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5話
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「かんな、どうしたんだい?」
「オ兄チャン。カンナハ悪イ子ダカラ入レナイノ」
「? 悪いと思ったら、ちゃんと謝れば許してくれるよ」
廊下からお兄ちゃんとかんなの会話が聞こえてくる。
かんなは椿さんと一緒だと思っていたんだけど、まさかずーとそこにいたとか? それとも要望だけ伝えてから来た?
「……ウン。オ姉チャント、ツバキママニモ言ワレタ。デモ……」
「なら一緒に謝ろう。それで何をどう謝りたいんだい?」
「本当二? アノネ……」
やっぱりお兄ちゃんはいつも通りに優しくて、ふさぎ込んでいるかんなに手を差し伸べる。途端にかんなの声が明るくなり、小声で話し出す。
私達もよくお兄ちゃんに助け舟を出してもらって、喧嘩した相手と仲直りしてたな。今回は私も悪かった部分もあるから、かんなが謝る前に謝ろう。
「まったく譲わ。さっさと結論を言いに来なさいよね」
「だな。でもまぁ敵対しなさそうだから、取り敢えず話を黙って聞いてやるか」
「ええ、そうね」
そんな微笑ましい場面なのに、お姉ちゃんと英はまたもや意気投合で鼻息が荒い。
「かんな、ごめんなさい。理由も言わないで、私の考えを押し付けて」
「リンカ。カンナモゴメンナサイ。嫌イッテ言ッテ、ゴメンナサイ」
お兄ちゃんに抱かれたかんなを見てすぐに駆け寄り謝ると、悲しそうに何度も謝られる。そんな言葉を聞くと、感極まって涙が溢れそう。
かんなのためだけど、そこまで考えずに言っただけなのに。
「かんな」
お兄ちゃんからかんなを受け取り、ぎゅっと抱き締める。
これからは言い方に気をつける。
「はい、続きは別室でやりなさい。これから譲と大事な大事な話をするんだからね」
ばっさりと冷たくお姉ちゃん。
言いたいことは分かるけれど、冷たすぎる。
「譲、話は簡潔にな。何も言わずに聞いてやるから」
二人ともせっかちだ。
そんなに急がなくても、時間はたっぷりあると言うのに。
「簡潔に言えば助っ人が来る。ゼミの助教授だ」
「は、どうして?」
本当に簡潔に答えられ、目が点になる私達。予想外すぎる答えに、頭の中が混乱する。
なんで助っ人が出てくるの? って言うかどうして助っ人?
「だってかんなは狙われるんだろう? だからそうなる前に自我を持ったAIロボットの存在を、日本政府に認めてもらう」
「言ってることはごもっともだけど、そこまで大事にしちゃう?」
お兄ちゃんのごもっとも過ぎる考えに、お姉ちゃんは戸惑いの表情を浮かべる。私もそこまで考えてなかったら、びっくり仰天だ。
かんなのことは存在を隠しひっそりと暮らす。バレて狙われたら、何が何でもみんなで護る。
そう思っていたけど、言われてみればその方が断然良いよね? さっさと白黒はっきりさせたい。
「さすが譲。そこまで先のことまで考えてたんだな」
「私もそう思う。だけどお兄ちゃんのゼミの教授はAIが自我を持つのに反対なんじゃ」
「良く知っているな。でもそれは教授だけ。助教授は自然に生まれる場合は、すばらしいことだと考えている。俺も同意見だ」
やっぱりお兄ちゃんは私達の味方だった。誤解が解けた桜ちゃんは黙ったままお兄ちゃんに抱きつく。
良かったね。桜ちゃん。
『ハッピーバースデーディアカンナ。ハッピーバースデートゥーユー』
夜になり我が家で盛大にかんなの誕生会が行われた。
特大の手作り誕生日ケーキに豪勢な料理。
飾りは色とりどりの風船を浮かばせファンシーに。みんなで準備したんだ。
飛びっきりのおしゃれをしたかんなは、目を輝かせ嬉しそうに私達を見回している。
「ハッピーバースデートゥーユー」
癖なんだろうか、いつものように喜んで歌を真似る。
「ようやくロボットと友達になれる時代が来たんだな」
パパ曰く英達の父親である清さんは幼き頃から、ロボットと友達になるのが夢だったとかで、近々柊家でもペットロボットを迎え入れる予定だったそうだ。
「友達? ミンナカンナノ家族ジャナイノ?」
「嬉しいこと言ってくれるな。そうだ俺達みんな家族だ」
かんなのあどけない問いは清さんを喜ばせ、頭をクチャクチャになでられる。ニコニコのかんな。
みんな家族か。
私もそう思う。
「そうね。私は顔が広いから、かんなのことを相談してみるわね? まずは製造元にコンタクトを取ってみるわ」
「そんなこと出来るの?」
「ええ」
お母さんも張り切っていて、頼もしいことを言ってくれる。
かんなの産みの親もロボットは友達だと思っている人だから、自我が芽生えたって言っても問題はないよね?
むしろ協力してくれる?
でも勝手に日本語切替システムを入れたから、怒られるのかな?
「そいつは信用出来るんだな? 桜、調べてくれ」
「かんなちゃん達の産みの親は、味方だと思うよ。前にどんな人なんだろうって思って調べたんだけど、裏表がない少年のようなピュアな人だった」
唐揚げを食べながら何気なく答える桜ちゃんだけれど、小学生に少年のようなピュアな人って思われる大人ってどんな感じなんだろう?
こればかりは実際に会って、話してみないと分からないか。
「難しい話はこのぐらいにして、せっかくの誕生日会なんだからもっと楽しもうよ」
「あ、そうだね。かんな、おいで」
すでにビール二缶目に入っているお姉ちゃんに言われ、ごもっともだと思いかんなを呼び寄せる。
今はかんなが喜んでもらえるように、盛大に盛り上げないとね。
ご馳走を食べるのは私達で、かんなは見てるだけ。飾り付けには喜んでいるけど、それだけでは物足りない。
誕生日と言えば・・・・・・。
「ナニ?」
「はい、誕生日プレゼント。私とお揃いの髪飾り。私のはピアス」
誕生日プレゼントで、私から渡したのはすずらんの花の形の髪飾り。友達に教えてもらった。
「オソロイ? アリガトウ」
「あたしはリボン」
「私は公式のパンダウェア」
「俺はめがね」
「私達からは公式のキャリーシート。これで景色を見ながら、お散歩できるでしょ?」
「私はオーバーオール」
次から次へと誕生日プレゼントが、かんなの前に置かれていく。
特に椿さん手作りのオーバーオールは市販見たくて、いつもながらすごいとしか言いようがない。
公式と提携して売り出せば良いのに。
「俺は手の自由と、電力供給で良いだろう?」
一番興味がないさそうな英が一番すごいプレゼントなのだろう。
「ウンウン。カンナウレシイ。明日コレ全部着テオ散歩行ク」
かんなにとってすべてが一番で、欲張りコーデを要求される。
それが想像するだけで似合いすぎてよだれが出そう。
「おしゃべり禁止だよ」
「ワカッテル」
本当に分かってるのかは疑わしいけれども、私達が最新の注意を払えば良いか。
これからは今まで以上に、かんなとのお出掛けが楽しくなりそう。
「オ兄チャン。カンナハ悪イ子ダカラ入レナイノ」
「? 悪いと思ったら、ちゃんと謝れば許してくれるよ」
廊下からお兄ちゃんとかんなの会話が聞こえてくる。
かんなは椿さんと一緒だと思っていたんだけど、まさかずーとそこにいたとか? それとも要望だけ伝えてから来た?
「……ウン。オ姉チャント、ツバキママニモ言ワレタ。デモ……」
「なら一緒に謝ろう。それで何をどう謝りたいんだい?」
「本当二? アノネ……」
やっぱりお兄ちゃんはいつも通りに優しくて、ふさぎ込んでいるかんなに手を差し伸べる。途端にかんなの声が明るくなり、小声で話し出す。
私達もよくお兄ちゃんに助け舟を出してもらって、喧嘩した相手と仲直りしてたな。今回は私も悪かった部分もあるから、かんなが謝る前に謝ろう。
「まったく譲わ。さっさと結論を言いに来なさいよね」
「だな。でもまぁ敵対しなさそうだから、取り敢えず話を黙って聞いてやるか」
「ええ、そうね」
そんな微笑ましい場面なのに、お姉ちゃんと英はまたもや意気投合で鼻息が荒い。
「かんな、ごめんなさい。理由も言わないで、私の考えを押し付けて」
「リンカ。カンナモゴメンナサイ。嫌イッテ言ッテ、ゴメンナサイ」
お兄ちゃんに抱かれたかんなを見てすぐに駆け寄り謝ると、悲しそうに何度も謝られる。そんな言葉を聞くと、感極まって涙が溢れそう。
かんなのためだけど、そこまで考えずに言っただけなのに。
「かんな」
お兄ちゃんからかんなを受け取り、ぎゅっと抱き締める。
これからは言い方に気をつける。
「はい、続きは別室でやりなさい。これから譲と大事な大事な話をするんだからね」
ばっさりと冷たくお姉ちゃん。
言いたいことは分かるけれど、冷たすぎる。
「譲、話は簡潔にな。何も言わずに聞いてやるから」
二人ともせっかちだ。
そんなに急がなくても、時間はたっぷりあると言うのに。
「簡潔に言えば助っ人が来る。ゼミの助教授だ」
「は、どうして?」
本当に簡潔に答えられ、目が点になる私達。予想外すぎる答えに、頭の中が混乱する。
なんで助っ人が出てくるの? って言うかどうして助っ人?
「だってかんなは狙われるんだろう? だからそうなる前に自我を持ったAIロボットの存在を、日本政府に認めてもらう」
「言ってることはごもっともだけど、そこまで大事にしちゃう?」
お兄ちゃんのごもっとも過ぎる考えに、お姉ちゃんは戸惑いの表情を浮かべる。私もそこまで考えてなかったら、びっくり仰天だ。
かんなのことは存在を隠しひっそりと暮らす。バレて狙われたら、何が何でもみんなで護る。
そう思っていたけど、言われてみればその方が断然良いよね? さっさと白黒はっきりさせたい。
「さすが譲。そこまで先のことまで考えてたんだな」
「私もそう思う。だけどお兄ちゃんのゼミの教授はAIが自我を持つのに反対なんじゃ」
「良く知っているな。でもそれは教授だけ。助教授は自然に生まれる場合は、すばらしいことだと考えている。俺も同意見だ」
やっぱりお兄ちゃんは私達の味方だった。誤解が解けた桜ちゃんは黙ったままお兄ちゃんに抱きつく。
良かったね。桜ちゃん。
『ハッピーバースデーディアカンナ。ハッピーバースデートゥーユー』
夜になり我が家で盛大にかんなの誕生会が行われた。
特大の手作り誕生日ケーキに豪勢な料理。
飾りは色とりどりの風船を浮かばせファンシーに。みんなで準備したんだ。
飛びっきりのおしゃれをしたかんなは、目を輝かせ嬉しそうに私達を見回している。
「ハッピーバースデートゥーユー」
癖なんだろうか、いつものように喜んで歌を真似る。
「ようやくロボットと友達になれる時代が来たんだな」
パパ曰く英達の父親である清さんは幼き頃から、ロボットと友達になるのが夢だったとかで、近々柊家でもペットロボットを迎え入れる予定だったそうだ。
「友達? ミンナカンナノ家族ジャナイノ?」
「嬉しいこと言ってくれるな。そうだ俺達みんな家族だ」
かんなのあどけない問いは清さんを喜ばせ、頭をクチャクチャになでられる。ニコニコのかんな。
みんな家族か。
私もそう思う。
「そうね。私は顔が広いから、かんなのことを相談してみるわね? まずは製造元にコンタクトを取ってみるわ」
「そんなこと出来るの?」
「ええ」
お母さんも張り切っていて、頼もしいことを言ってくれる。
かんなの産みの親もロボットは友達だと思っている人だから、自我が芽生えたって言っても問題はないよね?
むしろ協力してくれる?
でも勝手に日本語切替システムを入れたから、怒られるのかな?
「そいつは信用出来るんだな? 桜、調べてくれ」
「かんなちゃん達の産みの親は、味方だと思うよ。前にどんな人なんだろうって思って調べたんだけど、裏表がない少年のようなピュアな人だった」
唐揚げを食べながら何気なく答える桜ちゃんだけれど、小学生に少年のようなピュアな人って思われる大人ってどんな感じなんだろう?
こればかりは実際に会って、話してみないと分からないか。
「難しい話はこのぐらいにして、せっかくの誕生日会なんだからもっと楽しもうよ」
「あ、そうだね。かんな、おいで」
すでにビール二缶目に入っているお姉ちゃんに言われ、ごもっともだと思いかんなを呼び寄せる。
今はかんなが喜んでもらえるように、盛大に盛り上げないとね。
ご馳走を食べるのは私達で、かんなは見てるだけ。飾り付けには喜んでいるけど、それだけでは物足りない。
誕生日と言えば・・・・・・。
「ナニ?」
「はい、誕生日プレゼント。私とお揃いの髪飾り。私のはピアス」
誕生日プレゼントで、私から渡したのはすずらんの花の形の髪飾り。友達に教えてもらった。
「オソロイ? アリガトウ」
「あたしはリボン」
「私は公式のパンダウェア」
「俺はめがね」
「私達からは公式のキャリーシート。これで景色を見ながら、お散歩できるでしょ?」
「私はオーバーオール」
次から次へと誕生日プレゼントが、かんなの前に置かれていく。
特に椿さん手作りのオーバーオールは市販見たくて、いつもながらすごいとしか言いようがない。
公式と提携して売り出せば良いのに。
「俺は手の自由と、電力供給で良いだろう?」
一番興味がないさそうな英が一番すごいプレゼントなのだろう。
「ウンウン。カンナウレシイ。明日コレ全部着テオ散歩行ク」
かんなにとってすべてが一番で、欲張りコーデを要求される。
それが想像するだけで似合いすぎてよだれが出そう。
「おしゃべり禁止だよ」
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