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僕、脱出する1

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そろそろ、森の中に入るようだ。
御者の話によると、僕の乗ったこの馬車は王都の闇オークションに向かうようだ。
でも王都に入るには関所を通らなければならないのでそこでもしかしたら見つけてもらえるかと思いきや、
すでに衛兵は買収されているらしい。
このままでは、変態ジジイに買われるに違いない。
何とかして逃げなくては!他人はあてにならない。自力で脱出しなくてはいけない。

でも、魔法なんてものはこの世界には存在するが使い方がわからないし…
確か、蛇獣人は魔法が得意ではないんだよね~
というか、獣人自体が魔法を使える種族が少ないからな…
だから、僕も両親が魔法を使っているのは見たことがないので使い方すらわからない。

でも、前世のゲームなら詠唱をすれば魔法は使えるんだよね~
だったら僕も詠唱をって何を言えばいいのかな?

試しにやってみるか。
やっぱり、誰しもがやってみたいと思う魔法を!

『ファイヤーボール!!』

しーん…
何も起こらない。
もう一度言う。な、に、も、起、こ、ら、な、い、!!
やっぱり、僕は出来損ないなんだ。自分に自信なんてものは元からなかったけれど、
がっかりするものはがっかりする。
恥ずかしい独り言でも誰も見ていないだろうけどやっぱり恥ずかしい。
穴があったら入りたい…というか、穴がなかったら自分で穴を掘るくらい恥ずかしい。
その時、モグラみたいに土に潜っている自分の姿を想像して少し笑ってしまった。
さっきまでなくなってきていた気力というか元気が出てきた。
相変わらず体は衰弱して動かないままだけど。

もしかすると、僕の種族は魔法が使えないのだろうか?
うん。きっとそうだろう。そういうことにしておこう!

現実逃避をしてしまう。
もう少ししたら森から出てしまうかもしれない。
そうしたら、確実に逃げられないよ。

獣人は、前世の僕よりも、人間よりも力が強い。
でも、この世界は獣人しかいないから比較対象がいない。
檻だって獣人用のはず。
自分で壊すなんてことできるわけない。

しかし、万が一壊せたとしても元々病弱だった僕だ。
すぐに体力が尽きて捕まってしまうだろう。

あとできることは、、、

「神様、仏様、精霊様、どうかお助けください。」と神に祈るくらいしかない。

でも、僕は神様に祈るときは日ごろの感謝を述べることにしている。

神様に願いごとを叶えてもらえるなんてことは、めったに…いやないわけだから、
日ごろの感謝を述べていたほうがいいんだって前世のじいちゃんも言っていた。


だから、僕は神様に…この世界では精霊信仰が強いので精霊様か。
に日ごろの感謝を述べた。あと、少しの願い。僕の最後の願い。

「精霊様、今までありがとうございました。病弱だったけど、生きていられるだけ幸せだったし、
二日に一食だったけどご飯ももらえて薬も与えられた。
だから、今まで僕なんかを生かしておいてくれてありがとうございました。
もしも、生まれ変われるならば次は愛されてみたいです。」

これでいいんだと思っている。
人生最後の祈りか~はぁ。
でも、僕は幸せだったな。

生きることを諦めて、早く楽にならないかな、とその時をじっと待っていた。

すると、僕の前になんかちっこくてふわふわ飛んでいるものがあらわれた。
一匹じゃない。たくさんのふわふわが飛んでいる。

そろそろ僕もじいちゃんのところに行くのかな~と思っていると、

『君を必要としてくれている人がまだいる。僕もその一人だ。だから生きなさい。
この者に精霊の祝福を!』

誰かの声が聞こえた。

「なんかたくさんいるね!?あと、今のだれの声??」

「せっかく僕が来てあげたのに、何勝手に死のうとしているんだよ!?
あと、今のは精霊王様!!僕じゃないよ!」

「助けに来てくれたんだ…ありがとう。君は精霊様なんだ~」

「そうだよ!君は精霊の愛し子だよ!」

「そうだったんだ~精霊の愛し子って何??」

「ねえもうすぐこの森を抜けるわよ?大丈夫なの?」

「う~んと…僕をここから出すことはできないのかな?」

「できるさ!僕は大精霊なんだから!!」

「じゃあ、お願いできるかな?」

「オーケーおーけ!僕に任せて!」




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