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「教授、捕まえてきました」
「オレの放課後は忙しいんだ。さっさと用件を話せ」

 渡り廊下が騒がしいと思ったら、ドアが乱雑に開く。現れたのはもろに体育会系のよりさらに大きい男子生徒と、彼に捕まったジタバタ足掻くアーサーだった。

 なんでアーサーが?

「ご苦労。これで役者は揃った」
「一人明らかにいやがってますけど、彼には拒否権ないのでしょうか?」
「ない。なぜなら奴は私の授業の単位が足らないんでね。勇者の末裔と言うこともあり、単位を引き換えに強制参加させる」
「は、何に?」
「ご愁傷さまです」

 出来れば攻略対象キャラとは深く関わりたくないんだけれど、そう言うことなら仕方がなく情けないアーサーを労る。

「所で彼はどちら様でしょうか?」
「彼は私の優秀な助手だ」
「四年のロッシュです。よろしく。エミリー様については教授に聞いていますが、君達は?」
「よろしくお願いします。私はケイト。こっちはカイリです。エミリーお嬢様の侍女です」
「ボクはヌク」

 男子生徒は二年上の先輩だった。ゲームにまったく出てこない所謂モブキャラ。
 フランダールートを作る上で助手を作るつもりでいたけれど、ロッシュ先輩とは真逆の外見をイメージしてた。守ってあげたくなるようなわんこ系男子。

「ケイト、カイリね? 何にせよ花はあるから、そこはよしとするか。所でエミリー、自分の使い魔をいじめてるって本当か?」
「ド直球で聞いてきますね? どうせNOと言っても信じてくれませんよね?」

 まさか単刀直入に聞かれるとは思いもよらず、呆気に取られながらも冷たく聞き返す。

 出所はシャーロットか?

 するとアーサーの顔はたちまち青ざめ、ムンクの叫び化する。

「し信じる。信じるからこいつの噛むのを辞めさせてもらえませんか?」

 なぜか丁寧言葉で訴えられた。

「え、ヌク辞めなさい。いくらムカついたとしても噛みつくのはよくありません」
「はーい。ごめんなさい」

 よく見ればアーサーの足首に噛みついているヌク。
 笑いを堪えながら辞めさせれば、ヌクはすぐに噛むのを辞め棒読みで謝罪。
 ますますおかしい。
 私以外の人達は顔を背けクスクス笑っている。

「シャーロットがなぜホラを吹……いやあれは思い込みをしてるだけ? まさかメンヘラっ気があるのか?」

 誤解が解けて良かったものの、すごい言われようである。
 この分だと自爆するのは時間の問題なんだけれど、私は大丈夫なんだろうか?



「なるほどな? 夏季休暇をまるまる使って、神の牢獄場所を探しに最果ての地に赴くってことか」
「そう言うことだ」

 別室に通され世界地図を広げフランダー教授は一通りの説明をした後、アーサーがため息混じりで要約する。
 やる気なく聞いていた割には、ちゃんと聞いて理解してたんだ。

「ふざけんなと言いたいとこだが、オレには拒否権がないから諦めるよ」

 言葉通りもう完全に諦めきって開き直っている。
 言い争いを期待していただけに、ちょっと残念だ。

「懸命な判断だ。スタンフィール姉妹はどうだ?」
「私達でも大丈夫そうなので、同行します」
「でも念のため一人護衛を手配します」
「それはありがたい」

 やる気に満ち溢れている双子の気の利いた計らいに、フランダー教授はこれ以上もないぐらいご機嫌だ。なんだかそんな姿を見ていると私まで嬉しくなってしまう。

 これで神に出会えたら、どうなっちゃうんだろうね?

「そんなに教授のことが気になりますか?」
「そうですね? いろんな意味で気になります」

 ロッシュ先輩の問いに、私は素直に即答する。
 恋愛感情とかじゃないから、別に気づかれたって構わない。
 私のイメージとかなりギャップがあるから、彼の行動や反応に一つ一つが気になるだけ。

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