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中学校編
十字架と拷問とキョンキョン
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『神が怒っている』
そんな気がした龍一、受験勉強をしなくてはならないのに何故今ファミコンを買うのか?何故今ゲームをしなくてはならないのか?
『そりゃそうだよな、間違ってるよな、だからウォーズマンも…うわ!ウォーズマンんんんんんん!』
反省しながら要らぬことを思い出した龍一。
ショックが入り混じって表現できない感情となったので寝ることにした。
『結局最近これなんだよなぁ、色々あって寝ちゃうんだよなぁ、結果寝ちゃうんだよなぁ、勉強全然してないなぁ…』
そんな事をブツブツ言いながら就寝するのが日課になっていった龍一、非常に良くないルーティーンに陥っているわけだが、本人は勉強しなくてはならないと言う気持ちはあるものの、危機感と言うものがあまりなかった。高校行けなかったら家をでて仕事しながら一人で暮らそうくらいに考えていた、両親がうるさく言わなくなったとは言え、今までが今までなのでそう簡単には順応できなかったのと、日々入れ代わり立ち代わり親族や縁者や賢者までのべつまくなしに人がやってきて、土足で龍一の空間に入り込んで来るのがどうしても嫌だった。
年末年始の大騒ぎで、高校受験よりも家を出たいと言う方向にベクトルが向いてしまっていたのも勉強熱が冷めてきている原因のひとつだった。
----------------------------------------------------------
学校へ行っても特に話すクラスメイトが居ないのは相変わらずだ。
吉田と話すも、あんなに頑張ろうと言って盛り上がったのに勉強していない自分が情けないのと申し訳ない気持ちがあって、以前よりも会話に盛り上がりが欠けるのは否めなかった。しかしながら、吉田はいつも笑顔で笑ってくれるので、少しばかり龍一の心は楽になった。
授業も正直先生が何を言ってるのかわからない、自分の能力の限界点が今ではなく、もっともっと過去だからである。ここで龍一は自分なりの勉強によって得た知識量の圧倒的な少なさ、記憶量の壊滅的足りなさ、理解度、応用力、全てにおいて過去、皆より数時間、数百時間、もしかすると数万時間過去に居ると感じる、だからこそ学校に来るのは嫌だった、虐めもあった、暴力も喧嘩もあったが学校に行った、だが、この距離感には絶望しか感じなかったからだ。
追いつく気がしない、ほぼ全員が答えられる事を答えられない、何なら先生の質問の意味すら理解できない、これは正直耐えがたい屈辱。
歯向かう者への対応なら出来る、やってきたし耐えられる、でもこればかりは自分の問題だ、自分が敵であり、自分がやってこなかったと言う凄まじい重さの罪の十字架なのだ、当然ながら勉強してこなかったことが罪かと言えば罪ではないと思うが、それを背負ってみんなと並ばなくてはならない事実はあまりに重い、だからこそ頑張らなければならないのに龍一からはもう頑張ると言う気持ちが失せかけていた。
逃げと言えば逃げだが、あまりにも大きくて重いその十字架は担ぐ事すらままならない、下ろしてしまいたい、それに押しつぶされかけているとも言えよう。
学問の不足ばかりではなく、周りとのギャップと己の不甲斐なさ、そして現実と言う重圧は過去一の重さだった。
----------------------------------------------------------
家に帰ってくると、夕食の時間に姉の弥生 純子が来た。
受験の事を良く知らない母親が依頼して、話しを聞こうと言う策略だと龍一は直ぐに勘づいた。
『龍、受験どうするの?』
予想通りの展開にホラ来たと感じた龍一。学校ではプレッシャー、家でもプレッシャーかよ、うんざりだ…と感じるものの、ここで喧嘩すると後々めんどくさいと分かっている龍一は軽くいなすことを選んだ。
『するよ』
『どこ?』
『私立と公立』
『まぁこういうのうんざりなんだろうけど、受けるならそれなりに…』
『やってるよ』
『うん、そっか…頑張るんだよ』
『わかった、ありがとう』
いつもなら『なにその答え方!』と怒るところだが、龍一の気持ちを察してか、姉も軽く触れただけで話すのを終えた。この腫れ物に触るような周囲の空気も龍一は正直イラッとする、あらゆるものにイライラしてる状態なのは間違いはないが、龍一本人もわからない感情であった、怒りたいのか泣きたいのか、ただただムカついているのか、だからこそトゲトゲしてしまうのだけれど、今一番龍一がしたいことは「大声で叫びたい」だった。
不愉快な夕食時間を終えて部屋に立て籠る。
どこに行ってもプレッシャー、唯一のノープレッシャー空間が自分の部屋のはずだが、龍一の心の中で葛藤が生まれているので安心できる空間が無いとも言えるわけで、これも龍一を追い詰めてしまっている。勉強前にゲームでもと思ったりもするが、ファミコンはソフトが無い、違うゲーム機はあるがやり尽くしたゲームなのでやる気が起きない、絵も辞めた、今の龍一には全くやることが無いのだ、どうしようもない状況下において、仕方なく勉強する、これが頭に入らないことこの上ない。
やる気のない中での勉強は拷問に近いわけだが、やめようと思えばいつでもい辞められる、この「逃げ道のある拷問」が本当にたちが悪い。逃げてもイイよと言われている中で受ける拷問、そんな拷問逃げたほうが楽に決まっている。
でも受けなくてはならない、こんなもん究極の拷問だ。
珈琲を飲んで落ち着くための時間を過ごしていると20時となった。
大好きな小泉今日子主演ドラマ『少女に何が起こったか』の放送時間である、受験生であろうとなかろうと、キョンキョンを見ない選択はない。洋楽しか聴かない龍一だったが、少しでもみんなの会話について行こうと思い、ザ・ベストテンを見ることにしていた中で、小泉今日子のファンになってしまっていたのだった。
『あーピアノが弾きたい』そんなキョンキョンを見ては『可哀想に』と思い、『薄汚ねぇシンデレラ!』と刑事が来たら『くそ刑事め』と感情を動かした。奇しくも逃げ場のない龍一の心は小泉今日子に救われていたのだった。
「少女に何が起こったか」を見終わると、机に向かって勉強をやる気が出た。ピアノを弾きたいのに弾けないキョンキョン、自分は勉強したいのにしたくない、そう、自分は「できないのではなく したくない」のだと改めて気づかされ「しなければいけない」へと変換する。
この夜、久しぶりに優しい気持ちで勉強が出来た龍一は、朝までその集中力を切らすことはなかった。
そんな気がした龍一、受験勉強をしなくてはならないのに何故今ファミコンを買うのか?何故今ゲームをしなくてはならないのか?
『そりゃそうだよな、間違ってるよな、だからウォーズマンも…うわ!ウォーズマンんんんんんん!』
反省しながら要らぬことを思い出した龍一。
ショックが入り混じって表現できない感情となったので寝ることにした。
『結局最近これなんだよなぁ、色々あって寝ちゃうんだよなぁ、結果寝ちゃうんだよなぁ、勉強全然してないなぁ…』
そんな事をブツブツ言いながら就寝するのが日課になっていった龍一、非常に良くないルーティーンに陥っているわけだが、本人は勉強しなくてはならないと言う気持ちはあるものの、危機感と言うものがあまりなかった。高校行けなかったら家をでて仕事しながら一人で暮らそうくらいに考えていた、両親がうるさく言わなくなったとは言え、今までが今までなのでそう簡単には順応できなかったのと、日々入れ代わり立ち代わり親族や縁者や賢者までのべつまくなしに人がやってきて、土足で龍一の空間に入り込んで来るのがどうしても嫌だった。
年末年始の大騒ぎで、高校受験よりも家を出たいと言う方向にベクトルが向いてしまっていたのも勉強熱が冷めてきている原因のひとつだった。
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学校へ行っても特に話すクラスメイトが居ないのは相変わらずだ。
吉田と話すも、あんなに頑張ろうと言って盛り上がったのに勉強していない自分が情けないのと申し訳ない気持ちがあって、以前よりも会話に盛り上がりが欠けるのは否めなかった。しかしながら、吉田はいつも笑顔で笑ってくれるので、少しばかり龍一の心は楽になった。
授業も正直先生が何を言ってるのかわからない、自分の能力の限界点が今ではなく、もっともっと過去だからである。ここで龍一は自分なりの勉強によって得た知識量の圧倒的な少なさ、記憶量の壊滅的足りなさ、理解度、応用力、全てにおいて過去、皆より数時間、数百時間、もしかすると数万時間過去に居ると感じる、だからこそ学校に来るのは嫌だった、虐めもあった、暴力も喧嘩もあったが学校に行った、だが、この距離感には絶望しか感じなかったからだ。
追いつく気がしない、ほぼ全員が答えられる事を答えられない、何なら先生の質問の意味すら理解できない、これは正直耐えがたい屈辱。
歯向かう者への対応なら出来る、やってきたし耐えられる、でもこればかりは自分の問題だ、自分が敵であり、自分がやってこなかったと言う凄まじい重さの罪の十字架なのだ、当然ながら勉強してこなかったことが罪かと言えば罪ではないと思うが、それを背負ってみんなと並ばなくてはならない事実はあまりに重い、だからこそ頑張らなければならないのに龍一からはもう頑張ると言う気持ちが失せかけていた。
逃げと言えば逃げだが、あまりにも大きくて重いその十字架は担ぐ事すらままならない、下ろしてしまいたい、それに押しつぶされかけているとも言えよう。
学問の不足ばかりではなく、周りとのギャップと己の不甲斐なさ、そして現実と言う重圧は過去一の重さだった。
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家に帰ってくると、夕食の時間に姉の弥生 純子が来た。
受験の事を良く知らない母親が依頼して、話しを聞こうと言う策略だと龍一は直ぐに勘づいた。
『龍、受験どうするの?』
予想通りの展開にホラ来たと感じた龍一。学校ではプレッシャー、家でもプレッシャーかよ、うんざりだ…と感じるものの、ここで喧嘩すると後々めんどくさいと分かっている龍一は軽くいなすことを選んだ。
『するよ』
『どこ?』
『私立と公立』
『まぁこういうのうんざりなんだろうけど、受けるならそれなりに…』
『やってるよ』
『うん、そっか…頑張るんだよ』
『わかった、ありがとう』
いつもなら『なにその答え方!』と怒るところだが、龍一の気持ちを察してか、姉も軽く触れただけで話すのを終えた。この腫れ物に触るような周囲の空気も龍一は正直イラッとする、あらゆるものにイライラしてる状態なのは間違いはないが、龍一本人もわからない感情であった、怒りたいのか泣きたいのか、ただただムカついているのか、だからこそトゲトゲしてしまうのだけれど、今一番龍一がしたいことは「大声で叫びたい」だった。
不愉快な夕食時間を終えて部屋に立て籠る。
どこに行ってもプレッシャー、唯一のノープレッシャー空間が自分の部屋のはずだが、龍一の心の中で葛藤が生まれているので安心できる空間が無いとも言えるわけで、これも龍一を追い詰めてしまっている。勉強前にゲームでもと思ったりもするが、ファミコンはソフトが無い、違うゲーム機はあるがやり尽くしたゲームなのでやる気が起きない、絵も辞めた、今の龍一には全くやることが無いのだ、どうしようもない状況下において、仕方なく勉強する、これが頭に入らないことこの上ない。
やる気のない中での勉強は拷問に近いわけだが、やめようと思えばいつでもい辞められる、この「逃げ道のある拷問」が本当にたちが悪い。逃げてもイイよと言われている中で受ける拷問、そんな拷問逃げたほうが楽に決まっている。
でも受けなくてはならない、こんなもん究極の拷問だ。
珈琲を飲んで落ち着くための時間を過ごしていると20時となった。
大好きな小泉今日子主演ドラマ『少女に何が起こったか』の放送時間である、受験生であろうとなかろうと、キョンキョンを見ない選択はない。洋楽しか聴かない龍一だったが、少しでもみんなの会話について行こうと思い、ザ・ベストテンを見ることにしていた中で、小泉今日子のファンになってしまっていたのだった。
『あーピアノが弾きたい』そんなキョンキョンを見ては『可哀想に』と思い、『薄汚ねぇシンデレラ!』と刑事が来たら『くそ刑事め』と感情を動かした。奇しくも逃げ場のない龍一の心は小泉今日子に救われていたのだった。
「少女に何が起こったか」を見終わると、机に向かって勉強をやる気が出た。ピアノを弾きたいのに弾けないキョンキョン、自分は勉強したいのにしたくない、そう、自分は「できないのではなく したくない」のだと改めて気づかされ「しなければいけない」へと変換する。
この夜、久しぶりに優しい気持ちで勉強が出来た龍一は、朝までその集中力を切らすことはなかった。
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