生みの親が悪役令嬢に転生!?~破滅ルートを回避するため、恋愛ゲームを辞めます。今日からアドベンチャー~

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
10 / 56

10

しおりを挟む

「それにしてもシャーロットの奴はムカつきますね」
「そうね? でも分かってくれたから、結果オーライでしょ? やっぱりほっとくのが一番なのよ」

 ステーキを優雅に食べながら言うと思ったケイトの愚痴に、賛同することなくポジティブ思考で言葉を返す。
 本当は張り倒しに行きたいところだけれど、そんなことしたらせっかくの延命措置が水の泡になる。

 このまま私を孤立させる気なんだろうね?
 だけどヌクと双子が私の傍にいて、婚約破棄も穏便にできれば、私はノーダメージ。

「お嬢様、本当にシャーロットの興味がなくなったのですね? ですが私はお嬢様を貶されて、凄く不愉快です」
 
 そう思ってくれるだけで、私は充分です。

「ケイトさん、安心してください。あのいけ好かない平民は私達が懲らしめておきましたから」
「へぇ?」

 そこへクラスメイトのミレアとその取り巻きがやって来て、私達の話を聞いていたのか当然のように高々と報告してくれる。

 彼女もエミリーと同じ悪役令嬢。エミリーの陰に隠れ影が薄くなっているけれど、実は相当高飛車で癖のあるキャラだ。
 私がいじめなくなっても、彼女がいるからいじめはなくならない。

「本当ですか? ありがとうございます」
「いえいえ。エミリーさんが何もしなくなったことをいいことに、心優しい殿方達にぶりっ子しているんですのよ? 聞いた所自分が悪いと言いながら、裏を返せばエミリーさんが悪いと言いふらしているんですの。今はヌクを救いたいと言ってとか言わないとか」

 ケイトに感謝され機嫌を良くしたミレアは、聞いてもいない情報をぺらぺらとしゃべりだす。
 すごい情報通と感心するも、最後の情報に疑問を抱く。

 ヌクを救いたいって何?
 ヌクはこの通り元気いっぱいで、何か困って……

「ヌクはシャーロットと話したことあるの?」
「ないよ。もちろん困ってることもまったくない」

 本人に聞いてみるも、心当たりがいようで首を横に振った。
 私達は顔をしかめ、首をかしげる。

 シャーロットが嘘ついている?
 なぜ?

 いくら私を蹴落としたいからって、嘘をつくのはよくない。嘘は一つじゃ終わらなくなって、バレたら最悪信用を失ってしまう。
 そしたら私同様に破滅するんだけれど、その辺ちゃんと分かってるんだろうか?
 バグを起こしたら、何をしでかすか本当に分からないな。

「やっぱりほっときましょ? 元はと言えばいじめ過ぎた私が原因なんだし、気が済むまでやらせておけばいいわ」
「やられっぱなしでもいいですの? 誤解されて困るのはエミリーさんの方よ」
「もちろん誤解は解きますが、それに嘘の噂なら時間が経てばそのうちおさまるでしょ?」

 ますます関わりたくないと再確認し遠ざけようとしているのに、双子同様ミレアはそれを許してくれない。それでも私は負けずに涼しげに言い返す。
 これで駄目ならヌクに何も困ってないって言って、誤解を解いてもらうしかなさそう。

「さすがエミリーさん。平民が何を言われようが気にしないのですのね? 言われてみればそれもそうですね。これからは私達も無視をしようと思います」
「え、あうん。でも最低限のことは話さないと、ダメだと思うの」

 変な解釈されやたらに納得されるけれど、ガン無視だけは辞めるように忠告する。

 最低限の会話さえすれば問題ないと……思う。
 もし私だったら今まで散々いじめられた連中と和解なんか出来るはずがない。ほっといて欲しい。

「エミリー様って人間出来てますね。みなさんもあの平民とは必要最低限の会話以外は無視しなさい」
『はい』

 号令なんてしなくても良いのに掛けられ、取り巻き達は声をハモらせ了解する。
 いつどこの世界でも、女の連帯感強し。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生侍女は完全無欠のばあやを目指す

ロゼーナ
恋愛
十歳のターニャは、前の「私」の記憶を思い出した。そして自分が乙女ゲーム『月と太陽のリリー』に登場する、ヒロインでも悪役令嬢でもなく、サポートキャラであることに気付く。侍女として生涯仕えることになるヒロインにも、ゲームでは悪役令嬢となってしまう少女にも、この世界では不幸になってほしくない。ゲームには存在しなかった大団円エンドを目指しつつ、自分の夢である「完全無欠のばあやになること」だって、絶対に叶えてみせる! *三十話前後で完結予定、最終話まで毎日二話ずつ更新します。 (本作は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています)

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照
ファンタジー
 断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。  ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。  シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。  目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。 ※なろうにも投稿しています

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...