上 下
1 / 34

狩り

しおりを挟む
 
「うわぁ、熱い!あついよっ!!」

 サシャの下腹部が禍々しい赤紫色に輝く。
 その側にはサキュバスが二人、這い蹲るサシャを見下ろしてニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていた。


 *****


 サシャは蒼い森と呼ばれる森の近くの村に住む青年だ。
 つい先日サシャは18歳になり、成人の儀を終えて森に入る事を許された。

 蒼い森は村の者にとって貴重な恵みをもたらす大切な場所だが、魔物が出るので成人した狩りを生業にする者しか森へ入れないと言う村の掟がある。
 成人するまでは近くの比較的安全な平原で腕を磨き、森へ入る時はまず、年上の者に付いて森の事を教わらないとならない決まりだ。

 サシャは今、両親がいない。
 だから、狩人になるしか選択肢がないんじゃないかと思って、サシャに話しかけられても嫌な顔をしないダンとヨハンと言う年上の青年に頼み込んで教えを請うた。

 まず森のあちらこちらに点在する村の共用の小屋を拠点に、実際に罠を仕掛けてみたり、小さな獲物を狩ったりしながら地形を場所を覚える所から始まる。
 サシャは年長の二人から注意点などを聞きながら、今回の拠点である湖の側の小屋へやってきた。
 それからヨハンは焚き火の用意を始め、サシャはダンからこの場所を使うルールを聞きながら鍋などを取りに小屋へ向かった。


 意気揚々と小屋へ向かった二人だが、ダンはドアを開くと突然サシャの口を押さえようとした。
「何!」
 突然の事に、サシャは大きな声を上げてしまう。
 瞬間、小屋の中で睦みあっているサキュバス二人と目が合ってしまった。
 しかも、そう言った性的なものに触れるのが初めてだったサシャは動揺して小屋の中へ倒れ込んでしままった。
 気付いた時には、サキュバスは二人の側に立ち、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべていた。

 実はこのサキュバス達は最近、獲物が手に入らずに悶々として仲間同士で慰めあっているところだったのだ。
 そこへやって来た男達。
 飛んで火にいる夏の虫とはこの事、とばかりにサキュバスはまず、ダンとサシャに向かって魅了の魔法を使った。

 ―― だが、魔法は効かなかった。
 村の者が森に入る際に持ってくるお守りが効いたのだ。

 怒ったサキュバスは、まずダンを小屋の外へ易々と投げ飛ばした。
 異常事態に気付いたヨハンが投げ飛ばされて気絶したダンの方へ駆け寄ったが、もう一人のサキュバスが立ち塞がり、ヨハンの鳩尾を蹴り上げる。
「うえっ」
「ヨハン!ダン!」
 ダンは気絶し、ヨハンはその隣で腹を押さえて蹲っている。
 そして、もう一人のサキュバスはサシャを捕まえると、慣れた手付きで白い下腹部を露にし、そこを長い爪で引っかいて魔法陣を描いた。


「熱い!熱い!」
 発熱する魔法陣のせいでサシャは腹を抱えてのた打ち回った。
 身体に直接魔法陣を描かれた為に、お守りは効かなかった。
 サシャは内臓が動いている感覚、魔法陣によって身体の中が書き換えられて行く感覚に吐き気を伴い悶え苦しむ。
 その姿を見て、ニヤニヤと笑いながらサキュバスたちはダンとヨハンの元へ向かった。
 それに気付いたサシャは「止めて、二人に手を出さないで」と腹を押さえ、涙ながらに弱々しく叫んだ。

「ふふ、もっと面白い事をするのよ♡」
「坊やが仲間に襲われるところが見たいなぁ」
「そうそう、あんたがアンアン♡言って善がってるところ♡」
「大丈夫、精気は魔法陣これからちゃんと頂くからねぇ」
 そう言うとサキュバスたちは高笑いした。

「や、やだ……」
「ほらほら、いい匂いがして来たわ♡」
「孕むまで犯されなさい」
「いいもの見せてね♡」
 ダンとヨハンを引き摺って運んできたサキュバス達は、今度はサシャを囲んで全裸にしようとする。
 サシャも必死で抵抗したが、シャツを引き裂かれてしまった。

 その時だった。




 オオオォォ……ゴウゥゥ、ドドド……


 突然、遠くから魔物の咆哮が聞こえてきた。

「なに?」
「こっちに来る」
 それを聞いた二人のサキュバスは男達を放置して、文字通り溶けるように消えてしまった。
 サキュバス達がいなくなってしまうと、サシャは幾分落ち着いた腹を押さえながら、男たちを揺り起こした。
「ダン、ヨハン、起きて、逃げて!」

 サシャが呼びかけると、ダンとヨハンはのろのろと起き上がる。
 だが、サシャの背後を見ると表情が一変した。


「キ、キマイラだ!」
「うわぁ!!!」と、二人は情けない声を上げると、サシャを置いて散り散りに逃げてしまった。
 慌ててサシャが背後を見ると、そこには空を飛ぶキマイラの姿があった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

処理中です...