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中学校編
昂一との旅、逃走
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右も左も前も山山山。
一体どこを走っているのかわからないのに景色がずっと山では、ヒントとなる位置情報が全くないので誘拐されている気持ちになった龍一。
『龍、なんか曲かけてくれ、眠てぇ』
『あ、うん』
リュックから持ってきたカセットテープを選ぶ龍一。
『眠気覚ましならこんな感じかな』
そう呟きながらテープを入れた。
いきなりド派手なディスコソングが大音量で車内を包む。
『お!いいじゃんいいじゃん!』
『いいだろ?』
眠気のぶっ飛んだ昂一はアクセルを少し踏み込むと、何もない、誰も走っていない広くて長い道をかっ飛ばした。窓を少し開けると気持ちの良い風が龍一のオデコを撫でまわした、こんな感覚味わったことないや、なんて心地いいんだろう…そう感じると眠りに堕ちた。
『龍!龍!』
『いてぇ!!!!!!!!!!』
『飯食うぞメシ!』
『口で言えよ!つねるな!』
『何回呼んでも起きねーもんよ』
『つねるってババァのお仕置きじゃねーんだからよ』
『いいから降りろ』
昂一が向かう建物の看板を見上げると【日本一美味しくないラーメン屋】と書かれていた。龍一はここで思考を巡らす、美味しくないと書いていて本当に美味しくないなんてあり得ない、いや、本当に美味しくなくて、本当にマズいんかい!と言うオチを期待しての店名なのか?それとも味に自信が無くてハードルを下げているのか…
『入るぞ龍!』
『あぁ、うん』
店に入ると昂一はすぐさま『俺味噌ラーメン』と言って煙草を吸い始めた。こういう時って直ぐ決められると決めていない方はなかなかのプレッシャーを感じるわけで、早く頼まなきゃと言う気持ちにさせれてしまう。『じゃぁ醤油』
昂一が『味噌と醤油』と頼むと、店主は『ありがとうございまっしゅ』と言って作り始めた。店内は特に混雑もしていないので割と早い時間でラーメンが2つ出て来た。そのラーメンはスープが溢れそうなほどジャブジャブしており、乗せられた野菜で麺が見えない状態だった。スープの色は濁って薄い茶色、龍一の好きな透き通った醤油色とは程遠い。
『兄貴、これ絶対味薄いだろ…』
『どらどら…』
勢いよくほじくり出した麺をすすり上げる昂一が『ぶ!』と漫画のように噴き出して『うっす!喰ってみろ』そう一言放った。
そう言われてどれどれ?と簡単には手を出したくないのが本音だが、どれだけ薄いのか興味もあった、それもそのはず店名が日本一美味しくないラーメン屋なのだから。恐る恐るスープをそそる龍一が首を傾げる。
『うすいべ?』
『うすいっつーか…茹で野菜???』そう呟いて確認のためにもう一度スープを飲むが、やはり茹で野菜の汁みたいな感覚だった。その様子を見ていた店主が『塩、醤油、お好みで味付けして食べて~』と声をかける。
『そういうシステム?』
『龍、それはねーべ?』『だよな、ははははは』
昂一は塩を大量に、龍一は醤油をドクドクと足したがどうにもならない状況に薄ら笑いが止まらなくなった、ヘラヘラ笑いながらラーメンを食べていると、店主が『美味しくないでしょ?ごめんね、これサービス』と言って餃子を6個持ってきた。餃子は美味しくないとは思えない2人は何も考えずにパクっと口へ丸ごと放り込んだ。少しもぐもぐすると、2人とも皿に吐き出した。
『店長!生焼け!』
昂一が叫ぶと『すんませんねー』と一言。
それでもなんだか怒る気にもなれず、終始笑って食事が出来た。
お会計時、店主が冗談を言う。
『餃子はタダでいいんで!』
『あたりめぇだろ!!!!!』昂一がガチめにキレると店主は頭を深々と下げて謝った、恐らくこんな風に怒鳴られるのは日常茶飯事なのだろうけれど、龍一にとっては少々可哀想に思えたので『兄貴!』と一言強めに言って制止した。
喧嘩っ早い昂一を押し出すように店の外へ出し、2人でトラックへと乗り込んだ。『兄貴、煙草吸って良いか?』
『バカ野郎!いいに決まってるだろ、吸え吸え』
2人で煙草を吸いながら、先ほど味わったラーメンについて語り合った。
『龍、ああいうのマズいって言うのかな?』
『味が無いからマズいとは言い難いな』
『料理の味がしないってことはマズイって事じゃね?』
『カテゴリーとしてはマズイに大きく寄ってると思うけどね』
『カテゴリーってどんなゴリラだよ』
『そのゴリ―じゃねぇよ!兄貴の頭の悪さって世の中の常識を遥かに超えて来るよね、一周回って面白いわ』
『誰が馬鹿だよ』
『そうは言ってねーだろ』
『まず出発しよう、コンビニでおにぎりでも買おうぜ』
『コンビニってなんだ?』
『だっせ!コンビニ知らねぇの!?』
『知らない事はダサくないぞ別に』
『あー…お前の街にはまだ来てないか、オッケー理解した、あ、ちょっとまって』
昂一はトラックの窓を開けると、空き缶を美味しくないラーメン屋の玄関に投げつけた。
『逃げろ!!!!!』
そう言って昂一は逃走した。
『俺も共犯じゃねーかよ!』
-------------------------------------------------------------
街の中を少し走ると昂一が『あったぞー』と言いながらハンドルを大きく切った、エンジンを止めてトラックを降りると、箱型の建物がそこにはあった。窓から見える店内は雑誌、そしてたくさん並んでいる棚には色々な商品が見えた。
『酒屋みたいなもんか?』
『おめーんとこの商店と一緒にすんな、入るぞ』
店内に入ると初めて見る小さなスーパーのような店内…いや小さなデパートに驚いた。お菓子、調味料、カップ麺、雑誌、飲み物、電池、下着、剃刀、洗剤、おにぎりにホットドッグにイヤホンに絆創膏、シャンプーリンスからティッシュ、トイレットペーパー、コンドームに至るまでなんでも売っていたのだ、龍一は朝に見た自動販売機レストランと同じくらいキラキラと胸がときめいた、知らない道を走るのは嫌いだが、知らない事を経験することは大好きだったので、このコンビニがバンジージャンプも出来るとしたら真っ先に体験しただろう。
地元の友人の誰もが恐らく経験していないであろう事を経験していると言う優越感と、先に自分で良いのかと言う気持ちが殴り合いの喧嘩をしているのが今の龍一の胸の中だった。
『なんたるショッキングな現実!』
『スゲーだろ?ないモノ以外は何でも売ってるぜ』
兄昂一の鉄板的なギャグもいつもなら拾ってやる龍一だが、スルーしてしまうほどに龍一は初めて見るコンビニの店内をリードが切れた犬のように歩き回っていた。
アツアツのホットドッグを買ってトラックの車内で食べる龍一、飲み物はこれまた初めて見るコカ・コーラの小太りの丸い瓶。
『その瓶持って帰って自慢しろよ』
『うん、そうだね…あ!』
ガチャン!
窓から手を出しながらコーラを飲んでいた龍一は、トラックが動き出した振動でコカ・コーラの瓶を落としてしまった。
『やべ!駐車場で瓶割るのはマズいだろ!龍!逃げるぞ!』
急いで2人はコンビニの駐車場から逃走した。
-------------------------------------------------------------
夕方になり、昂一にも疲れが見え始めた。
『兄貴、夜中も走りっぱなしなのか?』
『いつもはそうだけれど、今回は時間に余裕あるから休みながら走るよ』
『そうか』
『ちなみに龍、あのトンネル通れると思うか?』
『いや、かなり低いね、無理っぽくね?』
『んー行けるだろ』
『じゃぁ聞くなよ』
ガガガガガガ!
聞いたことが無い物凄い音がしてトラックが止まった。
『やっちまったかな?龍、ちょっと見てきて』
トラックを降りて確認すると、トラックの荷台がガッチリとトンネルの幅でハマっていた。
『無理無理、バックしたほうが良いよ』
『オッケーわかった、乗れ』
龍一がトラックに乗り込むと、昂一はバックして急いでハンドルを切って加速した。
『やべーやべー逃げるぞ!』
『逃げる?』
『器物破損で捕まっちまうからよ!』
『マジか!!!!逃げろ逃げろ!!!!』
2人は笑いながら、壊したトンネルを後に全速力で逃走した。
一体どこを走っているのかわからないのに景色がずっと山では、ヒントとなる位置情報が全くないので誘拐されている気持ちになった龍一。
『龍、なんか曲かけてくれ、眠てぇ』
『あ、うん』
リュックから持ってきたカセットテープを選ぶ龍一。
『眠気覚ましならこんな感じかな』
そう呟きながらテープを入れた。
いきなりド派手なディスコソングが大音量で車内を包む。
『お!いいじゃんいいじゃん!』
『いいだろ?』
眠気のぶっ飛んだ昂一はアクセルを少し踏み込むと、何もない、誰も走っていない広くて長い道をかっ飛ばした。窓を少し開けると気持ちの良い風が龍一のオデコを撫でまわした、こんな感覚味わったことないや、なんて心地いいんだろう…そう感じると眠りに堕ちた。
『龍!龍!』
『いてぇ!!!!!!!!!!』
『飯食うぞメシ!』
『口で言えよ!つねるな!』
『何回呼んでも起きねーもんよ』
『つねるってババァのお仕置きじゃねーんだからよ』
『いいから降りろ』
昂一が向かう建物の看板を見上げると【日本一美味しくないラーメン屋】と書かれていた。龍一はここで思考を巡らす、美味しくないと書いていて本当に美味しくないなんてあり得ない、いや、本当に美味しくなくて、本当にマズいんかい!と言うオチを期待しての店名なのか?それとも味に自信が無くてハードルを下げているのか…
『入るぞ龍!』
『あぁ、うん』
店に入ると昂一はすぐさま『俺味噌ラーメン』と言って煙草を吸い始めた。こういう時って直ぐ決められると決めていない方はなかなかのプレッシャーを感じるわけで、早く頼まなきゃと言う気持ちにさせれてしまう。『じゃぁ醤油』
昂一が『味噌と醤油』と頼むと、店主は『ありがとうございまっしゅ』と言って作り始めた。店内は特に混雑もしていないので割と早い時間でラーメンが2つ出て来た。そのラーメンはスープが溢れそうなほどジャブジャブしており、乗せられた野菜で麺が見えない状態だった。スープの色は濁って薄い茶色、龍一の好きな透き通った醤油色とは程遠い。
『兄貴、これ絶対味薄いだろ…』
『どらどら…』
勢いよくほじくり出した麺をすすり上げる昂一が『ぶ!』と漫画のように噴き出して『うっす!喰ってみろ』そう一言放った。
そう言われてどれどれ?と簡単には手を出したくないのが本音だが、どれだけ薄いのか興味もあった、それもそのはず店名が日本一美味しくないラーメン屋なのだから。恐る恐るスープをそそる龍一が首を傾げる。
『うすいべ?』
『うすいっつーか…茹で野菜???』そう呟いて確認のためにもう一度スープを飲むが、やはり茹で野菜の汁みたいな感覚だった。その様子を見ていた店主が『塩、醤油、お好みで味付けして食べて~』と声をかける。
『そういうシステム?』
『龍、それはねーべ?』『だよな、ははははは』
昂一は塩を大量に、龍一は醤油をドクドクと足したがどうにもならない状況に薄ら笑いが止まらなくなった、ヘラヘラ笑いながらラーメンを食べていると、店主が『美味しくないでしょ?ごめんね、これサービス』と言って餃子を6個持ってきた。餃子は美味しくないとは思えない2人は何も考えずにパクっと口へ丸ごと放り込んだ。少しもぐもぐすると、2人とも皿に吐き出した。
『店長!生焼け!』
昂一が叫ぶと『すんませんねー』と一言。
それでもなんだか怒る気にもなれず、終始笑って食事が出来た。
お会計時、店主が冗談を言う。
『餃子はタダでいいんで!』
『あたりめぇだろ!!!!!』昂一がガチめにキレると店主は頭を深々と下げて謝った、恐らくこんな風に怒鳴られるのは日常茶飯事なのだろうけれど、龍一にとっては少々可哀想に思えたので『兄貴!』と一言強めに言って制止した。
喧嘩っ早い昂一を押し出すように店の外へ出し、2人でトラックへと乗り込んだ。『兄貴、煙草吸って良いか?』
『バカ野郎!いいに決まってるだろ、吸え吸え』
2人で煙草を吸いながら、先ほど味わったラーメンについて語り合った。
『龍、ああいうのマズいって言うのかな?』
『味が無いからマズいとは言い難いな』
『料理の味がしないってことはマズイって事じゃね?』
『カテゴリーとしてはマズイに大きく寄ってると思うけどね』
『カテゴリーってどんなゴリラだよ』
『そのゴリ―じゃねぇよ!兄貴の頭の悪さって世の中の常識を遥かに超えて来るよね、一周回って面白いわ』
『誰が馬鹿だよ』
『そうは言ってねーだろ』
『まず出発しよう、コンビニでおにぎりでも買おうぜ』
『コンビニってなんだ?』
『だっせ!コンビニ知らねぇの!?』
『知らない事はダサくないぞ別に』
『あー…お前の街にはまだ来てないか、オッケー理解した、あ、ちょっとまって』
昂一はトラックの窓を開けると、空き缶を美味しくないラーメン屋の玄関に投げつけた。
『逃げろ!!!!!』
そう言って昂一は逃走した。
『俺も共犯じゃねーかよ!』
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街の中を少し走ると昂一が『あったぞー』と言いながらハンドルを大きく切った、エンジンを止めてトラックを降りると、箱型の建物がそこにはあった。窓から見える店内は雑誌、そしてたくさん並んでいる棚には色々な商品が見えた。
『酒屋みたいなもんか?』
『おめーんとこの商店と一緒にすんな、入るぞ』
店内に入ると初めて見る小さなスーパーのような店内…いや小さなデパートに驚いた。お菓子、調味料、カップ麺、雑誌、飲み物、電池、下着、剃刀、洗剤、おにぎりにホットドッグにイヤホンに絆創膏、シャンプーリンスからティッシュ、トイレットペーパー、コンドームに至るまでなんでも売っていたのだ、龍一は朝に見た自動販売機レストランと同じくらいキラキラと胸がときめいた、知らない道を走るのは嫌いだが、知らない事を経験することは大好きだったので、このコンビニがバンジージャンプも出来るとしたら真っ先に体験しただろう。
地元の友人の誰もが恐らく経験していないであろう事を経験していると言う優越感と、先に自分で良いのかと言う気持ちが殴り合いの喧嘩をしているのが今の龍一の胸の中だった。
『なんたるショッキングな現実!』
『スゲーだろ?ないモノ以外は何でも売ってるぜ』
兄昂一の鉄板的なギャグもいつもなら拾ってやる龍一だが、スルーしてしまうほどに龍一は初めて見るコンビニの店内をリードが切れた犬のように歩き回っていた。
アツアツのホットドッグを買ってトラックの車内で食べる龍一、飲み物はこれまた初めて見るコカ・コーラの小太りの丸い瓶。
『その瓶持って帰って自慢しろよ』
『うん、そうだね…あ!』
ガチャン!
窓から手を出しながらコーラを飲んでいた龍一は、トラックが動き出した振動でコカ・コーラの瓶を落としてしまった。
『やべ!駐車場で瓶割るのはマズいだろ!龍!逃げるぞ!』
急いで2人はコンビニの駐車場から逃走した。
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夕方になり、昂一にも疲れが見え始めた。
『兄貴、夜中も走りっぱなしなのか?』
『いつもはそうだけれど、今回は時間に余裕あるから休みながら走るよ』
『そうか』
『ちなみに龍、あのトンネル通れると思うか?』
『いや、かなり低いね、無理っぽくね?』
『んー行けるだろ』
『じゃぁ聞くなよ』
ガガガガガガ!
聞いたことが無い物凄い音がしてトラックが止まった。
『やっちまったかな?龍、ちょっと見てきて』
トラックを降りて確認すると、トラックの荷台がガッチリとトンネルの幅でハマっていた。
『無理無理、バックしたほうが良いよ』
『オッケーわかった、乗れ』
龍一がトラックに乗り込むと、昂一はバックして急いでハンドルを切って加速した。
『やべーやべー逃げるぞ!』
『逃げる?』
『器物破損で捕まっちまうからよ!』
『マジか!!!!逃げろ逃げろ!!!!』
2人は笑いながら、壊したトンネルを後に全速力で逃走した。
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