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春
しおりを挟むきゃー、おめでとぉ!
その日の夢に、サキュバスの二人が現れた。
実に半年以上ぶりである。
何だか二人は手を取り合って喜んでいる。
喜びな、アンタ妊娠したんだよ♪
「えっっ?」
サシャはびっくりして飛び上がったが、毎日散々中に出されたので出来たのかもと思い直した。
あーん、でも安心して。
子宮はちゃんと残るから。
これからもいっぱいエッチしてね♡
毎日、竜族の美味しい精液食べさせてくれてありがとぉ。
おかげで、あたしたちすっごく強くなれたから女王になれるかもぉ。
名残惜しいけど、これも契約みたいなもんだもんね♡
お礼に私たちから赤ちゃんへプレゼントをあげちゃう♪
サキュバスのプレゼントなんて面倒そうなのでサシャは全力で遠慮したが、二人は近付いて来ると、チュッと音を立てて同時にサシャの頬へキスをした。
「うっわぁ!」
びっくりして飛び起きると、もう朝だった。
カーテンの隙間から暖かい日の光が入って来ている。
最近は気温が高い日が多くなっていた。
雪が雨になる日が多くなり、外は少しづつ雪解けが始まっていて、ベッドの住人になっているサシャでも春が近付いているのが分かる。
しかも春が近付くに連れ、アルバはサシャに飽きるどころかますますしつこく求めるようになっていた。
おかげで最近のサシャはずっと裸で過ごす羽目になっている。
「変な夢見た……」
サシャはのそのそと起き上がって、酷い執着の跡を見てから自分の下腹部を見た。
そこには淫紋がある、はずだった。
「あれ?」
「アルバぁ、おはよう」
サシャは風呂に入ってさっぱりしてから、久しぶりにちゃんと服を着た。
アルバはと言うと、台所で食料の残りを数えていた。
「おはよう、サシャ」
アルバは在庫の整理を止めると、手早くスープを皿に注いでサシャに出した。
最近のアルバはますます甲斐甲斐しくサシャの世話をしている。
リリアに聞いたところ、竜族は『番』に対して鬱陶しいほど世話を焼きたがるのだそう。
「リドリーなんかもっと凄いから!
この間なんかしつこいって怒ったら、床に寝てたから」
その時の光景を思い浮かべて、サシャはリドリーがかわいそうになったものだ。
「どうした?」
サシャがぼーっとしているとアルバがスツールを引いて来て隣に座った。
「ああ、そうだ。 これ見て」
はっと我に返って、サシャは服を捲って下腹部を見せた。
「淫紋が消えてる」
アルバが「はっ」と息を飲んだ。
「サシャ、良かった」
そしてぎゅっと抱きしめられる。
「魔力の流れも変わってる。
多分、妊娠した」
「やっぱり? 実は夢にサキュバスが出て来てさぁ」
サシャはアルバにさっき見た夢の話をした。
それを聞いたアルバが苦々しげに「俺が一番に祝いたかったのに」と言ったので、サシャは笑ってしまった。
「何て言ったらいいんだろう? おめでとう? ありがとう?
兎に角、目出度いな」
それから両親に話しに行こうと言われ、食事の後出かける事になった。
外に出ると雪解けで滑りそうだからと言われ、サシャは過保護なアルバに背負われて実家まで行った。
*****
「あらあら、おめでとう!」
「良かったな、二人とも」
アルバの実家に行って話をすると、リリアもリドリーもとても喜んでくれた。
二人の話によると、種族の違う者同士の子供は魔力が多い方の出産方法になるらしい。
サシャの場合は竜族であるアルバの方が魔力が多いので卵で生まれるだろうと言われた。
魔力が多い種族は必然的に身体が大きい。
なので母体に負担がかからない様に、未熟な小さいうちに卵で生まれる。
「でもねー、エルフは胎生なのよね。
だから、アルバの時はどっちで生まれるか分からなくて、エルフのお医者さんに来てもらったのよ」
リリアは昔を思い出して懐かしんでいた。
それから妊娠中の心構え、これから必要な物を教えてもらう。
卵で生まれる場合は危なげなく出産できるそうなので、特に手伝ってもらう事もないそうだ。
でも、何かあったら必ず連絡するようにと約束させられて、たくさんお土産を持たされて、サシャとアルバは家に帰された。
その後、長老宅にも報告に行くのだが、長老にサシャの呪いの事を伝えていなかった為に混乱させてしまった。
そこで改めて今までの経緯を離したのだが、案の定叱られてしまう。
だが、最後には長老も喜んでくれて、二人は幸せな気持ちで出産に挑むことが出来たのである。
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