美少女リリアの宇宙探査・1000光年の愛の旅

ヤクモ ミノル

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恐怖のハッキング(4)

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 やっと量子コンピューターが再起動したのでしょう。
 それに連動して、レッドも再起動された・・・

 でも、再起動されたメインコンピューターは、正常だったのでしょうか・・・それともやはり悪意に感染していたのでしょうか・・・
 どっちなのでしょう。
 私には、わかりません。

 レッドは私を見つけると・・・彼はその怪物を私から引き離しました。
 しかし、レッドはその巨大な異物ではなく、私に襲いかかってきたのです。

 私は思いました。
 失敗したんだ。
 メモリーのコアの最小区画で再起動したつもりだったけど、やっぱりそのコアさえ感染していたんだ。
 だめだったんだ。
 もうレッドも敵なんだ。・・・
 ・・・私はレッドに殺されるんだ。
 ・・・ああ、このポンコツロボットに殺される。
 ・・・まあ、あの不気味なクモに殺されるよりはよかったのかもしれないけど・・・
 ・・・最後に謝っとくよ、何度もポンコツって言って、ごめんね。

 もう時間切れ。

 レッドは傷ついている私の体を乱暴につかみました。
 内臓があちこち破裂している私の肉体を無造作に抱え上げて・・・肩にかつぎ・・・彼は私の体をゴミみたいに扱って・・・
 レッドは私を抱えたまま、医療室に向かって走りました。
 彼が走る振動で、私の内臓が揺れ動き、血が口から流れ出て・・・でも、レッドはそんなことは気にもせずに・・・
 そして、治療用のカプセルに私を投げ込むと、猛烈な勢いでカプセルをロックしてしまったのです。

 その直後でした。
 船体の生命維持装置が停止し、船体全体が減圧されました。
 もし、私がカプセルに入っていなかったら、その瞬間に、私の肉体は破裂していたでしょう。

 しかし、その後、生命維持装置だけでなく、船体の全ての機能が停止しました。
 船内は完全な静寂で包まれました。
 もはや、それは宇宙の一部でした。

 やがて、船内が明るくなり、各種の機能が正常に動き始めました。
 レッドが戻ってきて、私の体をやさしくカプセルから出してくれました。
 すぐに私を治療してくれて・・・

 壊れていたのは私の体だけではありませんでした。
 レッドも体のあちこちの部品が外れていて・・・

「リリアさん、大丈夫ですか? 気分はどうですか?」
 彼は説明してくれました。
 あの手強いクモの怪物を船外に放出するのに、少々手こずってしまったと・・・少しボディーが損傷したけど、この程度なら修理可能だと・・・
「ぎりぎりでした。再起動がもう少し遅かったら、全部手遅れになっていました。あなたのおかげです。ありがとうございます」

 彼の話では、私が再起動した量子コンピューターにも、やはり異常が発生していたのです。
 それで、彼はその部分をもう一度初期化して切り離し、システム全体を再起動したのだと・・・
 今は全てが正常に戻ったのだと・・・

「でも、・・・」
 私はレッドの壊れた手を握りながら、尋ねました。
「・・・いくら正常に再起動しても、またハッキングされるのでは・・・ねえ、何が船のコンピューターをハッキングしていたの?」

 すると彼の答えは意外でした。
 これは外部からハッキングされたのではないのだと・・・
 少なくともソフトウェアとしてハッキングされたのではないのだと・・・
 今回起きたのは、一種のハードウェアの異常なのだと・・・
 量子コンピューターの量子群自体に、何かの生命体が入り込んでいたのだと・・・
 感染した領域の量子群を初期化したので、おそらく、その生命体自体を除去できただろうと・・・

 彼は言いました。
「それが何だったのか十分な調査はできませんでした・・・
 おそらく、この宇宙空間を雲のように浮遊する一種の生命体だったのでしょう・・・
 こんな広大な空間を彷徨っている生命体がいるなんて・・・私たちの知識では理解できないような存在・・・
 でも、そのような生命体が、他にも宇宙を浮遊している可能性はあります。
 だから、また船の量子コンピューターが感染する可能性はあります・・・しかし、とりあえずは・・・」

 私は尋ねました。
 なぜ、こんな悪意をもった生命体が宇宙に存在するのかと・・・
 こんな無辺の空間で殺し合ったところで、何の意味もないではないかと・・・

 レッドはしばらく考えていました。
 それから静かに言いました。
「私が調べた範囲では、その生命体に特に悪意というようなものはなかったようです・・・
 むしろ、最初は、協調的な意志だったようです・・・
 でも、それが、私たちのコンピューター内のさまざまな情報やプログラムと接触するうちに、あのような悪意に成長したのです・・・
 つまり、あのような怪物の意識を作り出したのは、人間ということですね・・・
 コンピューターの内部にあった、膨大な人間の記憶や記録があの悪魔を作り出したんです・・・人類の終わることのない戦争や残虐な事件の情報があの悪魔を・・・
 まあ、人間の悪意が、異星の生命体の意識を悪魔に成長させたということでしょう・・・
 あの巨大なクモも、きっと人間の悪意の象徴として・・・」

 私は次の恒星系に向けて再び冬眠することにしました。
 でも、やはり怖かったのです。
 眠るのが・・・

 私はレッドに正直に言いました。
「眠るのが怖い・・・
 また何か起きるかもしれないから・・・
 あのね・・・以前、言ったでしょう・・・
 私が眠っている間、ずっと私のそばにいて、私を守ってくれるって・・・
 以前私に言ったでしょう・・・覚えてる?」

 レッドはしばらく黙っていました。
 それから言いました。
「・・・どうも変ですね。
 量子コンピューターのメモリーを初期化したせいで、私の記憶も一部消えたようです。
 そんなことを言った覚えはありません・・・」

 私はいつもとは違うレッドの冷たい態度に驚きました。
 もしかすると、記憶が消えただけではなく、性格まで変わってしまったのかもしれないと・・・
 やっぱり量子コンピューターを再起動した影響が・・・

 私は少し悲しい気持ちになりました。
 でも仕方ありません。
 私はゆっくりと深い眠りに落ちていきました。

 レッドは、諦めて眠ろうとしている私に話していました。
「・・・でも大丈夫ですよ・・・
 たとえ、記憶がほとんど飛んでしまっても、私はあなたのそばにいますよ・・・
 大丈夫です・・・今回は申し訳ありませんでした・・・
 もう、眠っているあなたから離れません・・・もう二度と・・・
 トイレに行く時以外は・・・ああ、そうですね・・・
 私はヒューマノイドなので、トイレに行く必要はないですね・・・」
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