ。
「謝らなくても大丈夫だよ。星ちゃんの気持ちは嬉しいから。それよりも星ちゃん達は何をお姫様達と話していたの?」
陽は本当に良い子だ。
余計なことして凹んでいる私を気遣ってくれて、気まずい空気が流れないように別の話題に話を変えてくれる。
陽は天使だ。
「人間が魔族を敵だと思うのは、何者かによって洗脳されてるみたい。セレス姫は魔石のネックレスのおかげで洗脳が解けているから、人間と魔族が手を取り合う世界を目指してくれている。……やっぱりリュウさんは龍くんの息子だから、洗脳はされないのかな?」
軽く説明をしているうちに、今さらながらそんな疑問を持った。
それにナーシャさんも洗脳されていたら、人間と魔族の共存って聞いただけで激怒しそうなのに、顔色を変えず聞いていただけ。
「そうなんじゃない? それにステーフさんもすべての魔族を敵対するのはおかしいって言っていた」
「だったら龍くんと深い関わりを持つ人にもその石を渡したのかな? セレス姫はお母さんにもらったんだって。あ、でもお母さんに贈ったのはパパと龍くんの連名で、三人の間に恋愛感情はなくは同志だったらしいよ」
こうなってくるとやっぱり洗脳を解く鍵は、ラストダンジョンのレアな魔石。
人数分の採取は無理として、加工して薬にはならないのかな? そのためには私も能力アップしないと、パパと龍くんだけ行くって言われたら困る。
それに洗脳している主犯も捜さないといけないし、やることは山積みだ。
「星ちゃん、私頑張るね。私は占い師だから、洗脳している何者を占えるかも知れない。そのためにはレベルアップ? をしなければいけないけど」
「確かに。なら期待しているね」
張り切る陽に、私は期待した。
「星ちゃん、うん、もう大丈夫だよ。ステーフさん、ありがとうございます。とても楽しかったです」
「私もすごく楽しかったわ。また話しましょうね」
「はい、是非」
「え……?」
いろいろ落ち込んでいるだろうからどうやって陽を元気づけようと考えていたのに、いざ客間に行けばなんと言うことでしょう?
陽とステーフさんは和気あいあいしていて、すっかり元気になっていた。あまりの現実に呆気に取られ、なんて言えば良いのか分からない。
ステーフさんは一体何を陽に打ち明けた?
リュウさんのことは隠したとか?
「セイカ様。話は終わられたのですね?」
「え、あはい。聖女の泉と言う所に連れてってもらう前に、陽の様子を見に来たんですが、一体二人で何を話してたのですか?」
「リュウノスケ様についてです。私の知らないリュウノスケ様を知れて幸せな気持ちになりました」
「そう。いろいろ聞けてね。初めは龍ノ介さんに息子がいてショックだったけれど、やっぱり龍ノ介さんは素敵だなと思ったんだ」
陽もステーフさんもすっかり恋する乙女になっていて、私にはちょっと理解不能な答えが返ってくる。
前にも痛感したけれど、やっぱり恋は盲目。
二人がそれで満足しているのならば私は何も言えないけれど、龍くんのさっきの態度を見てたら少……いやかなり不安がある。
親友としてどうすれば良いのだろうか?
「それでは私はこれで失礼します」
と言ってステーフさんは軽く頭を下げ、ご機嫌のまま部屋から出て行く。
「星ちゃんはやっぱり反対?」
「え?」
「私が龍ノ介さんのこと好きで居続けるの?」
「……私にはよく分からないけれど、不安はある。龍くんにとって恋愛はなんなんだろう? 複数の女性を同時に愛せるって出来るのかな? でもそれで陽が良いのであれば、陽に気持ちを尊重する」
ステーフさんがいなくなった途端あんなに和やかだった陽の表情が沈みいきなり聞いてくるから、私は悩みながらも今思っている本音を答え陽の両手を握る。
「英雄時代の龍ノ介さんは、五人いた恋人達を平等に愛していたみたい。それを聞いたら龍ノ介さんらしいなって思えちゃって、そしたらまだ好きを諦めたくない」
揺るぎない眼差しで迷いなく告白される。
陽は私より頭が良くって人を見る目があるからそこまで言うのならば、私はやっぱり陽の恋を応援したいな。
あ、私が龍くんを教育すれば良いのか。
女たらしさえ直せば、龍くんは完全無欠だからなんの問題もない。
「ただ今回の件できっと龍ノ介さんに私の気持ちを悟られちゃったよね? 面と向かって振られたらどうしよう……」
「あ、それなら良い案があるよ。龍くん見たいなゲス男なんか興味がない。あれはゲスさを見て気分が悪くなった。って強気になって言い張れば良いんだよ」
「星ちゃん!! そんな酷いことを私が言えるはずがないでしょ!!」
真剣に悩む親友の力になろうとこれだった龍くんを黙らせるとっておきの方法を教えたのに、陽にはお気に召さなかったのか顔を真っ赤にさせて声を裏返らし速攻却下された。
龍くんには効果抜群のグットアイデアだったと思うんだけれど、確かに陽にはハードルが高いのかも知れない。
「だったら私が代わりに言ってあげようか? 純粋の陽が龍くんに幻滅したって」
「……星ちゃん、ありがとう。その気持ちだけで充分だからね」
「あそのなんかごめん」
苦笑いの二度目のお断りに、迷惑なんだと分かり申し訳なく謝罪。余計なお世話なんだと知る。
恋愛はデリケートだから第三者が余計なことをしない方が良いんだね?
相談された時だけ力になってあげれば良いんだ。
「謝らなくても大丈夫だよ。星ちゃんの気持ちは嬉しいから。それよりも星ちゃん達は何をお姫様達と話していたの?」
陽は本当に良い子だ。
余計なことして凹んでいる私を気遣ってくれて、気まずい空気が流れないように別の話題に話を変えてくれる。
陽は天使だ。
「人間が魔族を敵だと思うのは、何者かによって洗脳されてるみたい。セレス姫は魔石のネックレスのおかげで洗脳が解けているから、人間と魔族が手を取り合う世界を目指してくれている。……やっぱりリュウさんは龍くんの息子だから、洗脳はされないのかな?」
軽く説明をしているうちに、今さらながらそんな疑問を持った。
それにナーシャさんも洗脳されていたら、人間と魔族の共存って聞いただけで激怒しそうなのに、顔色を変えず聞いていただけ。
「そうなんじゃない? それにステーフさんもすべての魔族を敵対するのはおかしいって言っていた」
「だったら龍くんと深い関わりを持つ人にもその石を渡したのかな? セレス姫はお母さんにもらったんだって。あ、でもお母さんに贈ったのはパパと龍くんの連名で、三人の間に恋愛感情はなくは同志だったらしいよ」
こうなってくるとやっぱり洗脳を解く鍵は、ラストダンジョンのレアな魔石。
人数分の採取は無理として、加工して薬にはならないのかな? そのためには私も能力アップしないと、パパと龍くんだけ行くって言われたら困る。
それに洗脳している主犯も捜さないといけないし、やることは山積みだ。
「星ちゃん、私頑張るね。私は占い師だから、洗脳している何者を占えるかも知れない。そのためにはレベルアップ? をしなければいけないけど」
「確かに。なら期待しているね」
張り切る陽に、私は期待した。
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