上 下
19 / 100

大きな男

しおりを挟む
さて、霊感の持ち主である母親の登場です。

彼女の霊感の強さは、一緒にTVを見ていると、

急にうずくまって唸りだし、脂汗を流したかと思うと、

スッと起き上がり『〇〇が死んだ・・・』と言った途端に

家の電話が鳴り、母の言った親戚の〇〇が亡くなったと言う

知らせが来るほどである。



そんな母親は身体が丈夫ではなく、これもそう言う者の

影響なのかもなんて考えたりもする。

ある日、脚の関節が痛み、入院となった。

病室に案内されると、母親はとても嫌な気持ちがしたと言う。

ベッドに誘導されたが、そのベッドも凄く心地が悪く、

一言で言うと【なんだか不快】だったそうです。



その夜、消灯時間となり寝る事にした母親。



気持ち悪いとは言え、入院当日で色々あったわけで、

気疲れもあり睡魔に襲われた。



コツコツコツ・・・



足音で目が覚めた母親。

その足音は看護師さんのそれとはまったく違った。



コツコツコツ・・・



『あ、そうだ、サラリーマン』と思ったと言う。

踵の硬い革靴の音じゃないかと推測した母親。

消灯時間が過ぎてから面会に来た人かしら・・・

母親入った病室は2階の角で、4人部屋だが、

母親一人だったので、とても寂しく、

ましてやこんな意味不明の音が聞こえたのでは、

心細くて怖かった。



コツコツコツ・・・



『あれ・・・離れていく・・・』



コツコツコツ・・・コツ・・・コツコツコツ・・・



『ん?・・・んん????』



母親は慌てて上半身を起こした。

外を歩いている事に気が付いたからである。

カーテンをしているが、間違いなく足音は窓の外。



『なにこれ・・・』



足音は窓を横切り、母親の頭の方の壁の後ろを歩いた。

いわゆる【外】ではあるが。



コツコツコツ・・・



キィイイイイイイイイイイ・・・ゴットン・・・



普段誰も開ける事が無いはずの非常ドアを開けて

入って来たらしい。



そこから3歩進み、足音が止まった。



母親が見てはいけないと思いつつも、ついつい

え?と言う勢いで見てしまった。



学校の教室の出入り口を覚えているだろうか、

その上に、棒を使って開ける高い位置にある窓を

思い出していただきたい。



このような高い場所の窓から男が覗いていたのだった。



この窓から覗ける身長の人間などそうそういないはず。

その見知らぬ男は黙って母親を見つめた。



一晩中見つめ続けた。



恐怖で眠る事が出来なかった母親だったが、

信じてもらえるはずもなく黙っていたのだが、

流石に5日も覗き続けられたのでは体力が持たない。



神主である父親に相談すると、

出刃包丁をお酒で研ぎ、神への祈りを長い時間捧げ、

真っ新なさらしに巻いて病室の母親の眠る枕の下へ置き、

切先を北に向けて、もう一度迷惑にならないように

小声で祈りを捧げた。

他にも何かしていたと思うのですが記憶にありません。



帰宅後も父親はずっと神棚に祈りを捧げた。



翌日、母親を訪ねると男は来なかったそうで、

ぐっすり眠れたそうです。



母親が担当の看護師さんに、私が来る前に

この部屋で何かなかったか尋ねると、

『本当は言えないのですが・・・・』と言うと、

静かに教えてくれた・・・



『貴方が入院する前の夜、男性が亡くなったのよ・・・

このベッドで・・・とても大きな方でした』と。



※文中の魔除けの様な儀式は正式なものかどうかはわかりません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
何が来ても受け入れてはいけません

【実話】お祓いで除霊しに行ったら死にそうになった話

あけぼし
ホラー
今まで頼まれた除霊の中で、危険度が高く怖かったものについて綴ります。

僕が見た怪物たち1997-2018

サトウ・レン
ホラー
初めて先生と会ったのは、1997年の秋頃のことで、僕は田舎の寂れた村に住む少年だった。 怪物を探す先生と、行動を共にしてきた僕が見てきた世界はどこまでも――。 ※作品内の一部エピソードは元々「死を招く写真の話」「或るホラー作家の死」「二流には分からない」として他のサイトに載せていたものを、大幅にリライトしたものになります。 〈参考〉 「廃屋等の取り壊しに係る積極的な行政の関与」 https://www.soumu.go.jp/jitidai/image/pdf/2-160-16hann.pdf

催眠アプリを手に入れたエロガキの末路

夜光虫
ホラー
タイトルそのまんまです 微エロ注意

怪談 四方山

おばやしりゅうき
ホラー
『怪談 四方山』 ライターとして生計を立てている「私」は、とある「風」にまつわる話を思い出したことをきっかけに、一風変わった怪談を集めた短編集をつくることにした。 しかし、「私」が身近な人物達からそうした話を集めてゆくと、ある奇妙な共通点が浮かび上がりーー 連作(予定)の掌編小説集の一つ。 幽霊話とはほんの少し趣の異なる奇妙な物語をライターの「私」が収集し、短いお話としてまとめた、というストーリー。 実話怪談モノ、と言った所か。 全五編、全て読み終えたところで全体の共通点が浮かび上がるという内容にしようと思っている。 今のところ三編まで完成しているが、一時中断している為、忘れないように(場合によっては供養も兼ねて)投稿。 ……やっぱり文量を増やすのが難しいですね。スカスカの内容に一つ一つの話はペラペラの文量なので、ちょっとしたジャンクフードみたいな感じで読んでもらえると嬉しいです……なんて。 他にも小説を投稿するのは初めてなのでよければアドバイスなどもお願いします。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

怪談実話 その4

紫苑
ホラー
今回は割とほのぼの系の怪談です(笑)

実話怪談集『境界』

烏目浩輔
ホラー
ショートショートor短編の実話怪談集です。アルファポリスとエブリスタで公開しています。 基本的に一話完結で、各話に繋がりもありません。一話目から順番に読んでもらっても構いませんし、気になった話だけ読んでもらっても構いません。 お好きな読み方でご自由にお読みくださいませ。 遅筆なので毎日の更新は無理だと思います。二、三日に一話を目指してがんばります。 というか、最近は一週間〜十日ほどあいたりすることもあります。すみません……。

処理中です...