FLY ME TO THE MOON

如月 睦月

文字の大きさ
上 下
62 / 63

【外伝】羽鐘のミッション5

しおりを挟む
突貫工事のバリケードで数百人を3人で迎え撃つ作戦のカントリーロード。

好き放題撃たせるのだから得策とは思えない。

しかし今の3人にはある程度集めたら発動させる愛の「銃を無効化するナノマシン」に頼るほかなかった、その後は肉弾戦。

作戦が成功したところで肉弾戦で数百人に立ち向かおうと言うのだ、もはや捨て身の作戦と言う他ならない。



ここで羽鐘が口を開く



『ねぇ、私はほんの少しだけど、あなた達と戦えてよかったよ』



『ああ、俺もだ、初めてできた仲間がお前らで良かったぜ』



『ウチもです、今日の日の記念にチューバーを奏でまする』



『景気づけに頼むぜ!』



愛が手の平に握っていた小さな棒を指でトントンとノックすると、トランスフォームしてチューバーへと姿を変えた。



『なんそれ!すげーっすね』



『私たちのチーム名にちなんで、カントリーロードをお聞きくださいまし』



愛はチューバーでカントリーロードを軽やかに、そして情熱的に演奏した。

そのさなか、建物に弾丸が撃ち込まれ始める。

それでも演奏を止めない愛、そのメロディーに勇気を感じた羽鐘は壁に身を隠してその歌詞をヒゲゴリと一緒に唄い始める。



Almost heaven, West Virginia



Blue Ridge Mountains, Shenandoah River



Life is old there, older than the trees



Younger than the mountains, blowing like a breeze




Country roads, take me home



To the place I belong



West Virginia, Mountain Mama



Take me home, country roads



弾丸の量が明らかに多くなり、その攻撃の激しさを増す。

愛の作ったバリケードも破られつつあるのが目で見て分かった。

その時、愛の演奏が止まった。



『ナノマシン!発進にござりまする!!!!!!』



敵に投げつけたガシャポンのカプセルのようなモノはポン!とおもちゃのような爆発をすると目に見えないナノマシンが飛び出したようだった。

次々と前衛の銃から小さな爆発を起こし始める。

まるで花火大会のように小気味よくその爆発は連鎖していった。



ぱん!



ぱん!



ぱぱぱぱぱん!



準備したナノマシンの数は500機

敵の数は数百人だが、500人以下だと想定する、だとすれば計算上では敵全員の銃を破壊したことになる、だがサブウェポンまでとなると何とも言えないが、明らかに今が好機!銃が無いのならこちらの方が有利、こちらには銃があるのだから。



ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!



この瞬間、有利は一気に逆転、状況はイーブンでも数では圧倒的に敵が有利となってしまった。



『ちょっと!ラブ!私のお気に入りのライフル吹っ飛んだんですけど!』



『俺のデザートイーグルもだぜ』



『し…仕方がないでござります!銃に反応するんですもの!でも…ごめんなちゃい』



『ラブ…可愛いぜ…』



『よっしゃいこう!』



羽鐘の掛け声で3人が一気に動く、入り込んできた敵を銃で殴る羽鐘、拳一つでぶっ飛ばしてはぶん投げるヒゲゴリ、硬質金属でできたチューバーで殴り飛ばす愛、みるみる死体の山が築き上げられていく。しかし敵は数の暴力で圧してくるため、倒しても刺しても殴ってもキリがなく、想像以上に3人の体力を削って行った。



少しだけ残していた小型地雷を外にばらまき吹き飛ばそうと試みたが、その爆風で建物が倒壊する。状況はますます不利になるが、崩れた瓦礫で敵をぶん殴り、落ちてきた鉄筋を武器にすることも出来た。



バカン!



またもや地雷を踏んだ敵が吹き飛んだ。

飛んできた破片が愛の脇腹に突き刺さる『あうっ…治療!はぁはぁ…』『大丈夫かラブ!』『ボケゴジラ後ろ!』ライフルの後ろで後頭部を強打されたヒゲゴリ、片膝を付きそうになったがグッと堪え雄たけびを上げて裏拳で殴り、敵の顔面を潰した。『治療!』その隙にヒゲゴリに殴り掛かろうとする敵に羽鐘のタックル、体制を崩した羽鐘の顔面に敵の蹴りが入る!ごろごろと転がる羽鐘を数人が踏みつける。『スティール!動かないで!』

そう叫ぶと、愛はチューバーを思いっきり吹いた。

その瞬間羽鐘の周囲の敵が血を噴き出して吹っ飛んで行った。

『な、なんだ!?』



『一発限りのチューバー型ショットガンでござります!』



『どうせラブの事だからナノマシンが感知しない構造なんだろうな』



『さようにござりまする、もう助けられませんからそのおつもりで!』



起き上がった羽鐘はカランビットナイフを取り出して構えた。

『ありがとうラブ、気合い入ったわ』



ヒゲゴリもナイフを取り出し、愛もチューバー型ショットガンを収納すると、ナイフを構えて敵を迎え撃つ体制を整え、次々となだれ込む敵に応戦するカントリーロードだった。



---------------------------------------------------------------



何時間戦ったのだろうか、もはや立ってる事もやっとの状態の3人に敵は容赦なく次々と襲って来る、ラーの逆十字復活の為に必死の様だ。

満身創痍、ウェットスーツが治療するとは言え疲労は回復できない、どんどん体力が奪われ圧されて行く。



『はぁはぁ…正直…もう無理じゃねぇ?』



『何を言うのヒゲゴジラ!と言いたいところだけれど、はぁ…はぁ…そうかもしれないですわね…』



『はぁ…はぁ…諦めるのは大嫌い…私は独りでも戦う!』



『羽鐘、もう立ってられねーじゃん、無理だって、よくやったよ…はぁ…うぐっ』



『くっそ…はぁはぁ…くっそ!くっそ!くっそ!』



悔し涙を流す羽鐘にヒゲゴリも愛も静かに貰い涙を流した。



---------------------------------------------------------------



『いい?ブースターは一度限り、失敗したら全員死ぬからね、この高度じゃなきゃあなたたちの滑空はできないし、限りなく島に近づくから目視される、ジャマーシールドも意味がないから!』



恐ろしいスピードでドラゴンフライをかっ飛ばすのは神楽だった。

漆黒の蜻蛉のスピードを限界まで引き出して闇を切り裂いて飛ぶ。



---------------------------------------------------------------



ウーーーーーーーー…



島にサイレンが鳴り響き、敵の動きが止まった。

ゴォンゴォン…

重苦しい音と共に対空砲火兵器が動き始めるのが3人に見えた。



『ミサイル発射か?…何か来たのか?』



『さぁ、このミサイルから逃れられる乗り物はこの世にはありませんことよ』



ボシュ―――――――――――――――――――――――



島全体が見えなくなるほどの白煙と共にゆっくりとミサイルが発射された、数メートル打ち上がると一気に加速して空の彼方に消えた。



---------------------------------------------------------------



『ミサイル接近中、距離300m』



『サンキューコウメ!』



操縦桿を強く握ると、上蓋のキャップを親指で跳ね上げ、真っ赤なボタンにその指を乗せた。



『ミサイル接近中、距離200m』



ドラゴンフライの内部に警報機が激しく鳴り響く。



『死ぬ準備しとけお前ら!でも私を恨むんじゃないわよ!』



『ミサイル接近中、距離50m』



『うらぁ!!!!』



その色気のある容姿からは想像できない声色で叫ぶと、一気に操縦桿を右へ全開に倒し、赤いボタンを押した。



ボフン!!!!!



ブースターを一気に使用することにより、爆発を起こさせ、空中に熱の塊を止まらせた神楽。そこに熱探知ミサイルが直撃して爆発した。

ブースターの熱がドラゴンフライの熱を上回った為、ターゲットが移動したと言うわけだ。神楽の腕が無ければこの芸当は不可能、いや、神楽ですら完璧にできる可能性は限りなくゼロに近い技術だった。



爆風で操縦不能になりグルグルと回転しながら堕ちるドラゴンフライ。



『言う事ききなさい!』



神楽が片方だけジェットブースターを発動させ回転を制御し上昇した。



二発目からの装填は手動、が故に今の島の状況では二発目はない、幸か不幸か島で戦う3人の戦いが侵入不可能な鉄壁の牙城に風穴を開けたのだった。



『よっしゃー!!!!!!!!!!!!』



一気に加速して島の手前で下降する。



『いけいけいけいけいけ!頼むぞ野郎ども!』



神楽の激に親指を立てて地面へ向かってウィングスーツで飛び降りた特別ゲスト。



---------------------------------------------------------------



『誰か助けに来て撃墜されたんかな、この島はあのミサイルがある限り鉄壁かもな、周囲の島にもこんなに敵が潜んでたしよ・・・』



『今更言ったって遅いでござりまするよ』



『ねー・・・カントリーロード、もう一度歌わない?』



羽鐘の提案に2人は賛成し、3人でカントリーロードを歌い出した。



Almost heaven, West Virginia



Blue Ridge Mountains, Shenandoah River



Life is old there, older than the trees



Younger than the mountains, blowing like a breeze



サビに差し掛かると微かに重なって歌声が外から聞こえて来た気がした3人。



『ねぇ、誰か歌ってないっすか?』



『え?』『ん?』



耳を澄ましてみると確かに敵の方から歌が聞こえて来た。



Country roads, take me home



To the place I belong



West Virginia, Mountain Mama



Take me home, country roads



『え???この声…』



ボロボロの身体を歯を食いしばって何とか立ち上がると、羽鐘の目に飛び込んできたのは敵をなぎ倒している銀色の長い髪と金色のポニーテールの女性2人だった。



All my memories gather round her



Miner’s lady, stranger to blue water



Dark and dusty, painted on the sky



Misty taste of moonshine, teardrop in my eye




Country roads, take me home



To the place I belong



West Virginia, Mountain Mama



Take me home, country roads



歌いながら次々敵を倒す2人、それはまるでハリケーンのようだった。

その女性2人が振り向いて羽鐘に手を振った。



今の状況で、羽鐘にとって絶対にあり得ないが、絶対に会いたかった2人が目の前に居た、一気に涙が溢れ出したが、顔は笑いながら手を振った。それだけ感情がバラバラなのである、海軍でもないし軍隊でもないし、ましてや特殊部隊でもないのにあの2人が居るはずがない、もはや幻覚が見えているのだろうか、羽鐘にとってたとえそれが幻覚でも良かった、最後に大好きな2人…



如月とパイに会えたのだから。



I hear her voice, in the morning hour she calls me



The radio reminds me of my home far away



And driving down the road I get the feeling



That I should have been home yesterday, yesterday




Country roads, take me home



To the place I belong



West Virginia, Mountain Mama



Take me home, country roads



物凄い強さだった、如月は鉄パイプ一本で敵を殴り飛ばす。膝をたたき割り、突きで顎を砕き、肘関節を破壊、肋骨を粉砕してゆく、止めを刺さずに笑って放置するのが如月らしい。



パイはバールで世界のスマッシュを決めて行く。バールが見えないほどのスピードで、『バールでドーン!』と声がしたかと思った瞬間には敵の首がくの字にぐんにゃりと曲がっていた。



『最高じゃん!パイ!めっちゃ最高じゃない?今を最高って言ったらこれより最高な事があった時になんて言ったらわからないけれど今はこれが最高!あ、そうだ!次に最高な事があったらネオ最高ってのはどぉ?いい?いいよね?』



『いいんじゃない?暫く大人しい生活してたもんね、ストレス発散できてよかったね睦月』



『で?』



『申し訳ございません!』『申し訳ございません!』



『カントリーローーーーーーーー♪』



2人の快進撃は止まることを知らなかった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

感染した世界で~Second of Life's~

霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。 物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。 それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......

ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する

黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。 だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。 どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど?? ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に── 家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。 何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。 しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。 友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。 ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。 表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、 ©2020黄札

【完結済】僕の部屋

野花マリオ
ホラー
僕の部屋で起きるギャグホラー小説。 1話から8話まで移植作品ですが9話以降からはオリジナルリメイクホラー作話として展開されます。

紺青の鬼

砂詠 飛来
ホラー
専門学校の卒業制作として執筆したものです。 千葉県のとある地域に言い伝えられている民話・伝承を砂詠イズムで書きました。 全3編、連作になっています。 江戸時代から現代までを大まかに書いていて、ちょっとややこしいのですがみなさん頑張ってついて来てください。 幾年も前の作品をほぼそのまま載せるので「なにこれ稚拙な文め」となると思いますが、砂詠もそう思ったのでその感覚は正しいです。 この作品を執筆していたとある秋の夜、原因不明の高熱にうなされ胃液を吐きまくるという現象に苛まれました。しぬかと思いましたが、いまではもう笑い話です。よかったいのちがあって。 其のいち・青鬼の井戸、生き肝の眼薬  ──慕い合う気持ちは、歪み、いつしか井戸のなかへ消える。  その村には一軒の豪農と古い井戸があった。目の見えない老婆を救うためには、子どもの生き肝を喰わねばならぬという。怪しげな僧と女の童の思惑とは‥‥。 其のに・青鬼の面、鬼堂の大杉  ──許されぬ欲望に身を任せた者は、孤独に苛まれ後悔さえ無駄になる。  その年頃の娘と青年は、決して結ばれてはならない。しかし、互いの懸想に気がついたときには、すでにすべてが遅かった。娘に宿った新たな命によって狂わされた運命に‥‥。 其のさん・青鬼の眼、耳切りの坂  ──抗うことのできぬ輪廻は、ただ空回りしただけにすぎなかった。  その眼科医のもとをふいに訪れた患者が、思わぬ過去を携えてきた。自身の出生の秘密が解き明かされる。残酷さを刻み続けてきただけの時が、いまここでつながろうとは‥‥。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

ヒナタとツクル~大杉の呪い事件簿~

夜光虫
ホラー
仲の良い双子姉弟、陽向(ヒナタ)と月琉(ツクル)は高校一年生。 陽向は、ちょっぴりおバカで怖がりだけど元気いっぱいで愛嬌のある女の子。自覚がないだけで実は霊感も秘めている。 月琉は、成績優秀スポーツ万能、冷静沈着な眼鏡男子。眼鏡を外すととんでもないイケメンであるのだが、実は重度オタクな残念系イケメン男子。 そんな二人は夏休みを利用して、田舎にある祖母(ばっちゃ)の家に四年ぶりに遊びに行くことになった。 ばっちゃの住む――大杉集落。そこには、地元民が大杉様と呼んで親しむ千年杉を祭る風習がある。長閑で素晴らしい鄙村である。 今回も楽しい旅行になるだろうと楽しみにしていた二人だが、道中、バスの運転手から大杉集落にまつわる不穏な噂を耳にすることになる。 曰く、近年の大杉集落では大杉様の呪いとも解される怪事件が多発しているのだとか。そして去年には女の子も亡くなってしまったのだという。 バスの運転手の冗談めかした言葉に一度はただの怪談話だと済ませた二人だが、滞在中、怪事件は嘘ではないのだと気づくことになる。 そして二人は事件の真相に迫っていくことになる。

これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範
ホラー
 オムニバスホラー短編集です。ゾッとする話、意味怖、人怖などの詰め合わせ。  読みやすいように千文字以下を目指しておりますが、たまに長いのがあるかもしれません。  (*^^*)  タイトルは雰囲気です。誰かから聞いた話ではありません。私の作ったフィクションとなってます。たまにファンタジーものや、中世ものもあります。

Catastrophe

アタラクシア
ホラー
ある日世界は終わった――。 「俺が桃を助けるんだ。桃が幸せな世界を作るんだ。その世界にゾンビはいない。その世界には化け物はいない。――その世界にお前はいない」 アーチェリー部に所属しているただの高校生の「如月 楓夜」は自分の彼女である「蒼木 桃」を見つけるために終末世界を奔走する。 陸上自衛隊の父を持つ「山ノ井 花音」は 親友の「坂見 彩」と共に謎の少女を追って終末世界を探索する。 ミリタリーマニアの「三谷 直久」は同じくミリタリーマニアの「齋藤 和真」と共にバイオハザードが起こるのを近くで目の当たりにすることになる。 家族関係が上手くいっていない「浅井 理沙」は攫われた弟を助けるために終末世界を生き抜くことになる。 4つの物語がクロスオーバーする時、全ての真実は語られる――。

処理中です...