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“ヌク、私の声が聞こえる?”
“朋ちゃんとエミリーちゃん。ようやく話せた。早くボクを召喚してよ”
“それなんだけれど、先にやって欲しいことがあるの。花音に私はヘンゼルに拉致られているって伝えてくれる? そしたら花音が対策をしてくれると思うから、そしたらみんなを連れてここに来て”

 魔力源が流れ出したようで、すぐにヌクと話ができた。
 安心と喜んでいるヌクの声にホッとしながら、落ちついてこれからしてもらいたいことを説明する。
 女魔王でもない私がヌクと力を合わせても、ヘンゼルを倒せるはずがない。ゲームではシャーロットが聖女の力で仲間達と倒している。つまり聖女である花音が必要不可。

“うん、分かった。ボク、頑張る。朋ちゃんとエミリーちゃんは気を付けてね”
“分かってます。朋子さんと一緒なので、大丈夫です”
“そうだね? 二人いればなんとかなるでしょ” 

 物わかりの良いヌクはすぐに了解してくれ、私達の心配までしてくれる。
 心配させまいと軽々しく返事する私達だけれど、なんとかなる相手ではことは知っていた。

 素性がバレなければ、なんとかなる?



“私達は朋子さん達が作った世界の住人なんですよね? それでこの世界に視察という転生をされてきたんですね”
“え、まぁそうとも言うことになるのかな?”

 そう思っていたから、エミリーは今まで特に理由を聞かなかったんだ。聞いてこないから変だとは思っていたけれど、まさか私が天界の住人で転生したって解釈されてたなんてね。
 すごいポディシブ思考と言うか超楽天的? さすがもう一人の私だ。
 訂正するのもあれだから、そう言うことにしておく。

“すごいんですね私の前世。それではあのヘンゼルは一体何が目的なんですの?”
“多分、私の中に眠っている女魔王の手伝いで世界を滅ぼす?”
“その女魔王の魂は愛するクード神に会えれば、未練がなくなり浄化されるのですよね? でしたらヘンゼルにそう言えば、喜んで協力してくれるのでは?”
“普通ならそうなんだろうけれど、ヘンゼルは魔族なんだよね? 女魔王は世界を滅ぼす条件で、ヘンゼルと契約したんだ。それで女魔王になったわけで”

 私のことは適当な解釈なのに、ヘンゼルのことを根掘り葉掘り聞いてくる。正式でもあやふやな設定なので、白どもどろに答える私。

 まさか今になって適当に作った設定が生かされるなんて思いもよらなかった。
 魔族が世界を滅ぼす条件でグレーテルと契約って、それヘンゼルになんのメリットがあるんだろうか?
 なぜ世界征服にしなかった?
 私って馬鹿?
 あ馬鹿だった……。

“魔族? それは大昔に滅びたはずでは?”
“女魔王も大昔の話だからね。ヘンゼルは最後の生き残りなんだよ”
“世界をどうして滅ぼしたいのでしょうか?”

 一番聞いて欲しくなかった問い。

 普通そうなりますよね?

“それは、本人に聞かないと分からないと思うよ”
“それもそうですね。では怪しまれないように探りましょう”

 適当なことを言えずヘンゼル任せにしてやり過ごそうとするも、エミリーのやる気は一枚上手のようで詮索することになった。
 かなり危ない橋だけれど、私もどうなっているか知りたい。

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