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復讐と反逆
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パッ!
音は鳴らないものの、表すならパッ!であろう。
電気がつくと言うのは何とも言えない安心感があった。
日々当たり前のようにつけたり消したりしているが、当たり前のことが当たり前じゃなくなった時、当たり前の事が当たり前にできることに、とても感謝し、感激するものである。
ヘッドレストを収納し、また連絡する事を約束して取り敢えずはそれぞれの動きをすることにした。
---------------------------------
『ロキ様・・・どちらへ』
大統領の部屋の前でロキを止めたガー・パイク。
『通せ、大統領に話がある。』
見下ろし瞬きをせず、パイクを睨み付けるロキ。
凄んでも無駄と言わんばかりにスルリとその身をねじらせ、ロキの右横に並び、告げた。
『お約束の無い方はロキ様でも通せません』
ニタリと口元で笑うと、スーツの袖からシャキン!と銃を出し、ロキの脇腹に突き付けた。
『何のつもりだパイク』
『何を噴きあがっているのです?あなたのような小さな火山がいくら噴き上がったところで、街には死の灰どころかチリすら降り注げません。お引き取り下さい、大統領は多忙でございます。』
『お前まさか、大統領を炊きつけたのか?お前誰だ?何のためにこんなことを。』
『はい?勘違いも甚だしいですな、私はただ、側近としてその役割を果たしておるだけにございます。』
『撃てるのか?』
『このベレッタは私用に改造してございます故、トリガーは軽うございますよ。』
『そうか・・・よっ!』
左手でベレッタを払い落し、そのままロキは思い切り頭突きをした。パイクの鼻から凄まじい音がした。そのまま失神して倒れるパイク。念のためにベレッタを回収し、ひときは大きな観音扉を押し開いた。近代的なエアロック等のドアが使用されている地下施設だが、大統領の要望により、大統領室だけは木の扉でできていた。開き切ると、数メートル先の玉座のような派手な椅子に腰かけた大統領アレースが居た。
『なんの騒ぎだロキ・・・』
『はっ!お騒がせして申し訳ありません、お話がございます』
『特別に許可しよう、話せ』
『恐怖で支配した街ではいくら拡大しようとも先が見えています、大統領!どうかお考え直し下さい!まだ・・まだ間に合います!』
『恐怖で支配?貴様ら特務がこの街をつくる前に行ったことは、恐怖支配ではないのか?』
『なんのことですか大統領』
『貴様らが全滅させた無法者の組織の事だよ・・・ふむ・・・そろそろ良いか・・・予想よりお前が来るのが早かったがね。私には隠していた本名がある・・・今はアレース・コシャル・ハシスと名乗っているが、本当の名前はジャッカル・ラー・・・聞き覚えがないかね?』
『ラー・・・ラー・・・!!!!!!!!!まさか【ラーの逆十字】!?????』
『そうだ、貴様らがあの日滅ぼした組織・ラーの逆十字のボス、ラミア・ラーは私の兄だ。』
『何がどうなって・・・』
『だろうな、あの時善人中の善人を装い、私はまんまとお前ら小軍隊のリーダーとなったわけだ、しかしそれは兄の策でな、嘘の情報を流し込んでお前らを全員突っ込ませ、破滅させようと企んだわけだ、多勢に無勢だったからな、勢いで押しても良かったのだが、戦えない民どもにお前らの大敗を見せつけて絶対的支配をしたかったのだ、その方が反逆しようとも思わないしな。』
『大統領が?グルになって?なぜそんな回りくどい事を』
『今言っただろ、絶対的支配をするんだって。力で押さえつけると反発するのが人間ってもんだ。心にダメージを与えてやるのさ、それが本当の支配だ。だがどうだ!蓋を開けてみれば貴様を含めてたった13人で3.000の部隊を潰しやがった!誤算だよ、大大大誤算だったよ』
『あの戦いでは10人の仲間が死んだ、敵は50人程度と聞かされていて、半径8km圏内が吹き飛ぶ爆薬があるから侵入後の弾薬の使用も禁じられた、なのに敵はガトリングまで撃って来たんだ、全部策だったってのか!俺たちを消し去る策だったってのかよ!』
『従順な部下が欲しくてね、お前らみたいのはアツすぎるのだよ、だが見せ物としては最高の素材でね・・・』
『しかし処刑したのは…ラーの逆十字のリーダーを処刑したのはあんたじゃないか!実の兄を殺したってのか!』
『たっぷり時間をかけた作戦だったんだ、失敗して兄まで殺すと思うか?』
そこでドアの閉まる音がした・・・・バタン・・・。
『鼻が折れたじゃないか、ロキくん・・・』
そう言いながらゆっくりと近づき、ロキまで2歩の距離で止まり、左手で目と目の間の鼻の骨を掴み、右手でズレた鼻の骨を一気に戻した。割りばしを折るような音がしたが、パイクは顔色一つ変えなかった。
『ふぅ・・・改めてごきげんよう、私がラミア・ラーでございます。』
『な!なんだって!?』
『兄との計画が支配だ、殺すわけなかろう。善良な一般市民に薬打ってマスク被せてズドンですよ、その後燃やした意味が今わかってスッキリしただろ?兄貴は顔も変えてスッキリですよ・・・ロキ・・・貴様がやったことと同じことを私はしているのだよ』
『ラーの逆十字は虐殺のカルト集団だろ!俺たちはその恐怖を排除して、民たちの新たな場所を作るために・・・』
『全滅した逆十字の教徒たちはどうでも良いと言うのかね?同じ人間ではないのかね?同じだよ、同じ。』
『違う!放っておけばお前らカルト集団が民を虐殺しただろう、己の私利私欲ムキ出しのクソ教団の存続の為にな!』
『何とでも言え、これは兄弟の復讐なのだからな』
『だったら、敵である俺たちをやればイイ!しかも・・・なぜ復讐の根源を配下に置いた!』
『簡単じゃないか、解き放てばまた暴れるとも限らない。私が最高の権力を手にし、お前たちが逆らえない状況で復讐劇を見せる。最高のショーだと思わないか?ロキくん。ただ・・・弟の演技にはいささかムカつきましたがね・・・大統領が板につきすぎていてこの俺を本気で愚弄しているのかと、しかも私の偽名も覚えないしね、ふふふふ・・・何度かぶっ飛ばしたくなりましたよ!馬鹿で!バカ過ぎて!』
話に割り込んできたラミアが両手を広げて顔だけで笑っている。声をあげずに顔全体で、鼻血をダラダラながしながら笑っている。完全に狂ってると感じたロキは、ひとまず落ち着き、この場から出る事に頭を切り替えた。
「ここまでこいつらが種明かしすると言う事は俺を殺すつもりだ。今まで数多くの悪党に出会ったが、勝ちを確信した時、悪党は必ず長々とビクトリーロードを細かく説明したがる。まさに今がそうだ、説明が終わったらズドン!すなわち冥途の土産ってやつだ、可愛いメイドの土産だったらよいが…」
そんなことを考えながらタイミングを見計らっていた。
自分の手にはベレッタが握られている、この状況だとフィフティーフィフティー、パーセンテージ的に見ても、ここまで用意してきた2人が攻撃してくるとは思えなかった。ゆっくり歩いてジャッカルが座る玉座の横に立つラミア。
『復讐・・・この世で最高にいい響きをする言葉だと思わないか?』
2人が並び、自分との距離が取れた、この時をチャンスと見たロキ。
『国の頭が言う言葉かよ!!!!!』
ドンドンドンドン!!
ロキがベレッタを2人に向けて撃ちながら横に跳んだ!弾丸は2人の20cm手前で止まっていた、防弾ガラスに阻まれたのである。
『透明度が高いからね、兄貴がぶつかりやしないかとヒヤヒヤしたよ。危ない危ない、全弾頭に命中でしたね・・・ではでは、反逆者の誕生ですね、兄貴・・・お願いしますよ』
玉座の横にあるスイッチを押すと、脳に響くような音でサイレンが鳴った。
緊急サイレンである。
続けてサイレンのスイッチの横の青いスイッチを押しながら、『大統領を暗殺しようとする反逆者あり、その者は特務機関上官のロキ!同時に部下の神楽雅、シンゴ・K・コヤスの身柄も確保せよ!抵抗する場合は発砲して構わない』と2度告知した。
『ささ、逃げてくださいロキさん、死んじゃいますよ』
ジャキン!ジャキン!ジャキン!
玉座の前から1秒間に30発のマグナム弾を発射するタレットが3機せり上がり、甲高いターボエンジンの様な回転音を上げた。ロキはすぐさまダッシュで出口に向かい、跳んで部屋を出た。分厚い木のドアが2秒で30年前の廃墟の扉のような姿に変わった。
『やっべ!これはやっべーだろ!』
息つく暇もなく直ぐにドアの前から走り去った。『あっぶねぇ兄弟だなクソが!まんまと騙されてたわ!神楽とシンゴは大丈夫だろうか・・・くそう・・・虎徹さんに合わせる顔がねぇ・・・』考える時間を与えないかのように、警備兵が正面から3人走ってきた。手には電気ショックを発生させる対暴動用スタンロッドを持っていた。馬でも白目を剥いて失神するほどの衝撃を発生させる、いわゆる警棒だ。
『この・・・本来俺の許可なくそのロッドは使用できないのによ!』
突破するしかないとばかりにロキは突っ込んだ。虎徹の言う通り、考えもなしに突っ込む無鉄砲さを発揮したのだ。だが腕っぷしと、格闘時の状況判断の良さは一流だった。一気にど真ん中に走ってくるロキを3人はどう捉えて良いのか、一瞬困惑し、フォーメーションにバラつきが出た。
そのままロキは加速した。
前蹴りで真ん中の警備を吹っ飛ばす!勢いの乗った前蹴りは、インパクトの瞬間ロキがピタリと止まり、相手を漫画のように飛ばした。両サイドの警備兵が振り下ろすロッドをバックステップでかわし、右の警備兵の膝を前から蹴り、体勢が崩れたところに顔面に膝、直ぐに左の警備兵に半円を描いた右肘を顎に突き刺した、警備兵はまるで斧で叩き割られたかのように床にぶっ倒れた。2人のロッドを直ぐに手に取り、2人の身体に押し当てると、見たことないスピードで痙攣する。置きあがってきた最初に蹴り飛ばした警備兵に両手で持った2本のロッドでバカスカと太鼓を叩くように殴り、その度に白目を剥いた警備兵、止めにロッド2本を体に押し当てられ、口から煙を出して倒れた。
『お前ら日々の練習が足りねぇよ!』
そう吐き捨てて、監視ROOMを目指した。鳴り続けるサイレンが自分の足音を消すが、相手の足音も消すため、安易に走り抜けるのも難しい状況。ロキはサイレンのあり方について、少し考えるのだった。
---------------------------------
『ラビット!あとは頼んだ!後で何らかの形で連絡するからな!』
シンゴの慌てて投げつける様な言葉にラビットは『わかりました』と返事をした。
続けてシンゴが神楽に向かって叫んだ『神楽、ロキはこっちに向かってると思う、簡単にやられる奴じゃねぇ』
『はい、私もそう思いますわよ、でも・・・反逆だなんて・・・タイミングもそうだけれど、色々早すぎない?』
『あぁ、確かにキナくせぇな、ハメられたってやつかもな、わかんねーけど』
『武器無いけど・・・行くしかないと思いますわ、いいですの?』
『オッケーだ、一本道だ、必ずロキに合うはずさ』
ドアの前に2人が立つと、シンゴが振り向き
『俺たちは逃げたと言えばいい、ラビットには後で連絡する。それと・・・色々片付いたら家のWi-Fi見てくれ、俺の部屋でゲームするとラグがすげーんだよ、な!』
『今時Wi-Fi使ってるのが悪いのでは?今はゼウスファイバーが主流です、月々3.980円でブースター設置できます。ゲーム機もシンゴさんのは古すぎますよ、今はPZ-4が人気で最新です。おすすめソフトはシンゴさんのプレイ履歴から割り出すと、【昇天堂の ズブリトゥーン3「カジキヶ丘団地のノーブラ奥さん」】がいいと思いますよ、内容は4対4のチームに分かれて、選んだ武器により、敵にローションをかけ・・・』
『わーわー!!!わー!!!!うるせーうるせー!古き良きってやつだよ、ピコピコ鳴るファミリーゼウスが好きなんじゃ!そんじゃ!お前ら世話になったな!元気でな!』
2人が監視ROOMを出ていくと、ラビットはドアをロックした。
『開けておくべきだとは思いますが、見て見ぬふりはマシンにはできません、あなたたちは警備が入ってきたら両手を上げて降伏の意思を見せ、私が暴走したとでも言ってください』
残った4人は不安だが、何か思うところがあるような表情を浮かべた。
音は鳴らないものの、表すならパッ!であろう。
電気がつくと言うのは何とも言えない安心感があった。
日々当たり前のようにつけたり消したりしているが、当たり前のことが当たり前じゃなくなった時、当たり前の事が当たり前にできることに、とても感謝し、感激するものである。
ヘッドレストを収納し、また連絡する事を約束して取り敢えずはそれぞれの動きをすることにした。
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『ロキ様・・・どちらへ』
大統領の部屋の前でロキを止めたガー・パイク。
『通せ、大統領に話がある。』
見下ろし瞬きをせず、パイクを睨み付けるロキ。
凄んでも無駄と言わんばかりにスルリとその身をねじらせ、ロキの右横に並び、告げた。
『お約束の無い方はロキ様でも通せません』
ニタリと口元で笑うと、スーツの袖からシャキン!と銃を出し、ロキの脇腹に突き付けた。
『何のつもりだパイク』
『何を噴きあがっているのです?あなたのような小さな火山がいくら噴き上がったところで、街には死の灰どころかチリすら降り注げません。お引き取り下さい、大統領は多忙でございます。』
『お前まさか、大統領を炊きつけたのか?お前誰だ?何のためにこんなことを。』
『はい?勘違いも甚だしいですな、私はただ、側近としてその役割を果たしておるだけにございます。』
『撃てるのか?』
『このベレッタは私用に改造してございます故、トリガーは軽うございますよ。』
『そうか・・・よっ!』
左手でベレッタを払い落し、そのままロキは思い切り頭突きをした。パイクの鼻から凄まじい音がした。そのまま失神して倒れるパイク。念のためにベレッタを回収し、ひときは大きな観音扉を押し開いた。近代的なエアロック等のドアが使用されている地下施設だが、大統領の要望により、大統領室だけは木の扉でできていた。開き切ると、数メートル先の玉座のような派手な椅子に腰かけた大統領アレースが居た。
『なんの騒ぎだロキ・・・』
『はっ!お騒がせして申し訳ありません、お話がございます』
『特別に許可しよう、話せ』
『恐怖で支配した街ではいくら拡大しようとも先が見えています、大統領!どうかお考え直し下さい!まだ・・まだ間に合います!』
『恐怖で支配?貴様ら特務がこの街をつくる前に行ったことは、恐怖支配ではないのか?』
『なんのことですか大統領』
『貴様らが全滅させた無法者の組織の事だよ・・・ふむ・・・そろそろ良いか・・・予想よりお前が来るのが早かったがね。私には隠していた本名がある・・・今はアレース・コシャル・ハシスと名乗っているが、本当の名前はジャッカル・ラー・・・聞き覚えがないかね?』
『ラー・・・ラー・・・!!!!!!!!!まさか【ラーの逆十字】!?????』
『そうだ、貴様らがあの日滅ぼした組織・ラーの逆十字のボス、ラミア・ラーは私の兄だ。』
『何がどうなって・・・』
『だろうな、あの時善人中の善人を装い、私はまんまとお前ら小軍隊のリーダーとなったわけだ、しかしそれは兄の策でな、嘘の情報を流し込んでお前らを全員突っ込ませ、破滅させようと企んだわけだ、多勢に無勢だったからな、勢いで押しても良かったのだが、戦えない民どもにお前らの大敗を見せつけて絶対的支配をしたかったのだ、その方が反逆しようとも思わないしな。』
『大統領が?グルになって?なぜそんな回りくどい事を』
『今言っただろ、絶対的支配をするんだって。力で押さえつけると反発するのが人間ってもんだ。心にダメージを与えてやるのさ、それが本当の支配だ。だがどうだ!蓋を開けてみれば貴様を含めてたった13人で3.000の部隊を潰しやがった!誤算だよ、大大大誤算だったよ』
『あの戦いでは10人の仲間が死んだ、敵は50人程度と聞かされていて、半径8km圏内が吹き飛ぶ爆薬があるから侵入後の弾薬の使用も禁じられた、なのに敵はガトリングまで撃って来たんだ、全部策だったってのか!俺たちを消し去る策だったってのかよ!』
『従順な部下が欲しくてね、お前らみたいのはアツすぎるのだよ、だが見せ物としては最高の素材でね・・・』
『しかし処刑したのは…ラーの逆十字のリーダーを処刑したのはあんたじゃないか!実の兄を殺したってのか!』
『たっぷり時間をかけた作戦だったんだ、失敗して兄まで殺すと思うか?』
そこでドアの閉まる音がした・・・・バタン・・・。
『鼻が折れたじゃないか、ロキくん・・・』
そう言いながらゆっくりと近づき、ロキまで2歩の距離で止まり、左手で目と目の間の鼻の骨を掴み、右手でズレた鼻の骨を一気に戻した。割りばしを折るような音がしたが、パイクは顔色一つ変えなかった。
『ふぅ・・・改めてごきげんよう、私がラミア・ラーでございます。』
『な!なんだって!?』
『兄との計画が支配だ、殺すわけなかろう。善良な一般市民に薬打ってマスク被せてズドンですよ、その後燃やした意味が今わかってスッキリしただろ?兄貴は顔も変えてスッキリですよ・・・ロキ・・・貴様がやったことと同じことを私はしているのだよ』
『ラーの逆十字は虐殺のカルト集団だろ!俺たちはその恐怖を排除して、民たちの新たな場所を作るために・・・』
『全滅した逆十字の教徒たちはどうでも良いと言うのかね?同じ人間ではないのかね?同じだよ、同じ。』
『違う!放っておけばお前らカルト集団が民を虐殺しただろう、己の私利私欲ムキ出しのクソ教団の存続の為にな!』
『何とでも言え、これは兄弟の復讐なのだからな』
『だったら、敵である俺たちをやればイイ!しかも・・・なぜ復讐の根源を配下に置いた!』
『簡単じゃないか、解き放てばまた暴れるとも限らない。私が最高の権力を手にし、お前たちが逆らえない状況で復讐劇を見せる。最高のショーだと思わないか?ロキくん。ただ・・・弟の演技にはいささかムカつきましたがね・・・大統領が板につきすぎていてこの俺を本気で愚弄しているのかと、しかも私の偽名も覚えないしね、ふふふふ・・・何度かぶっ飛ばしたくなりましたよ!馬鹿で!バカ過ぎて!』
話に割り込んできたラミアが両手を広げて顔だけで笑っている。声をあげずに顔全体で、鼻血をダラダラながしながら笑っている。完全に狂ってると感じたロキは、ひとまず落ち着き、この場から出る事に頭を切り替えた。
「ここまでこいつらが種明かしすると言う事は俺を殺すつもりだ。今まで数多くの悪党に出会ったが、勝ちを確信した時、悪党は必ず長々とビクトリーロードを細かく説明したがる。まさに今がそうだ、説明が終わったらズドン!すなわち冥途の土産ってやつだ、可愛いメイドの土産だったらよいが…」
そんなことを考えながらタイミングを見計らっていた。
自分の手にはベレッタが握られている、この状況だとフィフティーフィフティー、パーセンテージ的に見ても、ここまで用意してきた2人が攻撃してくるとは思えなかった。ゆっくり歩いてジャッカルが座る玉座の横に立つラミア。
『復讐・・・この世で最高にいい響きをする言葉だと思わないか?』
2人が並び、自分との距離が取れた、この時をチャンスと見たロキ。
『国の頭が言う言葉かよ!!!!!』
ドンドンドンドン!!
ロキがベレッタを2人に向けて撃ちながら横に跳んだ!弾丸は2人の20cm手前で止まっていた、防弾ガラスに阻まれたのである。
『透明度が高いからね、兄貴がぶつかりやしないかとヒヤヒヤしたよ。危ない危ない、全弾頭に命中でしたね・・・ではでは、反逆者の誕生ですね、兄貴・・・お願いしますよ』
玉座の横にあるスイッチを押すと、脳に響くような音でサイレンが鳴った。
緊急サイレンである。
続けてサイレンのスイッチの横の青いスイッチを押しながら、『大統領を暗殺しようとする反逆者あり、その者は特務機関上官のロキ!同時に部下の神楽雅、シンゴ・K・コヤスの身柄も確保せよ!抵抗する場合は発砲して構わない』と2度告知した。
『ささ、逃げてくださいロキさん、死んじゃいますよ』
ジャキン!ジャキン!ジャキン!
玉座の前から1秒間に30発のマグナム弾を発射するタレットが3機せり上がり、甲高いターボエンジンの様な回転音を上げた。ロキはすぐさまダッシュで出口に向かい、跳んで部屋を出た。分厚い木のドアが2秒で30年前の廃墟の扉のような姿に変わった。
『やっべ!これはやっべーだろ!』
息つく暇もなく直ぐにドアの前から走り去った。『あっぶねぇ兄弟だなクソが!まんまと騙されてたわ!神楽とシンゴは大丈夫だろうか・・・くそう・・・虎徹さんに合わせる顔がねぇ・・・』考える時間を与えないかのように、警備兵が正面から3人走ってきた。手には電気ショックを発生させる対暴動用スタンロッドを持っていた。馬でも白目を剥いて失神するほどの衝撃を発生させる、いわゆる警棒だ。
『この・・・本来俺の許可なくそのロッドは使用できないのによ!』
突破するしかないとばかりにロキは突っ込んだ。虎徹の言う通り、考えもなしに突っ込む無鉄砲さを発揮したのだ。だが腕っぷしと、格闘時の状況判断の良さは一流だった。一気にど真ん中に走ってくるロキを3人はどう捉えて良いのか、一瞬困惑し、フォーメーションにバラつきが出た。
そのままロキは加速した。
前蹴りで真ん中の警備を吹っ飛ばす!勢いの乗った前蹴りは、インパクトの瞬間ロキがピタリと止まり、相手を漫画のように飛ばした。両サイドの警備兵が振り下ろすロッドをバックステップでかわし、右の警備兵の膝を前から蹴り、体勢が崩れたところに顔面に膝、直ぐに左の警備兵に半円を描いた右肘を顎に突き刺した、警備兵はまるで斧で叩き割られたかのように床にぶっ倒れた。2人のロッドを直ぐに手に取り、2人の身体に押し当てると、見たことないスピードで痙攣する。置きあがってきた最初に蹴り飛ばした警備兵に両手で持った2本のロッドでバカスカと太鼓を叩くように殴り、その度に白目を剥いた警備兵、止めにロッド2本を体に押し当てられ、口から煙を出して倒れた。
『お前ら日々の練習が足りねぇよ!』
そう吐き捨てて、監視ROOMを目指した。鳴り続けるサイレンが自分の足音を消すが、相手の足音も消すため、安易に走り抜けるのも難しい状況。ロキはサイレンのあり方について、少し考えるのだった。
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『ラビット!あとは頼んだ!後で何らかの形で連絡するからな!』
シンゴの慌てて投げつける様な言葉にラビットは『わかりました』と返事をした。
続けてシンゴが神楽に向かって叫んだ『神楽、ロキはこっちに向かってると思う、簡単にやられる奴じゃねぇ』
『はい、私もそう思いますわよ、でも・・・反逆だなんて・・・タイミングもそうだけれど、色々早すぎない?』
『あぁ、確かにキナくせぇな、ハメられたってやつかもな、わかんねーけど』
『武器無いけど・・・行くしかないと思いますわ、いいですの?』
『オッケーだ、一本道だ、必ずロキに合うはずさ』
ドアの前に2人が立つと、シンゴが振り向き
『俺たちは逃げたと言えばいい、ラビットには後で連絡する。それと・・・色々片付いたら家のWi-Fi見てくれ、俺の部屋でゲームするとラグがすげーんだよ、な!』
『今時Wi-Fi使ってるのが悪いのでは?今はゼウスファイバーが主流です、月々3.980円でブースター設置できます。ゲーム機もシンゴさんのは古すぎますよ、今はPZ-4が人気で最新です。おすすめソフトはシンゴさんのプレイ履歴から割り出すと、【昇天堂の ズブリトゥーン3「カジキヶ丘団地のノーブラ奥さん」】がいいと思いますよ、内容は4対4のチームに分かれて、選んだ武器により、敵にローションをかけ・・・』
『わーわー!!!わー!!!!うるせーうるせー!古き良きってやつだよ、ピコピコ鳴るファミリーゼウスが好きなんじゃ!そんじゃ!お前ら世話になったな!元気でな!』
2人が監視ROOMを出ていくと、ラビットはドアをロックした。
『開けておくべきだとは思いますが、見て見ぬふりはマシンにはできません、あなたたちは警備が入ってきたら両手を上げて降伏の意思を見せ、私が暴走したとでも言ってください』
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