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最終章
新しい国(ミネア視点)
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本日は短めの話を二つ投稿しています。
よろしくお願いいたします。
*******
「お兄様、またディミトラ侯爵家からお金の無心が来ているわ」
魔王が王族に成り代わってから、私と妹は彼の部下となり、元ディミトラ王国の貴族たちとの調整役を任されている。
表向きの交渉は華やかで話し上手な妹のリトスが担当、私は主に書類仕事と裏で交渉する事だ。
魔族がこの国へ入って来て以来、多少の混乱はあったものの、魔族側が人間側へすり寄る事で民間では急速にその距離が近付いていた。
まだ一番の懸念事項である奴隷制度が残っているが、その辺りは私が引き継いだ王国の影が動いている。
そう言った裏の部分も今代が最後になれば良い。
しかし、元王族は古いまま変われなかった。
今はもう地方の貴族にすぎなくなったと言うのに、未だに王様気取りだ。
これまでの生活をしていたら、直ぐに財産も底をついてしまうだろうに、自ら働こうとさえしないのだ。
私たちだって、いくら魔王の元で働いているとはいえ、父たちまで養うような給料はもらっていないのに。
せめて、この国の裏の部分と繋がりを持たない様に、こうやってこまめに話を聞いてやるくらいはしようと思う。
それにしても魔王さまは凄い。
魔石の産出が少なくなって来た時を見据えて、この国の魔道具をどんどん改良なさった。
もともとリチェルカーレの魔道開発部にいらしたそうで、魔道具の知識に長けていらっしゃる。
無駄に大きな魔石を使った、この国の生活用魔道具を小さい魔石で効率的に利用できるようにした。
この国は今まで魔石が多く取れた事で、魔道具の開発が進んでいたのだが、魔王さまの改良で更に使い勝手が良くなり、今のビジネスの中心は魔石に代わって魔道具の売買になった。
地方にも目を向けていらっしゃって、魔道具を利用した農業にも力を入れられている。
おかげで、数年で収穫量がかなり増えた。
これは魔王さまの伴侶のフィオ様が農業にご興味があるのも関係があるのだろう。
お二人共、この国が長く平和に続くように色々と努力なさっているようだ。
国はディミトラ王国だった頃のような、狂乱で退廃的な部分はなくなってしまったけれど、発展途上の雰囲気の今も良い。
そう言えば、国の真ん中にある砂漠地帯にダンジョンが見つかったとか。
これから他国から冒険者が多く来るようになるのかもしれないな。
「そう言えばお前、魔王さまの第二王妃に手を挙げたのだって? 驚いたよ」
「ええ。他国からのお見合いの申し出が止まらないのですもの。フィオ様が男性で子供を産めないからって酷いものよ。あの二人の間に入れるわけなんてないのに。その点、私ならお二人の邪魔なんてしないわ。私が防波堤になる……けれど、多分、断られるわね」
彼女もまた、彼女なりに魔王さま達に感謝を示しているらしい。
そう言えば、リトスは人間で在った頃の魔王さま、ジルヴァーノ殿に恋焦がれていた頃もあったな。
あれからずいぶん経つが、彼女も変わったものだ。
「いいんじゃないか。きっとお二人にはお前の気持ちが届いているよ。じゃなかったら、私たちなんてもっと酷い扱われ方をしているはずだ」
私が笑うと、リトスは呆れたとばかりに肩を竦めた。
「お兄様は変わったわね、昔は私に向かって笑ったりしなかったのに。今の生活は楽しい? 」
「ああ、楽しいよ。正直、親戚との付き合いは面倒だけれど、街へ出れば新しい事ばかりでわくわくする。そう言えば、このあいだ初めて屋台と言う所で買い物をして……」
私の話をリトスはニコニコとして聞いてくれていた。
よろしくお願いいたします。
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「お兄様、またディミトラ侯爵家からお金の無心が来ているわ」
魔王が王族に成り代わってから、私と妹は彼の部下となり、元ディミトラ王国の貴族たちとの調整役を任されている。
表向きの交渉は華やかで話し上手な妹のリトスが担当、私は主に書類仕事と裏で交渉する事だ。
魔族がこの国へ入って来て以来、多少の混乱はあったものの、魔族側が人間側へすり寄る事で民間では急速にその距離が近付いていた。
まだ一番の懸念事項である奴隷制度が残っているが、その辺りは私が引き継いだ王国の影が動いている。
そう言った裏の部分も今代が最後になれば良い。
しかし、元王族は古いまま変われなかった。
今はもう地方の貴族にすぎなくなったと言うのに、未だに王様気取りだ。
これまでの生活をしていたら、直ぐに財産も底をついてしまうだろうに、自ら働こうとさえしないのだ。
私たちだって、いくら魔王の元で働いているとはいえ、父たちまで養うような給料はもらっていないのに。
せめて、この国の裏の部分と繋がりを持たない様に、こうやってこまめに話を聞いてやるくらいはしようと思う。
それにしても魔王さまは凄い。
魔石の産出が少なくなって来た時を見据えて、この国の魔道具をどんどん改良なさった。
もともとリチェルカーレの魔道開発部にいらしたそうで、魔道具の知識に長けていらっしゃる。
無駄に大きな魔石を使った、この国の生活用魔道具を小さい魔石で効率的に利用できるようにした。
この国は今まで魔石が多く取れた事で、魔道具の開発が進んでいたのだが、魔王さまの改良で更に使い勝手が良くなり、今のビジネスの中心は魔石に代わって魔道具の売買になった。
地方にも目を向けていらっしゃって、魔道具を利用した農業にも力を入れられている。
おかげで、数年で収穫量がかなり増えた。
これは魔王さまの伴侶のフィオ様が農業にご興味があるのも関係があるのだろう。
お二人共、この国が長く平和に続くように色々と努力なさっているようだ。
国はディミトラ王国だった頃のような、狂乱で退廃的な部分はなくなってしまったけれど、発展途上の雰囲気の今も良い。
そう言えば、国の真ん中にある砂漠地帯にダンジョンが見つかったとか。
これから他国から冒険者が多く来るようになるのかもしれないな。
「そう言えばお前、魔王さまの第二王妃に手を挙げたのだって? 驚いたよ」
「ええ。他国からのお見合いの申し出が止まらないのですもの。フィオ様が男性で子供を産めないからって酷いものよ。あの二人の間に入れるわけなんてないのに。その点、私ならお二人の邪魔なんてしないわ。私が防波堤になる……けれど、多分、断られるわね」
彼女もまた、彼女なりに魔王さま達に感謝を示しているらしい。
そう言えば、リトスは人間で在った頃の魔王さま、ジルヴァーノ殿に恋焦がれていた頃もあったな。
あれからずいぶん経つが、彼女も変わったものだ。
「いいんじゃないか。きっとお二人にはお前の気持ちが届いているよ。じゃなかったら、私たちなんてもっと酷い扱われ方をしているはずだ」
私が笑うと、リトスは呆れたとばかりに肩を竦めた。
「お兄様は変わったわね、昔は私に向かって笑ったりしなかったのに。今の生活は楽しい? 」
「ああ、楽しいよ。正直、親戚との付き合いは面倒だけれど、街へ出れば新しい事ばかりでわくわくする。そう言えば、このあいだ初めて屋台と言う所で買い物をして……」
私の話をリトスはニコニコとして聞いてくれていた。
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