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頼むね

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小学生の頃、仲の良い絵美と言う友達が居ました。

遊びに行ったり来たりして、お互いの親とも仲良くなりました。

スーパーであっても『あら陽子ちゃん、また遊びにおいで』
なんて声をかけてもらえるほどに。

そんなある日、約束していたので絵美の家に行くと
お母さんが具合を悪くして昨夜入院したと言うのです。

『大丈夫なの?』

『うん、学校あるし、お父さんがついてるから、
お前はお姉ちゃんと2人で家の事頼むって言われて』

『そうなんだ、寂しいね』

『うん、少しね、でも治って帰って来るし』

『そうだね』

いつものように絵を描いたり、一緒に宿題をして時間を過ごした。
外を見ると雨が降っており、いつもより一段と暗くなっていた。
時間はいつも通りだったが、その暗さに少し怖さと焦りを感じてしまい、私は急いで帰ることにした。さほど遠くないし、霧雨の様な雨がしとしとと降っていただけなので、傘を借りずに小走りで自宅を目指した。

大きな排水路の上に橋が1つ掛けられた場所がある。

いつもは絵美とそこから木の切れ端を投げたりして、流れる船に見立てて下流まで追いかけた。

霧雨に浮かぶその橋に人が立っているのが見えた。
近づくと絵美の母親でした。

あれ?・・・・入院しているのでは・・・・

足を見たらサンダルを履いている。

上から下まで舐めるように見たが透けている個所はない。

あ・・・幽霊じゃないのかな・・・そうだよね、幽霊は夜だよね、夕方だし・・・そう答えを出すと勇気がでた。

『お邪魔してました』

そう声をかけると人の可動範囲を軽く超えた角度で首をぐるりと回し、ほぼ逆さまの顔で『陽子ちゃん・・・』と言った。その姿には流石にビビり『失礼します!』と走り出した時、背中に『頼むね』と投げかけられた。

でも怖さの方が勝り、家まで走って帰った。

翌日、絵美は学校を休み、担任の先生から絵美の母親が病院で亡くなったと伝えられた。

私はあの『頼むね』を思い出し、涙が止まりませんでした。

もちろん小学校を卒業するまでは、絵美とずっと仲良く過ごしました。
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