20 / 56
20
しおりを挟む「朋ちゃん、朋ちゃん、もっと遠くまで投げて」
「うん、分かった。それじゃぁ行くよ~!!」
ヌクにせかされ、鋭いスナップを効かせフリスビーを投げる。身体がフリスビーの投げ方を覚えていたから、すぐにコツを掴めヌクの要望にもこうして答えられた。
そんなヌクは尻尾を全力で振り、フリスビーを追いかけナイスキャッチ。
時は昼休み。
双子揃って用事があると言われ私はぼっちとなったから、私とヌクに連れられ学園外の野原に足を運んだ。
エミリーとヌクの秘密の遊び場らしい。人がいないためヌクは私の名を呼び、私も素をさらけ出しおもいっきり遊ぶ。
思えばヌクとこうやって外で遊ぶのは、六年ぶりかも知れない。死ぬ一年前から散歩は犬用バギーだった。日に日に衰えていくのが分かって、でも私はヌクの飼い主だから最後まで笑顔でお世話をしてたと思う。
「ヌクは私と一緒で幸せだった?」
「うん、すごく幸せだった。でもボクずーと朋ちゃんに謝りたいことがあったんだ」
私の元に戻って来るヌクに思わず聞いてみると、即答するけれどそのあとに言葉が続く。
ちょっと悲しげな表情になり、聞くのが怖くて唾を飲み込む。
「何?」
「ずーと一緒にいようって、約束したのに破ってごめんなさい」
「なんだそんなことか。ヌクは寿命で死んだんだから、気にしなくてもいいんだよ。それにこうしてまた一緒にいられるんだからいいの」
まさかまさかの可愛い謝罪をされてしまい、拍子抜けした私はヌクを抱き上げ地べたに寝転ぶ。
子供の頃のたわいもない約束を覚えてくれていて、仕方がないのに約束を破ったと思ってくれていた。
あれは勝手にどこか行かないでねと、言う意味だった。私の方こそ、変な約束してごめんねって言いたい。
でも
「ヌク、大好き。今度も私の傍に可能な限りいてね」
「ボクも朋ちゃんのこと大好き。今は使い魔だから、ボク達一心同体なんだって」
「そうなんだ。なら良かった」
今度はそう言う約束を交わそうとすると、嬉しいことを教えてくれ約束は成立した。
本当の意味で、ヌクとずーと一緒にいられるんだ。
だったら恋人なんていなくても、ヌクがいればいいかな?
「サウザウンド、こんな所で何をしてる?」
「え、フランダー教授? ヌクと遊んでますの」
視界にフランダー教授が入り声を掛けてくるから、私はびっくりして飛び起きる。反射的にありのままを答えたけれど、そう言うことを聞かれた訳じゃなさそう。
案の定目を見開きガン見された後、笑われる。
「君は噂とは違って、随分人間味があるんだな」
「そうですか?」
「ああ。教員の間ではプライドが高く厳格な優等生。皇太子の婚約者でもあるから、粗相のないようにときつく言われている。だが見た限りでは好奇心旺盛で喜怒哀楽が激しい興味深い生徒」
「うっ、良く見てますね」
反論しようがないぐらい的確な分析に、冷や汗たらたらで認めてしまう。
それ朋子の性格そのものです。
表向きは朋子とエミリーは正反対の性格なんだよね?
「これが本当のエミリーちゃんなんだよ」
「そうなのか? まぁ皇太子の婚約者となれば、偽るのも当然か」
ヌクの軽い説明で、すぐに納得してしまった。
でもその偽りの性格で逆に嫌われて、シャーロットに奪われて崖っぷちに立たされている。
厳格な両親に厳しくしつけをされず私の性格のままだったら、嫌われずに婚約破棄は免れていたかも知れない。
あ、だから最近レオは私に優しい?
「ええ。だからこのことも他言無用でお願いします。ここは部屋以外で私が素になれ、ヌクとおもいっきり遊べる場所なのです」
「しかしここは学園の敷地外で、モンスターの出現ポイントになっている」
素を隠している前提でこれも口止めする。だけど渋い顔をされ、危険な場所だと言われた。
え、そうなの?
だから人がいないの?
そんな危ない場所なのに、二人の遊び場ってどう言うこと?
「それなら大丈夫。ちゃんと遊ぶ時は結界を張ってるよ」
しかしすでに対策はしているようで、ヌクは当然とばかりに言う。
ここでのヌクは使い魔だから、協力な結界が張れる。
他にはどんな能力があるんだろう?
ゲームでの使い魔は、いろいろアドバイスをくれる癒しキャラにしていた。
「この結界は使い魔の力か。実に興味深い。私もたまにここへ来て良いだろうか?」
「別に私達だけの場所ではないので、ご自由にどうぞ」
そっけなく答えを返したものの、これは絶対恋愛イベントだよね?
ゲームには使い魔とフリスビーで遊ぶイベント事態ないから、この遭遇はイレギュラーで何があってもおかしくない?
フランダー教授との最初の恋愛イベントは、教授室で計画中にエミリーの機転で新発見で距離が縮まっていくだった。時期的には、半月ぐらい先かな?
今朝の選択もだけれど、ゲーム通りにするには案外難しいかも?
「ありがとう。所でサウザウドの武器は、ブーメランの方が良いのでは?」
「あ、確かに。そう言う選択肢もあったか!!」
新たなる選択肢に私は目を輝かせ、これ以上ないぐらいに食らいつく。
そうか。
フリスビーが出来るんだから、武器がブーメランでも問題がない。どうしてそのことに気づかなかったんだろう?
憧れのブーメラン。
ブーメランは全体攻撃が出来る優れ物で、RPG系をプレイする時は必ずメンバーの誰かに装備させていた。
もちろんエミリーの武器もブーメラン希望だったけれど、ビジュアル的にNGになりあえなく却下。でも今はビジュアルなんて関係ない。
ブーメランを背負って移動──そう考えると手軽に携帯出来る鉄扇の方がいいのかな?
戦闘バトルは可憐に舞って、まるでダンスを踊っているようだった。
実際に出来たら気持ちいいだろうな?
そう考えるとやっぱり鉄扇も捨てがたい。
「鍛冶職人に決めてもらうか?」
「え、そんなことが出来るんですか?」
「ああ。知人に目利きの鍛冶職人がいてね。相手を一目見ただけで、何に適しているか分かるそうだ。私もヌンチャクが最適だと教えられた」
「それは凄いですね。ぜひお願いします」
「では放課後に連れて行く」
顔に迷いが出ていたようで、だったらと言う提案をされる。魅力的な内容で私の知らない設定に、心を躍らせながらお願いした。
恋愛イベントはそのまま進んでいく?
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
転生悪役令嬢は婚約破棄で逆ハーに?!
アイリス
恋愛
公爵令嬢ブリジットは、ある日突然王太子に婚約破棄を言い渡された。
その瞬間、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界で、自分が火あぶりになる運命の悪役令嬢だと気付く。
絶対火あぶりは回避します!
そのためには地味に田舎に引きこもって……って、どうして攻略対象が次々に求婚しに来るの?!
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる