1 / 157
始まりの章
1.事件
しおりを挟む
平凡でも平和な日常が続いていくと当たり前のように思っていたのに、事件はある日突然やってくる。
終業式後幼馴染みの陽とショッピングとカラオケを満喫していたらすっかり辺りは暗くなってしまった。
急いで帰宅していると途中で、私達は背後から嫌な得体の知らない気配に気づく。
「これってひょっとしなくてもヤバいよね?」
「うん。家までまだ距離はあるけれどどうしよう。大通りに向かう?」
「そうだね。お父……龍くんに電話する」
到底私達に対処出来るはずもなく大通りに向かいつつ応援を呼ぶことに。お父さんに助けを求めようとするも明らかに力不足なため、剣道有段者の龍くんに助けを求めることにした。
龍くんとは、お父さんの高校からの親友で私にとってはお兄さん的存在。今は高校の担任でもある。
もし危ない人だったらお父さんじゃ私達を護ってはくれるとは思うけれど、三人仲良くあっけなく殺されるだけ。だったら陽の双子の兄の太の方がまだ頼りになる。
陽の手を取り歩く速度を速めながら、龍くんに電話をかけた。
―星歌、どうかしたか?
「龍くん、今陽と一緒なんだけど変な人に付けられている気がするの」
―!! 今どこにいる?
「オリンピック通りで駅へ向かっている。GPSアプリを起動しておく」
―了解。星夜と一緒にすぐ向かうから。
運良く電話繋がり私の言葉を信じてくれて、いつもとは違う低い声でそう言い電話は切れる。
お父さんと一緒にって事は、多分いつものように我が家にいたんだろう。週三で我が家で夕食をしている。
でもどうして戦力外のお父さんを連れてくるんだろう?
単なる運転手動員?
「すぐ来てくれるって」
「良かった。でも勘違いであって欲しい」
「そうだよね」
怖いけれどまだ気がする程度で陽もいるから結構冷静でいられたのに、大通りに出た瞬間私達はその景色に唖然となり立ち尽くす。
空気も今までとは違ってピリピリする。
「何これ、誰もいない?」
「なんかおかしいよ」
人も交通量も多い大通りのはずなのに、今は人気がまるでない。不気味なほど静かでまるで知らない場所に、迷い込んでしまったような錯覚さえ感じてしまう。
だけど街灯や建物の明かりはついたままで、背後から感じている不気味な気配はどんどん近づいてくる。
「ととにかく逃げて龍くんと合流しよう」
「合流できるのかな? だって誰もいないんだよ」
「ネガティブ発言禁止。絶対になんとかなる……はず」
恐怖に怯え泣く一歩手前の陽に、ポジティブ思考で行こうとする私の意見を全否定されてしまう。ここで私までネガティブになったら終わるから、自分に言い聞かせながらおまじないの言葉を口にする。
絶対、なんとかなる。
昔、誰かがよく言っていた台詞だった気がする。
こんな漫画のようなシチュエーションで死んでたまる……ひょっとしてこれは今流行の転生系ラノベの序章なのだろうか?
私達は得体の知れない人に殺されて、次目覚めた場所は剣と魔法の異世界でチートスキルを持っている。
もしくは乙女ゲームの悪役令嬢になっていて死亡フラグを必死に回避する人生。
そういう来世も結構面白い……。
……………。
ううん、やっぱりどっちも私はごめんだ。
「陽、私はこの人生が大好きなの。だからこんなところで絶対に死ぬ訳にはいかない。陽だってそうでしょ? やりたいことまだまだあるよね?」
「……うん、そうだね。私も死にたくない」
今思った固い決意を強く告げると、陽は分かってくれたのか少し恐怖が消える。
そして私の手を強く握り返し、嫌な得体の知れない気配から再び逃げだす。
なんで私達はこんな目にあってるんだろうか?
私の人生さっきまで平凡だったはず。
終業式後幼馴染みの陽とショッピングとカラオケを満喫していたらすっかり辺りは暗くなってしまった。
急いで帰宅していると途中で、私達は背後から嫌な得体の知らない気配に気づく。
「これってひょっとしなくてもヤバいよね?」
「うん。家までまだ距離はあるけれどどうしよう。大通りに向かう?」
「そうだね。お父……龍くんに電話する」
到底私達に対処出来るはずもなく大通りに向かいつつ応援を呼ぶことに。お父さんに助けを求めようとするも明らかに力不足なため、剣道有段者の龍くんに助けを求めることにした。
龍くんとは、お父さんの高校からの親友で私にとってはお兄さん的存在。今は高校の担任でもある。
もし危ない人だったらお父さんじゃ私達を護ってはくれるとは思うけれど、三人仲良くあっけなく殺されるだけ。だったら陽の双子の兄の太の方がまだ頼りになる。
陽の手を取り歩く速度を速めながら、龍くんに電話をかけた。
―星歌、どうかしたか?
「龍くん、今陽と一緒なんだけど変な人に付けられている気がするの」
―!! 今どこにいる?
「オリンピック通りで駅へ向かっている。GPSアプリを起動しておく」
―了解。星夜と一緒にすぐ向かうから。
運良く電話繋がり私の言葉を信じてくれて、いつもとは違う低い声でそう言い電話は切れる。
お父さんと一緒にって事は、多分いつものように我が家にいたんだろう。週三で我が家で夕食をしている。
でもどうして戦力外のお父さんを連れてくるんだろう?
単なる運転手動員?
「すぐ来てくれるって」
「良かった。でも勘違いであって欲しい」
「そうだよね」
怖いけれどまだ気がする程度で陽もいるから結構冷静でいられたのに、大通りに出た瞬間私達はその景色に唖然となり立ち尽くす。
空気も今までとは違ってピリピリする。
「何これ、誰もいない?」
「なんかおかしいよ」
人も交通量も多い大通りのはずなのに、今は人気がまるでない。不気味なほど静かでまるで知らない場所に、迷い込んでしまったような錯覚さえ感じてしまう。
だけど街灯や建物の明かりはついたままで、背後から感じている不気味な気配はどんどん近づいてくる。
「ととにかく逃げて龍くんと合流しよう」
「合流できるのかな? だって誰もいないんだよ」
「ネガティブ発言禁止。絶対になんとかなる……はず」
恐怖に怯え泣く一歩手前の陽に、ポジティブ思考で行こうとする私の意見を全否定されてしまう。ここで私までネガティブになったら終わるから、自分に言い聞かせながらおまじないの言葉を口にする。
絶対、なんとかなる。
昔、誰かがよく言っていた台詞だった気がする。
こんな漫画のようなシチュエーションで死んでたまる……ひょっとしてこれは今流行の転生系ラノベの序章なのだろうか?
私達は得体の知れない人に殺されて、次目覚めた場所は剣と魔法の異世界でチートスキルを持っている。
もしくは乙女ゲームの悪役令嬢になっていて死亡フラグを必死に回避する人生。
そういう来世も結構面白い……。
……………。
ううん、やっぱりどっちも私はごめんだ。
「陽、私はこの人生が大好きなの。だからこんなところで絶対に死ぬ訳にはいかない。陽だってそうでしょ? やりたいことまだまだあるよね?」
「……うん、そうだね。私も死にたくない」
今思った固い決意を強く告げると、陽は分かってくれたのか少し恐怖が消える。
そして私の手を強く握り返し、嫌な得体の知れない気配から再び逃げだす。
なんで私達はこんな目にあってるんだろうか?
私の人生さっきまで平凡だったはず。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです


〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる