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第2章:魔道

魔界へつながる道(6)

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 それでも、私は、ルークの魔剣の封印を解こうとはしませんでした。
 魔物に蝕まれたクティカの体を抱きしめたまま、私は拒んでいました。
 私は必死で彼女の体を再生させようとし・・・そのために全ての魔力を使おうとして・・・たとえ、それで私自身が死んでしまってもかまわないと・・・彼女に全てを・・・
 私は自分が何をしているのかわからなくなっていました。
 もしかすると私は気が狂っていたのかもしれません。
 きっと、そうでしょう。
 私の心を支配しているのは狂気以外の何ものでもなかったのです。

 私は思いました。
 彼女が生きていくためには魔力が必要なのです。
 それを誰が与えるのですか?
 私ですか?
 私にそんな魔力があるのですか?
 自分を守るだけでも必死なのに、他人に分け与えるほどの魔力が作れるのですか?
 きっと無理でしょう。私にはそんな力はないでしょう。
 それでもいいんです。
 もし、できなければ、私もクティカも死ぬだけなのです。
 二人で一緒に生きるか、二人で一緒に死ぬか、どちらかなのです。ただ、それだけのこと。
 だから、私は彼女を殺さない。
 誰にも彼女を殺させない。

 私はクティカを抱きしめていました。必死で、強く、・・・
 すると、そんな私を見たルークは、剣を鞘におさめたのです。
 ルークはわかってくれたんです。
 彼は私の気持ちを・・・。
 彼は私の意志を受け入れてくれたんです。

 ルークはちょっと笑って言いました。
「じゃあ、新しい宿を探しましょう。もう、この建物は壊れそうですから・・・」
 彼の言うとおりでした。
 魔物が去り魔力を失った建物は、自らを支えることさえできなくなり、つぶれていきました。

 *

 私たちは・・・私たち三人は新しい宿を見つけました。
 やっぱりお金がないから、三人で一つの部屋に・・・

 私とクティカはベッドで眠っていました。
 ルークは床の上に毛布をひいて・・・

 私はずっと彼女を抱きしめていました。
 彼女は長い時間震えていました。
 彼女の体はほとんど再生していましたが、彼女はまだ怖かったのでしょう。
 魔物たちの支配から解放され正気になった彼女は、自分が今まで置かれていた状況を認識し、はげしい恐怖を感じているのでしょう。
 今までは偽の快感で上書きされていた恐怖を・・・

 しばらくすると彼女も、落ち着いたようでした。
 すっかり安心して熟睡していました。

 私はそっとベッドから抜け出すと、ルークのそばに行きました。
 彼は床の上に横になって目をつぶっていましたが、決して眠っていないことは私にもわかりました。

 私は彼の手を握りました。
 自分の胸を彼の体に押し付けるようにして抱きしめて・・・
 それから静かに言いました。
「ルーク、ありがとう」
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