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しおりを挟む「魔法学園入学する一年ぐらい前に、数日生死を彷徨ったことがあるの。その時私は神様に様々な未来の夢のお告げを見せられたんだよね? 詳しい内容は言えないけれど、私が究極の幸せを手に入れるには、女魔王のエミリーを倒さないといけなかった。目覚めた私はその夢を実現させるため勉強も魔法も必死になって努力したんだ。そしたら夢のお告げ通り聖女候補として認められ、魔法学園の特進科に入学が出来たの。本命のレオとも出会えてエミリーを悪役令嬢に仕向けられて、後もう少しでうまく行くところだった。それなのにエミリーは夢とは違う行動を取り始めるから、私は必死になって元に戻そうとしてるだけ。神様のお告げは絶対で、実現しない駄目でしょう?」
言葉を弾ませ自分の行いが、どれだけ正しいかを話を始める。
しかし目はもう逝っているようで、ところどころ自分勝手な言い分が混ざっていた。
前世の記憶が私のようにあると思ったら、記憶は『輝きの丘』とレオへの愛情だけ。話の内容からすると、前世はレオのガチオタ。心に刻まれている異常なまでのレオルートにこだわり、邪魔なエミリーを破滅させようとしている。
この展開には予想外過ぎて、考えるのに時間が必要。
私を倒せば幸せになるって信じているから、必要以上に粘着して見過ごしてはくれなかった。
良く言えば純粋で一途なんだけれど、悪く言えば機転が利かない頑固者。
中途半端な記憶持ちの転生者は厄介です。
「それはつまりわざとエミリーをそそのかしたと言うことか?」
「そうなるね。レオを独占したいのもあったから、エミリーを逆なでしたり偽善者を気取って怒らせたわ」
「確信犯だったのですね? 今思えばあまりにも不自然でした」
シャーロットの逝かれまくった告白に、レオは怒りを押し殺している。エミリーは懸命に動揺を隠しているようで、双子も殺気を高ぶらせいつシャーロットに襲い掛かるか分からない。
シャーロットはラスボスでした。と言っても過言ではない現状。
「シャーロット、君は最悪だ。別れよう」
「え、どうして? 神様のお告げに逆らうの?」
「ああ。それに神のお告げは、世界を幸せにするもの。君のお告げはあまりにも身勝手だ」
「だから女魔王は世界を滅ぼすから、私が聖女になって倒すの」
「女魔王は改心してるから害はないと言っただろう? 余計なことをしなければ、この世は平和なんだ」
静かにレオは別れを切り出すけれど、シャーロットにはまったく伝わらず。怪しい宗教の信者の台詞を吐く。
かみ合わない会話が続くと、徐々にシャーロットの表情が険しくなっていく。
「エミリー、許せない。大人しく私の引き立て役に徹しなさいよ」
なぜかレオではなく私にぶち切れ。椅子に束縛されていなかったら、襲ってきそうな勢いだった。
飛んだとばっちりだ。
こんな逆恨みされてエミリーが引き下がったとしても、レオはもうシャーロットに戻るはずがない。
まさかだけどやり直しが出来るって思っている?
「シャーロット、エミリーは悪くない。悪いのは俺だ。恨むなら俺にしろ」
「違うの。レオは騙されてるだけだから、何も悪くないの。ヘンゼルさん、早くこの女を殺してよ」
「は、殺す? なぜは我が姉さんを殺さないといけないのですか?」
レオの言葉を聞かないシャーロットはヘンゼルを呼ぶ。隣の部屋にいるはずのヘンゼルがすぐに現れるのだけれど、なんだか様子がおかしく私の横に降り立つ。
峰岸さんとフランダー教授は遅れてドアから入って来て、二人の満悦の笑み見たところうまく行ったらしい。
「騙したのね?」
「騙した? 貴様が我に嘘をついたのがいけないのだろう? 何が恋路を邪魔して、みんなから煙たがれている高飛車女だと? 姉さんの仲間に確認すれば、全否定されたよ。しかも邪魔などしてないだろう?」
「それが大嘘よ。エミリーはみんなを騙しているの。ここは私が主役の世界なんだから、こんなのありえない」
これはもう何かに乗っ取られているレベルで、現実を受け入れられないでいる。
都合の悪いことはすべて嘘。
目を見開き髪をむしっている姿は、まるで薬物中毒者のよう。
これには怒り奮闘だろうヘンゼルも、なにかを察したのか数歩後退した。
「──姉さん、どうしますか?」
「取り敢えず寝かせましょう。花音お願いします」
「え、あうん」
いきなり指名された花音は驚くもこちらに来て、祈りを捧げるポーズで聖女の力を使う。
「え、聖女」
絶望の表情を初めて見せ、眠りにつくシャーロット。いくらラスボス風でも、中身は普通の人だから魔法は絶大。
“後は朋子さん、お願いします。自信がついたので終わったら同化しましょ”
“うん、そうだね”
言葉通り自信に満ち溢れたエミリーの言葉に、私は笑顔でうなずき表に出る。
その時グレーテルからも
“ヘンゼルに今の私は幸せだから引っ込みます。あなたの幸せも見守ってます”
と、言付けを頼まれた。
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