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中学校編
クラス会の打ち合わせ
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卒業して春休みとなった、卒業と言っても龍一にとっては何を卒業したのかわからなかった、義務教育が終わっただけだ…そんなことより高校生活が心配なのが今の心情、龍一が行くのは定時制だからだ。夜学校に行くと言う経験した事のない違和感は不安でしかない。
そんな時、馬場から電話が来た。
『あ、桜坂君お久しぶり』
『そんな何日も経ってないよ』
『ふふ、そうだね、明日ってクラス会の打ち合わせの日だよね』
『そうだった、忘れてた』
『良かった電話して。山下さんの家に11時だよね』
『あーうん、今メモ見た、そう書いてる』
『お昼って?』
『何も考えてないけど、近くの商店でパンでも買う?』
『だったら近くにレモンって喫茶店あるから一緒にいかない?』
『あぁ、うん、いいよ』
『じゃ、明日11時ね』
『オッケー』『バイバーイ』
すっかり忘れていた龍一だったが、馬場の電話のお陰で助かった。連絡網を開いて山下の住所を確認し、地図で確認すると、以前通っていた小学校のすぐ側だと分かり安心した。方向音痴の龍一は何か自分が知っている場所が無いと理解できないのだ、だから知っている場所を探す、どんなに近道があってもその知っている場所を目指し、そこから移動する。山下の家の場合は小学校から辿るといった具合に。ついでに喫茶レモンと言う場所を探すと、本当にすぐ側にあった。
『あー…そう言えばレモンの前を歩いて通っていたなぁ、喫茶店ってラーメンあるのかな…500円あれば食べれるかなぁ、あ、馬場の分も払うべきだよな、でも笠井とはどうするんだろ…山下だって行きたいよなきっと…じゃぁ2,000円以上必要じゃんか!』
財布に貯金箱から3,000円抜いて入れる龍一。
用意周到と言うか、こうなったらこうだよなと言う思考を張り巡らせるタイプなので、荷物は多くは無いがあったら役に立つものをよく持ち歩く。例えば小さな懐中電灯、例えば小さな裁縫セット。
---------------------------------------------------------
クラス会打ち合わせの朝
お気に入りのスリムのブラックジーンズに白と黒のギンガムチェックの長袖シャツを選んだ、まだ肌寒いのでインナーに黒の長袖Tシャツを着る、これもまた用意周到さが出ており、暑かったらまくり上げるかシャツを脱いで腰に巻けば良いという策だ。少しヘアオイルを付けて家を出た。
小学校までは迷うことなく行けた、数年通ったのだから当たり前だ。だがいい思い出はない、忘れる事は出来ないと言っても過言ではないけれど、本音を言えば忘れたいことばかりだ、いや、忘れるために仕舞い込んだ記憶とも言える、龍一の胸に空いた穴の奥底に。
良い思い出が無い小学校に、通っていた道とは違う一歩手前から入る。地図を念入りに何度も何度も確認したから間違いない、曲がってすぐを1件目として6件目が山下の家、1件、2件と数え辿り着いた家の前に立つ。表札は山下と書いているので間違いない。女子と付き合ったことが無い龍一は別段女子の家を訪ねることに何のためらいも無いので、直ぐに呼び鈴を押した。
『はぁい』
山下の声がすると、引き戸の擦りガラスに人影が写った。
カラカラと小気味の良い音を立てて扉が開かれると、スリップ姿の山下がけだるそうに髪をかき上げて『どうぞ』と言った。
流石の龍一も山下の下着がスケスケのスリップ姿には目を反らした。
『ごめんね、朝弱くって』
知らないけれど、飲み屋のママの寝起きみたいだなと感じた。
大人っぽいと言えばそうなのだろうけれど、龍一にはそんな気持ちよりも、ただただ見るのは失礼と言った感情しかなかった。
『2階に上がって左が私の部屋だから行ってて、直ぐ行くし、あ、何飲む?珈琲?紅茶?ジュース?』
『あー…珈琲がいいな』
『モカ?キリマン?』『モカで』
『わかった』
このけだるい感じ、良いなぁと感じた。良いと言うのは山下への恋愛感情ではなく今自分が置かれているこの空気感が良いと言う事、もちろん山下が居てこそ出来上がる空間ではあるが。
言われた通り2階に上がり引き戸を開けると、花畑にいるような良い香りが龍一を包んだ。膨らんだ状態の抜け殻の様な掛け布団がそのままのベッド、ピンクで可愛らしいドレッサーの上には化粧品がびっしり、脱ぎっぱなしの服と下着が散乱している。大人と子供が共存している不思議な空間だった。ブラジャーが目に入った『Cカップくらいあるのかなこれは…』いやらしい目線ではなく龍一の分析が始まったのだ、タイプ「分析官」である。タイプ「探偵」も似たような能力を持っているが、龍一に最近現れ始めたこのタイプは少し違った、メインとなりつつある「分析」を主とした龍一だ。
ショーツを見ると横の幅が凄く細く、前を隠すデルタゾーンが小さい、先ほど見たスリップから透けて見えたフルバックのショーツは寝るとき用、『すると、この小さなショーツはお出かけ用なのか、下着に気を使えるお洒落な人なんだなぁ』と呟いた瞬間、首元にドン!と言う衝撃が走り、重みを感じた。生温かくて大きいものが首に乗っている…怖くて触る事が出来ない。
そこへ山下が珈琲を持って部屋に来た。
『え???え????なに????なんで?その猫私以外に絶対懐かないんだけど!え?え?写真撮って良い?』
こんなテンションが上がった山下を見たのは初めてだったが、首に乗っているのが猫だと分かった衝撃の方が大きい。
『まぁここが良いなら乗せとくよ』
『ごめんね』龍一を覗き込んでから猫を撫でる山下はスリップを脱いでおり、ブラジャーに包まれた胸が目の前にあった。
『山下、服着ろよ、寒いだろ』
『あ、ごめん、これでも着てるんだよ、いつもは裸だし』
流石に照れくさくなって目を反らした先にとんでもないものが。
『あれ?山下!これどうした?』
壁には額装された「童夢」のイラストが飾られていた。
持てる力を振り絞って描いたが、文化祭の日に盗まれたあの童夢の絵がそこにあったのである。
『絶対欲しくて借りたの』
『借りたって誰に』
『文化祭の神様』
『ぷっ…山下って思ってたよりファンタジーだな』
『可愛いって言いなさいよ、はい珈琲…てか猫下ろしたら?』
『下りねぇんだもん、いいよこのままで、名前は?』
『久美子』
『ネコのだよ』
『チェシャ』
『アリスの?』『そう』
『まぁ気に入ってくれたのならその絵やるよ』
『ありがとう』『感情こもってないな』『そんなことないよ』
ここで呼び鈴が鳴った。
『折角二人きりだったのに』
聞こえる様に言ったみたいな声のボリュームでつぶやくと山下が玄関に向かった。少しすると階段を上がって来る足音が複数聞こえ、3人が部屋に入って来た。笠井と馬場が同時に到着したらしく、一気に全員が揃った。
『よう』と軽く手を上げる龍一。
その首に猫を撒いている姿に2人が驚く。
『なにそれ』『ネコ、懐いちゃって』
『桜坂君って動物に好かれそうだもんね』
『初めて言われたよ』
暫く他愛もない話が続き、やっと本題へと進む。
『じゃぁ場所は如月町の「つぼ九」でいいね、予約は山下さんでいい?』
『うん、いいよ、やっとく、42名で』
『それ決まったら全員で手分けして連絡網回そう』
『うんそうだね、じゃぁ予約入れれたらメニューとかコースとか金額とか決めたらいいよね、集まれないと困るから担当決める?』
『誰にする?』
『私と桜坂君』『なんで馬場さんと龍一君?』
『俺、そういうの苦手だから女子でどぉ?』
『ダメだよ、桜坂君』『誰と組むの?』『そうだよ誰が良いの?決めてよ』
『じゃぁチェシャ』
3人の女子は一瞬で静かになるのだった。
そんな時、馬場から電話が来た。
『あ、桜坂君お久しぶり』
『そんな何日も経ってないよ』
『ふふ、そうだね、明日ってクラス会の打ち合わせの日だよね』
『そうだった、忘れてた』
『良かった電話して。山下さんの家に11時だよね』
『あーうん、今メモ見た、そう書いてる』
『お昼って?』
『何も考えてないけど、近くの商店でパンでも買う?』
『だったら近くにレモンって喫茶店あるから一緒にいかない?』
『あぁ、うん、いいよ』
『じゃ、明日11時ね』
『オッケー』『バイバーイ』
すっかり忘れていた龍一だったが、馬場の電話のお陰で助かった。連絡網を開いて山下の住所を確認し、地図で確認すると、以前通っていた小学校のすぐ側だと分かり安心した。方向音痴の龍一は何か自分が知っている場所が無いと理解できないのだ、だから知っている場所を探す、どんなに近道があってもその知っている場所を目指し、そこから移動する。山下の家の場合は小学校から辿るといった具合に。ついでに喫茶レモンと言う場所を探すと、本当にすぐ側にあった。
『あー…そう言えばレモンの前を歩いて通っていたなぁ、喫茶店ってラーメンあるのかな…500円あれば食べれるかなぁ、あ、馬場の分も払うべきだよな、でも笠井とはどうするんだろ…山下だって行きたいよなきっと…じゃぁ2,000円以上必要じゃんか!』
財布に貯金箱から3,000円抜いて入れる龍一。
用意周到と言うか、こうなったらこうだよなと言う思考を張り巡らせるタイプなので、荷物は多くは無いがあったら役に立つものをよく持ち歩く。例えば小さな懐中電灯、例えば小さな裁縫セット。
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クラス会打ち合わせの朝
お気に入りのスリムのブラックジーンズに白と黒のギンガムチェックの長袖シャツを選んだ、まだ肌寒いのでインナーに黒の長袖Tシャツを着る、これもまた用意周到さが出ており、暑かったらまくり上げるかシャツを脱いで腰に巻けば良いという策だ。少しヘアオイルを付けて家を出た。
小学校までは迷うことなく行けた、数年通ったのだから当たり前だ。だがいい思い出はない、忘れる事は出来ないと言っても過言ではないけれど、本音を言えば忘れたいことばかりだ、いや、忘れるために仕舞い込んだ記憶とも言える、龍一の胸に空いた穴の奥底に。
良い思い出が無い小学校に、通っていた道とは違う一歩手前から入る。地図を念入りに何度も何度も確認したから間違いない、曲がってすぐを1件目として6件目が山下の家、1件、2件と数え辿り着いた家の前に立つ。表札は山下と書いているので間違いない。女子と付き合ったことが無い龍一は別段女子の家を訪ねることに何のためらいも無いので、直ぐに呼び鈴を押した。
『はぁい』
山下の声がすると、引き戸の擦りガラスに人影が写った。
カラカラと小気味の良い音を立てて扉が開かれると、スリップ姿の山下がけだるそうに髪をかき上げて『どうぞ』と言った。
流石の龍一も山下の下着がスケスケのスリップ姿には目を反らした。
『ごめんね、朝弱くって』
知らないけれど、飲み屋のママの寝起きみたいだなと感じた。
大人っぽいと言えばそうなのだろうけれど、龍一にはそんな気持ちよりも、ただただ見るのは失礼と言った感情しかなかった。
『2階に上がって左が私の部屋だから行ってて、直ぐ行くし、あ、何飲む?珈琲?紅茶?ジュース?』
『あー…珈琲がいいな』
『モカ?キリマン?』『モカで』
『わかった』
このけだるい感じ、良いなぁと感じた。良いと言うのは山下への恋愛感情ではなく今自分が置かれているこの空気感が良いと言う事、もちろん山下が居てこそ出来上がる空間ではあるが。
言われた通り2階に上がり引き戸を開けると、花畑にいるような良い香りが龍一を包んだ。膨らんだ状態の抜け殻の様な掛け布団がそのままのベッド、ピンクで可愛らしいドレッサーの上には化粧品がびっしり、脱ぎっぱなしの服と下着が散乱している。大人と子供が共存している不思議な空間だった。ブラジャーが目に入った『Cカップくらいあるのかなこれは…』いやらしい目線ではなく龍一の分析が始まったのだ、タイプ「分析官」である。タイプ「探偵」も似たような能力を持っているが、龍一に最近現れ始めたこのタイプは少し違った、メインとなりつつある「分析」を主とした龍一だ。
ショーツを見ると横の幅が凄く細く、前を隠すデルタゾーンが小さい、先ほど見たスリップから透けて見えたフルバックのショーツは寝るとき用、『すると、この小さなショーツはお出かけ用なのか、下着に気を使えるお洒落な人なんだなぁ』と呟いた瞬間、首元にドン!と言う衝撃が走り、重みを感じた。生温かくて大きいものが首に乗っている…怖くて触る事が出来ない。
そこへ山下が珈琲を持って部屋に来た。
『え???え????なに????なんで?その猫私以外に絶対懐かないんだけど!え?え?写真撮って良い?』
こんなテンションが上がった山下を見たのは初めてだったが、首に乗っているのが猫だと分かった衝撃の方が大きい。
『まぁここが良いなら乗せとくよ』
『ごめんね』龍一を覗き込んでから猫を撫でる山下はスリップを脱いでおり、ブラジャーに包まれた胸が目の前にあった。
『山下、服着ろよ、寒いだろ』
『あ、ごめん、これでも着てるんだよ、いつもは裸だし』
流石に照れくさくなって目を反らした先にとんでもないものが。
『あれ?山下!これどうした?』
壁には額装された「童夢」のイラストが飾られていた。
持てる力を振り絞って描いたが、文化祭の日に盗まれたあの童夢の絵がそこにあったのである。
『絶対欲しくて借りたの』
『借りたって誰に』
『文化祭の神様』
『ぷっ…山下って思ってたよりファンタジーだな』
『可愛いって言いなさいよ、はい珈琲…てか猫下ろしたら?』
『下りねぇんだもん、いいよこのままで、名前は?』
『久美子』
『ネコのだよ』
『チェシャ』
『アリスの?』『そう』
『まぁ気に入ってくれたのならその絵やるよ』
『ありがとう』『感情こもってないな』『そんなことないよ』
ここで呼び鈴が鳴った。
『折角二人きりだったのに』
聞こえる様に言ったみたいな声のボリュームでつぶやくと山下が玄関に向かった。少しすると階段を上がって来る足音が複数聞こえ、3人が部屋に入って来た。笠井と馬場が同時に到着したらしく、一気に全員が揃った。
『よう』と軽く手を上げる龍一。
その首に猫を撒いている姿に2人が驚く。
『なにそれ』『ネコ、懐いちゃって』
『桜坂君って動物に好かれそうだもんね』
『初めて言われたよ』
暫く他愛もない話が続き、やっと本題へと進む。
『じゃぁ場所は如月町の「つぼ九」でいいね、予約は山下さんでいい?』
『うん、いいよ、やっとく、42名で』
『それ決まったら全員で手分けして連絡網回そう』
『うんそうだね、じゃぁ予約入れれたらメニューとかコースとか金額とか決めたらいいよね、集まれないと困るから担当決める?』
『誰にする?』
『私と桜坂君』『なんで馬場さんと龍一君?』
『俺、そういうの苦手だから女子でどぉ?』
『ダメだよ、桜坂君』『誰と組むの?』『そうだよ誰が良いの?決めてよ』
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3人の女子は一瞬で静かになるのだった。
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