55 / 56
55
しおりを挟む
55
「私がシャーロットの胸に手を当て、魂を抜き出せばいいんだね?」
「うん。グレーテルがそう言ってた。私が花音のもう片方の手を握ればうまい具合に取り除けるはず」
シャーロットを前にして、花音と最終打ち合わせ。
グレーテルの話しによれば、私が花音の手を強く握りって指示をすればいいとか。
今はそれを信じるしかなく、言われた通り花音の手を強く握りる
花音は右手をシャーロット胸に当て、目で合図しあい行動開始。
温かく優しい気がシャーロットを包み込んだと思えば、邪悪な靄が漂い出す。
正反対の二つの勢力は激しく衝突。火花を散らす勢いだ。
「朋子、見つけた。右と左どっち?」
「あ、左」
必死声の花音の唐突な問いに、何も考えずに即答してしまう。
いくらスキルがあっても、こんな呆気ないモノで良かった?
疑問に思うほどの一瞬の出来事で、自分の判断なのに自信が持てない。
これで間違っていたら、取り返しのつかないこと。
「了解。こっちね」
疑うことなく花音はそう言うと、何やらモヤっとしたものを掴んでいた。
「これが魂。暴れていて掴んでるのが大変」
「封印できそう?」
モヤっとしてる活きのいいのか花音の手の中で暴れる魂に、私も逃げ出さないようそっと手を添える。
必死に抗っていて本来なら理由を聞くのが聖女なんだろうけれど、そんな時間を与えてしまったらむこうの思うつぼ。卑怯と言われても構わない。
「任せてよ」
と花音は力強く言って封印をしようとした時、魂はうまい具合に手からすり抜ける。
「エミリーちゃんのかたき」
べち
「え~!!」
逃げようとする魂は、ヌクに叩き落とされ恨み辛みで踏まれ終了。
その場の全員が予想外てあっけない結末が信じられず、裏返った声を綺麗にハモらせる。
「いやいや、これはいくらなんでもなしだろう?」
「魂って浄化しなくても、虫を潰すように倒せるんだね」
「お終わりよければすべてよしって言うし、こう言うのもありだろう?」
「そうなのか? まぁ案外これが現実らしいのかもな」
みんなはこの理不尽な状況を、無理矢理納得させようとしている。
そうだ。
リーダーの言う通り、終わりよければすべてよし。にしとこう。
ヌクは私のために退治してくれたんだから、目一杯誉めないとね。
「ヌク、ありがとう。すごく助かった」
「えへん。ボク強いでしょ?」
ヌクを抱き上げ感謝すれば、ヌクは誇らしげに胸を張る。
そう言うことじゃないんだけれど。
「エミリー、大丈夫なのか?」
『お嬢様、どうしましたか?』
血相を変えたレオと双子はドアをケリ破る勢いで入ってきて一目散に私の元へ駆け寄る。私達の声に何事かと思ったんだね。
「心配してくれてありがとう。なんでもないわ。ちょっと想定外の終わり方でしたから」
「逃げ出そうとしたから、ボクがトドメを刺したの」
「さすが、ヌクだな」
「ヌクは式神の鏡だね」
「お嬢様を護ってくれてありがとう」
私達とは違いヌクの行いは勇姿と捉えられ、三人から絶賛誉められ鼻高々。
「どうやら予定どおり出港が出来そうだな。彼女はどうする?」
「我が元居た場所に戻しておく」
「ちょっと待ってください。本当に大丈夫だか確認します。そしたらヘンゼルお願いね」
フランダー教授の脳内はすでに決行するらしく、教師だしからぬ台詞。ヘンゼルはまぁまともではあるけれど、確認するのを忘れている。
そう言ったものの前世が残っていたらすごく困ります。
不安いっぱいのまま、まずはシャーロットの肩を揺らし声を掛けてみる。
「シャーロット、大丈夫?」
「──え? エミリー様にレオ様? ここはどこですか?」
すぐに目を覚ましキョトンと辺りを見回すシャーロット。私とレオを様付けするのもそうだけど、それ以外でも様子がおかしい。
優しくほんわかな雰囲気をかもし出しているのは、本来のシャーロットに戻ったからでそこは安心した。
「ひょっとして、記憶がないのか?」
「すみません。私が覚えているのは、入学初日クラスの掲示板──」
「まさか記憶が飛んでいる? しかも入学初日って……プロローグ?」
「でもあれ、今の私は二年生で夏期休暇だから、明日マストと実家に帰ろうとしていて?」
まさかの記憶喪失だと思えば、そうでもないらしく記憶が曖昧らしい。混乱する愛らしいシャーロットを、無条件で助けたいと思ってしまう。
これが清純派主人公の力なのか?
「君には今まで良くない物が取り憑いてたんだ。だが、彼女達が退治してくれたからもう大丈夫だ」
「良くない物──? そう言えば確かに魔法学校に入学してからは、身体が重く頭痛もホ酷い。記憶も曖昧でした。でも今はそれがないので、レオ様の言う通りなのですね。ありがとうございます」
以前のレオなら真っ先に手を差し伸べていたはずなのに、明らかに素っ気なく距離を取っている。シャーロットはシャーロットでレオに恋心がないのか坦々と言葉を返し、納得したのか微笑み心からのお礼をされる。
素直に可愛いと思えた。
「どういたしまして。このヘンゼルさんが寮まで送ってくれるから安心してね」
「ああ。主様とスワンの頼みでもあるからな」
それは花音も同じらしくフレンドリーになり、素っ気ないレオの代わりに手を差し伸べる。すべての元凶であるヘンゼルなのに、偉そうな台詞を吐く。
「はい。ヘンゼルさん?もありがとうございます」
「ああ、行くぞ」
何も覚えてない覚えていないシャーロットは、ヘンゼルに警戒することもなく輝く笑顔を向ける。
ヘンゼルは一瞬硬直し頬を少し赤く染め、シャーロットの手を持ち消えていく。
まさかあの人間嫌いのヘンゼルが、こんなんで恋に落ちた?
嘘?
ささすが清純派主人公。
「私がシャーロットの胸に手を当て、魂を抜き出せばいいんだね?」
「うん。グレーテルがそう言ってた。私が花音のもう片方の手を握ればうまい具合に取り除けるはず」
シャーロットを前にして、花音と最終打ち合わせ。
グレーテルの話しによれば、私が花音の手を強く握りって指示をすればいいとか。
今はそれを信じるしかなく、言われた通り花音の手を強く握りる
花音は右手をシャーロット胸に当て、目で合図しあい行動開始。
温かく優しい気がシャーロットを包み込んだと思えば、邪悪な靄が漂い出す。
正反対の二つの勢力は激しく衝突。火花を散らす勢いだ。
「朋子、見つけた。右と左どっち?」
「あ、左」
必死声の花音の唐突な問いに、何も考えずに即答してしまう。
いくらスキルがあっても、こんな呆気ないモノで良かった?
疑問に思うほどの一瞬の出来事で、自分の判断なのに自信が持てない。
これで間違っていたら、取り返しのつかないこと。
「了解。こっちね」
疑うことなく花音はそう言うと、何やらモヤっとしたものを掴んでいた。
「これが魂。暴れていて掴んでるのが大変」
「封印できそう?」
モヤっとしてる活きのいいのか花音の手の中で暴れる魂に、私も逃げ出さないようそっと手を添える。
必死に抗っていて本来なら理由を聞くのが聖女なんだろうけれど、そんな時間を与えてしまったらむこうの思うつぼ。卑怯と言われても構わない。
「任せてよ」
と花音は力強く言って封印をしようとした時、魂はうまい具合に手からすり抜ける。
「エミリーちゃんのかたき」
べち
「え~!!」
逃げようとする魂は、ヌクに叩き落とされ恨み辛みで踏まれ終了。
その場の全員が予想外てあっけない結末が信じられず、裏返った声を綺麗にハモらせる。
「いやいや、これはいくらなんでもなしだろう?」
「魂って浄化しなくても、虫を潰すように倒せるんだね」
「お終わりよければすべてよしって言うし、こう言うのもありだろう?」
「そうなのか? まぁ案外これが現実らしいのかもな」
みんなはこの理不尽な状況を、無理矢理納得させようとしている。
そうだ。
リーダーの言う通り、終わりよければすべてよし。にしとこう。
ヌクは私のために退治してくれたんだから、目一杯誉めないとね。
「ヌク、ありがとう。すごく助かった」
「えへん。ボク強いでしょ?」
ヌクを抱き上げ感謝すれば、ヌクは誇らしげに胸を張る。
そう言うことじゃないんだけれど。
「エミリー、大丈夫なのか?」
『お嬢様、どうしましたか?』
血相を変えたレオと双子はドアをケリ破る勢いで入ってきて一目散に私の元へ駆け寄る。私達の声に何事かと思ったんだね。
「心配してくれてありがとう。なんでもないわ。ちょっと想定外の終わり方でしたから」
「逃げ出そうとしたから、ボクがトドメを刺したの」
「さすが、ヌクだな」
「ヌクは式神の鏡だね」
「お嬢様を護ってくれてありがとう」
私達とは違いヌクの行いは勇姿と捉えられ、三人から絶賛誉められ鼻高々。
「どうやら予定どおり出港が出来そうだな。彼女はどうする?」
「我が元居た場所に戻しておく」
「ちょっと待ってください。本当に大丈夫だか確認します。そしたらヘンゼルお願いね」
フランダー教授の脳内はすでに決行するらしく、教師だしからぬ台詞。ヘンゼルはまぁまともではあるけれど、確認するのを忘れている。
そう言ったものの前世が残っていたらすごく困ります。
不安いっぱいのまま、まずはシャーロットの肩を揺らし声を掛けてみる。
「シャーロット、大丈夫?」
「──え? エミリー様にレオ様? ここはどこですか?」
すぐに目を覚ましキョトンと辺りを見回すシャーロット。私とレオを様付けするのもそうだけど、それ以外でも様子がおかしい。
優しくほんわかな雰囲気をかもし出しているのは、本来のシャーロットに戻ったからでそこは安心した。
「ひょっとして、記憶がないのか?」
「すみません。私が覚えているのは、入学初日クラスの掲示板──」
「まさか記憶が飛んでいる? しかも入学初日って……プロローグ?」
「でもあれ、今の私は二年生で夏期休暇だから、明日マストと実家に帰ろうとしていて?」
まさかの記憶喪失だと思えば、そうでもないらしく記憶が曖昧らしい。混乱する愛らしいシャーロットを、無条件で助けたいと思ってしまう。
これが清純派主人公の力なのか?
「君には今まで良くない物が取り憑いてたんだ。だが、彼女達が退治してくれたからもう大丈夫だ」
「良くない物──? そう言えば確かに魔法学校に入学してからは、身体が重く頭痛もホ酷い。記憶も曖昧でした。でも今はそれがないので、レオ様の言う通りなのですね。ありがとうございます」
以前のレオなら真っ先に手を差し伸べていたはずなのに、明らかに素っ気なく距離を取っている。シャーロットはシャーロットでレオに恋心がないのか坦々と言葉を返し、納得したのか微笑み心からのお礼をされる。
素直に可愛いと思えた。
「どういたしまして。このヘンゼルさんが寮まで送ってくれるから安心してね」
「ああ。主様とスワンの頼みでもあるからな」
それは花音も同じらしくフレンドリーになり、素っ気ないレオの代わりに手を差し伸べる。すべての元凶であるヘンゼルなのに、偉そうな台詞を吐く。
「はい。ヘンゼルさん?もありがとうございます」
「ああ、行くぞ」
何も覚えてない覚えていないシャーロットは、ヘンゼルに警戒することもなく輝く笑顔を向ける。
ヘンゼルは一瞬硬直し頬を少し赤く染め、シャーロットの手を持ち消えていく。
まさかあの人間嫌いのヘンゼルが、こんなんで恋に落ちた?
嘘?
ささすが清純派主人公。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる