上 下
37 / 58

謎の植物ネットワーク(1)

しおりを挟む
 ・・・その惑星は未知の神経で繋がっていて・・・
 ・・・私もその神経ネットワークに取り込まれてしまい・・・
 ・・・気持ちいい・・・抑えきれない感情・・・
 ・・・しかし、その極度の興奮は突然・・・

 私の名前はリリア。
 宇宙飛行士養成学校の学生・・・
 レッドというポンコツ・アンドロイドと二人だけで、長い長い旅を続けています。

 新しい発見に満ちた楽しい宇宙探査・・・と言いたいのですが、実は孤独な旅。
 ここは地球から1000光年以上も離れた星域・・・
 事故でこんな遠くに転送されてしまったのです。
 しかも帰る方法がわからないのです・・・それでも、私は諦めません。

 私が恒星間移動のための冬眠から目覚めて、惑星探査の準備をしていると、レッドが私の近くで変な格好をしているのです。
 不思議な姿勢を・・・。
 両腕を水平に広げたり、片方の腕を前へ、片方の腕を真上に突き上げたり、片足で立ってバランスを保ってみたり・・・
 だんだん頭がおかしくなってきているのでしょうか。
 このポンコツの頭の中に、どれほど精神とか心のようなものがあるのかわかりませんが、まあ、それがあったとして・・・長い旅のせいで、何らかの異常をきたし始めているのかもしれません。



 無視。
 ・・・私は我慢していました。関わってはいけないと・・・話しかけてはいけないと・・・
 でも、彼はいつまでも止めません。
 きっと待っているんです。私が何か言うのを・・・仕方ありません。
 私は尋ねました。
「どうしたの? 何をしてるの?」

 するとレッドは答えました。
「ええ、あなたが冬眠中、船の故障が続いたんです。
 それで、調査とか修理とかで大変でした。
 だから、最近、少し疲れているんです。
 夜もあまり眠れなくて・・・夜中もほとんど起きてて・・・ああ、私には睡眠なんて機能はありませんね・・・そうですね・・・眠らなくてもいいんですね・・・それは気にしないことにしましょう・・・
 まあ、そんなわけで、眠れないのはいいのですが、とにかく疲れていて・・・
 そのせいか、最近、ストレスがたまっているんです。
 疲労によるストレスが・・・わかりますか?・・・ストレスですよ・・・たくさんのストレスが・・・」
「?」
 ・・・わかりません・・・私には全くわかりません・・・だって、レッドの頭脳は、船の量子コンピューター上で動いているんですよね・・・ストレス?・・・どういうこと?・・・バグ?・・・ソフトにバグがあるの?・・・もしかして、この船のコンピューター、あぶないの?・・・

「・・・ものすごいストレスを感じるようになって・・・ええ、それで、リラックスしようと思ったんです。
 いろいろ調べて・・・ヨガがいいかなと思って・・・それでヨガを始めたんです・・・
 でも、いいですね。ヨガはいいです。
 すぐに効果が出始めて、・・・気持ちがだいぶ落ちついてきました」

 私には、本当に彼にストレスがあるのかどうかはわかりません。
 でも、彼の機械のボディーでヨガのポーズをやっても、何の意味もないことだけは私にだってわかります。
 しかし、彼だって、そんなことはわかっているんです。
 彼だって、自分の機械の体に変なポーズをさせても、ソフトの動作に何の影響も与えないことなんか、ちゃんと理解しているんです。
 彼が私に言いたいことは・・・それは私にもわかるんです。
 彼の気持ちは心が苦しくなるほど伝わってくるので、私は黙って・・・妙なことをしている彼をただじっと眺めていました。

 *

 私は新しい惑星の探査を始めました。
 私は地上に降りました。
 この惑星では、たくさんの生物が進化していました。

 しかし、不思議なことがありました。
 遺伝子分布の初期調査で、妙なことがわかったのです。
 今までこの惑星の生物は進化し続けてきたのに、この数万年間は、その進化がすっかり止まっているのです。
 一体何が起きたのでしょうか。

 私は謎を解明するために、さらに詳細な遺伝子の分布の調査を始めました。

 この惑星にはたくさんの種類の植物がありました。
 でも、動物はほとんどいないのです。
 いえ、いないわけではないのです。
 この惑星にも多様な動物がいるのですが・・・

 しかし、それらは奇妙な状態なのです。
 じっとしているのです。動かないのです。
 しかも、白い繊維に包まれていて・・・決して死んでいるわけではありません。生きているのです・・・
 細胞は活動しているのです・・・循環器も機能しているのです・・・
 でも、じっとしているのです。・・・全く動かないのです。

 この白い繊維は何なのでしょうか。
 それは動物の体の中にも入り込んでいて・・・それらの繊維は液状のものを生き物の体内に吐き出しているのです・・・まるで、栄養を補給しているような・・・
 しかし、神経としての働きもあるようです・・・つまり何かの情報を伝えているのです・・・無数の白い繊維が、動物の脳に接続していて・・・
 それは何かのコミュニケーションをとっているのでしょうか・・・

 その白い繊維は地上のいたるところにありました。
 この惑星全体を覆っているのです。

 そして、それは動くのです。
 何かを見つけると巻きついてくるのです。

 それは私を見つけ・・・私の体にも巻きついてきました。・・・
 私の体を覆い始め・・・そして、その繊維は私の体の中にも入り込み始めました。
 口の中に・・・喉の奥へと・・・食道の中へ・・・何十本もの繊維が束になって・・・それはまるで太い枝か幹のように・・・私の体の内部へと・・・いえ、もっと多くの繊維が・・・何百本もの繊維が・・・それはものすごく太くて・・・そして、私の内部へと・・・

 私はその繊維で全身を包まれ・・・私の体はまるで繭のようになり・・・私は全く動けなくなりました。

 でも、その太い繊維の束は、動けない私の体内の奥深くへと・・・口から入り込んで、胃の中まで・・・肺の中まで・・・
 いえ、入り込んできたのは、口からだけではありません。体のあらゆる場所から・・・それは腸の中にも入り込み・・・その太い繊維の束は、私の体の内部を調べ始め・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第二部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。 宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。 そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。 どうせろくな事が怒らないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。 そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。 しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。 この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。 これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。 そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。 そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。 SFお仕事ギャグロマン小説。

いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一
SF
この小説にはある仕掛けがある。 読者はこの物語を読み進めると、この作品自体に仕掛けられた「前代未聞」のアイデアを知ることになる。 それは日本のアニメやマンガへ注がれるオマージュ。 2次創作ではない、ある種の入れ子構造になったメタ・フィクション。 誰もがきいたことがある人物による、誰もみたことがない物語がいま幕を開ける。 すべてのアニメファンに告ぐ!! 。隠された謎を見抜けるか!!。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 25世紀後半 地球を襲った亜獣と呼ばれる怪獣たちに、デミリアンと呼ばれる生命体に搭乗して戦う日本人少年ヤマトタケル。なぜか日本人にしか操縦ができないこの兵器に乗る者には、同時に、人類を滅ぼすと言われる「四解文書」と呼ばれる極秘文書も受け継がされた。 もしこれを人々が知れば、世界は「憤怒」し、「恐怖」し、「絶望」し、そして「発狂」する。 かつてそれを聞いた法皇がショック死したほどの四つの「真理」。 世界でたった一人、人類を救えも、滅ぼしもできる、両方の力を手に入れた日本人少年ヤマトタケル。 彼は、世界100億人全員から、救いを求められ、忌み嫌われ、そして恐れられる存在になった。 だが彼には使命があった。たとえ人類の半分の人々を犠牲にしても残り11体の亜獣を殲滅すること、そして「四解文書」の謎を誰にも知られずに永遠に葬ることだった。

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

140字で小話

文野志暢
SF
140字で小話を書いてみました

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

処理中です...