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第七話
しおりを挟むグッドナイト、そう呼ばれたマスターは急にハハッと天井を仰いで笑った。
「どうにも、東の大地だとこちらの言葉は発音しづらいようでね」
はぁ、と息を吐きながら首を振る。
「グッドナイト、と言ったのに、見事にゲンナイと呼ばれた時にはまったく、驚いたがしっくりきた。東の大地の人間になったような気がしてな」
口振りも身振りも、先ほどまでのマスターとは打って変わっていた。
「何者か知らんが、よく調べて歩いたもんだ。そこまでして、いや、ここまで辿り着いて、お前さんは何がしたい」
マスターが腕に着けていた時計を回すと、ピピッと音がして彼の周りの空間がボンヤリと歪んで光った。
そして、パラパラと壁が剥がれ落ちるかのように、姿が変わっていく。
「やはり、高度光学ホログラフィーでしたか。さすがは元科学博士ですね」
フン、と鼻を鳴らし、マスターは時計を回す手を止めた。
背中が少し曲がり、小柄で白髪、白ひげにシワだらけだった姿は、ブラウンの束ねられた髪がよく似合う、背の高い中年の男へと変わっていた。
メロウが指をさした写真に写っていた男だ。
「わたしと話していた間も、ノイズひとつ走らない。そんな品を持ちながら、なぜ東の大地では使わずにいたのですか?」
彼の問いかけに、グッドナイトはやれやれと時計を外してカウンターへ置いた。
「こいつは、ここに・・・西に戻ってきてから、ちょっとした知り合いにもらったやつを改造したんだ。あん時はとにかく、何も考えずに東へ向かったからな」
メロウはちらりと時計に目をやり、また視線を真っ直ぐグッドナイトへと戻した。
二人の視線が交差する。
「おまえは分かっていたんだろう。マスターのあの姿がホンモノじゃないことも、全て。なぜそんなショーのように披露した?直接言えば、すぐだっただろう」
その言葉に、メロウはぺこりと頭を下げた。
「それは本当に申し訳ありませんでした。ただ、すごく一生懸命調べたものですから・・・誰かに聞いていただきたくて。でも、本人以外に話す訳にはいかないでしょう?もし、話してしまえば・・・あなた方はきっと捕まります」
それを聞くと、グッドナイトはそういう事か、と言いたそうに溜め息を吐いた。
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