美少女リリアの宇宙探査・1000光年の愛の旅

ヤクモ ミノル

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自己成長する遺跡(2)

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 床や壁から生え出た謎の繊維に体内を支配された私は、何とかして逃げようとしていました。
 私は足元に絡み付いている繊維を必死で切ろうとしました。
 引きちぎり、足を動かそうと・・・
 でも、絡み合った無数の繊維は、切っても切っても、また生えてくるのです。
 新しい繊維が床や壁から生えてくるのです。
 この建物自体が成長し続け、私と同化しようとしているのです。

 私はもがき続けました。
 そして、私は何とかして片足を動かせるようになり・・・それから、もう一方の足を・・・
 私は必死でもがき・・・体を動かし続け・・・絡み付いてくる無数の繊維を断ち切って・・・

 そして、私はやっとのことでその繊維から逃れ、建築物の外に出ることができ・・・急いで私は、船に戻ったのです。
 レッドは私の体内に残っていた異星の植物を・・・そのたくさんの繊維を除去してくれました。

 それは、私の肉体の深くまで入り込んでいました。
 腸などの消化器官だけではなく、子宮にも、卵巣にも、膀胱にも、腎臓にも、そして、太ももの大動脈から血管にも入り込んでいました。

 レッドは言いました。
 ほとんどの繊維は除去したけれども、一部は私の細胞に癒着していて、切除できなかったと・・・
 全てを取り除くには、専用のマイクロマシンを開発して、体内から分離しなければならないと・・・
 それには少し時間が必要だと・・・

 それからレッドは、その異星の植物細胞の解析結果も教えてくれました。
 この細胞の染色体には特別な機能があるのだと・・・
 遺伝子の情報を読み出すだけではなく、新しい情報を遺伝子に書き込むことができるのだと・・・
 それはコンピューターのメモリーに似ているのだと・・・
 遺伝子自体が複雑なプログラムを実行するためのメモリーの役目を果たしているのだと・・・

 この特殊な細胞構造は、一種の建築技術ではないかとレッドは考えているようでした。
 生物を使った建築技術・・・
 つまり巨大な木造の家に成長する植物を・・・ひとりでに家になる樹木を開発したのだと・・・
 家の設計図だけ与えていれば、あとは自分で成長して、設計図通りの家になるという便利な道具・・・

 でも、その技術を開発した生命体がどうなったのかは、よくわからない、とレッドは言いました。
 その生物は遠い星に住んでいて、この星を開拓するために、便利な植物を事前に送り込んできたのか・・・
 あるいは、昔はこの惑星に住んでいて何らかの理由で滅んでしまったのか・・・
 知的生命体は滅んでしまったのに、その植物だけは生き続けていて、もう必要のない建築物を作り続けているのか・・・
 いずれにしても、この惑星に知的生命体が不在だということの理由については、レッドにもよくわからないようでした。

 でも、私は異星の生命体のことよりも自分の体のことが気になっていました。
 まだ、恐ろしい細胞が体内に残っていたからです。

 レッドはすぐに、その細胞を除去するためのマイクロマシンの開発を始めました。
 明日の朝には完成するから待っていてくれと彼は言いました。

 私はその夜、恐怖に震えながら眠りました。
 私は不安でした。私は怖かったのです。

 そして、思った通り、その夜恐ろしいことが起きました。



 私は宇宙船の自分の部屋で眠っていました。
 そして、私の睡眠中に、私の体内に残存している植物細胞が活動を始めたのです。
 胃や腸、子宮、膀胱の中に入り込んでいた細胞が再度成長し始めたのです。

 私が自分の肉体の異常に気がついた時には、もう植物細胞は私の体のあちこちで急速に増殖し始めていました。

 私ははげしい苦痛でもだえました。
 植物細胞は体内で勢いよく成長し、私の体を内部から押し広げていくのです。
 腹部が膨らみ、私はまるで妊娠しているようでした。
 私はベッドの上で暴れ狂いました。
 私は発作を起こしている病人のように、自分の肉体をばたつかせました。

 でも、すぐにその痛みは消えました。
 その繊維が私の神経を麻痺させたのです。
 そして、偽の感覚刺激を送り込んできたのです。
 自分の体を支配されているはずなのに、私はとても心地よい気分になって・・・
 もう、このままでもいいというような気持ち・・・異星の謎の生物に全て委ねてしまいたいような気分・・・もう自分が異星の建築物の一部になっても構わないような気がし始めて・・・

 でも、私は私の体内を侵食していく植物細胞を感じていました。
 異常な速度で成長するその繊維は、私の体のあらゆる部分に入り込んでいったのです。
 腸から胃へと、食道へと、喉へと・・・膀胱から腎臓へと・・・子宮から卵巣へと・・・
 
 何度も沸き起こる恐怖・・・しかし、それは植物繊維による偽の感情によってかき消され・・・でも、再び恐怖を感じ・・・それもまたかき消され・・・
 私はそんなことを何度も繰り返していて・・・

 しかし、その間にも、植物繊維は着実に私の体内を広がっていき・・・
 血管に入り込んだ繊維は、動脈へ、静脈へ、そして心臓へと入っていきます。
 おそらく、心臓に入り込んだ繊維が鼓動を乱しているのでしょう。
 苦しいのです。
 次第に意識が薄れていくのです。
 きっと血液の循環に問題が起きているのです。
 もしかすると、繊維が心臓に入り込んだせいで、心臓弁が閉まりきらず、十分な血液を送り出すことができなくなったのかもしれません。
 そのせいで、血圧が急速に下がり始めているのかもしれません。

 意識は薄れて行きます。
 でも、気を失うことはありませんでした。
 理由はわかりませんが、そんな異常な状態でも、私は気を失いませんでした。
 私は自分の体が壊れていくのをじっと感じていました。
 内臓が拡大し、腹部が内側から押し広げられて、破裂しそうなほど大きくなっていくのです。
 無数の繊維が喉から肺へと侵入し、肺胞を壊して血管へと入り込み、そして再び心臓へと・・・

 それだけではありません。
 その無数の繊維は私の脳にも入ってきました。
 喉の奥から脳髄へと侵入し、頭蓋骨の中へと・・・

 私はもうダメだと思いました。
 もう間違いなく死んでしまうと・・・
 私は助からないと・・・
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