生みの親が悪役令嬢に転生!?~破滅ルートを回避するため、恋愛ゲームを辞めます。今日からアドベンチャー~

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
19 / 56

19

しおりを挟む
 始業時前に教授室に行くと、寝ぐせ姿のフランダー教授に出迎えられる。

「フランダー教授、私神の啓示を受けましたの。クード神の牢獄の場所が分かりましたわ」
「さすが聖女候補。それでどこだ?」

 聖女候補なら神の啓示を受けたことにしても問題ないから、そう言うことにした。
 実際フランダー教授は鵜呑みにしてくれ、私との距離を縮め肩を持ち答えをせかせる。
 双子は少々驚きを見せるも、黙ったまま期待の眼差しを向けられた。

「B地点になります。このことは他言無言でお願いします」
「それは本当か? A地点が本命だと思っていたんだが、そう言うことならBを先に行こう。どうやらクード神は彼女を呼んでるらしいな。他言無用にするから安心して良い」
「ありがとうございます」

 本来ならA地点には強制恋愛イベントがあるため強制的にAから行くんだけれど、私の目的はあくまでも壊滅フラグをへし折って生き抜くこと。恋愛なんてそれからである。

 前世では恋愛経験は数回だけ。死んだんだから、運命の相手はいなかった。
 そんな悲しい人生だったから、今回は運命の相手が見つかるといいな?
 何も乙女ゲームのような劇的な恋愛がしたいなんてわがままを言わない。
 ただ普通の恋愛をして結婚。平凡だけど幸せで、仲の良いおしどり夫婦になりたい。
 なんて流石に気が早すぎるか。

「それでは私達は教室に戻りますね。では放課後にまた」
「ああ。そう言えば君達は、魔法以外の戦闘用の武器は持っているか?」
「はい、私はワイヤー使いでカイリはクナイを使ってます」

 用件が済んだので教室に戻ろうとした矢先、結構重要イベントがいきなり始まってしまった。そう言えばそんな設定だったなと思いながら、自分の武器は何にしようかと考える。

 エミリーの武器は、ナイフ、銃、鉄扇の三種類の中から選べる。どれを選んでもセンスがあって戦闘スタイルは美しいんだけれど、鉄扇verのエミリーが私の一番お気に入り。戦闘中はお色気ムンムンで、女の私でもドキドキしちゃう。

 鉄扇一択だな。

「私は鉄扇にしようかと思います」
「そうですね。お嬢様の舞踊はとても魅力的です」
「ボクもエミリーちゃんの舞っている姿大好き」
「私もうっとりしてしまいます」
「……鉄扇と舞踊は違うんだが……。まぁ好きにすれば良い」

 私の選択は三人に絶賛されちやほやされる中、フランダー教授だけが呆れてため息をつく。
 そう言う反応をされると、自分の選択が浅はかだったと思う。急に恥ずかしくなり、穴があったら入ってしばらく閉じこもりたい。
 よくよく考えなくても鉄扇にした理由が不純でしかない。しかも今の私はエミリーなんだから、魅力的って言ったらそれは自画自賛。ナルチスト。
 まったく違うとまでは言わないけれど、舞踊が得意だとしても鉄扇を使いこなせるとは限らない。

 痛すぎるよ私。
 ここはゲームの世界だけれど、今はれっきとした現実世界。何も考えずにゲーム通りの選択肢を回答したら、今みたくおかしければ突っ込みを入れるか呆れられてしまう。特にギャグ選択には気をつけないと。

「エミリーちゃんなら大丈夫。練習すればすぐに使いこなせるよ」
「そうですよ。鉄扇はお嬢様にピッタリな武器だと思います」
「私もそう思います。練習に付き逢います」
「三人ともありがとう。私頑張りますわ」

 私を励ましてくれる三人の言葉が心に染みて、鉄扇を早く使いこなせるように頑張ろうとを決意した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照
ファンタジー
 断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。  ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。  シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。  目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。 ※なろうにも投稿しています

転生侍女は完全無欠のばあやを目指す

ロゼーナ
恋愛
十歳のターニャは、前の「私」の記憶を思い出した。そして自分が乙女ゲーム『月と太陽のリリー』に登場する、ヒロインでも悪役令嬢でもなく、サポートキャラであることに気付く。侍女として生涯仕えることになるヒロインにも、ゲームでは悪役令嬢となってしまう少女にも、この世界では不幸になってほしくない。ゲームには存在しなかった大団円エンドを目指しつつ、自分の夢である「完全無欠のばあやになること」だって、絶対に叶えてみせる! *三十話前後で完結予定、最終話まで毎日二話ずつ更新します。 (本作は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています)

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...