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満月の夜 *

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 従業員に案内されたのは離れのコテージだった。
 この宿は以前、アルバが護衛の仕事をしたときに利用したことがある場所だ。
 コテージは川に面していて他の客には出会わない作りになっているので、アルバは元からここへ泊るつもりであった。
 従業員に明日の朝まで誰も来させないように、と言って金を握らせると、ドアに鍵を掛ける。

「アルバ……、アルバ、ごめん…なさい」
「良いから、俺に任せろ」
 アルバの腕の中からベッドへに降ろされたサシャは、熱に浮かされた頭でアルバに謝り続けた。
 そんなサシャの額にアルバは落ち着かせる様にキスを落としながら、二人の衣服を寛げて行く。

 だが、アルバは不思議に思っていた。
 サシャと交わったのはつい二日前の事だ。
 いつもなら一週間以上は持つのだが、と。

 それに今回は急に匂いがした。
 いつもは少しずつ匂いが濃くなるので、嗅覚が敏感な竜蔟ならば数時間前には異変に気付くのに、今回は全く気付かなかった。
(サシャに何か起きているのだろうか?)

 とにかく、サシャを落ち着かせようとアルバは準備を始めた。
 すっかり慣れた手付で後ろを解し、トロトロと愛液を溢す後孔に先ずは一本、指を入れて様子を見る。
「あぁん!」
 それだけでサシャはビクっと身体を反らし、指をきゅっと締め付けた。
「もぉだいじょうぶだから、はやくぅ」
 舌足らずにしゃべるサシャが可愛いらしく、直ぐにでも繋がりたいとアルバは思ったが、怪我はさせたくないので準備は怠らない。
 本能のままに貪りたい気持ちもあるが、普段からサシャに信頼してもらえるように我慢しているのだ。

 サシャは一見、素直で優し気でやたらと人に気を遣うが、その実とても強かである。
 なかなかにしっかりしているし、よく人を見ているし、気持ちを隠すのが上手い。
 まぁ一人で何年も暮らしていたのだから当然か、とアルバは思った。
 だから本当に信頼してもらうには時間が掛かるだろう。
 折角ここまで来たのだから、自分の我慢が利かないせいでサシャに嫌われたくはない。

 大体、アルバはこんな事を他の者にしたいとは思えないのだ。
 最初からサシャは特別だった。
 だから今だに見つけられていない『番』がサシャなら良いのにと思った。


 そんな事を考えながら、アルバは片方の手をサシャの少し汗ばんでしっとりした肌に這わせる。
 そして辿り着いた小さな尖りをきゅっと摘まんだ。
「ああぁ!」
 サシャはその刺激に身体を反らせる。
「アル、バ……きもちいい」
 涙目で訴えるサシャが可愛くて、アルバはその唇に噛り付いた。

 アルバの厚みのある長い舌がサシャの口内を蹂躙していく。
 薄い舌を絡めとり、下の裏側をなぞる。
 歯列をなぞって、歯頚を撫ぜ、喉の方まで舌を延ばす。
 サシャは一瞬苦しそうにしたが、健気に耐えてアルバの舌を喉の奥へ受け入れた。
「んんぐ……」
 サシャの口の端から飲みきれなかった唾液が零れる。


 サシャはと言えば、早く入れて欲しくて身体を捩るが、アルバに股の間にアルバの太ももを入れられてしまいあまり動けないでいた。
 仕方なくそこへ自分を擦り付けて、勝手に前でも気持ち良くなる。
 呪いのせいなのか自分は本能のままにして欲しいのに、理性のあるアルバはそんな事はしてくれない。
 いつも体格差を気にしているのかゆっくり、優しくしてくれる。
(はげしくしてほしい、アルバがほしいよ!)

「んぐぅ……」
「すまん!」
 アルバは一瞬、我を忘れてサシャを味わってしまったが、苦しそうに呻いたのに気付き身体を離した。
 すると、サシャはするりと身体を起こし、アルバの膝に乗る。

「アルバ、アルバも欲しいよね? もうこんなになってるよ。」
 上になった途端、サシャの緑色の瞳の奥が妖艶に光った。
 片手でアルバのモノをゴシゴシと扱きながら、性急にそこへ腰を落とす。
「待て、サシャ!切れるぞ」
「へいきだも、んんん……あ、あぁぁ」
 アルバのモノは相変わらず大きくて少しきつかったけれど、サシャにはそれも気持ち良かった。
 最後にぺちりとアルバの膝にお尻を付け、サシャは怒張を全て自分の中に収める。

「ほら、ここまで入ってる♡
 はやく中にちょーだいよぉ」
 サシャは臍の所を指し示すと、アルバの首に両腕を回して自ら腰を振り始めた。

 その時、アルバは下腹部の淫紋の色がいつもより濃く、強い魔力が渦巻いているのに気付いた。
 アルバも耐えなければ強まっていく魔力に飲まれて、思いっきりサシャを求めて壊してしまいそうだ。

 目を瞑って耐えていると、サシャから唇に吸い付いて来た。
 自分の舌を差し入れ、アルバの舌を引き出し、まるでさっきの事を許しているかのようにちゅくちゅくと吸った。
 アルバが薄く目を開けると、涎を垂らして悦に浸る、どこを見ているのか分からないサシャが見えた。
 視線を下げれば、片手では自分のモノを握っていて、そこは既に白濁で汚れている。
(目に毒すぎる……)
 と、思った時、思わぬタイミングでサシャに己を締め付けられて、胎内へと精を放ってしまった。
「あーーーー!!」
 サシャが仰け反って絶叫する。
 ガクガクと震えて絶頂したのだと分かった。


「サシャ?」
 アルバはいつまでも仰け反ったままのサシャを支えて、起こしてやった。
 すると、サシャは再び目に光を取り戻しアルバを見る。
「まだだよ。足んないよぅ」
 そのままアルバを押し倒し、再び自ら腰を振り始めたのだ。

 そしてアルバはサシャに好きに貪られている時に、大きな窓から満月が覗いている事に気付いた。
 この世界の満月は生物の生殖活動を活性化させるのだ。
 サシャも満月に影響されてしまっているのだろう。
 しまいにはアルバもサシャの中を存分に味わってしまった。
 明け方、月が沈んだ頃、正気に戻ったアルバは胸にもたれて眠るサシャを見て怪我などさせていない事に安堵する。
 そして、もう直ぐ王都に着く事を残念に思った。

(そうか。 サシャに触れる事ができるのはこれで最後かもしれないのか)
 アルバは眠るサシャに口づけを落とし、大切に腕に囲んでからやっと目を閉じた。


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