生みの親が悪役令嬢に転生!?~破滅ルートを回避するため、恋愛ゲームを辞めます。今日からアドベンチャー~

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
24 / 56

24

しおりを挟む
「あっそうだ。社長、朋子の転生特典スキルを見てくれませんか?」
「そんなのお安い御用だ。朋子、私の目を見なさい」
「はい」

 少しの沈黙の後忘ようやく私のスキルの話を友太先輩が切り出してくれ、言われる太通りリーダーの目を見つめる。翠色のリーダーの瞳が赤く染まり、不思議な感覚に陥っていく。
 フワフワして気持ちがいい。

「さすがエミリーのステータスは優秀だな。そして特典スキルはスピリチュアルマスターだな」
「えーと、それって勘が働くってことですか?」
「ああ。だから迷いがあれば、直感に頼ればいい」

 分かりにくいナンセンスなスキル名に困惑するも、更なる助言を受け内容を理解する。
 勘が冴えるスキルだったら使い勝手が良い。
 魔法学園の定期試験は選択問題だから、分からなくても勘で当てられる。
賭けごとは好きじゃないけれど、必ず勝つなら話は別。婚約破棄され家族に婚約破棄されたとしてもお金には一生困らない。
 最高で最強スキルじゃん。

「その悪魔のほほ笑みは良からぬことを考えてるな? 賭けごとでもする気か?」
「はい。婚約破棄され勘当になったらの話ですけどね」
「もしそうなったらオレが雇ってやるから心配するな」

 私の考えなど友太先輩にはすべてお見通しだった。危なっかしいと思ったのか、やれやれと兄貴風をふかせ頭ポンポンされる。
 私が悩んだり落ち込んだりしていると、いつも優しい言葉&頭ポンポンのコンボ。
 すごく元気なれるんだよね?
 これがもし恋愛漫画なら台詞は養ってやるなんだろうけれど、私と友太先輩は後輩と先輩でしかないからこんなもん。

「その時はよろしくお願いします。ヌクこれで何があっても二人でたくましく生きていけるね?」
「そうだね。そしたらボクもいっぱい頑張るね」

 ヌクも私と同じく張りきってくれて、これで私の人生設計が完璧になり怖い物なしになる。

 エミリー早くこのことに気づいて、殻を破ってくれると良いのにな。そしたらレオに一度当たって砕けることも出来る。
 砕けたら、さすがにまずい?

「そうと決まれば、オレは早速朋子専用武器製作に取りかかるか。鉄扇にもブーメランになる武器で良いんだろう?」
「さすが友太先輩ですね。すごすぎです」

 ようやく本来の目的である武器の話になる。しかもどちらか選ぶんじゃなく、両方を一緒にして作る。
 そんな発想なかっただけに目から鱗で、友太先輩を煽てまくった。
 転移スキルは半端ない。

「オレに掛かれば、どんな武器でも作れるさ。仕上がったら連絡するから、また来てくれ」
「分かりました。楽しみにしています」

 自信満々で言う友太先輩は私にそれだけ言うと、楽しげにぶつぶつ呟きながら部屋から出ていってしまった。
 完全に自分の世界に入っていて、多分もう周りが見えなくなる。
 こう言う欠点があるから友太先輩は、彼女が出来てもすぐに振られるらしい。

「相変わらずですね。友太先輩」
「そうだな。ああ言うのがなければ、外見はそこそこ。優しく気が利くからモテるんだが、好きなことに没頭するとそれだけにるからな。今も連敗記録は伸び続けている」
「わかります。結局は仕事が恋人なんですよね?」

 つい思っていることを呟くと、リーダーは失笑しながら現状を教えてくれる。

 本人以外は、みんな知っている。
 友太先輩は仕事が趣味で恋人だから、最後は彼女より仕事を優先してしまうことを。
 自覚しないと結婚どころか、長く付き合うのは無理そうだな。
 なんて言っても全否定+激怒されるから、黙っているけれど本当にもったいない。

「朋子、友太に永久就職したらどうだ?」
「だったらリーダーも峰岸さんに永久就職したらどうですか?」
「は、なんであたしが翼に永久就職しなきゃいけないんだ? あたしの方が年収いいんだぞ?」

 普通に聞かれたら動揺する問でも、リーダーだから冷静のまま同じことを聞き返す。こう言うやり取りは日常茶飯事だから、案の定リズムの良い受け答えが返ってくる。
 ただいつもと違って脈ありに聞こえて、二人の関係性に興味が沸く。
 
「だったら峰岸さんがリーダーに永久就職ですか?」
「今のあたしと翼は、対等な立場だからそれも違うな」
「対等な立場。なんかそう言う関係って格好いいですよね」

 早速言い方を変えて反応を待ってみれば、頬を軽く赤めながらも幸せそうな笑顔を浮かべ正直な答えをくれる。それ以上追求しなくても、どう言う意味かを察しがつく。
 どう言う経緯でそうなったか聞きたいけれど、今は辞めておこう。

「それで朋子は誰を落とすつもりなんだ?」
「クード神の元に行って女魔王の魂を浄化させるまで、恋愛をするつもりはないですよ」
「何お固いことを言ってんだ? せっかく乙女ゲー主人公に転生したんだから、誰でもいいから落とすべきだろう?」

 リーダーは私のコイバナに興味津々です。
 当分しないと答えるものの、信じられないと言わんばかりに攻略を勧めてくる。
 圧がすごくって普段ならドン引きな案件なのに、今はそう言われると攻略しないのは勿体ないかもと思ってしまう。

 ここは乙女ゲー。しかもエミリーは悪役令嬢でも、続編では落とす側の主人公。
 オタクでしかも生みの親であれば、誰かを攻略したくなるのは当然のこと。
 もちろん生き延びることが大前提だから、何かあればキャラ攻略を辞めたっていい。

「そうですね。だったらフランダー教授を攻略したいと思います」

 流されやすい私はその気になってしまい、軽い気持ちで頭に浮かんだ名前を口にする。
 ゲームだと結構難しい設定にしたはずなのに、なぜか好感度がやたらに高い。

 え、レオ? 
 シャーロットが怖いから、彼だけは絶対にありえない。

「その調子だ。確か今日一緒に来ているんだろう? 是非紹介して欲しい」
「もちろんです。早速紹介するので、応接室Aの場所まで連れって下さい」

 自分でも思うおかしい返答の仕方だけれど、応接室Aの場所を知らないからしょうがない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

イジメられっ子は悪役令嬢( ; ; )イジメっ子はヒロイン∑(゚Д゚)じゃあ仕方がないっ!性格が悪くても(⌒▽⌒)

音無砂月
ファンタジー
公爵令嬢として生まれたレイラ・カーティスには前世の記憶がある。 それは自分がとある人物を中心にイジメられていた暗黒時代。 加えて生まれ変わった世界は従妹が好きだった乙女ゲームと同じ世界。 しかも自分は悪役令嬢で前世で私をイジメていた女はヒロインとして生まれ変わっていた。 そりゃないよ、神様。・°°・(>_<)・°°・。 *内容の中に顔文字や絵文字が入っているので苦手な方はご遠慮ください。 尚、その件に関する苦情は一切受け付けませんので予めご了承ください。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴②発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照
ファンタジー
 断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。  ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。  シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。  目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。 ※なろうにも投稿しています

追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆ 「申し訳ないが、ウチに必要な機械を使役できない君はクビだ」 ”上の世界”から不思議な”機械”が落ちてくる世界……機械を魔法的に使役するスキル持ちは重宝されているのだが……なぜかフェドのスキルは”電話”など、そのままでは使えないものにばかり反応するのだ。 あえなくギルドをクビになったフェドの前に、上の世界から潜水艦と飛行機が落ちてくる……使役用の魔法を使ったところ、現れたのはふたりの美少女だった! 彼女たちの助力も得て、この世界の技術レベルのはるか先を行く機械を使役できるようになったフェド。 持ち前の魔力と明るさで、潜水艦と飛行機を使った世界最強最速の運び屋……トランスポーターへと上り詰めてゆく。 これは、世界最先端のスキルを持つ主人公が、潜水艦と飛行機を操る美少女達と世界を変えていく物語。 ※他サイトでも連載予定です。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

処理中です...