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3「エミリー大丈夫?」
「ええ。あなたがここまで運んでくれたの?……ありがとう」
「どういたしまして」
「は、エミリーがお礼だと? 正気か?」
ドアが開き本気で心配してくれるキャーロットに、ぶっきれぼうに小声でお礼をする。
微笑みシャーロットに対して、背後でレオは目を見開き戸惑う。
何か理由は分かっていても、実際やられるとムカつく奴だな。
「私だって感謝ぐらいしますし、悪いと思ったら謝ります。シャーロット、さっきはごめんなさい。それでちょっと女同士の話があるんだけれどいい?」
まだ誰も見たことがないエミリー攻略が始まった。
本当は攻略される側なんだけれど、そんなのこの際どうでも良い。
「え、うんいいよ。レオ、席を外してくれる?」
「シャーロット。君は人が良すぎる。そんなの罠に決まってる」
シャーロットは疑わず二つ返事で頷いてくれたのに、レオは怪訝しく反対し私から守ろうと一歩前に出る。当然の反応。
今までエミリーに散々いじめられていたのに、疑わず信じようとするシャーロットがどうかしている。
私にとっては、好都合だけれど。
「罠ではありません。絶対にシャーロットを傷つけるような真似はしないと誓いますので、十分だけで時間を下さい」
必死になって頭を下げお願いをする。プライドが高いエミリーが絶対にやらない行動に、レオは再び驚き声をなくし硬直する。頭は大パニックなんだろう。
可哀想だなと思いつつも、私の運命が掛かっているから構ってられない。
硬直状態のレオを部屋から追い出し、ドアをバンと閉め鍵を掛ける。
約束通り十分で片を付けないと、私はここでおそらく殺されるだろう。
レオの確定婚約破棄イベント①が発生すれば、女魔王覚醒のカウントダウンは始まってしまう。だから出来るだけ先延ばしにしたい。
「シャーロット、本当に今まで嫌がらせをしてごめんなさい。今さら言っても信じてもらえないと思いますが、私は私なりにレオを愛しています。だから私はレオに相応しい女性になるため、幼少の時からいろいろと厳しい教育を受けて来ました。聖女候補に選ばれた時も同じです。それなのに途中から現れたあなたにすべてを奪われるのが怖くって、つい嫌がらせばかりしてたの。でもそれは全部逆効果だったわ。レオがあなたを好きになるのは当然ね」
シナリオで書いた長台詞を感情込めて言いながら、最後に淋しげに笑ってみせる。我ながら大女優だなと感心してしまう。でもそれは随分都合の良いこと。
シャーロットならそんな私をきっと受け入れてくれるは……、
「はっ!? 今さら何善人ぶってるんですか? 今まで私を散々いじめといて、謝って許されると思っているんですか? そんな都合のいい話があるわけないでしょ?」
「……え?」
さっきまでのシャーロットは、一体全体どこへやら?
王道清純派主人公だよね?
ベッドの上にどかんと足を組んで座り、悪魔の笑みを浮かべる。聞き捨てならない台詞を吐き捨てた。
あまり変貌ぶりに一瞬何が何だか分からず、頭の中に大量の?が飛び交いフリーズ状態。
彼女の回答はごもっとも過ぎ何も言い返せない。それよりもその態度と言い方の方が信じられなかった。
これじゃぁまるで腹黒。私はそんな風に書いた覚えはない。
シャーロットはどんな相手でも許してくれる聖女に相応しい少女のはず。
「そんな顔したって私はあなたを絶対に許さない。あなたが恐れているすべてを奪って蹴落としてみせるわ。これ以上もないぐらいの絶望を味わって下さい」
「…………」
「じゃぁそういうことで。もし本当に心を入れ替える気があるのならば、これまでの悪行を大いに反省して下さい。まぁ無理だと思いますけれど」
ってシャーロットは憎しみを込め言い捨て、部屋から優雅に出ていく。
まるで立場が逆である。
「レオ、話は無事に終わりました。帰りましょう」
「何もされなかったか?」
「はい。ですから心配はご無用です」
レオにはもちろん今までと同じように話すシャーロット。
何も知らないレオはホッとしたらしく、さっきの怒りは消え失せた。
二人の足音は、徐々に遠ざかっていく。
猫かぶりとも思う行動だけれど、シャーロットの腹黒は私にだけなのかもしれない。
考えてみればシャーロットの言う通り、エミリーは散々いじめて見下していた。偉そうに宣戦布告までした癖に、いきなり今までの悪行を謝罪し許しを得ようとする。
今思えばやっぱり都合が良すぎる。
それで許されるのは空想の世界だけ。リアルではけして許されない。
自業自得。身から出た錆。
ここは潔く運命を受け入れた方が……んなことできるか!!
エミリーは私だけど、私ではない。なんとかして破滅ルートを回避しなければ。
「ええ。あなたがここまで運んでくれたの?……ありがとう」
「どういたしまして」
「は、エミリーがお礼だと? 正気か?」
ドアが開き本気で心配してくれるキャーロットに、ぶっきれぼうに小声でお礼をする。
微笑みシャーロットに対して、背後でレオは目を見開き戸惑う。
何か理由は分かっていても、実際やられるとムカつく奴だな。
「私だって感謝ぐらいしますし、悪いと思ったら謝ります。シャーロット、さっきはごめんなさい。それでちょっと女同士の話があるんだけれどいい?」
まだ誰も見たことがないエミリー攻略が始まった。
本当は攻略される側なんだけれど、そんなのこの際どうでも良い。
「え、うんいいよ。レオ、席を外してくれる?」
「シャーロット。君は人が良すぎる。そんなの罠に決まってる」
シャーロットは疑わず二つ返事で頷いてくれたのに、レオは怪訝しく反対し私から守ろうと一歩前に出る。当然の反応。
今までエミリーに散々いじめられていたのに、疑わず信じようとするシャーロットがどうかしている。
私にとっては、好都合だけれど。
「罠ではありません。絶対にシャーロットを傷つけるような真似はしないと誓いますので、十分だけで時間を下さい」
必死になって頭を下げお願いをする。プライドが高いエミリーが絶対にやらない行動に、レオは再び驚き声をなくし硬直する。頭は大パニックなんだろう。
可哀想だなと思いつつも、私の運命が掛かっているから構ってられない。
硬直状態のレオを部屋から追い出し、ドアをバンと閉め鍵を掛ける。
約束通り十分で片を付けないと、私はここでおそらく殺されるだろう。
レオの確定婚約破棄イベント①が発生すれば、女魔王覚醒のカウントダウンは始まってしまう。だから出来るだけ先延ばしにしたい。
「シャーロット、本当に今まで嫌がらせをしてごめんなさい。今さら言っても信じてもらえないと思いますが、私は私なりにレオを愛しています。だから私はレオに相応しい女性になるため、幼少の時からいろいろと厳しい教育を受けて来ました。聖女候補に選ばれた時も同じです。それなのに途中から現れたあなたにすべてを奪われるのが怖くって、つい嫌がらせばかりしてたの。でもそれは全部逆効果だったわ。レオがあなたを好きになるのは当然ね」
シナリオで書いた長台詞を感情込めて言いながら、最後に淋しげに笑ってみせる。我ながら大女優だなと感心してしまう。でもそれは随分都合の良いこと。
シャーロットならそんな私をきっと受け入れてくれるは……、
「はっ!? 今さら何善人ぶってるんですか? 今まで私を散々いじめといて、謝って許されると思っているんですか? そんな都合のいい話があるわけないでしょ?」
「……え?」
さっきまでのシャーロットは、一体全体どこへやら?
王道清純派主人公だよね?
ベッドの上にどかんと足を組んで座り、悪魔の笑みを浮かべる。聞き捨てならない台詞を吐き捨てた。
あまり変貌ぶりに一瞬何が何だか分からず、頭の中に大量の?が飛び交いフリーズ状態。
彼女の回答はごもっとも過ぎ何も言い返せない。それよりもその態度と言い方の方が信じられなかった。
これじゃぁまるで腹黒。私はそんな風に書いた覚えはない。
シャーロットはどんな相手でも許してくれる聖女に相応しい少女のはず。
「そんな顔したって私はあなたを絶対に許さない。あなたが恐れているすべてを奪って蹴落としてみせるわ。これ以上もないぐらいの絶望を味わって下さい」
「…………」
「じゃぁそういうことで。もし本当に心を入れ替える気があるのならば、これまでの悪行を大いに反省して下さい。まぁ無理だと思いますけれど」
ってシャーロットは憎しみを込め言い捨て、部屋から優雅に出ていく。
まるで立場が逆である。
「レオ、話は無事に終わりました。帰りましょう」
「何もされなかったか?」
「はい。ですから心配はご無用です」
レオにはもちろん今までと同じように話すシャーロット。
何も知らないレオはホッとしたらしく、さっきの怒りは消え失せた。
二人の足音は、徐々に遠ざかっていく。
猫かぶりとも思う行動だけれど、シャーロットの腹黒は私にだけなのかもしれない。
考えてみればシャーロットの言う通り、エミリーは散々いじめて見下していた。偉そうに宣戦布告までした癖に、いきなり今までの悪行を謝罪し許しを得ようとする。
今思えばやっぱり都合が良すぎる。
それで許されるのは空想の世界だけ。リアルではけして許されない。
自業自得。身から出た錆。
ここは潔く運命を受け入れた方が……んなことできるか!!
エミリーは私だけど、私ではない。なんとかして破滅ルートを回避しなければ。
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