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「朋ちゃん、朋ちゃん、もっと遠くまで投げて」
「うん、分かった。それじゃぁ行くよ~!!」

 ヌクにせかされ、鋭いスナップを効かせフリスビーを投げる。身体がフリスビーの投げ方を覚えていたから、すぐにコツを掴めヌクの要望にもこうして答えられた。
 そんなヌクは尻尾を全力で振り、フリスビーを追いかけナイスキャッチ。

 時は昼休み。
 双子揃って用事があると言われ私はぼっちとなったから、私とヌクに連れられ学園外の野原に足を運んだ。
 エミリーとヌクの秘密の遊び場らしい。人がいないためヌクは私の名を呼び、私も素をさらけ出しおもいっきり遊ぶ。

 思えばヌクとこうやって外で遊ぶのは、六年ぶりかも知れない。死ぬ一年前から散歩は犬用バギーだった。日に日に衰えていくのが分かって、でも私はヌクの飼い主だから最後まで笑顔でお世話をしてたと思う。

「ヌクは私と一緒で幸せだった?」
「うん、すごく幸せだった。でもボクずーと朋ちゃんに謝りたいことがあったんだ」

 私の元に戻って来るヌクに思わず聞いてみると、即答するけれどそのあとに言葉が続く。
 ちょっと悲しげな表情になり、聞くのが怖くて唾を飲み込む。

「何?」
「ずーと一緒にいようって、約束したのに破ってごめんなさい」
「なんだそんなことか。ヌクは寿命で死んだんだから、気にしなくてもいいんだよ。それにこうしてまた一緒にいられるんだからいいの」

 まさかまさかの可愛い謝罪をされてしまい、拍子抜けした私はヌクを抱き上げ地べたに寝転ぶ。
 子供の頃のたわいもない約束を覚えてくれていて、仕方がないのに約束を破ったと思ってくれていた。
 あれは勝手にどこか行かないでねと、言う意味だった。私の方こそ、変な約束してごめんねって言いたい。
 でも

「ヌク、大好き。今度も私の傍に可能な限りいてね」
「ボクも朋ちゃんのこと大好き。今は使い魔だから、ボク達一心同体なんだって」
「そうなんだ。なら良かった」

 今度はそう言う約束を交わそうとすると、嬉しいことを教えてくれ約束は成立した。
 
 本当の意味で、ヌクとずーと一緒にいられるんだ。
 だったら恋人なんていなくても、ヌクがいればいいかな?


「サウザウンド、こんな所で何をしてる?」
「え、フランダー教授? ヌクと遊んでますの」

 視界にフランダー教授が入り声を掛けてくるから、私はびっくりして飛び起きる。反射的にありのままを答えたけれど、そう言うことを聞かれた訳じゃなさそう。
 案の定目を見開きガン見された後、笑われる。

「君は噂とは違って、随分人間味があるんだな」
「そうですか?」
「ああ。教員の間ではプライドが高く厳格な優等生。皇太子の婚約者でもあるから、粗相のないようにときつく言われている。だが見た限りでは好奇心旺盛で喜怒哀楽が激しい興味深い生徒」
「うっ、良く見てますね」

 反論しようがないぐらい的確な分析に、冷や汗たらたらで認めてしまう。

 それ朋子の性格そのものです。
 表向きは朋子とエミリーは正反対の性格なんだよね?

「これが本当のエミリーちゃんなんだよ」
「そうなのか? まぁ皇太子の婚約者となれば、偽るのも当然か」

 ヌクの軽い説明で、すぐに納得してしまった。

 でもその偽りの性格で逆に嫌われて、シャーロットに奪われて崖っぷちに立たされている。
 厳格な両親に厳しくしつけをされず私の性格のままだったら、嫌われずに婚約破棄は免れていたかも知れない。

 あ、だから最近レオは私に優しい?

「ええ。だからこのことも他言無用でお願いします。ここは部屋以外で私が素になれ、ヌクとおもいっきり遊べる場所なのです」
「しかしここは学園の敷地外で、モンスターの出現ポイントになっている」

 素を隠している前提でこれも口止めする。だけど渋い顔をされ、危険な場所だと言われた。

 え、そうなの?
 だから人がいないの?
 そんな危ない場所なのに、二人の遊び場ってどう言うこと?

「それなら大丈夫。ちゃんと遊ぶ時は結界を張ってるよ」

 しかしすでに対策はしているようで、ヌクは当然とばかりに言う。
 ここでのヌクは使い魔だから、協力な結界が張れる。
 他にはどんな能力があるんだろう?
 ゲームでの使い魔は、いろいろアドバイスをくれる癒しキャラにしていた。

「この結界は使い魔の力か。実に興味深い。私もたまにここへ来て良いだろうか?」
「別に私達だけの場所ではないので、ご自由にどうぞ」

 そっけなく答えを返したものの、これは絶対恋愛イベントだよね?
 ゲームには使い魔とフリスビーで遊ぶイベント事態ないから、この遭遇はイレギュラーで何があってもおかしくない?

 フランダー教授との最初の恋愛イベントは、教授室で計画中にエミリーの機転で新発見で距離が縮まっていくだった。時期的には、半月ぐらい先かな?
 今朝の選択もだけれど、ゲーム通りにするには案外難しいかも?

「ありがとう。所でサウザウドの武器は、ブーメランの方が良いのでは?」
「あ、確かに。そう言う選択肢もあったか!!」

 新たなる選択肢に私は目を輝かせ、これ以上ないぐらいに食らいつく。

 そうか。
 フリスビーが出来るんだから、武器がブーメランでも問題がない。どうしてそのことに気づかなかったんだろう?

 憧れのブーメラン。
 ブーメランは全体攻撃が出来る優れ物で、RPG系をプレイする時は必ずメンバーの誰かに装備させていた。
 もちろんエミリーの武器もブーメラン希望だったけれど、ビジュアル的にNGになりあえなく却下。でも今はビジュアルなんて関係ない。
 ブーメランを背負って移動──そう考えると手軽に携帯出来る鉄扇の方がいいのかな?
 戦闘バトルは可憐に舞って、まるでダンスを踊っているようだった。
  実際に出来たら気持ちいいだろうな?
 そう考えるとやっぱり鉄扇も捨てがたい。

「鍛冶職人に決めてもらうか?」
「え、そんなことが出来るんですか?」
「ああ。知人に目利きの鍛冶職人がいてね。相手を一目見ただけで、何に適しているか分かるそうだ。私もヌンチャクが最適だと教えられた」
「それは凄いですね。ぜひお願いします」
「では放課後に連れて行く」

 顔に迷いが出ていたようで、だったらと言う提案をされる。魅力的な内容で私の知らない設定に、心を躍らせながらお願いした。

 恋愛イベントはそのまま進んでいく?

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