普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
35 / 157
1章 再び動き始めた運命の歯車

16.意識されたい

しおりを挟む
「星ちゃん、この服だけで着ると、ほら聖女っぽくない?」
「え、これだけで着るのは露出度が高くないかな?」

 クローゼットの中から水色のワンピースを取り出した陽は私に合わせ満足そうに言うけれど、正直も何もありえない姿に躊躇してしまう。
 だってそれはキャミワンピだから。普段はタンクトップを着ているのに、陽と来たら単体で進めてくるんだもん。

「そう? でもトゥーランは日中すごく暑いらしいよ」
「いや、そう言う問題じゃなくって。……だったら陽が着なよ。似合うと思うよ」
「私は別のを貸してもら……これがいい」

 察しがいいはずなのに素で惚けられそれならばと、押しつけようとすると今度はさらりとか交わす。そして自分はアジアンテイストのノースリーブシャツとロングスカートを選ぶ。
 私より断然に露出度が少ないけれど、陽にしてみれば結構攻めたコーディネート。
 やっぱり龍くんがいるからかな?

「そう言えば太ってどんな服装が好みなの?」
「だからこれなの。たまにはセクシーさをアピールしないとつよしはバカだから、いつまで経っても今のままで進展しないんだよ」
「……つよしってセクシー系が好きだったんだ……」

 今まで聞いたこともないつよしの好みが気になって聞いてみると、龍くんのような答えが返ってきて納得する。

 だからこんな攻めの服なんだ。
 確かに太は馬鹿だから回りくどいアピールをしても気づいてはくれないんだと思う。
 かと言って分かりやすいアピールをして玉砕をするのは勘弁したい。
 そうなるとこの服しかないのか。

「分かった。これにするね」
「星ちゃんなら絶対に似合うはず。ねぇチョピちゃん?」
【うん。それでセイカが聖女になったらボクすごく嬉しい!!】

 清水の舞台から飛び降りる気持ちで覚悟を決めれば、陽はニッコリ笑顔でチョピを巻き込みチョピは嬉しそうに私の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねる。


 昨夜私が聖女になることを決めた瞬間、約束通り大人しくしていたチョピが目を輝かせ騒ぎ出し、いきなり花火を打ち上げるからちょっと騒ぎとなった。

 パパは私の聖女になる理由を聞くなり満悦の笑顔を浮かばせ、私を軽々と抱き上げそのまま二人で仲良く花火鑑賞。恥ずかしかったけれど二人だけだったし、嬉しそうなパパを見てたら私まで嬉しくなって。
 そしたらそこに運悪く花火の音で家から出てきた皆さんに見られしまい、私の顔から火が出るぐらいの恥ずかし目に合い数秒意識がふっ飛んだ。
 太に指を指されて笑われ馬鹿にされなかったからまだ良かった物の、そうじゃなかったら太を殴ってあの場から逃走していたと思う。

 ……そう言えば最近太からファザコンだって馬鹿にされなくなった。
 それどころか陽と一緒に温かく見守られ……つよしも少しは大人に……私のこと子供だと思っているのかな?
 それはそれでイヤなんだけれど……



『みんなお待たせ」
『!!』
「星歌もついにここまで成長したんだな。後もう少し……」
「龍ノ介、ちょっとこっちに来い」
「なんだよ。お前は娘が大人の女性へと成長していく姿を温かく見守れないのか?」
「お前が言うと疚しいんだ。良いからさっさと来い」

 聖都に行く支度が出来たので陽とリビングに行くと、パパ達はもう支度を終えたのかソファーに座りくつろいでいた。
 私の姿を見るなりつよしと黒崎は頬をほんのり赤く染め、口をあんぐり開けそのまま制止する。ニヤニヤしながら意味深な台詞を言う龍くんを、ご機嫌斜めなパパが耳を持ち命令口調で言い捨てる。それでも龍くんはへらへらして反論するから、マジギレしたパパに殴られ二人は退場。

「やっぱり私着替えようかな?」
「え~勿体ないよ。じゃぁ私が何か羽織る物を持ってくるね」

 なんとなくその意味を察した私は着替える選択をしたのに、それでも陽に止められそう言いいリビングを飛び出していく。

 確かに羽織る物があればこの開いた胸元を隠せるけれど、そう言う問題だけなのかな?

「せ星歌、とっても似合う。……その服」
「ありがとう。でもこのワンピース今までにも着ているけど」
「え、そうなのか?」

 いきなり言われた心がこもっていない褒め言葉は、まったくと言って良いほど心に響くことなく一応お礼と一緒に不審であるとも言う。
 すると太は罰の悪い表情に変わり、無言で髪をぐじゃぐじゃとかく。

 今まで私が何を着ていても、つよしに興味を持ってもらえなかった。
 つまり私を女として意識されてない?
 ただの仲が良い友達? それとも妹……ってことはないよね?
 でも今にさら言われたってことは、陽の言う通りセクシー系しか興味ないから?
 龍くんの弟子だから仕方がないの?
 …………。
 …………っは?
 太も巨乳美女が好きなの?
 だからこの姿に反応しただけ?

つよしはこう言うのが好きなの?」
「え、イヤ別に……。……星歌もそう言う格好をするんだなって……驚いただけだ。……ももちろん良い意味で……」
「これは陽チョイス。この方が……聖女っぽい……って言うから」
「……阿呆らしい」

 とにかく気まずい空気が流れてしまい会話をしても、ぎくしゃく感が半端なくまともに顔も見られない。あまりのことに第三者の黒崎は深いため息を付き呆れて距離を取られた。

【セイカはツヨシのことが好きなの?】
「──!!」


 誰でも良いから、早く戻って来て下さい。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...