気が付いたら乙女ゲームの王子になっていたんだが、ルートから外れたので自由にして良いよね?

ume-gummy

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いつまでも一緒に(終)

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 ある晩、夢を見た。
 そこは前にいた世界・・・日本だった。
 どうやら大学生になった俺は、高校時代と変わらず海斗とつるんでいるらしい。
 只、友人というより恋人としてだ。
 直ぐにこれが夢で、俺は自分と海斗の事を第三者視点から見ているのに気付いた俺は、恥ずかしかったが二人を見守る事にした。

 音声は聞こえないが、二人が想い合っているのが良く判った。
 こちらと違って、まだ日本では同性同士の恋愛というのには偏見が多いのだろう。
 応援してくれる友人や家族以外には知られないように隠れて付き合っているらしい。
 それでも端々からお互いを好きだと、愛しているという事が伝わってくる。
 お互いを見る瞳が優しい。

 そうか、向こうでアルフォンスも幸せになれたんだ。

(ああ、良かった・・・)





「レン、大丈夫ですか?」
 ルネに声を掛けられて、俺は目覚めた。
 まだ日の出前らしく、辺りは真っ暗だ。
 目の前には心配そうに俺を見下ろすルネがいた。
 どうやら寝言を言っていたらしく、ルネは魘されていると思って起こしてくれたそう。
「うん・・・今ね、向こうのアルフォンスと海斗の夢を見てた。
 二人とも幸せそうだった。」
「そうですか。」

 ルネは自分の願いにアルフォンスを巻き込んでしまった事に罪悪感がある。
 エリーゼが二十歳になり、力の殆どを彼女へ譲ったルネはもう遠見も出来ないので、アルフォンスと海斗の事を自分で知る事が出来なくなっていたから余計に気になるのかもしれない。
 でもアルフォンスが向こうで楽しそうに過ごしている事や海斗との仲を見る限り、この結果はアルフォンスには良い事だったと思えた。
 二人は巻き込まれて起こるどころか、逆に感謝されちゃうんじゃないだろうか。
 安心させるようにそんな意見も絡めつつ、俺はさっき見た夢の内容をルネに話した。

「アルフォンス様もあちらで愛し合える方を見つける事が出来て本当に良かった。」
 そう言って俺の胸に擦り寄ってきたルネは、最近年を取ったと自分で言っていたが、俺から見れば可愛いのは変わらない。
 でも最近やけに寒がるので、少し心配だ。
 ルネの指に嵌る、俺とお揃いの指輪に指を滑らせて、少し細くなった身体をぎゅっと抱きしめてから布団を掛け直してやった。

 最近、イーヴォとエリーゼに家長を譲ったルネはシュミットへ戻った。
 俺も当然付いて行き、今はシュミットで暮らしている。
(因みに自分の出生を知ったエリーゼはかなり戸惑っていた)
 反対する人も少しはいたけれど、俺がキルシュへ無理に送られたり、ラクーンへと攫われ事に罪悪感を持っていた為に、必要な努めは果たすという約束だけで父王も兄たちも黙って送り出してくれた。


 *******


 こっちの世界に来て15年経った。
 一度も心が離れる事などなく、俺は33歳、ルネは51歳になった。
 俺の進めていた医療を広める計画はルーカスとギムレットの協力もあって随分広まった。
 後は王になったディートフリートに任せれば良い。

 それに俺たちは気付いていた。
 そろそろ自分達に寿命が来る事を。
 本来なら最後が近付くにつれて落ち込むものなんだろうが、俺たちはそんな事なくて、お互い毎日を大切に生きようって思った。

 それが判ってから心残りの無い様に身辺整理をして、お世話になった人に挨拶をして回った。
 思い出作りにと旅行もして、約束通りキルシュと獣人の国にも行った。
 リオン、ルディ、ラースもそれぞれ独立して上手くやっているし、時々、夢に見るアルフォンスは変わらず海斗と仲良くしているし、エミルやデニスの今後も話し合ったし、もう心配な事は無い。
 小さかったルネはさらに小さくなって白髪が目立ってきたけれど、俺はますます可愛く思えた。


 ・・・女神さま、俺をこの世界に呼んで下さってありがとうございます。
 俺以外が呼ばれなくて良かった。
 ルネを愛するのが、ルネに愛されるのが俺で良かった。
 最後まで一緒にいられて幸せです。


 最後の夜、俺たちはキスをするといつものように「おやすみなさい。」と言って手を繋いでベッドへ並んで休んだ。
 ルネは俺の隣でいつものように笑顔を浮かべている。
 ぽつり、ぽつりと思い出話をしているうちに、いつの間にか眠るように意識が遠のいて行った。

 そしていつしか女神さまの周りの光に溶けていくのだった。


「レン、レン、愛しています。
 いつまでも、お傍に。」


 終

 *******

 最後まで読んで下さってありがとうございます。
 本編はここで終わりです。
 一旦連載終了にして、落ち着いたら本編に入らなかった話や各キャラクターの話を番外編として投稿したいと思っています。
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