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2章 私が生まれた世界“トゥーラン”
19.王女様と騎士
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【セイカ!!】
「え、チョピ?」
そんな中最初に入ってきたのは元気いっぱいのチョピで、一目散にやってきて私の懐にダイビング。
たった二時間しか離れていなかったのに、好き好きアピールがすごくて圧倒されてしまう。
【ボクはもう二度とセイカと離れないもん】
「チョピ、何かあった……あっ?」
しかも意味深なことを言って甘えて来るから何かあったのかと訳を聞こうとした時、龍くん似の騎士風の男性に連れられて凜とした二十代前半だろう村人風の女性と後からトゥーランでの服装に着替えクロスボウを装備した黒崎が部屋に入ってくる。
チョピ登場で一時的に穏やかに流れていた空気が、再び張り詰めた空気に変わった。思わずチョピを力いっぱい抱きしめる。
いよいよだ。
「皆様、初めまして。私の名前はセレス=ブラッケン ブラッケンの第一王女です」
「私はリュウ=タイラー セレス姫の護衛を勤めております。姫、こちらにおかけ下さい」
「ありがとう」
男性と女性はご丁寧に自ら名を名乗ってくれた。
男性は想像通りのリュウさんだったけれど、女性は意外にも本物のお姫様。
そしてリュウさんに椅子を引いてもらいセレス姫は優雅に席へと座る。まるで小説のワンシーンの見ているよう。
「星歌、そんなとこに突っ立ってないでお前も席に座れよ」
「え、あうん。あ……ありがとう」
太の声で現実へ戻り急いで席に戻ると、 太はぎこちなく椅子を引いてくれるから驚きながらも嬉し恥ずかしながら椅子に座る。
一体どう言う風の吹き回しなんだろうか?
「あなたがセイカ様ですね」
「はい」
「聖霊チョピと心を通わせてくれているようで安心しました。セイカ様には後ほど聖女の泉へと案内いたします。まず詳しい話しをする前に、セイカ様以外の人達の名前を教えてもらえないでしょうか?」
「これは失礼しました。俺の名前は広瀬星夜。星歌の父です。こちらが館 龍ノ介に佐藤 太。ここにはいませんが佐藤 陽という女性もいます。彼女と 太くんは双子です」
聖女の泉って何? ってなるけれどお姫様の言い分はごもっともで、私からみんなの紹介をしようとするとパパが席を立ち代表してみんなの紹介をする。
龍くんの紹介をした時、リュウさんは微かに眉を動かすだけだった。リュウさんも大人でセレス姫の騎士だから問題を起こすわけには行かないだろう。
ここで修羅場になったら私達も困る。
「ありがとうございます。まず初めにこれだけは伝えておきます。私とリュウはセイカ様達と同じで、人間と魔族が再び手を取り助け合える未来を目指しております。本来ならば聖女を探す役目を私達の同胞に任せたかったのですが、ダイチ以外の英雄候補はもう……」
王女様の微笑みは神々しく心地よい口調で自らの考えを教えてくれるも、辛い過去を思い出したのか笑みは消え辛そうに話し言葉を詰まらせる。それ以上語らなくても察しは付く。
お母さんのような考えを持つ人間がまだトゥーランにいることは分かって嬉しいんだけれど、黒崎の過去は聞けば聞くほど残酷でもうすべてを忘れて地球で普通の暮らして欲しいと思ってしまう。
聖女を護る戦士なんてやらなくていい。
【……ボク、クロサキを誤解していた。ごめんなさいって言えば許してくれるかな?】
「うん、きっと許してくれるよ」
あんなに黒崎を嫌っていたチョピでさえもセレス姫の言葉を真に受け止め聞くから、頷くとチョピは尻尾をだらんと引きずりながら黒崎の元に行く。
「チョピ?」
【クロサキごめんなさい。ボクもう嫌いって言わないから。イヤなら聖女を護る戦士にならなくても良いよ】
「ごめんなさい。もう嫌いって言わないし聖女を護る戦士にならなくても良いって」
ちゃんと心から謝るとチョピけれど黒崎にはニュアンスしか伝わらず、私が代弁することによってようやくすべてが伝わりチョピの頭をなぜる。
「チョピ、謝らなくても良い。確かに自分は魔族が大嫌いだ。だが良い魔族もいるかも知れないと思ったのです」
「ダイチがそう言うとはな。聖女達に何かしら影響を受けたのか?」
「そうですね。村瀬親子の言葉は嘘がないと自分なりに判断しました。何より村瀬父が殺されたと言われる英雄ならば、二十八年前の魔王の娘が犯したと言われている事件には何か裏があると言うことですよね? 自分は真相を知りたいのです」
なのに黒崎は首を横に振り、自分の固いだろう決意を告げる。
てっきり昨夜のことで私をますます嫌いになったから、関わりを持たないように距離を置いていると思ったのにそれは違ったらしい。
魔族が大嫌いであるのは変わらないけれど、トゥーランのためになるのならそれを優先する。
どことなくパパに似ていて……可哀想な人。
「ダイチ、ありがとう。やっぱりあなたは優しい子ね」
「うん。ダイチは寡黙で無愛想だから怖がられるけれど、本当は心優しく仲間思いの良い奴なんだよ。だから聖女様、ダイチをよろしくお願いするよ」
「…………」
「え、あはい。喜んで」
そんな黒崎をセレス姫は涙ぐみながら喜びリュウさんは軽い口調で絶賛し頼まれるから、私は反射的に頷き居酒屋店員のような返しをしてしまった。
ただ黒崎は耳まで真っ赤になり黙ったままなので、本当に私に交流をしてくれるのかは不明。
私は出来ることなら魔族と人間の関係を取っ払って友達になりたいけれど、それは黒崎にして見れば難しい問題。
念押しのように魔族は大嫌いだって断言しているぐらいだから、トゥーランのためになら魔族と協力してもプライベートでは関わりたくないかも知れない。
だから私からはぐいぐいとはいけないんだよね。
「え、チョピ?」
そんな中最初に入ってきたのは元気いっぱいのチョピで、一目散にやってきて私の懐にダイビング。
たった二時間しか離れていなかったのに、好き好きアピールがすごくて圧倒されてしまう。
【ボクはもう二度とセイカと離れないもん】
「チョピ、何かあった……あっ?」
しかも意味深なことを言って甘えて来るから何かあったのかと訳を聞こうとした時、龍くん似の騎士風の男性に連れられて凜とした二十代前半だろう村人風の女性と後からトゥーランでの服装に着替えクロスボウを装備した黒崎が部屋に入ってくる。
チョピ登場で一時的に穏やかに流れていた空気が、再び張り詰めた空気に変わった。思わずチョピを力いっぱい抱きしめる。
いよいよだ。
「皆様、初めまして。私の名前はセレス=ブラッケン ブラッケンの第一王女です」
「私はリュウ=タイラー セレス姫の護衛を勤めております。姫、こちらにおかけ下さい」
「ありがとう」
男性と女性はご丁寧に自ら名を名乗ってくれた。
男性は想像通りのリュウさんだったけれど、女性は意外にも本物のお姫様。
そしてリュウさんに椅子を引いてもらいセレス姫は優雅に席へと座る。まるで小説のワンシーンの見ているよう。
「星歌、そんなとこに突っ立ってないでお前も席に座れよ」
「え、あうん。あ……ありがとう」
太の声で現実へ戻り急いで席に戻ると、 太はぎこちなく椅子を引いてくれるから驚きながらも嬉し恥ずかしながら椅子に座る。
一体どう言う風の吹き回しなんだろうか?
「あなたがセイカ様ですね」
「はい」
「聖霊チョピと心を通わせてくれているようで安心しました。セイカ様には後ほど聖女の泉へと案内いたします。まず詳しい話しをする前に、セイカ様以外の人達の名前を教えてもらえないでしょうか?」
「これは失礼しました。俺の名前は広瀬星夜。星歌の父です。こちらが館 龍ノ介に佐藤 太。ここにはいませんが佐藤 陽という女性もいます。彼女と 太くんは双子です」
聖女の泉って何? ってなるけれどお姫様の言い分はごもっともで、私からみんなの紹介をしようとするとパパが席を立ち代表してみんなの紹介をする。
龍くんの紹介をした時、リュウさんは微かに眉を動かすだけだった。リュウさんも大人でセレス姫の騎士だから問題を起こすわけには行かないだろう。
ここで修羅場になったら私達も困る。
「ありがとうございます。まず初めにこれだけは伝えておきます。私とリュウはセイカ様達と同じで、人間と魔族が再び手を取り助け合える未来を目指しております。本来ならば聖女を探す役目を私達の同胞に任せたかったのですが、ダイチ以外の英雄候補はもう……」
王女様の微笑みは神々しく心地よい口調で自らの考えを教えてくれるも、辛い過去を思い出したのか笑みは消え辛そうに話し言葉を詰まらせる。それ以上語らなくても察しは付く。
お母さんのような考えを持つ人間がまだトゥーランにいることは分かって嬉しいんだけれど、黒崎の過去は聞けば聞くほど残酷でもうすべてを忘れて地球で普通の暮らして欲しいと思ってしまう。
聖女を護る戦士なんてやらなくていい。
【……ボク、クロサキを誤解していた。ごめんなさいって言えば許してくれるかな?】
「うん、きっと許してくれるよ」
あんなに黒崎を嫌っていたチョピでさえもセレス姫の言葉を真に受け止め聞くから、頷くとチョピは尻尾をだらんと引きずりながら黒崎の元に行く。
「チョピ?」
【クロサキごめんなさい。ボクもう嫌いって言わないから。イヤなら聖女を護る戦士にならなくても良いよ】
「ごめんなさい。もう嫌いって言わないし聖女を護る戦士にならなくても良いって」
ちゃんと心から謝るとチョピけれど黒崎にはニュアンスしか伝わらず、私が代弁することによってようやくすべてが伝わりチョピの頭をなぜる。
「チョピ、謝らなくても良い。確かに自分は魔族が大嫌いだ。だが良い魔族もいるかも知れないと思ったのです」
「ダイチがそう言うとはな。聖女達に何かしら影響を受けたのか?」
「そうですね。村瀬親子の言葉は嘘がないと自分なりに判断しました。何より村瀬父が殺されたと言われる英雄ならば、二十八年前の魔王の娘が犯したと言われている事件には何か裏があると言うことですよね? 自分は真相を知りたいのです」
なのに黒崎は首を横に振り、自分の固いだろう決意を告げる。
てっきり昨夜のことで私をますます嫌いになったから、関わりを持たないように距離を置いていると思ったのにそれは違ったらしい。
魔族が大嫌いであるのは変わらないけれど、トゥーランのためになるのならそれを優先する。
どことなくパパに似ていて……可哀想な人。
「ダイチ、ありがとう。やっぱりあなたは優しい子ね」
「うん。ダイチは寡黙で無愛想だから怖がられるけれど、本当は心優しく仲間思いの良い奴なんだよ。だから聖女様、ダイチをよろしくお願いするよ」
「…………」
「え、あはい。喜んで」
そんな黒崎をセレス姫は涙ぐみながら喜びリュウさんは軽い口調で絶賛し頼まれるから、私は反射的に頷き居酒屋店員のような返しをしてしまった。
ただ黒崎は耳まで真っ赤になり黙ったままなので、本当に私に交流をしてくれるのかは不明。
私は出来ることなら魔族と人間の関係を取っ払って友達になりたいけれど、それは黒崎にして見れば難しい問題。
念押しのように魔族は大嫌いだって断言しているぐらいだから、トゥーランのためになら魔族と協力してもプライベートでは関わりたくないかも知れない。
だから私からはぐいぐいとはいけないんだよね。
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