上 下
1 / 1

家隣の陰キャ君を落としたい!

しおりを挟む




“万年初恋拗らせ女代表取締役”を勝手に務めさせてもらっています。高城未琴たかぎみことです。

華やかな高校2年生……とでも言っておこう。

そんな私には愛してやまない同い年の幼馴染みが居る。

物心がついた頃にはいつも君が隣にいて、気づいた時にはもう君を好きになっていた。

そんな私の想い人……西宮絢斗にしみやあやとは、どれだけアタックしようが靡きません。

毎日どんなアタックをしているかって?


──── 例えば……毎朝、絢斗のベッドの中に潜り込んで、ムギュッと抱きつく。


「ん……あれ?なんで私、絢斗のベッドにいるんだろう?あ、おはよう絢斗」


何事も無かったかのように、偶然と平静を装う。


「未琴、夢遊病じゃない?病院へ行ったら」


長い前髪のせいであまり表情が掴めないけど、おそらく絢斗は真顔。


──── ねえ、朝目覚めて隣にそこそこイケてる女が居たら、『え、あっ、あのっ!ぼ、僕、ごっ、ごめん!!』とか言って、たどたどしく赤面するでしょ、普通は。


それからぁ……一緒に登下校している時に躓いたフリをして、ムギュッと絢斗の腕にしがみつく。さりげないボディータッチというやつね。


「あっ、ごめん!躓いちゃったぁ~。私ったらそそっかしいなぁ、もう」

「どんくさいね」


長い前髪のせいであまり表情が掴めないけど、おそらく絢斗は真顔。


──── ねえ、そこそこな乳が君の腕に当たってるんだけど?『ちょっ、ちょっ!!未琴っ、そのっ、あのっ!!だ、大丈夫!?』とか言って、たどたどしく赤面するでしょ、普通は。


あとはぁ……誰かしらに告白された時、それとな~くさりげな~く絢斗にアピったりしようとして……。


「今日、隣のクラスの山田君に呼ばれっ……」

「へぇー」

「告はっ……」

「ふーん」


長い前髪のせいであまり表情が掴めないけど、おそらく絢斗は真顔。


──── ねえ、端っから聞く気がないのはやめて?『そっか……。山田君にはなんて返事をしたの?』とか言って、少しくらいは落ち込むでしょ、普通!!


まあ、そんな感じで私はありとあらゆる方法を試しに試して来た。

もう為す術なし……そのくらいまで追い込まれている。

友達との付き合いも何もかも捨て去って、私は絢斗に全てを費やしてきた。

・・・・なのに……。


「あ、絢斗~。今日絢斗ん家っ……」

「ごめん。ゲームするから無理」


おい。

ふざけんな。

私かゲームどっちが大切なんだよ。


「てか、未琴は友達たくさん居るんだから、たまには友達と遊んだら?」

「……」


なんだろう……この圧倒的“敗 北 感”。


──── そんなこんなで、家隣の陰キャ君を落としたい!というわけなんです。


何度も、何度も打ちのめされてきた。

何度も、何度も諦めようと思った。

でも、やっぱり君じゃなきゃダメで、君が他の誰かのモノになってしまうのは、地球が滅亡するよりも耐え難い。

絢斗が他の誰かのモノになってしまうのなら、地球が滅んだ方が幾分マシだと本気でそう思う。

そんな私は今日も今日とて、家隣の幼馴染みで陰キャな西宮絢斗に猛アタックする。


──── 今日は絢斗を無理やり部屋に連れ込んだ。


いつの日からか、私の部屋に入るのを嫌がるようになって、ここ数年は全力で拒否られている。


「で、なんなの?」


無理やり連れ込まれて不機嫌そうな絢斗。表情は前髪のせいでほぼ見えないけど、声のトーンでだいたい不機嫌かどうかが分かる。


「ねぇ、絢斗」


名前を呼ぶと、ズボンのポケットに手を突っ込みながら、私の方へ少し振り向いた絢斗。


「ん?」


そして、私は迷うことなく紙袋からオニューの下着を取り出して、堂々と絢斗に見せつけた。

そう……これは“最終兵器ただの下着”。

何をしても、どんな手を使っても、私に靡いてくれない陰キャ幼馴染みを落とす為の作戦。

一歩間違えなくても、これがセクハラなのは重々承知の上。

でも、もうこうするしか道がないって思ったの。

・・・・『いや、もっと他に道あんだろ』とかのツッコミはやめて。


──── ふふふっ……はっはっはっーー!!


さぁ、絢斗!!

存分に狼狽えなさい。

そこそこイケてる幼馴染みの女が、『こんなセクシーな下着を毎日着けているなんて……』とか想像して、悶々としまくりながら、たどたどしく赤面しろ!!


「ジャジャーン!めっちゃ可愛くな~い?一目惚れして買っちゃった!どう?私に似合うかなぁ?」

「未琴」

「ん?」

「それ、未琴には似合わないと思うよ」

「……」


──── 動揺することもなく、なんなら少し冷たい絢斗に、私の心がポキッ、バキバキッ……と音を立てながら崩れ落ちていった。


「── って」

「え、なに?」

「もう帰って!!」

「え、ちょっ……」


私は絢斗にセクハラをした挙げ句、逆ギレして、部屋から追い出してしまう始末。


──── オワッタ。


万年拗らせていた初恋も、なにもかも、全て呆気なく終わった。


「……っ、もう……こんなの無理じゃん……っ」


叶わない恋だって、そんなの分かってた。

絢斗にとって、私はただの幼馴染みでしかないことも。

でも、もしかしたらって……その希望が捨て切れなかった。


「……っ、もう……無理」


──── 翌朝。


毎朝の日課だった絢斗のベッドに侵入することも、一緒に登校しながら躓いたフリをして、腕に胸を押し当てることもしなかった。


「おはよ~うって……ええ!?西宮君は!?」

「うわっ、珍しいこともあるもんだね~。季節外れの雪でも降るんじゃなぁい?」

「あの未琴が西宮と一緒じゃないなんて……どうしたの?」


私の親友(中学の時から)達が、目を見開いて驚いている。


「詩織……美里……楓……私、もう諦めた」

「「「……え」」」

「降参!もうね、惨敗。お手上げ~!これ以上、ピッチピチのJK時代を棒に振るとか無理すぎ~」

「本当にそれでいいの?」

「うん!!いいの、いいの!!」

「……そっかぁ」

「未琴が決めたことなら……」


──── ガラガラ。


教室の扉が開く音がして、見てもいないのに『絢斗が来た』そう思った。 

ぎゅっと胸が締め付けられて苦しい……。


「ごめん、ちょっとトイレ」


私は椅子から立ち上がって、絢斗が来た方とは別の扉から教室を出ていった。


「未琴」


私を呼ぶ声がする……私の大好きな声が。

足を止めて立ち止まると、後ろから足音が近付いてくる。


「今日はどうして来なかったの。未琴が来なかったら寝坊した」


───── なにそれ……私は絢斗の目覚まし時計か何かだったわけ?


「てか、何も連絡無かったし。連絡くらいしてよ」


・・・・は?自分から連絡すれば良くない?なんで私から連絡しないといけないの?


「未琴、聞いてる?」


後ろから私の腕を掴んだ絢斗の手を、私は強く振り払った。


「未琴……?」

「触んないで」


私は振り向くことなく、その場を去った。

絢斗が追いかけて来ることもなかった。


──── それから私達は口を利くことも、一緒に登下校することも、お互いの家を行き来することもなくなった。


詩織達が気を遣って遊びに誘ってくれたり、『男を忘れるには男だ!』って言って、合コンへ誘ってくれたり。

私は絢斗に費やしていた時間を全て遊びに充てていた。


──── ある日の合コン帰り。


「はぁ。今日の合コン相手かなりダルかったなぁ」


しつこくて、なかなか抜け出せず時刻は21時。

ま、その辺うちの親は緩いから遅くなっても問題はないんだけど……。

そう言えば、近所のコンビニへ夜ひとりで行こうとすると、絢斗が何故か不機嫌になって絶対に付いて来てたなー。

そんなことを思いながらコンビニを通り過ぎようとした時、ちょうどコンビニの中から出てきた絢斗。

すると、足早に私のもとへ来た絢斗が力強く私の腕を掴んできた。


「痛っ!!ちょ、なに?」

「そんな格好して、どこで何をしてたの」

「は?別に……遊んでただけだし」

「危ないでしょ。こんな時間に」

「絢斗には関係なくない?離して」


振り払おうとしてもビクともしない。

絢斗ってこんなに力強かったっけ?

離すどころか、ますます力を入れられて痛くなる。


「どうして分かんないかな」

「……っ、は?何が?」

「随分と男遊びしてるみたいだね」


男遊び?そんなのしてないし。どんな誤解してんのよ。


「別にそんなんじゃっ……」

「男なんてヤりたいとしか思ってないよ。だから危ないって言ってるんだけど、分かんない?」


相変わらず長い前髪のせいで表情は掴めないけど、今までかつてないくらい不機嫌なのは分かる。


「私、そんな軽い女じゃないし。誰とでもっ……」

「そういうことじゃない。もっと自覚しなよ……自分が女だってこと。無防備にもほどがあるし、そもそも危機管理がまるでなってない」

「なんで絢斗にそんなこと言われなくちゃいけないわけ?だいたい、男くらいどうってことなっ……」

「あっそ」


素っ気なくそう言うと、絢斗は私の腕を掴んだまま引っ張って、どんどん先を進んでいく。


「ちょっ、絢斗!?な、ちょっ……なに!?」


そのまま私ん家を通り過ぎて、絢斗ん家へ。


そう言えば絢斗のお父さんとお母さん、結婚記念日の旅行に行くって言ってたな。

少し荒っぽく玄関に連れ込まれて、ダンッ!!と玄関ドアに押し付けられた。


「男くらいどうってことないんでしょ?逃げてみたら」


冷たくそう言い放つ絢斗。

離れようもしても、逃げようとしても全く身動きが取れない。


「ちょっと、絢斗……いい加減にして!」

「男はさ……こういうことをするしか脳がないんだって、分かんないかな」

「……っ!?」


私の腰に手を当てて、ゆっくり服の中に絢斗の手を入れてきた絢斗。


「ひゃあっ!ま、待って……絢斗……っ!」

「ははっ。“待って”……なんて言葉が通用するとでも思ってるの?未琴。男はさ、みんな野獣なんだよ」


──── いつもの陰キャな絢斗じゃなくて、それこそ“野獣”みたいな、男っ気が強い絢斗にドキドキする反面、少し怖くもあった。


優しくねっとりと、私のお腹や腰や背中に手を這わせてくる絢斗。


「んっ……絢斗……んんっ!?」


私の口を塞ぐように手で押さえ付けられた。

絢斗の手って、こんなにも大きかったんだ。

ていうか、絢斗はなんで私にこんなことをしてくるの……?

私に対する嫌がらせ?


「んんっ!……んっ……!!」

「ほら、早く逃げないと」


どうやって逃げろっていうの……?


「いいの?このままシしちゃっても」


フッと鼻で笑っている絢斗に、どうしようもなく腹が立って、どうしようもなく……怖かった。


「これに懲りたんなら、合コンだの何だのに行くのはやめたら」


・・・・どんなにアピールしても、アタックしても、靡かなかったくせに。何もしてくれなかったくせに。

どうして……なんで今なの?

ジワッと涙が汲み上げてきて、塞き止めれなくなった涙は、ぽろぽろと流れていく。

絢斗は私が泣いていることにすぐ気が付いたのか、バッ!と勢いよく私から離れた。


「み、未琴……ごめっ……っ!?」


バシンッ!!

私は絢斗の頬に平手打ちをして、そのまま絢斗ん家を飛び出した。


──── 翌日、学校へ行く気になれなかった私は、仮病で学校を休んだ。

その翌日……学校へ行くとプチ騒ぎが起きている。


「ねぇ!!あんなイケメンうちの学校に居たっけ!?」

「いや、居なかったよね!?」

「あのイケメン何者!?」


どこかで女子達がキャーキャー叫んでいる。

なんの騒ぎだろう。

サプライズでアイドルでも来てんのかな……とか適当なことを考えながら、重い足取りで教室へ向かった。


「ヤバくない!?あれ、西宮君らしいよ!!」

「はあ!?……って、西宮って誰だっけ」

「ほら、居たじゃん!!陰キャの子!!いつも陽キャ女子を連れてた!!」

「ええ!?あの陰キャがっ!?」


とか騒いでいる女子が私の前に居る。

なんの話だろう……そう思いつつ教室へ行くと人だかりができていた。


「あーー、すみませーーん。通してくださーーい」


私は人だかりを掻き分けて教室に中へ入り、ゆっくり顔を上げた。

すると、視界に入ってきたのは……。


「未琴」


いや、誰だオマエ。


「この前はごめん」


うん。誰だオマエは。


「あの、誰ですか」

「……え?」

「……はい?」

「いや、僕だよ僕」

「ボクボク詐欺ですか?」

「はぁぁ……分かるでしょ、普通。絢斗だよ」


──── ん?ん??んん?んんん!?


「ええぇぇぇぇーーーー!?」

「未琴うるさい」

「あ、ごめん」


待って待って待って待って。

えっと……私が最後に絢斗の全容を見たのは、いつ頃だったかしら。

多分、小学校の低学年頃が最後かな?

その時は可愛らしい顔をしてたのよ。本当に羨ましいくらい可愛らしい顔をしていたのよ。

なのに、何故か目を隠すようになって、年々陰キャを極めることになった絢斗。

私は絢斗が可愛かろうが、陰キャだろうが関係なかった。

だって、絢斗自身のことが好きだったから。


──── で、私の目の前にいるのは、昔の面影なんて一切合切ない、超絶イケメン“西宮 絢斗”。


「今日、一緒に帰りたいんだけど……いいかな」

「え?あ、う……うん」

「ありがとう」

「あ、どうも……こちらこそありがとう……?」


それから騒ぎが落ち着く……なんてことはなかった。


── 下校時間。


絢斗は女子に囲まれて、揉みクシャにされている。

それを救ったのは私の親友達だった。


「こらこら~、これを誰のもんだと思ってんの~?」

「さっさと散りな~」

「このイケメンは未琴のだぞ~」 


絢斗を囲っている女子達を蹴散らす勢いの詩織、美里、楓。マジで本当にありがとう。


「未琴、ごめん。行こ」

「うん。詩織!美里!楓!ありがとうっ!!」

「「「グッドラック」」」


──── 久しぶりに絢斗が私の隣にいる。


それが当たり前だったのに、あの日から当たり前じゃなくなった。

空回りして、自分で自分の大切な居場所を捨てた。

もう、絢斗の隣は歩けないって……ヤケクソになって、絢斗のことを忘れたくて、ぽっかり空いたその穴を埋めたくって……でも、そんなの無理で、絢斗で空いた穴は、絢斗でしか埋めれなくて……。

私、やっぱり絢斗じゃなきゃ嫌。

絢斗がいいの。

絢斗じゃないと意味ないの。

私の隣にいて欲しいのは……絢斗だけ。


「絢斗、私っ……」

「未琴、ごめんね。あの時、泣かせるつもりはなかったんだ。僕さ……自分に自信が無かった」

「……自信?」


チラッと絢斗を見上げると、真っ直ぐ前を向いていた。


「未琴に『可愛いね』って言われてから、この顔が嫌いになった」

「そっか…………って、え……?」


私は絢斗を二度見して、ポッカーンッと口を開けている。開いた口が塞がらないとはまさにコレ。


「未琴が悪いわけじゃないよ。僕の問題っていうか……ほら、未琴って昔『イケメンすきー!』とか騒いでたじゃん」


・・・・えーーっと、そうだったっけ……?


「ハハハ……マジか」

「マジ。だから、嫌いになったんだよね。未琴の好みになれない自分の顔が」

「へ……へぇ……」


・・・・いや、ちょっと待って。ん?え?待って。

それって……どういう意味なんだ?


「もう二度、こんな顔を未琴に見せないって誓った」

「いや、そんなの勝手に誓わないでよ。びっくりするわ」

「ははっ」


・・・・こらっ!笑って誤魔化すなぁぁ!!


「未琴は昔から可愛くて、元気いっぱいで、友達も多くてさ、小さい頃からモテてたし、年々綺麗になっていく未琴を隣で見てたらさ。僕なんかじゃ無理だって、僕なんかが釣り合うはずがないって……諦めて、そう自分に言い聞かせてきた。本来、未琴に近付く男は全員もれなく蹴散らしたかったし、邪魔してやりたかったし、二度と未琴に話し掛けようなんて気を起こさないにっ……」

「ちょ、ちょ、待って、待って……!!」

「ん?なに」


なんか物騒な話になってるし、顔っ!!怖いっ!!

漆黒の闇に包まれたような瞳をするのはヤメろ!!


「あの、ごめん。情報量が色々多すぎちゃって、絢斗が何を言いたいのか、ちょっと分かんないんだけど」

「ごめん。遠回しな言い方はもうやめるね…………好き」

「…………ハイ?」


真っ直ぐ私の目を見て『すき』と言った絢斗。

すき……すき……すき……?

すき……やき……すき焼食べたいって?

いや、スキーでもしに行くかって?


「未琴のことが好き。昔からずっと……物心ついた時から、未琴のことが好きで好きでたまらなかった」


私の頬を両手でそっと優しく包み込む絢斗。

その手が少しだけ震えていた。


「絢斗」

「ごめん……緊張して。かっこ悪いね」


かっこ悪くなんてない。

私の中ではいつだって絢斗が一番かっこよかった。

昔も、今も、そしてこれからも、それは絶対に揺るがない。


「絢斗がこの世界の中で一番かっこいいよ」

「未琴。それは眼科に行った方がいいかもしれない」

「もうっ!なんで今そういうこと言うの!?」

「ククッ……ごめんごめん」

「だいたいっ……!?」


絢斗の顔がおもむろに近付いてきて、チュッと唇が重なった。

そして、少し離れる絢斗の唇。


「怒った未琴ってめちゃくちゃ可愛いって知ってた?」

「……へ?」


色っぽいというか、飢えた獣のようなギラギラした瞳で、私の瞳の奥底を捕らえて離さない。


「ねえ、未琴」

「は、はい……」

「すべて喰らい尽くしたくなるくらい君が愛おしい」

「……ん?」

「もう……我慢なんてしない」

「……え?」

「ごめん。もう逃がさないから」


再びキスをしてこようとする絢斗の顔を咄嗟に鷲掴みした。


「なに。もう待てないんだけど」

「ここ!!道端!!ていうか、いきなりキスとかありえなくない!?」

「未琴は僕のこと好きじゃないの」


・・・・ちょちょちょっ!!その顔やめてって!!

闇落ち寸前的な顔はしないで!!


「す、好き。そりゃ好きだよ!!」

「僕も好き」

「あ、ありがとう」

「だからいいでしょ?」

「良くない!!場所の問題っ!!それと!!告白くらいしてくんない!?」


だって、だってさ……今の段階だとお互いが“好き”を確め合っただけじゃん?

なーなーにしたくない。

絢斗との関係は。

こんなチャンス……二度とない。


どうせなら絢斗から告白されたいという何よりも深ぁぁ~い、私の願望と欲求が抑えきれない!!


──── すると、私の視界から突然姿を消した絢斗。


顔を少し下げてみると、片膝を地面につけている絢斗が視界に入った。 


・・・・えーーっと、何をしているのかな?


絢斗は私の左手を優しく丁寧にそっと掬った。そして、薬指にチュッと口づけをする。


「一生幸せにする。僕を選んだこと、絶対に後悔なんてさせない。何があっても離れないし、離さない。死んでも離さない、死んでからも離してやんない。絶対に」
 

・・・・お、おう……。


「だから、未琴好みの男じゃないかもしれないけど……僕と結婚してください」

「うん…………って、結婚っっ!?」

「当たり前でしょ」


ムクッと立ち上がった絢斗が、少し屈んで私の顔をジーッと見つめてくる。


「僕は未琴と結婚をしない……なんて選択肢は無い」

「え、あ、あの、ちょっと気が早っ……」

「僕はもう、とっくの昔から心に誓ってるよ」

「そ、そっか……」


なんか絢斗って……クソデカ感情拗らせ野郎になってない……!?


「今まで我慢してきた分、これから未琴に全部ぶつけるから。覚悟しておいてね」

「あ、あの……程々でお願いしまっ……」

「なに言ってるの、未琴。今まで散々、僕に色々と仕掛けてきたくせに。今さら怖じ気づくなんて、そんなの……許さないから」

「ご、ごめん……それは本当にごめっ……」

「いいよ。謝罪も言い訳も全部ベッドの上で聞いてあげるから」

「え、あ、え……ま、待って……待ってぇぇ!!」



──── こうして、長年拗らせてきた幼馴染みの陰キャ君と私は、めでたく無事に結ばれましたとさ。 



「いや、全っっ然無事ではないけどね!?」

「ん?何を言ってるの?あ、待って未琴……まだ足んない」

「え、ちょっ……もう無理っ!」

「大丈夫だよ。次は激しくしないから」

「そういう問題じゃないっ!!」

「そっか。なら、遠慮なく激しくさせてもらうね」

「違う違う違う違う!!そうじゃなぁぁい!!」

「もぉ、我が儘だなぁ……可愛い」


私は必死にベッドから逃げ出そうとした。

でも、ひょいっと元に戻される。


「そんな動ける元気があれば、まだイけそうだね」

「やめろ!!その言い方!!あ、絢斗……あの、マジで腰砕けるって」

「そっか。じゃあ一緒に砕けよっか。僕も張り切って頑張るね」


・・・・ちっっっっがぁぁぁぁうっっっっ!!!!


そして、絢斗の溜まりに溜まったクソデカ感情をぶつけられまくったとさ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしようもない幼馴染が可愛いお話

下菊みこと
恋愛
可愛いけどどうしようもない幼馴染に嫉妬され、誤解を解いたと思ったらなんだかんだでそのまま捕まるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

レンタル彼氏がヤンデレだった件について

名乃坂
恋愛
ネガティブ喪女な女の子がレンタル彼氏をレンタルしたら、相手がヤンデレ男子だったというヤンデレSSです。

処理中です...