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300年の孤独(1)

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 私の名前はリリア。
 宇宙飛行士養成学校の学生・・・クラスの中では一番かわいいと言われていた女の子・・・だったんです・・・
 もちろん今でもかわいいですよ・・・でも今私は、地球から1000光年以上離れた恒星系をさまよっていて・・・
 事故で超空間を飛ばされたんです・・・それでも、私は諦めません・・・いつか地球へ帰る・・・
 そのために、超文明を持った異星人を探し出し、光の速度を超えるための超技術を教えてもらうんです。

 この船に乗っているのは、私とレッドというヒューマノイドだけ。
 恒星間の移動で私が人工冬眠中、レッドはいろんなことをして暇つぶしをしているようです。
 最近、音楽に興味を持ち始めたようです。楽器の演奏に・・・
 今回目覚めてみると、彼はバイオリンの練習をしていました。
 彼はコンピューターで楽器の音を合成するのではなく、自分で楽器を組み立て、自分の手を使って物理的に音を出そうとしているのです。
 頭がおかしいとしか思えません。
 しかも、ものすごく下手なのです・・・。やっぱり彼はポンコツロボットなのです。
 うるさいのです。単なる騒音なのです。
 大変な迷惑です。



 今回の恒星系の探査には、ちょっとした特別な理由がありました。
 救難信号を受信したのです。
 それも、地球の宇宙船の救難信号でした。
 この恒星系のどこかの惑星に、地球の船が不時着している可能性が高いのです。
 しかし、かなり古い救難信号で、それにノイズがとても多く、遭難した宇宙船を特定することはできませんでした。

 ただ、我々はまだ、それが本当に地球の宇宙船の救難信号なのかどうか、疑問を持っていました。
 なぜなら、こんな地球から離れた恒星系に地球の船が来ているはずがないからです。
 人類はまだ高速を超えて移動する技術を持っていません。
 ワームホールはいくつか発見しましたが、この星系につながる超空間通路はありません。
 だから、このあたりに人間の船が来たはずがないのです。

 しかし・・・しかし、一つだけ重要な事実があります。
 それは、我々の船がこの星域に飛ばされたということです。
 我々が飛ばされたということは、他の船も飛ばされた可能性があるということです。
 そして、同じ現象に巻き込まれた過去の船が、このあたりで遭難した可能性は、決してゼロではないのです。

 ただ、その可能性がどの程度なのかを具体的に計算することはできません。
 なぜなら、我々がこの星域へ転送された原因がわからないからです。
 この船に残っているログを解析する限り、あれはワームホールの自己崩壊現象でした。
 ただ、それがなぜ突然起きたのか、そして、なぜその結果として我々の船が全く無関係なこの星域に転送されてしまったのか、それは何一つわからないのです。
 おそらく、地球ではすでにもっと精密な分析がなされているのでしょう。
 そして、もっと具体的な事実が解明されているのでしょう。
 でも、われわれは1000光年以上離れた地球と交信することなどできないのです。
 つまり、私たちの船はとても孤独なのです。
 
 いずれにしても、この恒星系に地球の宇宙船が遭難している可能性があるということ。
 もちろん、我々はその恒星系を・・・その惑星を探査するつもりです。
 今わかっていることは、その船がこの惑星に不時着したのは、もう三百年ほど前の出来事だということ・・・
 つまり三百年間救難信号を発信し続けているということ・・・

 惑星に近づくにつれて、不時着している船に関する、より詳細な情報がわかり始めました。
 レッドはそれを解析し、過去に建造された宇宙船の情報と・・・特に外宇宙探査を行った宇宙船の・・・そして、行方不明になった船の情報と綿密に比較しました。
 そして、彼は一隻の宇宙船を特定したのです。
 それは、一人乗りの小型宇宙探査船でした。小型ですが超長距離探査が可能な船でした。
 その船にはスコット中尉という男性が一人乗っていました。
 一人で深宇宙を探査していたのです。

 地球の記録を調べる限り、その宇宙船が行方不明になった理由は不明のままでした。
 通信が途中で途絶えているために、彼や彼の宇宙船に何があったのか解析できなかったのです。
 船に事故があったのか、エイリアンに襲われたのか、それとも何か他の理由なのか・・・
 おそらく、瞬間的に、宇宙船が未確認の超空間現象に巻き込まれて、この星域に飛ばされたのでしょう。
 そして、彼は何とかして、この惑星を発見し、かろうじて不時着したのでしょう。
 ただ、地球に残っている過去の記録だけでは、何のはっきりしたこともわかりません。

 もちろん、当時、彼が消滅した原因がはっきりしていたとしても、人類には何もできなかったでしょう。
 この広大な外宇宙では、たとえ救難信号を受信しても、助けにいくことは容易ではないのです。
 ましてや、それが1000光年以上も離れた恒星系だと判明しても、何もできないのですから・・・

 私は彼の航行記録を読み返して、少し暗い気分になりました。
 自分も同じような運命をたどっているような気がしたのです。
 我々の船も突然、未知の恒星系に飛ばされました。・・・たとえ地球でその原因が判明し、さらに我々が存在している場所を特定したとしても、何もできないのでしょう。
 こんなところまで助けにくるどころか、通信を送ることさえできないのですから。

 このままの状況が続けば、自分もどこかの恒星系で行方不明になり・・・地球に帰れないまま・・・
 我々もまた、誰も受信することのない救難信号を何百年も送信し続けることになるのかも・・・

 私たちは、もうすでに孤独な存在なのです。・・・
 私はこの宇宙の中でひとりぼっちなのです。
 そのことを彼の航行記録を読み返しながら感じ、少し辛い気分になりました。

 レッドと私はこの恒星系での惑星探査の計画について話をしていました。
 すでに、船が不時着した惑星までは特定できていました。
 レッドは、その惑星上でスコット中尉の宇宙船を発見できると考えているようでした。
 しかも、中尉がまだ生きているかもしれないと・・・。

 人間の寿命は短いけど、人工冬眠装置が動作していれば・・・生命維持装置は独立システムになっているので、たとえ船のメインコンピューターが故障しても、生きるための環境を維持し続けることができると・・・
 だから、彼が生きている可能性は高いと・・・

 私は中尉の航行記録を丁寧に読み返していました。
 船が未知の超空間現象に巻き込まれた原因を・・・つまり私たちの船との共通性を見出そうとしていたのです。

 その時です。
 エネルギービームが船を突き抜けたのです。
 エネルギーの密度は低く、広範囲に拡散したビームでした。
 だから船体にはほとんど影響がないようでした。
 しかし、それは何度か繰り返されました。
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