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しおりを挟む「お前朋子なんだろう?」
「はい、そうです」
最上階のとある部屋に通されソファーに座った直後、単刀直入に聞いてきて隠す必要がないからあっさり白状する。
と言うより本当に友太先輩だったから、ホッとして肩の荷が下りた気がした。
むしろこれから友太先輩にも協力して欲しいです。
「ってことは、本当にエミリーに転生したって訳か?」
「ですね。ちなみにヌクも転生です」
「友太先輩、お久しぶりです」
ヌクも友太先輩を知っていたから、ヌクを抱き上げ明るく紹介。ヌクも嬉しそうに声を掛ける。
すると友太先輩は軽く笑い、目の前のソファーにドスっと座った。
「相変わらずで何よりだ。オレにとっては十年ぶりなんだが、お前にとってはどうなんだ?」
「昨日ぶりです。死んだ直後、今日になりました。不思議ですよね?」
「不思議……それで終わらせて良いのか? 転生中に前世に一度戻って来たんだぞ?」
「? だから不思議って言ってるじゃないですか?」
「……あのな?」
もろに呆れられた。話がどうもかみ合っていない。
私はちゃんとその現象を不思議に捉えているのに、それじゃぁ楽観視なのかな?
真相を掴んだとしても、何も変わらないと思うんだけど。
「ひょっとして友太先輩は、日本に戻りたいんですか?」
「戻りたいか。そりゃぁ転移直後はそう思っていたが、今はこの暮らしに満足してる。転移特典スキルは、ものづくりと目利き。俺の手に掛かれば、どんなものでも一級品に作れる」
「へぇーそれはすごい」
ネーミングセンスがまったくなくがっかりするも、中身は転移特典なだけすごい物だった。
そのスキルがあって成功者なのだから、日本によほど未練がない限り戻りたいと思わない。
私はどうなんだろう?
ヌクに会えた時点転生と言うこともあって、その辺どうでもよくなっている。
こう言うとこも能天気だって言われるんだろうな。
「朋子にはないのか? 転生特典スキル?」
「あるのかな? 友太先輩わかります?」
あったら嬉しい転生特典スキル。
自分ではまだ分からないから、聞き返してみる。
でもエミリーが有能だから、なくてもガッカリしない。
「そうだな。鉄扇もブーメランも素質がかなりあるが、特典で言うほどじゃないな。社長に聞けばわかると思う」
「え、社長? 転移者なんですか?」
転移者がもう一人いる?
「まぁな。社長は鑑定スキルの特化していて、獣人族に転移している」
「獣人族?」
しかも獣人族に驚きは倍増。
この世界には、滅多に姿を見せない神と神の使いである天使。人間の次に多いドワーフ。海に住んでいる人魚。空に住んでる鳥族。そして獣人族。他は妖精やあやかしなんかももいる。ヌクは妖精かも知れない。
獣人族は身体能力が高く五感に優れているため、騎士になるのが多い。
「そうだ。どう言う訳か若返って転移したとかで俺より年下になってた。しかも今では有能な美人若社長で名が知れている。本人は天狗になり続け、秘書はイケメンぞろいの逆ハーレムしてるんだぜ」
「……それって……」
それ以上言わなくても、もう一人の転移者が誰だか察しがつく。
ああ、だから『輝きの丘商会』なのか。
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