普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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始まりの章

5.親子関係

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 目が覚めるとそこは自分の部屋で、パパの笑顔が一番に飛び込んでくる。
 いつもと同じ私の知っているパパだ。

「星歌、おはよう」
「おはようパパ」

 私も自然に笑顔になり昨夜のことは夢だと錯覚しそうになるけれど、パパの額とほほに絆創膏が貼ってあって現実と受け止めるしかない。

 大好きなパパを私が傷つけてしまった。
 それに………。

「ねぇパパ、本当のことを教えて欲しいの」
「そうだよな。ここまで巻き込まれた以上、もう隠しておけないよな」

 体を起こしパパの目をしっかり見つめながら真剣に問うと、パパも話すつもりだったのか頷き私の隣に座り肩を抱き寄せる。

 私とパパの親子関係がここで終わってしまう。
 血縁関係がなくてもパパは育ての親で私の父親であることには変わりがないけれど、これからは命に関わる問題でそこまでしてもらう資格は私にはあるのだろうか?
 ここまで育ててもらえただけでもありがたいのに、そこまで迷惑を掛けられる?
  蛙男の親分? から私を護ってくれる?
 ……ん?
 血縁関係があったら子供のためなら命を掛けるのは当然だと思っている?
 私って実は最低の人間なんじゃ? 

「……私は魔族だったんだね?」
「そうだよ。母さんは魔王の娘だった。お前は父さんと母さんの自慢の娘だ」
「……は?」
「え?」

 知っていると言え直接聞くのは怖くて遠回しに聞いたはずが、予想外過ぎる嘘なき答えを聞かされ間抜けな声を出してしまう。
 パパも私がそんな反応を見せるとは思っていなかったのか、拍子抜けをしつつ戸惑い口を塞ぐ。

 お母さんが魔王の娘だから、私は魔王の孫娘。
 だから私は魔王の器として、蛙男に命を狙われた。
 それはよく分かったけれど、お母さんとパパの自慢の娘になるの?
 地球人のパパとトゥーランの魔族であるお母さんがどうやって出会ったの?

「私は本当にパパの娘なの?」
「当たり前じゃないか? 俺と母さんが愛し合ってお前が生まれた」

 ちょっと理解不能で疑いながらも確認すると、パパは当然とばかりに恥ずかしがる事なく教えギュッと抱きしめる。

「パパはどこでお母さんと出会ったの?」
「トゥーラン。父さん若い頃英雄候補として、トゥーランに召喚されたんだ」

 どうしても二人の出会いが気になり率直に尋ねると、ラノベのような展開を話される。昨日までの私なら信じられなかったけれど、蛙男に魔法そして異世界と来たらもう信じるしかなかった。
 だからパパはあんなに強かったんだね。
 不安だった気持ちがサッと消え、明るい気持ちに変わる。

「……パパって意外と手が早いんだね? 十四歳でお母さんとそう言う関係になったんでしょ?」
「!? バ馬鹿、と年頃の娘が何父親に聞いてんだ?」

 本当なら感動のシーンのはずが素朴な疑問を聞くことによって空気は台無し。
 これにはパパは真っ赤に顔を染め激しく動揺しつつ声を裏返し怒られる。
 確かにこんなこと冷静だったら、父親に聞くべきことではない。

「それはそうだけど……」
「この世界では十五歳の時の子になってるが、あっちでは二十一歳の時の子」

 愚かな娘にも分かる説明をしてもらいようやく納得した瞬間、変に誤解してショックを受けた自分が情けなくなる。

 蛙男はただ私が魔王復活の器で魔族と言っただけで、パパの子じゃないって一言も言っていない。
 なのに私が勝手に設定を作って誤解をした。
 最悪。
 だけど、良かった。
 私がパパの本当の娘で。 

「そう言うことだったんだ」
「星歌。お前は父さんにとって命よりも大切な宝物だ」

 これ以上もない親の愛情をたっぷりもらい、今は恥ずかしいよりも嬉しく思う私がいる。
 
 こんなに親から愛されて、私は幸せ者だ。
  この幸せをなくしたくないから、昨夜のことをすべて話して護ってもらう。
 本当なら私一人でなんとかするべき事なのだろうけれど、蛙男にさえ何も出来なかった人が一人で解決できるはずがない。
 殺されて、魔王復活の器になるだけ。
 そうしたらパパ悲しむよね?

「パパ、これから昨夜のことを話しても良い?」
「だったらリビングで話してくれないか? 龍ノ介と陽ちゃんが朝食の支度をしている」
「そうだった。それで陽は、どこも怪我していないよね?」
「ああ、大丈夫だよ。昨夜は龍ノ介と手分けをして探してたから、あの後すぐに合流し我が家に帰ってきたんだ」
「それなら良かった。龍くんは全部知っているんだね」
「龍ノ介は魔王を倒した英雄だからな」
「納得です」

 陽の無事なのを今更知った薄情な私であり、龍くんのことは別に驚きもしなかった。
 むしろそう言うことだからパパと龍くんは友情より固い絆で結ばれているんだなって納得がいく。
 



「星ちゃん、おはよう。  もう大丈夫なの?」
「星夜、星歌、おはよう。もう少しで朝食の準備が出来るから席についとけ」

 リビングに二人仲良く朝食の準備をしている姿はまるで新婚さん。
 我が家なのにちっとも違和感がなく見えて、逆に私とパパがお邪魔虫に見えてくる。
 だけれどテーブルには四人前の朝食。
 メニューはオムライスとコーンポタージュスープと言った私の好物。

「二人ともおはよう。陽こそもう平気なの?」
「平気も何も私はただ星ちゃんの血で気を失っただけだからね」
「蛙男は例の残虐事件の犯人で狙いは私で、他にも私を狙う犯人がいるんだ。だから巻き込んでごめんなさい」

 私の問い返しに苦笑しながら答える陽に忘れかけていた罪悪感が目を覚ます。
 謝ってすむ問題ではないと思いつつ、とにかく言える範囲で説明して頭を深く下げ謝罪。
 いくら助かったとしても、私のせいで怖い思いをさせてしまったのは事実。
 これからも私と友達でいたら、また陽を危険な目に遭わせてしまう可能性があるんだよね。
 だからもし陽に拒否られて離れて行ったとしても、自分のことさえ護れない私には引き留められない。
 しかし私はこれからも……。

「星歌が悪いわけじゃないよ。陽ちゃん、こうなった以上、星歌と一緒に話をちゃんと聞いて欲しい。もちろん他言無用でね」
「龍ノ介さんに大まかな事情を聞いて驚きましたが、その方が納得は出来ました。覚悟も決まりましたが、太も巻き込んでいいですか?」

 私が覚悟を決めたように陽は陽の覚悟を決めていて、私よりも腹をくくっているようでその迷いのない姿は美しかった。
 こうなった陽は誰がなんと言っても考えを絶対曲げる事なく、パパも龍くんも頑固さは知っているため同時にため息を吐く。
 本当ならばそれでも関係がない太には秘密にするのが正解なのだろうけれど、秘密にすることによって二人の絆が崩壊する危険性がある。
 双子は一心同体と言うから難しい。

「どうする?」
「陽ちゃんの立場上そうするしかないだろう?」
「そうなるよな。まぁ太なら良いか?」 

 やれやれと言う感じで、あっさりと決まってしまった。

 いいのか? それで?
  しかも太ならって、どう言う意味?

「ありがとうございます。太ならもうすぐ」


 ピンポーン


『!!』

 狙ったかのようにベストタイミングでインターフォンの音が鳴り響いたため、私達は驚き一斉に陽の顔を見ればしてやったりの笑顔だった。
 すでに呼んでいたのは明白とは言え、それでもタイミングが良すぎる。

「まさか双子だからテレパシーが使えるの?」
「残念ながらそう言う不思議な能力は一切ないけれど、タイミングは結構合うんだよね?」
「そう言うもんなんだな」
「あ、太くん。今開けるからちょっと待ってて」

 パパはそう言って玄関に向かい私と陽も後をついて行く。
 ここまでくれば超能力の一つや二つあった方が面白かったのに、流石にそこまではないもののやっぱり不思議な面もあった。




「陽、一体何があった? 蛙男ってなんなんだ?」

 ドアを開けるとすぐに血相を変えた太が入ってきて、陽の肩を持ち混乱しているのか少し怒った口調で意味を問う。

「……陽、太にどう話したの?」
「え、普通に蛙男に襲われて私は気絶してたから分からないけれど、星ちゃんのお父さんと龍ノ介さんが助けに来てくれたって。ちなみに両親には星ちゃんちに泊まるっておじさんが連絡してくれたみたい」

 その言い方に違和感を抱きなんとなく嫌な予感がしつつ私も小声で聞くと、返って来た答えは事実でもそんなの中二病じゃなければわからない物だった。
 流石の双子でもその説明だけでは無理。

「太くん、詳しくは中で話すから落ち着いて」
「大体師匠なら分かるけど、星歌のおっさんだったら速攻やられてジ・エンドだろう?」
「アハハ……」
「失礼ね。実はパパってすごく強くて、魔法を使える蛙男を瞬殺したんだからね」

 自分も最初はそう思った癖に他人に言われると無性に腹が立ち、苦笑するだけのパパの前に立ちはだかりけんか腰で言い返す。

 今までは馬鹿にされても事実だと思っていたから、悔しくても何も言い返せず無視をして完結していた。
 ファザコンだと思われたくなかったから、思いたくもなかったから
 一生懸命普通の女子高校生と父親の関係を保とうとして、お父さんと呼び方を変えてその時パパは、一瞬悲しそうな表情を見せられそれが内心ショックだった。
 昔から私は他人の目ばかり気にし過ぎていて、本当に傷つけたくない人がいるなんて気づかないふりをしていたんだ。

「なんだよ星歌、お前やっぱりファザコンじゃねぇか?」
「だから何? 私はパパが世界で一番大好きな鬼ファザコンだもん」

 開き直って言い切る私の気迫に負け太は後退。

「おじさん、良かったですね? 太、あなただってシスコンじゃない? 私だってブラコンよ」

パパは顔を真っ赤に染め下を向き、何もかもを知っている暖かいまなざしで見つめている陽は綺麗に話をまとめ終わらせる。
 
 この場にいる全員が誰かに依存しきっている。

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