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7 再会……?
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「あの、すみません。私が道に迷ってしまって、道を聞こうとして声をかけたんですけど、その……びっくりしちゃって。申し訳ありませんでした!」
私が声をかけてしまった迫力のある男と、やけに目立つ美貌の青年に向かって謝る。
そうすると、二人はしばらく黙ったあと破顔した。
「そうか。道に迷ったのか嬢ちゃん。ならそうと早く言ってくれや!!」
ガハハ、と声を上げて笑う屈強な男性は笑うと味のある表情になる。事情を説明すると快く道を教えてくれることになった。さっきはヤバそうな人だと思ってごめんなさい。私は心の中で謝っておいた。
「そうか。私は君が襲われそうだと思って声をかけたんだが、違ったようだな。大丈夫そうなら失礼する」
「はい、ご迷惑おかけしました」
「いや、構わない。では」
そそくさと青年が去っていく。最後までクールな人だな、と思いながら私は名前も知らない青年を見送った。
「じゃあ嬢ちゃん着いてきな! 迷うんじゃないぞ!」
「はい、お願いします!」
顔は迫力があるが、話してみると意外と気さくな男性――アルガさんというらしい――に案内され、今度こそ私は目的の場所に辿り着いた。
「ありがとうございました!!」
「いいってことよ。んじゃまたな! 今度はウチにも遊びに来てくれや!」
「はい! 是非おじゃまさせていただきますね」
アルガさんはとある旅芸人の一座に所属する人だそうで、ひと月の間ここアゼルシャンに滞在するらしい。
ロアン王国にも行ったことがあるそうで、久々に故郷での話題に花を咲かせることになった。
話してみると本当にいい人で、すっかり仲良くなってしまい、今度一座にお邪魔することになった。目的地に着くと再会を約束してアルガさんは去っていった。
「ここがマティルダさんにお使いを頼まれた場所ね」
アゼルシャンで最も人通りが多い一番通り。そこから右に少し入った場所に目的地があった。
古い大きな看板を見上げると『飯屋・黒猫のしっぽ亭』と書かれてある。
「飯屋……だから昨日掘った魔法文字は火をつけるためのものだったのね」
先日マティルダさんに教えて貰いながら掘った三つの魔石。マティルダさんが魔力を込めた石に、私が丹精込めて魔法文字を掘ったもの。
まだ慣れないながらも一生懸命に掘った文字。少し苦戦しながらも、最終的にマティルダさんには及第点をもらって嬉しかったものだ。
これから私が掘った魔石が商品となってお客さんの手に渡る。初めてのことに少しだけドキドキしながら木製の扉に手をかける。
カラカラと音を立てて開かれた店内で私は驚きに目を見張った。
「あ」
「あ!」
店内に入って一番最初に目に飛び込んできた光景。それは先程別れたはずの、やけに綺麗な青年がテーブルでご飯を食べている様子だった。
私が声をかけてしまった迫力のある男と、やけに目立つ美貌の青年に向かって謝る。
そうすると、二人はしばらく黙ったあと破顔した。
「そうか。道に迷ったのか嬢ちゃん。ならそうと早く言ってくれや!!」
ガハハ、と声を上げて笑う屈強な男性は笑うと味のある表情になる。事情を説明すると快く道を教えてくれることになった。さっきはヤバそうな人だと思ってごめんなさい。私は心の中で謝っておいた。
「そうか。私は君が襲われそうだと思って声をかけたんだが、違ったようだな。大丈夫そうなら失礼する」
「はい、ご迷惑おかけしました」
「いや、構わない。では」
そそくさと青年が去っていく。最後までクールな人だな、と思いながら私は名前も知らない青年を見送った。
「じゃあ嬢ちゃん着いてきな! 迷うんじゃないぞ!」
「はい、お願いします!」
顔は迫力があるが、話してみると意外と気さくな男性――アルガさんというらしい――に案内され、今度こそ私は目的の場所に辿り着いた。
「ありがとうございました!!」
「いいってことよ。んじゃまたな! 今度はウチにも遊びに来てくれや!」
「はい! 是非おじゃまさせていただきますね」
アルガさんはとある旅芸人の一座に所属する人だそうで、ひと月の間ここアゼルシャンに滞在するらしい。
ロアン王国にも行ったことがあるそうで、久々に故郷での話題に花を咲かせることになった。
話してみると本当にいい人で、すっかり仲良くなってしまい、今度一座にお邪魔することになった。目的地に着くと再会を約束してアルガさんは去っていった。
「ここがマティルダさんにお使いを頼まれた場所ね」
アゼルシャンで最も人通りが多い一番通り。そこから右に少し入った場所に目的地があった。
古い大きな看板を見上げると『飯屋・黒猫のしっぽ亭』と書かれてある。
「飯屋……だから昨日掘った魔法文字は火をつけるためのものだったのね」
先日マティルダさんに教えて貰いながら掘った三つの魔石。マティルダさんが魔力を込めた石に、私が丹精込めて魔法文字を掘ったもの。
まだ慣れないながらも一生懸命に掘った文字。少し苦戦しながらも、最終的にマティルダさんには及第点をもらって嬉しかったものだ。
これから私が掘った魔石が商品となってお客さんの手に渡る。初めてのことに少しだけドキドキしながら木製の扉に手をかける。
カラカラと音を立てて開かれた店内で私は驚きに目を見張った。
「あ」
「あ!」
店内に入って一番最初に目に飛び込んできた光景。それは先程別れたはずの、やけに綺麗な青年がテーブルでご飯を食べている様子だった。
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