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妹と兄の恋(後編)

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お兄ちゃんは私の体を抱きしめました。
強く、強く・・・
その時始まってしまったのです。
もうそれは誰にも止めることなどできません。



私たちの体はもう離れられなくなりました。
私たちの体は一つになりました。
私は自分の体の中に、自分とは違うもう一つの鼓動を感じていました。
それは、ドクンドクンと強く脈打ち、私の全身を突き動かします。

激しい痛みと激しい快感が同時に私に襲い掛かりました。
我慢できないほどの苦痛と我慢できなほどの幸福感が同時に私の心を支配しようとしました。

あまりにも濃厚な感触、あまりにも濃厚な感情、あまりにも濃厚な時間がわたしたちを覆っていました。
それらはあまりにも濃いので、私たちの意識や思考を完全に麻痺させてしまったのです。

私は自分の体内に吐き出される生温かいものを感じていました。
私は知っていました。それが生きているということを。
それが生き物であるということを。

それは長い時間続きました。
そして、それは、その日からずっと毎晩繰り返されました。

一線を超えてしまった私たちは、もう戻ることができませんでした。
もう私たちには、戻る場所がありませんでした。
普通の兄妹に戻ることなど、もうできませんでした。
他に恋愛の相手を探すことなど、もうできませんでした。

二人の間にあるのは、もはや兄妹の関係でもなく、恋愛という感情でもありませんでした。
二人は、深い底なし沼に沈んでいく、一つの醜く汚い肉のかたまりでしかなかったのです。

それでも私は満足していました。
私は幸福でした。
幸せという感情が、これから何が起きるのかという恐怖や不安を消し去ってくれました。

でも、そんな異常な生活は長続きしませんでした。
それは、私が妊娠したからです。

秋ごろのことです。
私は自分の体の調子が変だということに気がつきました。
それで私は学校の保健の先生にこっそり相談したのです。
私は、絶対に他の人には言わないでほしいとお願いしてから、先生に相談しました。
でも、先生はすぐにその約束を破りました。

私の秘密を知った両親は私を殴りました。
私は何度もひどく殴られました。

それから、私は無理矢理引きずられるようにして、病院に連れて行かれました。
そして、私は病院で、自分の体の中にあるものを処理されました。



私はお兄ちゃんと引き離されました。
私はすぐに遠い親戚のところへ預けられました。
そして、さらに私は保護施設へと入れられることになりました。

まわりにいるのは知らない人間ばかりでした。
一人だけの孤独な生活が始まりました。
でも、私はこっそりお兄ちゃんに携帯で電話をしていました。
私はお兄ちゃんと、あることを相談していたのです。

それから、しばらくして、私とお兄ちゃんは施設の近くの駅で待ち合わせて、そこから逃げたのです。

もう冬でした。
雪が降り始めていました。
二人には家出をして行くあてなどありませんでした。
ただ、人に見られないようにしながら、旅を続けているだけでした。
人に見つからないようにしながら、寒い道を歩いているだけでした。

二人は今後のことなど考えていませんでした。
二人はどこかの町に住んで 働きながら生活しようなどとは考えませんでした。
そんなことをする勇気も知恵もありませんでした。
だから、二人が持っている金を少しずつ使いながら、バスや電車に乗ったり、安いホテルに泊まったりするだけでした。

私たちには、未来のことを考えるというような力が欠けていたのかもしれません。
だから、いつも今目の前にあるものだけを見ていました。
私たちは、お互いの顔を見つめ合い、お互いの心を求め合い、あ互いの体を感じ合ったのです。

もしかすると、二人の関係があまりにも濃厚だったので、あらゆる思考が麻痺していたのかもしれません。
私たちは、減っていく所持金を見つめながらも、だから何かを考えるということもなく、その不安を紛らわすために、互いの体を強く押し付け合うだけだったのです。

私たちは海に沿って、北へ北へと旅していました。
毎日、海の激しい波を眺めながら海岸を歩いていました。

今日の昼に、私たちは駅前のコンビニでおにぎりとパンを買いました。
そして、二人で駅の待合室に座って食べました。

それから、ほとんどお金の入っていない財布を二人でじっと見つめていました。
私たちは残ったお金をどう使うかを考えていました。
そして、残り少なくなったそのお金でも泊まれそうな安いホテルを探しました。

私たちは、夕方、このホテルに来たのです。
これが私たちの旅の終わりなのです。
これが私たちの関係の終わりなのです。
これが私たちの終わりなのです。

私たちはシャワーを浴びると、ベッドの上に横になりました。
長い時間、自分の体を相手の体に強く押し付け、からませ、動かし、そして抱きしめ合いました。

それが許されない行為だとしても、もう私たちには関係がありませんで。
それが禁じられた行為だとしても、もう私たちには、それを咎める人間も、それを罰する人間もいないのですから。
もう私たちは、私たちだけなのですから。

私とお兄ちゃんとの関係はとても短いものでした。
お兄ちゃんが、お兄ちゃんでなくなってから、まだ一年も過ぎていないのです。
でも、それはとても密度の高い時間でした。
きっと、人間が一生に感じることのできるもの以上のものを 二人はその短い間に感じ合ったのです。
だから、その時間が終わるとしても、何も後悔していません。

明日の朝、このホテルを出たら、二人で海岸を散歩します。
そして、波の荒そうな場所、絶対に見つからないような場所を探します。
そして、お兄ちゃんと二人で一緒に飛び込むつもりです。

私はずっとお兄ちゃんと一緒です。
私はずっとお兄ちゃんと一緒にいられて幸せです。


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