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 午後の授業をレオとシャーロットはボイコットしました。
 ちょうど学園祭の出し物を決める時間だったので、少し時間をもらって話すことに。

「みなさんシャーロットのことなのですが、人生経験だと思って歩み寄りませんか?」
「平民と歩み寄る? 何を血迷ったことをおっしゃってるのですか?」
「そうですわ。あの平民は特に生意気なのよ」
「エミリー様が一番被害に合われてるのに、一体全体どうしたのですか?」

 私の提案は速攻で却下されかけ、下手したら私の人格まで疑われる。
 中には私を案じてくれているようで、うまく説得出来ればなんとかなるかも知れない。

 そうするにはシャーロットにとって余計なお世話。最悪そんな同情いらないと言われるけれど、彼らは将来有望な貴族様達。プライドが高い人間を仲間にするには、まず彼らを煽てまくって、丸め込まないといけない。

「私達は将来上に立つ人間なのですから、平民の考えを知って損がないと思います。力だけで強制労働させるよりも、彼らに寄り添ってWin-Win関係を築けば効率は断然良くなるはずです」
「Win-Win関係? 平民なんて腐るほどいるのですから、使い物にならなくなれば新しいのを使えば良いだけですよ」

 …………。
 家畜扱いしないで下さい。

 さも当然とばかりに怖ろしいことを言うミレアと、何度も頷く取り巻き達と大半の人達。ミレアの考えに眉を曲げ首を傾げているのが数人しかいない。
 そんな光景が怖ろしくなんだか頭痛がしてきた。

「それをしていたら、いずれ一揆を起こると思いますよ」
『!!』

 頭を抑えて花音はため息交じりにごもっともな危機を呟くと、それでも反論があると思いきやハッとなり表情が青ざめる。素直すぎる反応。

「そそれは困りますね」
「だから父上は平民とも親しくしてたのか。俺が平民と見下すと、父上に怒られていた。彼らも我わらも同じ人間なのだから、同等に接するべきだと。俺には理解しがたいことだったが、そう考えると分からなくもないな」

 今さらながら父親の教えを思い出し親身になって受け止めるのは、中肉中背の塩顔モブキャラAくん。父親はまともそうだけれど、理解してもまだ台詞にトゲがある。
 そう簡単には考えを変えられないか。

「エミリー様の言い分も一理ありますね? 分かりました。シャーロットさんのことをしばらく観察してみます」
「それ面白そうですね? 私もそうしてみます」
「僕も。彼女は優しい一面もあるし、皇太子と交流もあるから損はないと思うな」

 モブ達は次々に賛同してくれるも、それちょっと違うようなことばかりで前途多難である。
 しかも損得勘定で友人になるなんて、絶対によろしくない。シャーロットには迷惑だ。



「エミリー様とカノンさんですよね。自分はマストと言います。ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょうか?」

 昼休み中裏庭でマストに呼び止められ、察しがついた私達は立ち止まり頷く。

 絶対シャーロットに関わるなと言われる。
 どうやら私達がシャーロットのためにと思ってしたことは、すべてが裏目に出てしまい余計関係を拗らせている。
 もう何もしない方が、彼女のためなんじゃないかと思い始めた。

 それにしてもなんで貴族と平民は、犬猿の仲なんだろうか?
 特進科は選ばれたエリート集団だから、特に平民を見下してるだけ?
 でもそしたら、レオはどうしてシャーロットを好きになった?
 シャーロットとエミリーを重ねた。とか言い出しそうだったけれど、いくらなんでもそれはないよね?
 あったら冗談抜きで、シャーロットの心が壊れてしまう。

「これ以上シャーロットに近づいかないでもらいますか?」
「ええ、そうするつもりよ。もう何もやっても修復不可能だってよく分かりました」
「うん、思った以上に難しかった。余計なことしてごめんね」

 潔く自分達に非ががあることを認め、低姿勢で関わらないことを約束する。

「え、あ分かってくれればいいんです」
「私がこう言うのは奥がましいとは思うのだけれど、シャーロットを支えてあげてくれますか?」
「シャーロットさんは味方になってくれる人が欲しいみたい。私はエミリーの味方だから、どうしても馬が合わなくってね」

 圧倒されるに私達は畳みかけるように、親身になってお願いをする。

 花音は和解を申し立ててみたものの、私に対しての不満がすごいらしく破滅したそうだ。
 その点マストはシャーロットの幼馴染。今でもシャーロットの味方なのは知っているけれど、言うことによって更なる強い絆が芽生えるはず。
 出来ればそれ以上の関係になっていただき、それは余計なことか。

「本当に君はあのエミリー様なのか? シャーロットが話していたのとは、随分違うんだが」
「改心したのです。話はもうよろしいでしょうか?」
「あ、はい」

 悪役令嬢と教えられていたんだろう。ギャップの違いに戸惑っているマスト。
 どう吹き込まれたのか気になる物の、それは知らぬが花だと思いスルーする。

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