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生きていくためには

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足を何度も止めたくなった。何度も振り返って、母さんが追って来ているか確かめたかった。
でも、母さんとの約束「生き残る」を守るために、母さんとの最後の約束を守るために走った。

時間の感覚がなくなる。足の感覚もなくなってきた。
それでも足を止めるわけにはいかなかった。

村が遠くに見えていることだろう。森の中を突き進む。
辺りは暗くなってきた。森の中の急な坂道を息を切らして走る。

前へ進み続けた。日が暮れて、完全に夜になる。森の中は真っ暗で何も見えない。
その時、遠くに明かりが見えた。
その明かりを目指して進んだ。

近づいてきてわかった。あの明かりは、家の明かりだ。
誰かいる。
敵かもしれない。殺されるかもしれない。
そのことに気がついた。
確かめるにしても、体力が限界だ。
敵だった場合、逃げ切れないだろう。

安全を考慮して、近くの洞窟で休憩することにした。

いざ休憩したところまではいいが、衝撃なことが起こりすぎて眠れない。
瞼を閉じると、あの光景が浮かんでくる。

時間を少しでも有意義に使うため、この世界のことを復習することにした。


ここは異世界「ノスタルジア」。剣と魔法の世界。
記憶によると、母は料理の時に魔法を使っていた。だから、魔法は使えるはずだ。
そして、今俺は6歳で、今日が誕生日だった。
父さんは戦争で兵士として連れていかれた。母さんは…さっきの通りだ。
今までの記憶が鮮明に思い出せる。

生まれてからの幸せな記憶。前世の空っぽの記憶。
母さんとの約束がなかったら、俺は自殺していただろう。
母さんはそれも見越していたのだろうか。

お腹がすいているはずなのに何も食べたくない。
これからどうすればいいのだろう。
6歳の子供が一人で生きていけるほどこの世界は優しくない。

味方は誰ひとりとしていない。
頼れる人もいない。
この世界で俺はひとりぼっち。
こんな状況でどうすればいいのか。

答えは簡単だ。誰か保護者の代わりを見つければいい。
でも、実際に見つけるのは難しいだろう。

理由は、戦争でこんな状況の子供なら山ほどいるからだ。
戦争がなくても、孤児の引きとり先は僅か。

今日、明日だったら一人でも生きていけるかもしれない。
けれど、1年後は?まず、無理だ。

世の中、生きていくには金が必要。
ご飯を食べるにしても、生活するにしても。

俺は、とりあえず生きていくために金を稼ぐことにした。
年齢制限のない、子供でもできる職。
それは冒険者それだけだ。

冒険者とは、命がけで戦う職業だ。完全に実力主義。
命に比べると対価は少ない。でも、これしかない。

今冒険者になったら間違いなく戦場に行くことになるだろう。
命の危険がある。でも、生きていくためだ。人を殺めるのはやりたくない。
でも、約束を守るためだ。そのためだったらなんだってする。決めたことだ。

冒険者ギルドのある街を探すことにした。
確か、この森を抜けたら大きな町があったはずだ。
そこで、冒険者登録をしよう。

そう決めてから、俺は町を目指してひたすら歩き続けた。

何日かしたら、町に着いた。
襲撃に会ったのは俺の住んでいた村だけだったみたいだ。
町はいつもどおりに見えた。

冒険者ギルドに向かう。

今更気がついたことだが、俺は文字が読めるらしい。完全に日本語とは違うが読める。

「カラン」
ドアについているベルが鳴る。

「新規冒険者登録をしたいのですが…」

「わかりました。この用紙に必要事項を記入してください」

文字の方は読むだけではなく、書くことも可能みたいだ。

「できました」

「それでは、この水晶に手をかざしてください。」

水晶が光る。

「あなたは、攻撃魔法の適性があるみたいですね。全属性使えるのは珍しいですよ。」

「そうなんですか。」

「あなたはFランクなので基本薬草集めや雑用ですが、今は人手が足りないので戦場に行けます。戦場の方が報酬は高いけれどどうしますか?」

「では、戦場へ行きますね。場所はどこですか?」

「明日、朝8時に噴水前に集合していただければ、転移魔法陣でいけますよ。」

「ありがとうございました。」


こうして、冒険者登録を無事終えることができた。

明日に向けて、準備をしなくてはいけない。
お金は持っていないが何とか武器の調達をするしかない。

武器屋を探して入る。

「いらっしゃい!おや、坊主どうしたんだい?おつかいかね?」

「いえ。明日から戦場に行くことになったのですが、僕にも使えそうな安い武器はありませんか?」

「坊主も戦争へ行くのかい!?それは大変だね。」

「実は、今、お金を持っていないのですが後払いッテできますか?」

「お金がないのか…後払いはできない。」

「そうですか…」

「だが、試作品の武器ならある。それをあげよう。」

「ありがとうございます。」

「坊主は魔法使いかな?」

「全属性使えるみたいですが…使ったことはないです。」

「それなら、短剣と杖でいいな」

「代金は…「いらないよ。試作品だからね。」ありがたいです。」

「気を付けるんだよ。またな。」


俺は短剣2本と杖をもらって、店を出ていった。

~~~~~~~~~
こんにちは!美空です!(*'▽')

暗いスタートですみません(>_<)
ですが、リヒトには最終的には幸せになってもらうので安心してください!

これからもよろしくお願いします。
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