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しおりを挟む「それにしてもシャーロットの奴はムカつきますね」
「そうね? でも分かってくれたから、結果オーライでしょ? やっぱりほっとくのが一番なのよ」
ステーキを優雅に食べながら言うと思ったケイトの愚痴に、賛同することなくポジティブ思考で言葉を返す。
本当は張り倒しに行きたいところだけれど、そんなことしたらせっかくの延命措置が水の泡になる。
このまま私を孤立させる気なんだろうね?
だけどヌクと双子が私の傍にいて、婚約破棄も穏便にできれば、私はノーダメージ。
「お嬢様、本当にシャーロットの興味がなくなったのですね? ですが私はお嬢様を貶されて、凄く不愉快です」
そう思ってくれるだけで、私は充分です。
「ケイトさん、安心してください。あのいけ好かない平民は私達が懲らしめておきましたから」
「へぇ?」
そこへクラスメイトのミレアとその取り巻きがやって来て、私達の話を聞いていたのか当然のように高々と報告してくれる。
彼女もエミリーと同じ悪役令嬢。エミリーの陰に隠れ影が薄くなっているけれど、実は相当高飛車で癖のあるキャラだ。
私がいじめなくなっても、彼女がいるからいじめはなくならない。
「本当ですか? ありがとうございます」
「いえいえ。エミリーさんが何もしなくなったことをいいことに、心優しい殿方達にぶりっ子しているんですのよ? 聞いた所自分が悪いと言いながら、裏を返せばエミリーさんが悪いと言いふらしているんですの。今はヌクを救いたいと言ってとか言わないとか」
ケイトに感謝され機嫌を良くしたミレアは、聞いてもいない情報をぺらぺらとしゃべりだす。
すごい情報通と感心するも、最後の情報に疑問を抱く。
ヌクを救いたいって何?
ヌクはこの通り元気いっぱいで、何か困って……
「ヌクはシャーロットと話したことあるの?」
「ないよ。もちろん困ってることもまったくない」
本人に聞いてみるも、心当たりがいようで首を横に振った。
私達は顔をしかめ、首をかしげる。
シャーロットが嘘ついている?
なぜ?
いくら私を蹴落としたいからって、嘘をつくのはよくない。嘘は一つじゃ終わらなくなって、バレたら最悪信用を失ってしまう。
そしたら私同様に破滅するんだけれど、その辺ちゃんと分かってるんだろうか?
バグを起こしたら、何をしでかすか本当に分からないな。
「やっぱりほっときましょ? 元はと言えばいじめ過ぎた私が原因なんだし、気が済むまでやらせておけばいいわ」
「やられっぱなしでもいいですの? 誤解されて困るのはエミリーさんの方よ」
「もちろん誤解は解きますが、それに嘘の噂なら時間が経てばそのうちおさまるでしょ?」
ますます関わりたくないと再確認し遠ざけようとしているのに、双子同様ミレアはそれを許してくれない。それでも私は負けずに涼しげに言い返す。
これで駄目ならヌクに何も困ってないって言って、誤解を解いてもらうしかなさそう。
「さすがエミリーさん。平民が何を言われようが気にしないのですのね? 言われてみればそれもそうですね。これからは私達も無視をしようと思います」
「え、あうん。でも最低限のことは話さないと、ダメだと思うの」
変な解釈されやたらに納得されるけれど、ガン無視だけは辞めるように忠告する。
最低限の会話さえすれば問題ないと……思う。
もし私だったら今まで散々いじめられた連中と和解なんか出来るはずがない。ほっといて欲しい。
「エミリー様って人間出来てますね。みなさんもあの平民とは必要最低限の会話以外は無視しなさい」
『はい』
号令なんてしなくても良いのに掛けられ、取り巻き達は声をハモらせ了解する。
いつどこの世界でも、女の連帯感強し。
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