Hope Man

如月 睦月

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中学校編

エロ本通り4丁目

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タカヒロとつるむ事が多くなった龍一。
学校では喧嘩を売られる事もなく、売られてもタカヒロと2人で喧嘩した。
龍一は少しづつタカヒロを許し始めた。
この場合タカヒロに罪は無い、龍一の心が彼と仲良くして良いものか?
という問いに答えはじめ、彼の存在を認め始め、
彼が自分の防御壁の中に入り込むのを許し始めたのだ。

この日、タカヒロが声をかけた。
『エロ本通り4丁目、今日行くよな桜坂』

『あ、あぁ、どこそれ』

『喫煙所だよ、俺たちの』

『あぁ、あそこ4丁目なの?』

『いやその前にエロ本通りなんかねーだろ』

『そうだな』

『ハハハハハハハハハ』

やたらと息の合った2人の掛け合いに周囲が少し引く。

放課後、エロ本通り4丁目に向かうと、先客がいる様だった。
向こうが気づき、3人で近寄ってきた。
龍一には見覚えがあった、同じ北中の先輩だ。
『おめぇらドコちゅーーーーー?』

ラリッてるようだった、微かにシンナーの臭いがする。
足元もおぼつかない様子。
何をするかわかったもんじゃないので下手に出た。

『北中っす』

『あ?なに、後輩か、なんだそうかオッケーオッケー』

そう言うと3人組の1人がタカヒロの肩をポンポンと叩いた。
タカヒロはその手を払い『馴れ馴れしくしないで下さい』と言った。

『あ?なに?』

『馴れ馴れしくすんなっつったんだよ!』

『タカヒロ!』

『なんだこら!!!!』

先輩の一人がタカヒロの頭を鷲掴みにして顔面に膝を入れた。
その膝蹴りで、1人は素人じゃないと分かった龍一。
一見動きは頭を鷲掴みにしてからの膝だが、引き寄せて体制を崩して、
右に振って膝を叩き込む、いわゆる手動でのカウンター膝だったのだ。
これは一般人にはできない。

『キックボクシング・・・』そう判断した龍一。

鼻から血を流してタカヒロが叫ぶ『逃げろ桜坂!』
子供の頃に裏切られたあの喧嘩を思い出した。
あの時とは立場が違う、ここで逃げたらアイツと同じだ。

龍一は右構えで左脚を少し上げた。
『なによその目!ガンつけてんじゃねぇ!』

膝蹴りを打った先輩をAとするなら、文句をつけてきたのはB
龍一の後ろを取ろうとしたCのみぞおちに右の横蹴りが決まる。
うずくまるように倒れる先輩C。

タカヒロが立ち上がり、文句をつけていたBの背中に飛び蹴りをする。
前のめりで転んだ先輩Bの脇腹に蹴りを一発落とすように入れた龍一。
サッカーボールをけり上げるように蹴るのも効くが、
踵を腹部に落されるのも猛烈である。
残りはキックボクサーA

しかしこの先輩Aがくせ者だった。
しっかりキックボクサーの構えなのだ、脇腹を閉め、両腕のガードが
肋骨をキチンと守っている、ややかがんでリズム感がある。
龍一が軽くステップインするが、ステップアウトして距離を取る。
『深い・・・』

入り込めない緊迫感。

タカヒロががむしゃらに横から殴りかかる。
上半身のスゥエーだけでかわされ、右フックを叩き込まれる。
タカヒロが完全にグラッと来てる事が見て取れた。
龍一は次の一撃がタカヒロに入る前にステップインして入り込んだ。
先輩Aは即ステップアウトしたが、直ぐに前に出て前蹴りを龍一に見舞う。
まさかのフェイントからのカウンターに龍一は反応が遅れ、
顔面に高い前蹴りを貰ってしまう。
目の前に火花が出る感覚だった。
続けざまに左ジャブ右ストレートを貰い、すっ飛んでしまった龍一。
『つ・・・つぇえええ』
右ストレートが顎に入り、少しクラクラする。
龍一が立てずにいるとタカヒロが先輩Aの脚にしがみついた。
『桜坂!!!今だ!!!!逃げろ!!!!』

『俺は逃げねぇええええええ!』
石を握って猛ダッシュし、先輩Aのボディを狙った。
先輩Aはボディを守る構えを取ったその時、左フックで先輩Aの顔面を捉えた。
そのままの回転で石を捨てて右のアッパー気味のフックが決まる。

ヨロヨロした先輩Aに後ろまわし蹴りが綺麗に決まった。

喜んでいる2人に木材で先輩BとCが殴りかかってきた。
全くのノーマークだったのでモロに頭に喰らってしまい、
血を流してよろめいてしまった2人に先輩Aが襲い掛かる。
結局3人の先輩にボッコボコにされて喧嘩は終わった。

何分経過したかわからない・・・
やっと口を開いたのはタカヒロだった。

『死んだ?』

『死んでたら返事しねーだろ』

『だな』

『はははははははは』

2人で肩を組んであの土管の中に入った。

転がってるシンナーの袋を投げ捨て、
倒れる様に2人で座り、タカヒロはセブンスターを出した。
龍一は赤のマルボロ。

『なんだよ、吸い始めたのか?』

『お前のせいでな、吸いたくなっちゃうんだよ、色々吸ったけど、
これが一番うまかったんだ。』

『ふぅ~ん、しっかし、先輩相手によく戦ったよな、俺たち』

『タカヒロさ・・・』

『ん?』

『俺に逃げろって言ったじゃん』

『うん』

『逃げると思った?』

『いや、そう言えば燃えると思った』

『ケッ!そんなこったろーと思ったわ』

『うるせぇよ!ホラ』

『いてっ』

タカヒロはエロ本を龍一の胸に投げつけた。
おもむろに開いてみる龍一。

『なぁ・・・タカヒロ・・・』

『ん?』

『赤ちゃんっておっぱい吸うじゃん』

『うん、そうだな』

『俺たちが吸っても良いのかな』

『エロっ!桜坂エロっ!おっぱい吸う?何言ってんの?エロッ!』

『だってよ、気になるじゃんよ!他にどう扱うんだよおっぱいってさ』

『桜坂エロ左衛門殿、もみもみしたらいいでござるよ』

『いや揉むだけって何だか納得いかないんだよ』

『まぁいつか吸ったり噛んだりする日が来るんだろうけどよ』

『え?噛むの?』

『ばーか、痛くないように噛むんだよ・・・あれ?
桜坂さ、もしかしてだけど狂犬病ってあだ名・・・』

『やめろやめろ、好きじゃないんだよそのあだ名』

『なぁ今日の桜坂のおっぱい吸いたい発言、明日学校で言ってもいいか?』

『やめろよ!言うんじゃねーよ!友達だろ?』

『え?今友達っつった?』

『言ってねーし』

『ふふっ、まぁいいけどよ』

龍一がうっかり心を許してタカヒロを友達と言ったのを
タカヒロは聞き逃さなかった。
だが、照れ隠しで言ってないって言った龍一に気を使って、
それ以上は何も言わなかったが、タカヒロはとても嬉しかった。

と同時に龍一も、一緒に戦ったタカヒロの存在は心強く、
友達として受け入れる事が出来たのだった。

2人の煙草の煙が土管の天井を這い回り、上へと抜け出す。
『やっと肺に入れられるようになったよタカヒロ』

『ふかしてると喉いてぇからな、ふかしてるやつ見ると必死だなって思うよな』

『そうそう、女子が来た途端に吸い始めてボハーボハーってな』

『桜坂って、函館の人か?』

『龍一で良いよ、それが・・・聞いてないから知らないんだ』

『そっか、まぁ生きてりゃ色々あるよな龍一』

『あぁ・・・そうだな』

『身体いてぇけど帰るか』

『そだな』

2人は肩を組んで歩き出し、エロ本通り4丁目を後にした。
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