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再会
しおりを挟む「うん、良く似合うよ。」
食堂で待っていたフロレンツは、自分が選んだ服を着た俺を見てご満悦だ。
ルーカスも俺の服のサイズを知っていたけれど、もしかして俺、と言うか王族のプライベートって流出してる?考えると怖すぎる。
席に着くとこれまた金髪碧眼のやたら顔の整った給仕が食事を運んできた。
ここで気付いたのだが、この屋敷には家令のような人物はいないようだ。
第二王子という身分なのに王族の護衛らしき者もいない。
いるのは奴隷、侍女、侍従、給仕、料理人、雇われだと判る護衛など自分が自由に動かせる者ばかりだ。
共通しているのは皆、顔が整っているところと、王族に関わっている割に低い身分の出身らしいというところか。
もしかしたらフロレンツは王族から見放されたのか、自分から王族と距離を取っているのかもしれない。
それか、王に黙ってここに来ているのか。
もしかしたらラクーン王は俺がここにいる事を知らないのかもしれない。
どちらにしても和平条約を結ぼうとしている国から王族自ら国主の婚約者を攫ってきた時点で、ラクーンは他国から糾弾されるに違いない。
まぁ、それも俺が秘密裏に消されずに公になればの話だけれど。
毒とか媚薬は光属性の俺には効きにくいので、気にせずに運ばれてくる食事を食べていると「明日からアルフォンスの好きな食事を出すから何でも言ってくれ。」とフロレンツに言われた。
俺は遠慮しないで「ヨルド山の万年氷を光の花の蜜で食べたい。」と言ったら、そこにいた全員黙ってしまったけどね。
因みにヨルド山は闇の精霊が住む標高1000メートルを超える霊峰で、光の花は100年に一度咲くと言う幻の花だ。
部屋に戻って用意してある夜着を確認したら案の定、ひらひらとかすけすけの扇情的な物ばかりだったので、クローゼットから普段着を出して、それを着て寝る事にした。
それからリオン、ルディ、ラースを部屋に匿い、ドアを厳重に閉じて家具を移動させてバリケードにしてから明らかに一人用ではない大きなベッドに4人で寝た。
リオン、ルディ、ラースは最初は遠慮していたけれど、俺は三人がアルフォンスより酷い目に遭うかもしれないのが嫌なんだ。
もしグーテベルクへ帰れるなら、甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれる三人も連れて行きたいなと、魘されている三人に癒しをかけながらそう考えていた。
フロレンツは朝が苦手らしく、いつも昼食までは一人で過ごせた。
おかげで午前中はゆっくり考え事ができる。
まずは俺がここにいる事をグーテベルクかキルシュに知らせなければ。
ワイバーンなんて目立つ手段を使ったから、ラクーンへ入った事は知られていると思うけれど、この場所まで把握しているかは判らない。
この屋敷の者がどうやって外部に連絡を取っているかリオンたちに聞いてみた。
「連絡を取っているのはフロレンツさま本人に違いありません。」
「フロレンツさまのお部屋か執務室は行けば何かあるかもしれません。」
「僕は連絡用の鳥がどんな物か知っています。僕が探します。」
「協力してくれるのは嬉しいけれど、危険だから無理はしないで。」
地球ほど通信が発達していないこの世界には『連絡用の鳥』と言うものがある。
魔石を加工したもので、少量の魔力を送る事で音声画像をその魔石が記録して、設定されたポイントへ送る事ができる。
その魔石の加工された姿が鳥のようなのでそう呼ばれているのだ。
俺は使ったことはなかったけれど、下流貴族出身のラースは使えると言っていた。
今日は昼食にもフロレンツに呼ばれなかったので、午後も読書がてらうとうとしていると、ドアをノックする音が部屋に響いた。
ルディがドアを開けると、侍従の仕事をしている男性が「ヴィルヘルム様がいらっしゃいました。応接室までお越し下さい。」と告げて去っていった。
仕方がないので応接室へ行くと、フロレンツと一緒に相変わらず笑顔を顔に貼り付けたヴィルヘルムが待っていた。
「これは伯父上、お久しぶりですね。
今はこちらにお住まいと聞きましたが、借金の返済はされたのですか?」
「おやおや、私は借金などないよ。」
「そうですか。こちらではまだないのですか。」
「これは厳しいね。」と言ってヴィルヘルムは苦笑いした。
いつも通り軽い感じで話すヴィルヘルムだが、こちらでの生活は苦しいのか、少しやつれた様に見える。
身形には相変わらずお金が掛かっていそうだけど。
そしてヴィルヘルムなんかに俺を会わせたフロレンツを睨むと、笑いを押し殺していた。
「ところでどういったご用事ですか?俺は用事などありませんが。」
「いやいや、雇った者がお前を捕まえたと言うから様子を見に来たのだよ。」
ヴィルヘルムは機嫌よさそうにニコニコした。
そうか、あいつらはヴィルヘルムの息のかかった奴らだったのか。
それなら機嫌の良い意味も判る。
おおかた成功の褒美にフロレンツが生活の保障をしてくれる約束でもしているんだろう。
今日はその催促に来たついでに俺の様子を見に来たってところか。
「それでは、お前の顔も見られた事だし、私はもう帰る事にするよ。
せいぜいフロレンツ様を楽しませてやる事だな。」
ヴィルヘルムは俺が知らないと思ったのか、下品なハンドサインを作って見せ、嫌らしい笑いを浮かべながらさっさと帰っていった。
それより俺はフロレンツを楽しませる気は全くないぞ。
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