40 / 58
謎の植物ネットワーク(4)
しおりを挟む
私はレッドの言葉を思い出しました。
この未知の植物のネットワークに取り込まれた生物は、永遠に生き続けることができるのだと・・・そして、その脳は永遠に思考し続ける・・・
もしかすると、私はこの記憶のループをいつまでも体験し続けなければならないのでしょうか。
彼との幸福な記憶と、その悲劇的な終わりを何度も何度も・・・無限に・・・
私は叫びました・・・私は大声で叫びました・・・ここから出してほしいと・・・この記憶のループを終わりにしてほしいと・・・もう十分だと・・・
もうこれ以上は耐えられないと・・・
しかし、何も起きません。
やはり、私は記憶の中にいるのです。
ここでは何も起きないのです。
この世界に変化はないのです。
何度も何度も繰り返される幸福と悲劇・・・
いえ・・・変化が・・・・
その時、変化が・・・
・・・私はまだ記憶の中にいました。・・・
過去の宇宙船・・・訓練用の宇宙船・・・でも、そこには・・・そこには、レッドが立っていたのです。
私は思いました。
きっと、船の量子コンピューターとこの謎の植物ネットワークの接続が成功したのだと。
そして、何らかの方法で、彼はこの仮想空間に入って来たのだと。
私を助けるために・・・。
私をこの地獄のループから助け出すために・・・。
私はレッドの手を握りました。金属でできた手を・・・ごつごつした手を・・・しっかりと、・・・
それはレッドの手・・・間違いなくレッドの手・・・ポンコツロボットだけど、優しいレッドの手・・・
すると次第に記憶は消えていき・・・私は現実の世界に戻ることができたのです。
私は船に帰りました。
レッドは量子コンピューターを操作していました。
私はレッドに言いました。泣きながら・・・
・・・助けてくれて、ありがとう・・・
でも、レッドは返事をしません。
しばらくしてからレッドは奇妙なことを言いました。
結局、船の量子コンピューターと、この植物ネットワークを接続することはできなかったと・・・
実験は失敗したのだと・・・
・・・じゃあ、誰が私を助けに来てくれたのですか?・・・
・・・あの時、私の記憶の中に現れたレッドは何?・・・
レッドは私に言いました。
「それはあなたの意志でしょう。・・・
あなたが、この世界に戻りたいと願う意志が、私を呼び出し・・・
そこにいたのは、あなたの記憶の中の私なのですよ。・・・」
そうなのでしょうか。・・・そうなのかもしれません。
確かに、あの時の私は、レッドに助けを求めていました・・・
だから、それが夢の中で実体化され・・・そして、あの世界から抜け出すことができたのです・・・
・・・だから・・・やっぱりレッドが助けてくれたんです・・・私を助けてくれたのはレッドなんです・・・ポンコツだけど・・・ちょっと頭がおかしいのかもしれないけど・・・やさしいレッド・・・私のことを大切に思ってくれるレッド・・・
私はレッドを抱きしめて・・・
彼は言いました。この惑星には古い遺跡があると・・・
・・・それは古い文明の遺跡・・・数万年前の遺跡・・・
私たちは一緒に、その遺跡の調査を始めました。
そして、発見しました。
遺跡を・・・・古代の遺跡を・・・さらに・・・
私たちは見つけたのです。・・・その遺跡の付近で・・・たくさんの人間を・・・この惑星の人間を・・・この古代文明を築いた人間たちを・・・
この惑星でも、人間のような高等生物が進化していたのです。
しかし、彼らは滅びて・・・
いえ、違います。彼らは滅びてなどいません。彼らは・・・・まだ生きていました。
この謎の白い繊維に包まれて・・・謎の植物ネットワークに包まれて・・・
彼らは数万年もの間、生き続けているのです・・・
彼らの脳は数万年もの間思考し続けているのです・・・
彼らが今、何を考え、何を感じているのか私にはわかりません。
彼らが感じ続けているのが激しい快感なのか・・・
それとも、耐えられないような悲しみなのか・・・
ここは永遠の天国なのでしょうか。それとも、終わることのない地獄なのでしょうか。
私はちょっと恐ろしい気分になりました。
もし、あの時、あの記憶から抜け出せなかったら、私も永遠にあの悲劇を・・・
*
私は次の恒星系に向かうために、冬眠の準備を始めました。
レッドは私に言いました。
「この惑星の植物ネットワークに接続することはできませんでしたが・・・あなたの脳に接続することはできますよ・・・
だから、あなたの夢の中に入り込むことはできます・・・
冬眠中に悪夢にうなされるようなことがあったら、すぐにを呼んでください。・・・」
私には、眠っている私がどうやってレッドを呼び出せばよいのか、よくわかりませんでした・・・きっとまた、彼の下手なジョークなのでしょう・・・
ふと、私は再び地球での訓練中の事故のことを思い出していました。
何となく、今までよりも、記憶を生々しく思い出せるような気がするのです。
彼との記憶も・・・彼の体の感触も・・・そして、その時の私の気持ちも・・・
心地よい気分も・・・まるで現実の感覚のように・・・
きっと、この惑星で同じ記憶を何度も繰り返して呼び起こし、それを経験したせいなのでしょう。
私はとても幸せな気分になり、しかし、また泣きそうになり・・・
レッドは私に言いました。
「悪夢に苦しんでいるあなたを助けるために、あなたの夢の中に入り込むのなら、その時は、こんなロボットの体ではなく、人間の体で行くことにしましょう。
あなたの脳の中に入り込むなら、わざわざこんな機械の体である必要はないので・・・人間の体なら、あなたを優しく・・・」
私は彼の言葉を遮って言いました。
「夢の中にまで助けに来なくてもいいよ・・・私、大丈夫だよ・・・
・・・でも、もし、来てくれるのなら・・・もし、私の夢の中に入ってきてくれるのなら・・・その時は・・・その時も、そのままの体で・・・今のままの姿で・・・」
・・・だって、今のままのレッドが好きだから・・・・
この未知の植物のネットワークに取り込まれた生物は、永遠に生き続けることができるのだと・・・そして、その脳は永遠に思考し続ける・・・
もしかすると、私はこの記憶のループをいつまでも体験し続けなければならないのでしょうか。
彼との幸福な記憶と、その悲劇的な終わりを何度も何度も・・・無限に・・・
私は叫びました・・・私は大声で叫びました・・・ここから出してほしいと・・・この記憶のループを終わりにしてほしいと・・・もう十分だと・・・
もうこれ以上は耐えられないと・・・
しかし、何も起きません。
やはり、私は記憶の中にいるのです。
ここでは何も起きないのです。
この世界に変化はないのです。
何度も何度も繰り返される幸福と悲劇・・・
いえ・・・変化が・・・・
その時、変化が・・・
・・・私はまだ記憶の中にいました。・・・
過去の宇宙船・・・訓練用の宇宙船・・・でも、そこには・・・そこには、レッドが立っていたのです。
私は思いました。
きっと、船の量子コンピューターとこの謎の植物ネットワークの接続が成功したのだと。
そして、何らかの方法で、彼はこの仮想空間に入って来たのだと。
私を助けるために・・・。
私をこの地獄のループから助け出すために・・・。
私はレッドの手を握りました。金属でできた手を・・・ごつごつした手を・・・しっかりと、・・・
それはレッドの手・・・間違いなくレッドの手・・・ポンコツロボットだけど、優しいレッドの手・・・
すると次第に記憶は消えていき・・・私は現実の世界に戻ることができたのです。
私は船に帰りました。
レッドは量子コンピューターを操作していました。
私はレッドに言いました。泣きながら・・・
・・・助けてくれて、ありがとう・・・
でも、レッドは返事をしません。
しばらくしてからレッドは奇妙なことを言いました。
結局、船の量子コンピューターと、この植物ネットワークを接続することはできなかったと・・・
実験は失敗したのだと・・・
・・・じゃあ、誰が私を助けに来てくれたのですか?・・・
・・・あの時、私の記憶の中に現れたレッドは何?・・・
レッドは私に言いました。
「それはあなたの意志でしょう。・・・
あなたが、この世界に戻りたいと願う意志が、私を呼び出し・・・
そこにいたのは、あなたの記憶の中の私なのですよ。・・・」
そうなのでしょうか。・・・そうなのかもしれません。
確かに、あの時の私は、レッドに助けを求めていました・・・
だから、それが夢の中で実体化され・・・そして、あの世界から抜け出すことができたのです・・・
・・・だから・・・やっぱりレッドが助けてくれたんです・・・私を助けてくれたのはレッドなんです・・・ポンコツだけど・・・ちょっと頭がおかしいのかもしれないけど・・・やさしいレッド・・・私のことを大切に思ってくれるレッド・・・
私はレッドを抱きしめて・・・
彼は言いました。この惑星には古い遺跡があると・・・
・・・それは古い文明の遺跡・・・数万年前の遺跡・・・
私たちは一緒に、その遺跡の調査を始めました。
そして、発見しました。
遺跡を・・・・古代の遺跡を・・・さらに・・・
私たちは見つけたのです。・・・その遺跡の付近で・・・たくさんの人間を・・・この惑星の人間を・・・この古代文明を築いた人間たちを・・・
この惑星でも、人間のような高等生物が進化していたのです。
しかし、彼らは滅びて・・・
いえ、違います。彼らは滅びてなどいません。彼らは・・・・まだ生きていました。
この謎の白い繊維に包まれて・・・謎の植物ネットワークに包まれて・・・
彼らは数万年もの間、生き続けているのです・・・
彼らの脳は数万年もの間思考し続けているのです・・・
彼らが今、何を考え、何を感じているのか私にはわかりません。
彼らが感じ続けているのが激しい快感なのか・・・
それとも、耐えられないような悲しみなのか・・・
ここは永遠の天国なのでしょうか。それとも、終わることのない地獄なのでしょうか。
私はちょっと恐ろしい気分になりました。
もし、あの時、あの記憶から抜け出せなかったら、私も永遠にあの悲劇を・・・
*
私は次の恒星系に向かうために、冬眠の準備を始めました。
レッドは私に言いました。
「この惑星の植物ネットワークに接続することはできませんでしたが・・・あなたの脳に接続することはできますよ・・・
だから、あなたの夢の中に入り込むことはできます・・・
冬眠中に悪夢にうなされるようなことがあったら、すぐにを呼んでください。・・・」
私には、眠っている私がどうやってレッドを呼び出せばよいのか、よくわかりませんでした・・・きっとまた、彼の下手なジョークなのでしょう・・・
ふと、私は再び地球での訓練中の事故のことを思い出していました。
何となく、今までよりも、記憶を生々しく思い出せるような気がするのです。
彼との記憶も・・・彼の体の感触も・・・そして、その時の私の気持ちも・・・
心地よい気分も・・・まるで現実の感覚のように・・・
きっと、この惑星で同じ記憶を何度も繰り返して呼び起こし、それを経験したせいなのでしょう。
私はとても幸せな気分になり、しかし、また泣きそうになり・・・
レッドは私に言いました。
「悪夢に苦しんでいるあなたを助けるために、あなたの夢の中に入り込むのなら、その時は、こんなロボットの体ではなく、人間の体で行くことにしましょう。
あなたの脳の中に入り込むなら、わざわざこんな機械の体である必要はないので・・・人間の体なら、あなたを優しく・・・」
私は彼の言葉を遮って言いました。
「夢の中にまで助けに来なくてもいいよ・・・私、大丈夫だよ・・・
・・・でも、もし、来てくれるのなら・・・もし、私の夢の中に入ってきてくれるのなら・・・その時は・・・その時も、そのままの体で・・・今のままの姿で・・・」
・・・だって、今のままのレッドが好きだから・・・・
1
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
What a Wonderful World
一兎風タウ
SF
紀元後3518年。
荒廃したこの地には、戦闘用アンドロイド軍『オリュンポス軍』のみが存在していた⋯。
ー⋯はずだった。
十数年前に壊滅させた戦闘用アンドロイド軍『高天原軍』が再侵攻を始めた。
膠着状態となり、オリュンポス軍最高司令官のゼウスは惑星からの離脱、および爆破を決定した。
それに反発したポー、ハデス、ヘスティアの3人は脱走し、この惑星上を放浪する旅に出る。
これは、彼らが何かを見つけるための物語。
SF(すこしふしぎ)漫画の小説版。
我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる